ホンのつまみぐい

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O'CHAWANZリリーシュイベント 〜ゆったりトーク&ライブ+特典会@dues新宿 4/5 &リミックスコンテストまとめ

校庭カメラガールツヴァイ解散後に結成されたしゅがーしゅらら、のんのんれめるによる2人組ラップユニット。

 
ジャジーヒップホップと紹介サイトには書いてあるけど、ジャズのまとうある種の苦味みたいなものはなく、軽快さを強く引き継いだ音。以前も書いたようにふたりのキャラクターと音の相性は悪くないのです。
 
でも、まだまだライブにおける正解をふたり自身が見つけていないような印象を受けました。
 
他のアイドルの場合はもっと曲がやかましかったり、ダンスの運動量が多かったりするから、ゆるいMCから曲でも客も演者もわりと容易に切り替えられますが、ゆるい曲とゆるいMCだと、肝心のライブに集中させるのが難しいんじゃないかなと。
 
間違いなく今のアイドル界でオンリーワンなふたりなので、「こういうライブにしたい!」という理想をステージとフロアが共有できるように、がんばってほしいと思いました。アルバム出る頃には固まってるといいな。
 
\あ、ムラヌシさんのガヤは拾わなくていいと思います/
 
ところで、入り口で特典券渡されなかったから特典会を何となく見てたら、最後にららちゃんにオマケのお箸を渡されたの、なんかアイドル様に気を使わせてしまった感ありました。(うれしかったけど)
 

私がいない現場での後日談となりますが、正解のとっかかりが見つかったようでよかった……!

 

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オツカレサマ

オツカレサマ

 

 

追記:ところで、O'CHAWANZは現在「ドンギバ!」リミックスコンテストというのを開催していて、それをきっかけにじむじむくんがリミックスにチャレンジし始めたのめっちゃ良い話ですね。猫まみれサイファー界隈もいろいろがんばっていて微笑ましい。リミックスコンテスト自体も、ひとつの曲がまったく違った色に染まっていく様子がなかなか楽しいです。

 リミックスコンテスト参加者のツイート

 

 

 

 

 

 

 

ラップを好きでいろよ-出会う人をラッパーに変える、MAZAI RECORDS運営兼もつ酢飯のビートメイカー・DocManjuが語るヒップホップへの愛情

もし、ラッパーの条件を「自分の曲を作ったことがある」かどうかで線引きするなら、私が2016年の9月に会った時は、多くの現MAZAI RECORDSメンバーはまだラッパーではなかったと思う。それを、2016年の12月のコンピレーション制作をきっかけに、いつの間にかラッパーに仕立て上げたのはもつ酢飯のビートメーカーであるぽじぽじa.k.a DocManjuをはじめとした、MAZAI RECORDSの初期メンバーだ。


週一のサイファー・カレー会、月一の練習会・チンポジム、半年に一度のクラブイベント・チンポマニアックス。人がラップと出会う場所を提供し続け、時にラッパーにしてしまうぽじぽじa.k.a DocManju。


常に飄々とした風袋で、時にシニカルに、時に熱く語る彼の、ラップへの愛情とその歴史について話をうかがった。

 

3人だけで1年間続けたサイファ

-ラップをはじめるきっかけは?

 

中学生の頃にScoobie Doというバンドが好きだったんですが、そのバンドのライブ音源にRHYMESTERとfeaturingしている曲があって。よくバラエティーで芸人とかがラッパーのモノマネとして、「ヨー!ヨー!」とか言ってるじゃないですか。ぼく、それまではあれを失礼な誇張だと思ってたんです。そんな人が現実にいるのかなと。そしたらRHYMESTERが「カモンヨー!」って言い始めて、「あ、ほんとに言うんだ」って気になって聴き始めたのが最初ですね。でも、最初はRHYMESTERしか聴いてなかったです。

 

高校卒業してから出来たラップ好きの友達に教えてもらったりして、いろいろ聴くようになりました。ぼく、高校生の頃に全然勉強してなかったから、大学浪人の時に寮に入れられたんですよ。その寮がいろんな地域から人が集まっている面白いところで。

 

みんな勉強なんかしないし、お金もないから1日中YouTubeを観てたりするんです。そこで戦極の動画を観たり、そこにいたラップ好きなやつに般若の音源を借りたり。その頃から、一緒に遊んでた現MAZAI RECORDSメンバーのヤボシキイとカラオケでフリースタイルをやってみたり。そこからですね。

 

ヤボシキイとはもともとツイッターで知り合ったんですが、ぼくが寮に入るために茨城から東京に来て、そこで遊ぶようになりました。ヤボシとはさして面白くないアニメをカラオケルームで一気見するみたいなことしてて。

 

-カレー会は2年以上続いてる、MAZAI RECORDSの元になっているサイファーだけど、どういう経緯で始まったんですか?

 

ぼくが大学生になった頃、BBQしながらラップやるオフ会をしようという話になって、「じゃあ、ちょっと練習しようか」と言って集まったのが毎週になりました。

 

5人くらいでスタートしたんですが、そこから2人減って3人だけでやってる期間が1年くらいありました。その時の3人が、ぼく、ヤボシキイ、ヘルガa.k.a Jabvaraさんなんですよ。ビートメイカーのヘルガさんもツイッターで知り合ったんです。その頃はアニメアイコンでラップの話をしている人が少なかったから、お互いの仲間意識が強くて。

 

-毎週3人で1年以上サイファーをやり続けていたのすごいね。2時間とかでしょう?

 

やった後にみんなでメシ食いに行って、その後、1〜2時間ラップの話をするのが普通でしたね。「今日寒いからもう終わりにしてカラオケ行こう」とかいう日もあったり。

 

サイファーって、始める人は多いけれど、続けられる人が少ないじゃないですか。

 

サイファーは、ある意味ボランティアじゃないですか。

 

-ボランティア?

 

日本ではニュアンスが違いますが、アメリカ人の書いた本にボランティアは「真剣な遊び」としてやってると書かれていて。「やらずにいられない」「お金がもらえるわけじゃない」「真剣な遊びである」とか。

 

ボランティアが続かない時はどういう時かというと、飽きる時なんです。研究しようと思っていろんなサイファーに行ったこともあるんですが、かかってるビートが15分くらいループし続けたりすることもある。たぶん、そういところは毎週おんなじビートでラップしてるんじゃないかと思うんです。そうすると、退屈してしまう。

 

だから、ヘルガさんとか初期は2〜3時間単位でセトリを組んできてましたよ。皆に来てもらっているのだから、飽きさせないようにというのは意識していました。

 

-だから今でもノイズミュージックでサイファーやバトルをやったり、イベントではカウンターでヤバさや面白さを計測して勝ち負けを決めるパンチラインカウント制バトルや、お題カードで引いた言葉とその単語で韻を踏んだ言葉しか使えないフローだけやんバトルとか、新しいことを取り入れてるんだね。

 

 

カレー会のほかに、月一の第三土曜日に渋谷のスタジオを借りてサイファーやバトルをやるチンポジムを開催しているけど、あれはどうして始めたの?

 

チンポジムは去年の5月くらいからやっています。フリースタイルダンジョンに便乗して仲間を増やそうと思って。あとは、チンポマニアックスというクラブイベントも半年に1回やっているんですが、そこには普段はラップをしない人も来るので、そういう人たちのラップする場所になりたいなって。

 

-3人だった頃からすると、めちゃくちゃ人増えたね。今は常に10人弱集まるようになって。

 

こんなに増えるとは思ってなかったです。でも、うちはダンジョンからの人もいれば、昔から好きな人もいるし、ダンジョンきっかけでハマった人もそれ以降のハマり方はそれぞれ違うのが面白いですね。

 

めんどくさいことは極力やりたくない

-曲を作り始めたのはいつ頃、どういうきっかけで?

 

2015年の末頃です。サイファーをやってた友達がMPCを安く譲ってくれて、自分で録音し始めたのがきっかけです。

 

曲作ろうってなった時に、リミックスとかビートジャックは初心者がやるにはハードルが高いんじゃないかと思って。別の人が乗っても価値のあるものに出来ないと面白くないかなと。だったらビートもオリジナルでいけば「これはこういうものです」という見せ方が出来るかなって。

 

-作ってみてどうですか?

 

音楽の聴き方が変わりましたね。ヒップホップ以外を聴く時はネタに出来るか、ヒップホップを聴いている時は、どういう音をどう配置しているかを考えてしまいます。

 

-制作に関して影響を受けたクリエイターはいますか?

 

ぼくはK-BOMBってラッパーが一番好きなんです。彼はBLACK SMOKER RECORDSというレーベルを運営しているんですが、そこはアブストラクトでノイジーな曲ばっかり作っていて、イベント行ってもヒップホップでは全然馴染みのない音がかかったりします。

 

-ラップ以外に影響を受けたものは?

 

昔はギターやピアノやってたんですが、どれもすぐやめてるんですよ。あと、友達のマネして小説書いたりしたんですが、それもめんどくさくて、すぐやめちゃって。

 

でも、ビートメイクは音楽知識がなくても、楽器の練習しなくても出来る。音の配置を考えるだけですから。あらゆる創作の中で達成感に至るまでのスパンがもっとも短いんです。


色んな人に曲を作らせたがるのも、簡単に達成感を得られるので、ラップをより好きになってくれるかなというのがあって。ぼくもヤボシキイもなんですけど、めんどくさいこと、大変なことはやらないようにしているので。

 

あと、ビートメイクはニコニコ動画のMADとかに影響を受けてます。あれもサンプリングじゃないですか。無限に存在する素材をどう組み合わせて面白いものを作るのかっていう。
だから、ビートメイクに煮詰まった時はヒップホップや音楽から離れてニコニコ動画を観たりします。

 

-MAZAI RECORDS設立のきっかけは?

 

カレー会に人が集まるようになって、音源出すなら名前が欲しいよねってなって、カレー屋で5秒くらいで決めました。MAZAIというのは「マジ?」を「魔剤?」と書くネットスラングがあって、そこからですね。

 

-2016年の12月にMAZAI RECORDSのコンピレーションを出していますが、あれはどういうきっかけで?

 

人が増えたから、せっかくだからまだ曲を作ったことのない人たちも含めて何かやりたいなって。音源を作るためにゼロから考えると、ラップの聴き方が変わるんです。

ラップが流行らない理由のひとつに、何が技術かがわかりにくいというのがあると思うんです。でも曲を作るために考える時間を持つと、ラッパーのすごさがわかるようになって、楽しめる音源が増えるんですよ。

 

MAZAI RECORDS - "Python Code" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

MAZAI RECORDS - "MAZACON1" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

遠回りさせたくないから、自分たちの知っていることは伝えておく

-もつ酢飯のEPを作ろうと思ったのは?

 

2人がMCバトルに出て、奇抜なスタイルで有名になったじゃないですか。でも、バトルだけに出ていると「あいつはヒップホップ好きじゃない」と言う人も出てくる。それはかわいそうだから、名刺になるようなものを作ってあげられたらいいかなと思って、ぼくがLINEで持ちかけたんです。

 

そしたら、スルッと決まってもつ酢飯からやりたい曲のトピックが送られてきて、それにあわせて曲を作ったりしました。もともとあった曲も使っていますが。

 

-もつ酢飯のテーマの「母音をイで揃える」はぽじくんが提案したんだよね?


こういう風にずっと同じ韻が続いたほうがグルービーになるから、ぼくから「イ」で終わらせてくれって提案したんです。

G.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)、G.I.R.L. part2はデカめの文字数を踏んでますよね。「彼氏がくれた サマンサタバサ 果てし無くベタ 黙んなバカが」とか。これ、バトルから入ったヘッズがやりがちなんです。リリックは自由に言葉を繋げられるから、うれしくてとにかく踏みたがるんですけど、これは2小節で1コじゃないですか。実は次の小節とあまり関係がないんです。だからもうちょっと音楽的にしたいなと思って。

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

 

-フックでもアドバイスを受けたと言ってたけど。

 

ラップで一番難しいのは、実はフックを作ることなんです。フックとビートのバースが露骨に変化していればいいんですが、変化のない曲だとわかりにくい。

もつ酢飯はポップな感じでやってるし、バトル現場で大声を出して笑ってくれるような人に人気があるのかなと思ったので、露骨にフックを歌いやすくしたり、展開を変えたりしています。

 

以前からあるビートも使っていますが、もつ酢飯からは最初にトラックリストが来て、「こういう雰囲気でやりたい」という説明があったので、ある程度はそれに沿って作りました。

 

逆にG.I.R.L. part2は好き勝手やってますね。ドラムのハイハットを不規則に配置しているので、ラッパーに優しくない。

 

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

他にinterludeも好きなように作りました。これは元ネタがThe Shaggsというバンドで、演奏も歌も下手で有名なんですよ。
The Jackson 5に憧れたお父さんが、娘に無理やりバンドをやらせてるから全然うまくならない。音を歪ませていないのにふにゃふにゃしていて、もつ酢飯は初心者だから、そのラップのあどけなさに合わせると面白いかなと。

 

-ホワイト・リザレクションはレックが大変だったという話を2人がしていましたが。

 

そうですね。ぼくが気に入らなくて……。

 

-ムノウちゃんは達成感がなかったという表現を使っていたけど。

 

それはぼくがこのEPを作っている時に、唯一失敗したと思っていることです。達成感がないというのは、ゴールが見えなかったということなんですよ。こういう曲をやってみたいとか、あの人みたいなラップがしてみたいとか。それが出来ていない状態でレックに入ってしまった。ゴールを決めるラインまで2人を持っていけなかったのかなって。

 

ぼく、実は制作中に「自分らの名前を出して、お世話になった人たちを呼んでリリースパーティーをやるならラップがうまくなくちゃダメだから、2日に最低1枚は新しいアルバムを聴いて」って無理やり聴かせてたんですけど。やっぱ聴かないとダメなんで。

 

-2人とも課題はクリアしてきたの?

 

聴いたアルバム1週間分のリストが送られてきてました。それもぼくが要求したんですけど。「ぼくも聴いて、どういう雰囲気に乗せたいか考えるから送って」て。

 

その人が好きな音源をレックの前に聴いて、やりたい雰囲気をあらかじめ探っておくと楽かなと思って。自分たちがけっこう手探りでやってたので、なるべく遠回りさせないようにしたいから。

 

あとは、簡単だけど効果的な技術とかもアドバイスしてます。たとえば、簡単なフロウの作り方とか。小さいッを文章の中に2カ所、3カ所入れておくとその中にフロウが出来るんですよ。音がつまるとグルーブになるから、小さいッを入れると簡単にそれっぽくなる。

 

-気に入ってる曲はありますか?

 

最初の方に取った曲は体力があって好きですね。一発目はラップに対する初期衝動である程度こなせるんですけど、それがなくなった時にどれだけ出来るかっていうのに地力が出ますね。もつ酢飯はこれからそういうのが求められると思うので、ぜひがんばってほしいです。

 

KREVAがパチンコになったら絶対みんなdisりますよ

ツイッターのプロフィールに「ヒップホップ要素はないです」って書いてあるけど、あれはどういう意図があるの?

 

真夏の夜の淫夢という動画のMADを投稿する時に「淫夢要素はないです」ってつけるのが流行ったことがあったんです。その流れで「〜〜はないです」って書くと、実はそれが好きというのがわかる。

 

ぼくはネットもオタクとしてやってて、なおかつヒップホップ好きな人とつながりたいというのがあるので、オタクにしかわからないスラングを使ったりしますね。

 

そうだ。19歳の頃、なんでRHYMESTER以外を聴くようになったのかっていうと、ぼくはアニオタだったんですけど、90年代後半のエヴァの真似して滑ったアニメがすごく好きで。最初は普通にロボットが戦ってたのに、最終回で精神世界に行ってだだ滑りして終わるっていう。

 

でも、当時は日常系アニメがあまりにも流行ってて、しかもそのどれもがとりあえずヒットするみたいな状態で。……なんか嫌悪感みたいなのを抱かざるをえない時期があったんです。でも、そういうことをツイッターに書いたりすると「変な奴」って思われるだけで終わりじゃないですか。

 

そしたら、ヒップホップっていう界隈にはセルアウトを堂々と悪く言っていい文化があるって知って。売れてるっていう理由だけでKREVAがdisられるっていう。これはすごいなって。

 

だって、アニメが売れるとパチンコになったりしますけど、そこで「オタクから金巻き上げようとしてる」と言っても「いや、でもまどマギは悪くないから」とか言われるじゃないですか。でも、仮にCR KREVAとか出たらラッパー全員でdisりますよね。

 

そういうところがめちゃくちゃ自由でいいなって。ダサい・かっこいいはもちろんありますけど、それぞれの見方が存在する。その、ダサい・かっこいいも全部聴く側に委ねられているのが面白いなと。

 

-そういえば、ヒップホップはけっこう似たり寄ったりの曲を作りがちなのに、MAZAI RECORDSの楽曲はみんなオリジナリティあるよね。

 

自由にやってほしいというのはありますね。オラディーさんなんかは女性声優の曲を2曲作ってたりしますし。あとは声優興味なしっていう曲を作っているぽ太郎さんとか。ぽ太郎さんはKREVAが大好きでラップもKREVAっぽいんですけど、中身はまったくそうじゃない。あとは、二郎のラーメンを残すやつにぶち切れるとか、トイレでツイッターやりながらウンチするとか。

 

でも、ラップがうまいのは絶対に正義だからとは言ってます。オラディーさんやぽ太郎さんの声豚ラップにしても、評判がいいのはラップとしてよく出来てるからなので。

 

ぽ太郎「声優興味なし(ごめんね)」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

どんな人にもラップを好きになってほしい

-ぽじくんは自分ではあんまり曲出さないけど、教える方が楽しいタイプなの?

 

ラッパーいっぱいいるし、別にいいかなって。今回ヤボシキイが出すアルバムの客演でぼくも何曲か参加しているんですが、歌詞を書いているときもこの時間でレックできれば後2~3人ラップできるなって思うんですよ。

 

ぼく、ラップ始めたばかりの頃に、SIMON JAPさんが運営していたWARUGAKI GYMっていうのに行っていたんです。ヤボシキイと「ラップ出来るところあるみたいだから行こうよ」って。

 

毎週水曜日の8時からスタジオノア2号店に行くと、SIMON JAPさんがラップしてくれるんです。UZIさんや黄猿さん、CHICO CARLITOさんも来てくれて。SIMONさんが最後の方で「それはこうした方がいいよ」って人生相談してくれたり。

 

WARUGAKI GYMはアシッドパンダカフェで開催される日が定期的にあったんですが、そこでSIMONさんと運営の麻猿さんとぼくだけでフリースタイルっていう気まずい状態になったことがあって。

 

その時にぼくが当時バイトしていた古着屋の話をしたら、SIMONさんに「そこに来る女の子にヒップホップを広めろ〜〜」みたいなことを言われたんです。「いや、うちはおばちゃんしか来ないんで」と返事をしたら、「おばちゃんでもヒップホップを広めるのは大事だから」って言われて、「わかりました」って。

 

そこで「どんな人にでも普及できるのかも」と思ったんです。SIMONさんは冗談のつもりだったかもしれませんが。


-今後の予定は?

 

来週にヤボシキイのアルバム「テンシルエア」が出ます。あとは、ヘルガさんもビートアルバムを出します。(どちらも公開済み)

ちょっと先ですが、チンポガールズ※メンバーのMANOYさんも夏くらいにはアルバムを出そうって言ってます。(※MAZAI RECORDS女子メンバーユニット。ワッショイサンバ、ムノウ、MANOY、樫で構成)

 

YABO$HIKI-1 - "テンシルエア" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

Jabvara - "Earthbound" - Download | Added by MAZAI RECORDS | Audiomack

 

MANOYさんも樫もめちゃくちゃ音源聴いてるんですよ。でも、スタートダッシュの勢いはそんなにない。勢いで出てったもつ酢飯がどれだけ距離を保てるかっていうのがあると思います。

 

ぜひクルーの中で競い合ってほしいですね。フリースタイルがスポーツ化したとか言われますけど、ラップ自体がスポーツみたいなところがあって、うまくならないと面白くならない。誰かのスキルが上がったときに、他の人が悔しいと思ってうまくなってくれればうれしいです。

ぼくは来年就職なので、残りの時間でどれだけ制作出来るかなってとこですね。

 

-やっぱり音楽関係の仕事に就きたいの?

 

いや、全然。むしろ違うことするつもりです。制作を続けて行くにはいろんな人と予定を合わせる必要があるので、土日休みの仕事がいいなとは思ってます。仕事始めたからって制作辞めるってのはないので。周りの人たちが半分くらい社会人で、ずっと制作を続けているのに自分が辞めるのはないと思ってます。

 

-最後の質問、何か言い残したことはありますか?

 

うーん、さっき話したセルアウトうんぬんのことで、言い残したことはないと思うんですけど……。

 

-あれは本質的ないい話でしたね。

 

そうだ。この間「海外のラップをいかに技術的に研究分析して、オリジナルなラップに落とし込むか」について語っているインタビューがあって。それはそれですごいなと思うんですけど、一方でちょっと息苦しいなという気がして。ラップのハードルをすごいあげてるなと。

 

ぼくは技術みたいなのは後から必要になってくると思うんですけど、ラップ始めるだけなら誰でも出来ると思ってて、それが魅力かなって。むしろラップっていうすごい簡単な技術を使って内面がアウトプットできるってところが面白い。だからみんないろんな曲作ってくれるのかなと。

 

-読んでくれる人に何か言いたいことはありますか?


「ラップがすごく好きだけど、回りにラップ好きがいない」って人がいたら、ぜひ一緒に遊びましょう。

 

※表題の「ラップを好きでいろよ」というシンプルな言葉は、ヘルガa.k.a Jabvaraのアルバム「Earthbound」収録のMi AKAIから。DocManjuのラップとフッドへの哲学と愛情が静謐なビートで語られる名曲。

 

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KAO「ブームの前から好きでした feat. YABO$HIKI-1,DocManju」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

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私は自分の人生の当事者なんだ―自称「ただのオタク女子」が、もつ酢飯のラッパーMCムノウになるまで

MCムノウは腰の低い小動物っぽい見た目の女の子で、一見するとヒップホップがまとうヤンキー的な空気にそぐわない。しかし、小柄な体から放つ言葉の切れ味は強烈で、まだ公の大会に出る前から、そのギャップには不思議なインパクトがあった。

 

彼女のラップを初めて見たのは8月の女性向けラップ練習会。その時、テレビの企画で参加していた中年お笑い芸人とのバトルで、「肉じゃがの作り方を教えろ」という先攻のバースに対して「女が肉じゃがなんて前時代的だな」と返していたのをよく覚えている。
見た目からは予測できないタチが悪くて芯のある言葉が女の子の中に詰まっていて、それがラップという形を通して飛び出してくる。

 

サイファー、バトル、音源制作……。ラップと出会ったことによって、自分自身の内面を外に出していくことを覚えた人間が、その過程で改めて自分を見つめなおす。

彼女は「ただのオタクを自称していた女の子が、ラッパーというステージの上の人になるまで」の歴史を率直に話してくれた。


サイファーは自己解放できる場所だった
-ラップをはじめるきっかけを教えてください。

 

私、去年までラップというものにまったくふれたことがなくて。大学生の頃はジャニオタだったので、その頃のiTunesを見るとジャニーズの曲が7割。あとはその時々ハマってたアニメという。音楽に関してはそんな感じでした。

 

だけど、フリースタイルダンジョンが周りで流行ってて、それを見て一気にはまったんですよ。1話から最新話までをガーッと見てyoutubeで昔の動画を調べたり、ツイッターをフォローしたり。そこで見つけたのが、今ビートを作ってくれているぽじぽじa.k.aDocManjuさんたちが企画していたオタク向けの初心者ラップ練習会「チンポジム」だったんです。

 

ラップなんてやったことなかったから迷ってたんですが、ちょうど大学3年間友達がいなくてつまんなかったし、せっかくだからと思って6月に渋谷のスタジオノアであったチンポジムに参加したんです。

 

少し遅れて行って、ドアのガラスから中をのぞいたら、マイクリレーをやっているところで、B-BOYっぽい人もいれば、普通の格好の人もいて。でも女の子はいなくて、ちょっと「怖っ」と思ったりして。

 

サイファーを見るのも初めてで、おそるおそる輪の中に入ったらマイクを渡されて。そこでバーッと言葉を吐いたら「初めて? めっちゃうまいじゃん」「やってたの? ビートに乗れてる」ってほめてもらえたんですよ。しかも、その日のバトル。チンポジムのバトルはパンチラインカウント制っていう面白いこと言った方が勝ちみたいな感じなんですけど、初参加で優勝出来て。

 

私下ネタ大好きなんですけど、日常ではあんまりそんな話しないじゃないですか。でも、チンポジムでは下ネタがめっちゃ飛び交ってて、私が女の子がしないような下ネタとかオタク話をしてもみんな笑ってくれて。すごく解放感があったんです。それが初めてのラップですね。

 

-それまではどんなものが好きでしたか?

 

うーん、今までほんと薄っぺらい人生だったんで……。特に真剣に向き合ったものもなく、絵を描いたりマンガを読んだりのオタク活動が趣味みたいな……。オタクであることにコンプレックスはあったけれど、それを直さないまま来ちゃって。オタクと言っても人によって言葉の解釈が違うのでアレなんですけど、便宜上このワードを使わせてもらいます。

 

コンプレックスの話をすると小学生の頃までさかのぼるんですが、まず小学4年生の頃にボボボーボ・ボーボボに出会ったことで人生が狂いまして。そこから少年ジャンプを読むようになって男の子とばっかりつるむようになったんです。小6まで、放課後はランドセル置いて家出て「遊戯王やるぞ!」「スマッシュブラザーズやるぞ!」という感じで。

 

でも、中学にあがるとお互い環境も変わるし思春期だし、それまで仲良く遊んでた男子たちとよそよそしくなっちゃって。女子は女子なりの処世術を身につけた子同士で仲良くしてる。私はそこには入れない人同士でつるんでたんですけど、一度そのうちの1人が「オタクまじキモいよ」って豹変して。今思うと彼女がオタク趣味じゃないのに私たちに合わせてくれていたんですが、とにかくそこでガーンとコンプレックスを植え付けられて。

 

でも、同じ趣味を持った子たちとどうにか楽しくやってたし、「キモくたっていいじゃん」と思ってもいたんですが、心のどこかに「普通になれたら」というのがずっとありました。

 

-ムノウちゃんの言う普通って?

 

モデル体型とか、すごくかわいいとかじゃなく、男の子と普通に話せたりする日常にいるような女の子ですね。虐げられない人間というか。女の子何人かで行動した時に、「私だけちょっと女子のカテゴリーに入ってないな」みたいなのがあって。

 

オタク友達以外とのコミュニケーションの取り方を知らないまま来てしまったので。いろんな人と会話が出来た上で、「一番仲がいいのはここ」ならいいんですけど、仲いい人以外とうまくコミュニケーションが取れないというか。

 

高校を卒業して専門学校に入って、オタクでない女友達が出来て、箱根に旅行に行ったり、芸能人にキャーキャー言ったりしてたんですが、向こうの彼氏や先輩たちとの話を聞いて、だんだん「自分とは違うな。キラキラしてるな」と思うようになって。

 

そのあと大学に編入してから、向こうは話しかけてくれるのに、私が斜に構えてフェードアウトしちゃったんです。去年ラップに会って、やっと新しい友達が出来た感じですね。


憧れと楽しさと申し訳なさの後に訪れたもの
-バトルに出ようと思ったきっかけは?

 

7月のチンポジムでワッショイサンバさんと仲良くなって、彼女が大学生ラップ選手権の予選に出ることになったから応援に行ったんです。そこで彼女が会場を大いに盛り上げて、ベスト8まで残ったんですよ。

 

同い年で、同じタイミングでラップを始めた女の子があんなにたくさんの人の前で歓声を受けてる。すごくかっこいいと思って。帰りの電車の中で「私も出てみたい」という気持ちが芽生えてきたんです。

 

でも、「まだラッパーと言えるほどじゃないし、怖いし」で迷ってたんですが、ちょうどその時のQuickJAPANに掲載されていたハハノシキュウさんのコラムを読んだんです。それは初めてバトルに出た人のきらめきや面白さを書いた内容で、「これを読んで出ないわけにはいかない」という謎の使命感が湧いてきて、「どうにでもなれ」って感じで運営にメールを送りました。

 

-出てみてどうでしたか?

 

あの時すごく緊張していて、電車の中で名前のdisができそうな人をチェックしたりしながらRラウンジに行きました。エスカレーター上がってドアを開けたらサンバさんがいてホッとしたんですけど。

 

最初の相手がclockくんだったので、「お前の時計を止めに来た」とか、ジョジョの奇妙な冒険DIOの話や、Mr.FULLSWINGのネタをいろいろガーッって言ったらお客さんがワーッと盛り上がってくれて、終わった後もいろんな人が「よかったね」って声をかけてくれたんです。「うわー!バトル楽しい!もっとやりたい!」と思うようになりました。

youtu.be

mentuyutkg.hatenablog.com

 

-女性だけの大会・シンデレラMCバトルは転機として大きいと思うんだけど、どうして参加しようと思ったんですか?

 

もともとサンバさんは、正社員さんから「女子だけのMCバトルをやる」ってことで声をかけてられてたんです。そこでサンバさんから「オーディションだけどムノウちゃんも出る?」と言われて、「じゃあ、一緒にエントリーしよう」と。フィメールの子とやる機会はなかなかないし、せっかくだからと。ちょうどその頃別のバトル現場で楽しくやれていたから、調子に乗っていたんだと思います。

 

www.youtube.com

ームノウちゃんはバトル経験豊富なアイドルラッパー・ライムベリーのMIRIちゃんと対戦して一回戦負けでしたね。あの前後で何か変化はありましたか?

 

なんだろう……。終わった後に悔しいというより申し訳なくてゾッとしたんですよ。前々日からずっとサンバさんと一緒にサイファーやったり、前日はお世話になってるラッパーさんたちにスタジオでバトルの稽古をつけてもらったりしたんです。

 

それなのに、本番では全然自信のないままバトルに出て、自分らしさも出せない百ゼロの負け試合をしてしまって……。負けたことよりまず、MIRIちゃんにも真摯でない、気持ちの入ってないバトルをしてしまったのが一番よくないなって。稽古をつけてくれた2人や、「がんばろう」って言ってくれたサンバさんはもちろん、見に来てくれた人、今まで関わってくれた人にも申し訳なくて。

 

めちゃくちゃ落ち込んで、しばらくバトルが怖くなったりもしたんですけど、終わってからエゴサして「MIRIちゃんの楽曲のサンプリング面白かった」とか書いてくれているところを読んだりして、ばんそうこう貼るじゃないですけど、「よし、切り替えてがんばろう」と。アホほど落ち込むんですけど、「ま、いっか」となるのが早いんですよね。悪い癖だと思うんですが。

 

その後、テレビのエキストラに出てバトルをやったり、ぽじぽじさんたちが運営しているサイファーのカレー会で、ノイズミュージックをバックに大声でラップしたりして、またラップが楽しいと思えるようになったんです。


バトルの稽古をつけてくれた先輩ラッパーさんは、あの後「この間の試合は僕にも責任があるから」って、それからもバトルの特訓をしてくれて。彼の指導で動画を見直しながら、自分の反省点を言い合ったり、バトルのコツを教えてもらったりしていました。

 

だから、やっぱりここから音源とライブを本当にがんばらなくちゃと。今まで期待してくれた人たちに、「シンデレラは負けちゃったけど、もつ酢飯いいじゃん」と思ってもらえるようにしなくてはと思いました。

 

私、今まで何やるにも当事者意識が低い感じだったんですよ。自分はどうでもいい存在だと思っていたから、どこかゲスト参加みたいな意識があって。でも、シンデレラの負けの後に「客席の人じゃなかったんだ」「自分の人生の当事者なんだ」というのを思うようになりました。


もつ酢飯に対しても、ずっと「ワッショイサンバありき」という気持ちがあったけど、せめて自信を持って隣にいられるように。ちゃんとパートナーにならなくちゃと。以前、「花火と花火師みたいな関係がいい」という話をしたんです。サンバさんはエンターティナーだし、花火みたいに前にバーンと出ていく。でも、打ち上げるには花火師が絶対必要なので、私は支えとしてやっていかなくちゃいけないなって。


競いあったり、笑いあったり。2人で作るリリック
-もつ酢飯のEPはどうやって作っていったんですか?

 

「テーマ何にする?」という話を最初にした時、「ふわふわ女子に立てる中指」って答えが返ってきて。もともとサンバさんと「歪み方が一緒だね」という話をしていたので、お互いにLINEでリリックを送り合いながらG.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)を作りました。サンバさんのリリックに私が返してっていう。

 

初めてのライブでG.I.R.Lのウケがよくて、じゃあ、G.I.R.L. part2を作ろうと。G.I.R.L.、無限に出来るんですよ。ゆくゆくはヤバすぎるスキルみたいに10まで作ろうなんてふざけたことを言ってたんですけど。

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud


1on1は、サンバさんの「マウント取ってくる同級生がいる」という話から来てますね。仲がいいふりして見栄の張り合いするなんて、ほんとしょうもないって。後半の「虚構で自分とあいつをだまし」とかを教訓パートと呼んでます。ここはお互いに気にいってるところですね。

 

youtu.be

ブラック・リフレクションはすべてのオタク女子に聞かせたい服と化粧の黒歴史の歌ですね。サンバさんとLINEで「姫カット〜〜。ああ~~」「赤いリップ〜〜」とかキャッキャッ言いながら作って。「何がアウトで何がセーフ」って、未だにまじわからんと。迷走する女の叫びですね。

もつ酢飯「ブラック・リフレクション」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

 

チョコレートマカロンは、もつ酢飯の由来の2人の好きな食べ物が、もし「チョコレートとマカロンだったら」という話を前からしていて。「略してチョコマカとか超可愛いよね。じゃあ、チョコマカ用MCは何にする?」なんて言いながら作った曲です。私がゆめのんで、サンバさんがマイカで。ゆめのんはスイマーやフレッシュパンチなんかのゆめかわいい系で、マイカはビレッジヴァンガード寄り、中野以上阿佐ヶ谷未満みたいな設定を作りながら。

 

これは珍しく私が先にバースを出してますね。自分の変身願望がけっこう入っています。ポエム書くのって気恥ずかしいじゃないですか。でも、これはゆめのんとマイカの曲という設定を免罪符に好き勝手書いた感じです。

 

-もつ酢飯の曲は固有名詞が多いよね。

 

G.I.R.Lの「彼氏がくれた サマンサタバサ 果てし無くベタ 黙んなバカが」はサンバさんのリリックなんですが、これは全踏みなんですよ。それで、「おおっ!私も固有名詞で揃えたい」と思って、「“たまにはおねだり♡” SABONにLUSHb 黙りなお願い! I don't give a fuck you!」みたいにブランド名を入れたりしてます。別にサボンにもラッシュにも恨みはないんですけど、女子大生が聞けばピンと来るかなと。

 

-逆に、ホワイト・リザレクションはわりと抽象的な言葉が多いね。

 

お互いの内面コンプレックスについての歌をやろうという曲で、ラップに出会うまでの話でもあるし、自分の性格の悪いところでもあるし。暗い時に考える自分の悪いところを歌詞にした感じですね。「メッキ剥がれ いつかお別れ 離れ離れの 自分は誰」とかは、取り繕ってがんばっても自分から離れちゃうようなところがあるというのを書いていて……。

 

これはイメージがあまり固まらないままレックをしてしまって、達成感がなかったというか、結果として各々の持つ目標値に達しなかった……。自分のスキルの足りなさとか、インプットの乏しさが出てしまった曲です。

 

-もつ酢飯のテーマは全部母音がイで終わってますね。

 

これはぽじぽじさんが提案してくれました。聴いて気持ちいい感じになりましたよね。私はリリックでカッコつけたがりなので、かなりセルフボーストが入っています。今までの自分の道のりと、ここからやっていくぞ!という気持ちと。

「ノアの導き」は、スタジオノアのことだし、「この青春は遅咲き」はラップを始めて友達が出来たという。「剥き出しの恥だけど 癖になる味」は、「ゲテモノって言われるけどやってやる」という意味で。

 

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

-リリックは基本LINEで作ってるの?

 

「打ち合わせのために会おう」とかいう話もするんですけど、結局つい遊んじゃうから。LINEのノートに書いてつなげていって、それをぽじぽじさんに渡してアドバイスもらうってやり方にしています。

もつ酢飯のテーマも最初はもっと言葉が多かったんですけど、ぽじぽじさんに「もっともっとキャッチーでシンプルな方がいい」と言われて。G.I.R.L. part2を最後にしようと提案してくれたのもぽじぽじさんなんですよ。通して聴いた時の聴き心地が一番いいからって。ぽじさんには感謝しても仕切れないくらいお世話になってます。


恩返しができるようなことをやっていきたい
-ライブや制作に当たって、参考にしている人はいますか?

 

今まで、もうがむしゃらにやっていたから、具体的に「こういうステージングをしたい」とか、「こういうリリックの作り方をしたい」とかがまだないから、そういうのも固めていかなくちゃなと思っていて。経験も圧倒的に足りていないし、いい面でも悪い面でも粗削りなんですよ。


すごくいい環境でやらせてもらってるから、関わっている人たちに「いいね」「面白いね」と思ってもらえるようにがんばらないと。私がラップを始めてまだ1年もたってないし、もつ酢飯は音源作り始めてから半年もないくらいなのに、すごく注目してもらって応援してくれる人がいる。それを考えると、それだけの期待や責任を意識しなければと思うんです。

 

-やることがいっぱいあると。

 

とりあえずリリースパーティーが終わったら、もつ酢飯ふたりの音源はしばらく開けて、その間にお互いのスキルやヒップホップに対する思いを上げていきたいです。今まで「曲作る」「出す」「バトルやる」みたいなわんこそばみたいな感じでやってきたので、落ち着いてお互いがどうなりたいかを考え直す時間かなって。2人とも就職があるし。

 

でもこれからも、自分たちが楽しくて、みんなも楽しんでもらえるようなことをどんどんやっていけたらうれしいです。関わってくれた人が笑顔になってくれればいいなって。……なんか企業理念みたいですね。

 

※MAZACON1収録の「頭文字M」は、彼女が初めて作った曲で、MCムノウ前夜のことを綴ったもの。つたないラップから彼女の内面がこぼれ出る内容になっていて、こちらも必聴。

ビートメーカー・ぽじぽじa.k.a DocManjuのインタビューは4月17~18日公開を予定しています。→公開しました。

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いつかは弱い女の子達の支えになりたい-「もつ酢飯」のトリックスターラッパー・ワッショイサンバの道のりと夢

ワッショイサンバという奇妙な名前の女の子は、誰にとってもトリックスター的な存在だろう。

 

一面に巨大なファラオの顔がプリントされたTシャツを着て大学生ラップ選手権予選に出場し、ベスト8に入って本戦に出場。その後は戦極MCBATTLE×池袋パルコ主催のROOFTOP MC BATTLEに出場。大阪の若手ラッパーRei©︎hiと対戦した際は「このキツネ30万 指輪50万 金歯30万 顔で勝てないから金額で勝ちに来た」「カワイイは正義じゃつまんねえから 不細工が見せてやるぜ このシンデレラストーリー」というパンチラインを産み出した。その後も女性のみ参加可能なCINDERELLA MCBATTLEへの本戦出場など、バトル界隈で名前を広めている。 

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一方で、仲間であり親友でもあるMCムノウとユニットもつ酢飯を立ち上げ、フッドであるMAZAIRECORDSから「もつ酢飯E.P」をリリース。ライブ出演を重ね、MC松島主催レーベルのトウキョウトガリネズミへ参加するなど、破竹の勢いで突き進むその姿は、まさに時に秩序をかき乱し新しい価値観や文化の再生をうながすトリックスターそのものだ。

 

エンターティナーであることを良しとしながら、時に理知的に、時に繊細に表現者としてのあり方を追求する彼女の、ラッパーとしての歴史をうかがった。

 

コンテンツとして面白くありたい 

-ワッショイサンバという名前はラップをやる前から存在したんだよね?

 

ワッショイサンバはもともとネタツイするためだけのツイッターアカウントだったんですよ。その理由もすごいしょっぱくて。当時つきあってた男の子のことを鍵付のアカウントで書くっていうしゃばいことをしてたんです。好きな人のことを誰も見てないところに書くっていう。

でも「このままじゃあたしはコンテンツとして終わるな」と思って。好きな人が私のことを見つけた時に「この人こんな面白いところがあるんだ」と思ってほしくて始めたのがワッショイサンバのアカウントなんです。

 

-面白すぎるでしょ!

 

でも、10日後にケンカして別れたんですけど。そこで「別にあたしはチヤホヤされたくて生きてるわけじゃないし、ここで一発コンテンツ性を高めて『面白いやつだな』と思ってもらえるようにならないと」と思って。

 

-ラップにはまる前はどんな音楽を聴いてましたか?

 

the pillowsTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTBLANKEY JET CITYナンバーガールゆらゆら帝国くるりSUPERCARフリッパーズ・ギター小沢健二ルースターズTHE COLLECTORSとか90年代のロキノン系が好きで、その流れでスチャダラパーも聴いてました。

 

-サンバちゃんの年齢からすると、かなり前の世代のバンドばかりだけど、どんなきっかけで聴くようになったんですか?

 

もともとBUMP OF CHICKENが好きだったんですが、BUMP OF CHICKENthe pillowsの15周年記念コンピに参加していたのをきっかけに原曲を聴いて「こっちの方がかっこいいじゃん」と思って。

ちょうどニコニコ動画YouTubeが台頭してきた頃なので、気になるバンドをひたすら掘って、少ないおこづかいをCD代やTSUTAYA代に回してって感じです。

 

-高校ではかけもちでバンドをやってたそうですが。

 

高校の軽音部がなかなか名門で。特にコンテストとかを意識して運営されてたわけではないんですが、毎年オリジナル曲を作って全国大会に出て、東京の大きな大会までは勝ち抜けるという。

 

うちの軽音部は中途半端にさせないためにバンドを組んでからじゃないと入部できないんです。でも、入ったら完全放任主義で。私は「オリジナル曲を作ろう」と最初に組んだバンドで言ってたんですが、他のメンバーはそこまでの熱意がなくて。

 

そんな時に、部長格のバンドが揉めてて、バンドにギターがいなくなっちゃったんです。大会は毎年部長格のバンドが出ていたから、「記録が途絶えるのもまずいし、バンドとしての形も成り立たせたいから」ってことで、当時ギターで一番モチベーションがあった私が抜擢されたんです。

 

だから高2の夏合宿とかすごくしんどくて。1時間もとのバンドでやったら次は部長のバンドで、メシ風呂以外はずっと練習でした。秋の大会は一番しんどいブロックだったんですが、何とか勝ち抜いて本戦出場して記録を途絶えさせずにすんだっていう。

ただ、大学の軽音サークルはレベルが低くて「やる意味なくね?」と思って。だから、今回は久々に音楽活動的なことがちゃんと出来てうれしいです。

 

前から曲やバンドをチェックしてたindiegrabに取り上げられたり、シンデレラMCバトルの出場者一覧でナタリーに名前が載ったり、高校生の時の自分が見たらめっちゃうらやましがるだろうな〜〜って。大学生活、最初の2年はほんとに暗黒時代だったんですが、なんとかトータルでこの4年間をプラスに持っていけたかなと。

 

-音楽以外に影響を受けたものは?

 

人と話すのがすごく好きです。うちは家族全体がすごく暗かった時期があったんです。だから、小学3年生くらいから「ごはんを食べる時には家族1人ずつが1日1個、面白いことを話す」というのをやってたんですよ。

 

夕飯を家族全員で揃って食べるから、毎日必ず1個面白いことを用意しなくちゃいけない。そこでその日一番面白くありたいと思って。面白さはオチのつけ方とか切り取り方、話し方にもかかってくる。人に面白がってもらえる話し方をしようというのはここから来てますね。

 

あとは絵を描くことですかね。完全にこれで人生狂ったと思ってるんで。あたしは自分の地元が大嫌いなんです。中学の時にいじめられてたことがあって、その時「こんなやつらにいじめられるなんて、ほんとしょうもない」と思って、いいところに行くためにめちゃめちゃ勉強したんです。

 

高校受験の時に滑り止めとして、出身の美術大学の付属を見つけて学校見学に行ったんです。そこで選抜作品として廊下に飾られている絵を見て、「同い年でこんなに上手い子がいる」ことに愕然として、2週間くらい勉強も絵も、何もできなくなってしまって。

 

母親が「そんなに行きたいならその付属に行ってもいいよ」と言ってくれたのに「いや、勉強が身を助けると思うし」とか返してたんですけど、中3のくせに。結局「やっぱり付属に行きたい!」ってなって画塾に行かずに自分で勉強して合格して、そこで趣味や考え方のあう友達が出来たのがターニングポイントになってます。

 

でも、大学で「自分は絵もうまくないし、言われたことをバカ真面目にこなすだけの人間で、これで食っていくのは無理だ」ということに気づいてしまって。当時つきあってた恋人とも別れちゃって、絵も描けなくて、家に帰って「大学辞めたい」って泣く日々が続いてたんです。

でも、うちの親は現実主義なので「辞めるならどういう手立てで食べていくかをばっちり決めてから」と言われて。その時のあたしって現実から逃げたいだけだから先のことは何も考えてなかったんですよ。

 

そのまま片道2時間かけて登校して、課題出しての繰り返しで、夏休み前くらいに「もうダメだ」ってなって……。最近やっと笑って話せるようになったんですけど、2年の7〜11月の記憶が全然ないんですよ。単位取れてたから学校には行ってたっぽいんですが。怖くて人にも聞けないし。

 

でも、11月に吉田って子と仲良くなった頃からの記憶はあるんです。吉田はアイドルがすごく好きなんですが、嵐の5大ドームツアーでどこに行けば一番効率よくファンサがもらえるかを研究発表していたんです。で、結論はドームの形や座席の傾斜を考えて「ナゴヤドームで黄色い文字の○○フォントでうちわを作ればファンサがもらいやすい」とか。

 

そういう一つ尖ったところを持ってる人があたしの永遠の憧れで。彼女が「かっこいいものは作れなくてもいいから、面白いものを作りたい」と話していて、それであたしはちゃんと気持ちのあきらめがついたんです。

「絵は一生描いていけるし、あせってデザイナーにならなくてもいい。あたしはこの人みたいになりたい」。それが大学で最初に出来た友達だったんです。

 

それから、「吉田みたいなパワフルで面白い人が友達なんだから、あたしは絶対面白くなれるんだ」って思って、楽しくふるまうようにしたら、友達ができるようになって。やっぱり、今まで受け身だった自分が悪かったなと。

 

偶然の出会いからはじまった超高速ラッパーロード

大学3年の時は普通に就職しようと切り替えてたから、なるべく美術から離れた授業を選択しようと思って、プレゼンテーションの授業を取ったんです。

 

-プレゼンテーション?

 

美大は作ったもののコンセプトを教授に伝えなくてはいけないので、それを鍛える授業です。教室に行くとスケッチブックと赤と黒のマーカーを渡されて、10〜15分くらいで考えをまとめてお題についてのプレゼンをしなくちゃいけない。完全に大喜利なんですよ。

 

就活は事前にインターン参加したり、エントリーシート死ぬほど書いたりして、わりとサクッと今のところに決まりました。自己PRの長所と短所をいうところあるじゃないですか。あれ、事前に自分の悪いところを全部リストアップして、自己否定するだけしてから就活を始めたんです。自分の長所だけを肯定すると、いざ悪いところを突かれた時にメンタルがもたないから。もともとそんなにプラス思考の人間ではないので。

 

で、就活も早めに終わったし時間が余ったところに、知り合いから「女の子だけのラップ練習会を企画してるから」ってサクラで誘われて、そこで初めてラップをやったんです。練習会ではサイファーとバトルをやったんですが、その日のトーナメントでガーッて勝ち上がって。

そこで当日の運営の手伝いをしていた、ビートメーカーのぽじぽじa.k.a DocManjuさんとヘルガa.k.a Jabvaraさんに、「うちでチンポジムっていう練習会をやってるから来てみない?」と言われて。そこから、今のフッドのMAZAI RECORDSに参加するようになりました。

 

-バトルに出た動機ときっかけは?

 

これ、超不純なんですよ。大学生ラップ選手権の予選が初めてなんですが、本戦のショーケースが豪華メンバーで、「予選勝ったらタダでライブが観られるじゃん」って。その頃にチンポジムでやってたバトルでも優勝してたし、せっかくだから一度外でもやってみたいなと思って。予選はベスト8まで勝ち上がって、その日のキャラ枠……MVPみたいなのに選ばれて9月の本戦に出場したんです。

 

そこから、10月にいきなり戦極MCBATTLEと池袋パルコ主催のファッションチェックMCBATTLEに出ることになって、11月には自分の楽曲を作って、12月にMAZAI RECORDSのコンピが出て。去年の下半期はほんとにタイミングがよかったです。

 

-シンデレラMCバトルという女の子だけのバトルに出ようと思ったのはどうして?

 

企画の段階で運営のMC正社員さんから「オーディションに出てくれませんか」という電話が来ていて、「いいですよ、暇だし」みたいな。

 

シンデレラMCバトルの予選動画ヒールっぽくてすごく好きなんすよ。あれは理想のワッショイサンバ像にうまく近づけられたんじゃないかなと。

 

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こういうことを言うとキャラ作ってるとか言われるんですが、普段の自分もワッショイサンバも完全にシームレスなんですよ。ワッショイサンバだけでなく、普段の自分に対してだってパブリックイメージって求められるじゃないですか。「こういう風に見られたい自分」を、自分で作っていくしかない。だから、ワッショイサンバならどうするか。あるいは普段のあたしならどうするかは常に意識していますね。

 

-シンデレラMCバトルはAbemaTVでの配信も含め、各メディアからの注目度が高かったけど、自分らしさを出せずに一回戦敗退という結果でした。あれ前後で何か変わったことはありますか?

 

あたしの中では、あの負けで第一部完という感じでした。大会前日にあたしとムノウちゃんと、普段からお世話になってるラッパーの方々で、スタジオに入ってバトルの練習をしてたんです。負けてからVUENOSの階段をあがったら応援に来てくれたその方に会って、顔見たら涙が止まらなくなっちゃって……。

そしたら「そんなに謝らなくていいから。きみらほんとにもったいなかったし、伸びるからがんばろう」って声をかけてくれてうれしさと不甲斐なさがありました。

 

孤独な戦いだと思っていたけど、いろんな人に支えられていたなって。マイクを持ったら結局一人なんですけど、そういうことか~って。

 

-スポーツ選手がよく言うやつだね。

 

disとコンプレックスとアイデンティティ

-もつ酢飯でEPを作ろうと思ったのはいつ頃、どういうきっかけで?

 

11月にまずmeshi-agareという楽曲を作って。あれは本当は12月に出すMAZAI RECORDSのコンピレーションに収録する予定だったんです。でも、その頃私バトルに出る予定もないし、今出さないと飽きられちゃうと思って、ぽじさんにお願いして先にサウンドクラウドで公開してもらったんです。

今って情報の賞味期限がすごく短くなってるから、私みたいな無名の人はすぐに新しいことをしないと飽きられちゃうんすよ。だから、何かリアクションを起こす時は鮮度をすごく意識してますね。

ワッショイサンバ「meshi-agare」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

その頃ムノウちゃんもコンピに向けて作ってたんですけど、全然テーマが決まらなくて。そしたらぽじさんが、「ムノウちゃんはテーマを決めるのが得意じゃないから、サンバちゃんが牽引してあげたほうがいいよ」というので、一緒に作り始めて。もつ酢飯のきっかけはそれですね。

 

時期は12月の半ばくらい。「どういうコンセプトで何曲やるか」は固まってたので、そこから一気に作った感じです。

 

G.I.R.Lを作った時に「ムノウちゃんラップうまい!」と思って。それならあたし一人でやるよりムノウちゃんがいた方が曲として成立するなって。あとは、単純に作業量が半分になるんですよ。

 

-ムノウちゃんはよく「音楽何もやってないし」というけど、なぜかラップがうまいんだよね。

 

何もやってなかったからこそ、素直に落とし込めるというか。でも、ムノウちゃんにラップがうまいっていうとすごく謙遜するんですよね。あたしはそれも嫌で、もっと胸張ってほしい。それであたしはあたしでひがんでないで練習しつつ、自分のいいところを伸ばしていかなくちゃって。もつ酢飯のテーマを作ってたくらいの頃に、やっとその考えにたどり着きましたね。

 

負けて二人で落ち込んでたけど、「EP作って、もっとうまくなって、その延長でバトルも勝てるようにならなきゃフッドへの恩返しにならない!」と話していて。

 

-もつ酢飯のテーマは軽快な自己紹介曲で、二人の性格がよく出てるね。

 

お互いのリリックの作り方の違いが如実に出たと思ってます。ムノウちゃんはラップの乗せ方丁寧ですよね。絶対あたしに出来ないことをやってくるから、すげーと思って。

この曲のあたしのリリック、性格出ててすごい好きなんです。「当たると噂のラッキーパンチ」というのは、ラッキーパンチが当たり続けてここまで来たと思ってるので。その後の「メンタルはセンチよりもインチ 規格外で2倍イイ」は、1インチが2センチちょいあるから、日本では規格外だけど、2倍あっていい、心は広く持とうという自戒です。 

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

ほかに性格が出てるのは「たくさんできる逆逆上がり」というところで、これはパッと見の文字の面白さで作ってます。で、「逆逆上がりって何だろう?前回りじゃん!逆上がりはできないけど、前回りはめっちゃできるよ!」という風に、連想ゲーム的に言葉をつなげて作っていくんですよ。

 

G.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)、なんかはよく出来たリリックと、そうでないところの差が激しくて恥ずかしいんですけど、「キャンキャンJJ よく見とけ 右にならえの独自路線」も、こういう赤文字系ファッションの女の子たちが、突然自分探しを始めるくせに、実は服装とかお手本のあるものじゃんというのを皮肉ってて。

 

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

-G.I.R.L.、G.I.R.L. part2、1on1は女性dis曲だけど、この辺は実話も入ってるの?

 

1on1の「下着はもちろん上下でおそろ 見せる相手もいないのに?」は、大学のやたらマウンティング取ってくる同級生の言葉です。彼氏のいない子が「下着は上下で揃えてる」って言ったら、その子が「見せる相手もいないのに?」って言って気まずくなったことがあって、それを「何それ面白い」と思って書きました。

あとは、「4℃とかハンパでやだわ」もツイッターの一部で流行ってたし、本命彼氏もキュレーションサイトで見た言葉ですね。好きな子を恋人にするから彼氏なのに、本命とかないだろって……。

 

1on1は、女の会話はMCバトルなんだよっていうので8小節×2本なんです。マウント取る人って結局1.5軍の人が多いから、低めの高みだし、猿山の大将でしかないなって。「一番大事なのはアイデンティティーだ」というのは私が常に思ってることですね。

 

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-これ、面白いのがEPだとdis曲の後にファッションの黒歴史を描いたブラック・リフレクションが入るんだよね。

 

ブラック・リフレクションは、ムノウちゃんが書いた最初の8小節で服装の黒歴史。次の8小節で「あれは黒歴史」ってバースが入って、気付きパートに入るんですよ。これのおかげでこの曲のコンセプトがわかるようになってるし、それまでの曲でずっとサンバ、ムノウという順番だったバースが逆になるから聴きやすくなる。

でも、あたしのリリックは16小節全部、自分の化粧の黒歴史に気付かないままなんすよ。このリリックは完全にあたしのコンプレックスから来てますね。

 

もつ酢飯「ブラック・リフレクション」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

1on1の後はinterludeに入るんですが、海外の下手なバンドの音のサンプリングをして作ってるから、へにゃへにゃ感があって、この流れすごく好きです。

 

チョコレートマカロンは、if世界の話です。「もつ酢飯」は、2人の好きな食べ物を「せーの」で言って出来た名前なんですが、「タイミングさえ合えばチョコレートマカロンになってたかもしれないね」って話をしていて。「じゃあ、あたしらがチョコレートマカロンだった時の曲を作ろう」という。

最初はムノウちゃんに併せてあたしもチョコレートとかお砂糖とか書いてたんですけど、似たようなワードしか出てこないし、自分に出来る事やろうと思って。

 

-ホワイト・リザレクションはお互いが自分の暗い面を吐露する、ある意味で一番平凡な言葉遣いをしている曲だね。

 

これは地獄でしたね。内面と外面のコンプレックスが対になるような曲をやろうっていのはEP制作の段階から考えていたんですが、最初は自分のキャラを崩さずに弱い部分を見せるかというのをどうすればいいのかわかんなかったんです。

 

でも、シンデレラMCバトルで負けて号泣したときに、「あたしはもっと自由に感情を表現していいんだ」って気付いて。ラストの4小節「今日も自分だけ ステージの下 カーテンコール 間に合わなかった」も、心情がもろに出てます。

 

一回戦終わった時から「自分はこの物語にいてもいなくても変わらない人なんじゃないかな」ってずっと思ってて。ほかの女の子はストーリーや意味を持っていたのに、あの日のあたしは自分だけ観客だったんですよ。

the pillowsのMY FOOTという曲に「どこに居てもミスキャスト 独り言が増えたロストマン 誘われないのに断るセリフを覚えて」というのがあって、それが私の中ですごく衝撃的な歌詞だったんですよ。「ミスキャストだとしたら、この舞台は誰のためにあるんだろう」という第3者視点なんです。「誰のため?この 醒めない夢」もthe pillowsを意識してますね。こういう歌詞を入れておくと、絶対引っかかってくれる人がいると思って。……国語のテストみたいでやだな、あたしのリリック。

 

たぶん、高校生のあたしがこの曲を聴いたら、「あ、わかる」っていう嫌な共感の仕方をするんだろうなって。

 

ムノウちゃんはこの曲で結構前向きなことを描いてるじゃないですか。素直で良い子っていうのがよく出ていて。でも、あたしはここで後ろ向きなことしか書いてなくて、普段との逆転現象が起きてるんです。

 

弱い自分だからこそ作れた作品だから

いつかは自分と同じくらいの弱さを持ってる女の子達の支えになりたいんですよ。恵まれてる子なら別にこんなこと思う必要ないんですけど、どこか1つや2つ、あるいは全部欠けてる子が何かに助けを求めてるという時に救いになりたいです。あたしはたまたま音楽と絵があって、表現が支えになってきて、ここまでこれたから。

 

女の子って世間から求められる像がすごくいっぱいあるじゃないですか。でも、「そうじゃなくてもいいんだよ、21世紀なんだからもっと全然自由でいいじゃない」って。

 

女子校出身で、「その時できる子ができる事をやる」って環境にいたから、「男は力仕事、女はお裁縫」みたいな世間の枠にとらわれないで勝手に育ってきました。

 

だからこそ自分の素敵なところをもっとのばしてほしい。卑屈になったらなったで楽しくやろうぜってのがすっごいありますね。この間、ぎぎぎのでにろうくんと「表現は弱い物の為の手段だから」という話をお互いにして。たしかにこれは弱い自分だからこそ書けたリリックだから。

 

表現者としての目標がちゃんと決まっているんだね。EPを出していったん落ち着いたけれど、今後の具体的な予定は。

 

就職があるのでわかんないんですけど、ペースは落とさないで行きたいと思いますね。あと、今回はぽじさんを私らにつきっきりにさせてしまったので、もつ酢飯としての制作はお休みして。でも曲を作ることはやめないで、ほかのビートメーカーの人ともやってみたい。活動ペースはなるべく崩さずに、年末までにもう一回なにか出したいです!

 

※本インタビュー収録後に、もつ酢飯のトウキョウトガリネズミへの参加もアナウンスされました。今後もオンリーワン・エンターテイナーとして突き進むワッショイサンバおよびもつ酢飯に注目!

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また、相方・MCムノウのインタビューは4月16日、ビートメーカー・ぽじぽじa.k.a DocManjuのインタビューは4月18日公開を予定しています。

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戦極ダブルヘッダー(戦極女帝杯のみ)へ、MAZAIRECORDS(ワッショイサンバ、無能、MANOY)メンバーの応援に行ってきました

女性のみエントリー可能な戦極女帝杯と超戦極U-22 選抜16人第三次予選のダブルヘッダー戦極ダブルヘッダ-」

箱は洞窟感のある渋谷family。チケットは100人限定ということでしたが、100だとパンパンの箱ですね。出足遅れて15時半のライブにはなんとか間に合う時間に会場着。

ライブ一人目は大阪のまゆちゃむ

お菓子作り好きらしく、途中でクッキー配ったりしていて、キャラクターで客を巻きこむ様子がいい意味で地下アイドル感がある。あ、ヒップホップの人、けっこうアイドルdisるけど、私的にはアイドルっぽいはリスペクトです。アイドルよりいいライブしてから言えよ、ラッパー! ただ、その分曲よりキャラが印象に残ってしまうもったいなさも。このへんはバランス難しそう。

common girls by まゆちゃむ。 | ちゃむ。 まゆ | Free Listening on SoundCloud


Airis(ayakeru&詩奏)
バトルにも参加するayakeruさんの男女二人組ユニット。ふたりともいい声でいい歌なのでそれだけで強い。やっぱり楽器として強い人は目立つなあ。
「27歳でけっこう年齢いってるんですけど、2年くらい前に初めてラップやって。やってみたいならやってみたらいいと思います」というayakeruさんのMCから、詩奏さんの「楽しいことやっていきたいと言うふたりが作ったタイムカプセルという曲をやりたいと思います」。いいライブでした。

タイムカプセル / Airis (ayakeru×詩奏) by 詩奏(4tsunoha , Airis) | Free Listening on SoundCloud

 

LesPass

男の子3人組。実はタイダルトガリネズミで見てるのだけど、改めて見るとお互いを引き立てあうチームワークがすばらしい、とても誠実なライブ。「俺らのこと見た目だけでアイドルとか言うやついるけど、俺はバトルであれこれ言ってるやつよりよっぽどヒップホップだと思ってるんで」というMCから、NilNicoの保育士兼ラッパーとしての日常を歌う曲。

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ライブ終わってMC正社員さんのあいさつ。

「ライブも三者三様で、すごいよかったと思います。みんなCDも買ってかえってください。それがみんなの活力になります」

「日本のヒップホップは女性が少なかった!男女率が半々になれば、もっともっと盛り上がると思います。
最初の頃の戦国MCバトルはお客さんゼロでした。その時のお客さんは伝説を見てると思うんです。今日のお客さんは伝説のメンバーだと思うんで、お客さんもバッチリ反応してください」

一回戦、MAZAIRECORDSからはMANOY、ワッショイサンバ、無能が参加。以後、印象に残った場面を。

ayakeru vs MANOY

MANOYさん「私の先祖は城主だったらしい だから上に立つ人間」という攻めから、後攻ayakeruの「どこが女帝?華がない」にうまく返せず敗退。MANOYさん、音源では言葉にとても凝る人なんだけど、即興で罵倒みたいなのは強くないんですよね。でも、それをわかってて出ているのは何か覚悟があってのことだと思うのでがんばってほしい。

Yasco vs MCビキニ

ふたりともほぼキャラが出来あがってるから、ストーリーが作りやすい。
Yascoさんの「20代で80万30代で14万。これ何かわかる?風俗嬢の月収」面白かったけれど、「私だってやってるよ確定申告 個人事業主」などなどで返してMCビキニの勝ち。

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まゆちゃむ vs えるも

まゆちゃむの「ブスがブスにブス言うな〜〜」がインパクト大。そう、スキルと経験値が低いMCだと見た目と年齢のdisが増える。飄々とうまく返したまゆちゃむの勝ち。

ワッショイサンバ vs 千
色物ラッパーというdisに、
「色ものいうけどカラフルな世界の方が楽しいな」
「お前の名前は千だったな じゃあ私は湯婆婆だ お前に千はもったいない」

という返し。最高にワッショイサンバらしい勝ち方で上がりました。フロアからも「これがワッショイサンバだよ」という声が出ていたのがすごかった。

AKANE vs 無能

無能ちゃんが「才能がないやつ」的な名前disに

「足りない才能は努力と勝利で補ってきたよ」
「AIZENみたいに立つ頂点に」で勝利。

1回戦終わって正社員さんの言葉。

「シンデレラMCバトルに関してはみんなにどう見られてるのかが不安です。でも、俺はほんとにバトルやヒップホップを盛り上げていきたいと思ってて」

「女性が少ないのは日本だけだから!やってたらすごいかっこいい人が出てくるかもしれないじゃん!」

いいこと言う!しかし、それはそれとしてプラチナムはちょっとな……!

ぴのこ
バトル1回戦勝利を収めてぴのこさんのブルージーなライブ。DJやトラックメーカーの名前を丁寧に紹介する姿に実直そうなキャラクターが出てる。ただ、被せが大きすぎる曲があるのがちょっともったいない……。

ぴのこ pinoko | Free Listening on SoundCloud

ASuKa a.k.a広崎式部
マザレコメンバーと話してたのであんまりちゃんと聞けなかったけど、若手のライブにありがちなある種の発表会っぽさがなくてちゃんと歌手。口の使い方も明らかに違う。服装も含めて急にジャズバーみたいな空気に。いやあ聴き応えありました。

sickboo▽広崎式部 | sickboo (I WANT FRESH mind!!!plz!!!) | Free Listening on SoundCloud

FUZIKO
高速ラップでスタート。ただただかっこいい。身体の使い方も運動神経よさそうで、生き物としての強さを感じるライブ。リリックの求道者的な内容と突き刺すような切れのいいラップがクール!
「究極の究極を収録したシナリオというアルバムがあります。3年前人間をやめたいときに作ったアルバムなので、人間やめたい人は買ってください」というお茶目なのかマジなのかわからないMCも魅力。

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まゆちゃむ vs CESIA

まゆちゃむの「フィメールみんなに言っとくバトルは意気込み大会じゃねえんだよ」が痛快。そうそう、スキルのない子ほど「マイク持ってヒップホップをやってる」「何々乗り越えてここに立ってる」が多くて聞いてる方が飽きてしまう。

ワッショイサンバ vs 加藤真弓

サンバちゃん、勝ったと思ったけど延長に持ち込まれて敗退。終わった後の無表情な顔に悔しさが滲んでました。しかし、全体見てて思ったけど、ギャグラッパーとか色物ってdisとして通用するんだな……。私と芸能に対する世界観が違うな。

無能 vs Roary Mai

「お前は女子会にいれてあげない 場の空気乱しそう」というバースに「女子会でぐちぐちやりたいなら帰りな これはラップの場」で、無能ちゃん勝利。しかし、Roary Maiさん、なぜあんなヒップホップ的に返しやすいdisをしたのか謎です。

ベスト8から8小節3本に。

しあ vs 無能
無能ちゃんの高速ビートアプローチからスタート。しかし相手もビートに乗った高速ラップで返す。おそらく動画があがると思うので詳細省きますが、アンサーの返し方も含めて聞き応えのある内容でした。
終わった後に、「いやあ、ほんと全然心配いらないですね(スキル面で)」と正社員さんが言ったのもよくわかる。無能ちゃんが負けてしまって残念でしたが、バトル中に「楽しい」という言葉が出るのもよくわかる良い試合でした。
カクニケンスケさんが敗因分析してて、それも面白かったけど、秘宝の虎の巻っぽいので省略。

決勝はまゆちゃむ vs みなみ

勝ち上がる中で自信をつけ、場の空気を味方につけたまゆちゃむ圧勝。みなみさんもやるごとに巧くなってる感じでよかった。

その後は超戦極U-22 選抜でしたが、作業残ってるので帰宅。お客さん3割くらい女の子で、北は秋田、南は福岡からラッパーが集まって、クオリティ的にはまだまだ伝説という感じではないけれど、過程のひとつとしては意味があるイベントだと思いました。

サンバちゃん、MANOYさん、無能ちゃん、お疲れ様でした!

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「すげー」と「うーん」が半々、BADHOPフリーワンマンライブ「IRREGULAR BOUND」@川崎クラブチッタ

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「すげー」と「うーん」が入り混じる感じでした。BADHOPワンマンライブ。や、もう4か月も前のことなんですけど、アーカイブとしてね。

 

BADHOPが川崎クラブチッタでワンマンライブって物語がめちゃくちゃ強いじゃないですか。ヤクザか職人の2択しか経済的に潤う方法がないと言われる川崎の貧困家庭の不良少年たち。音楽を通じてそのよどみから抜け出そうとしている彼らが、地域でもっとも有名で大きな箱でワンマンライブをやる。しかも無料。

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BADHOPはこの時期、ALLDAYというCDを、アパレルショップや懇意にしているCDショップに置いてもらうという方法で無料配布していて、これはとてもうまいと思いました。自分たちの日ごろの生活から考えて、「どういう人に手に取ってもらいたいか」をちゃんと目に見える形で示す方法はとても戦略的だし、通販はあったものの、大手販売店には渡さず、限られた店舗で配布するというのもワクワク感があってよい。(ドミノピザに怒られたらしく、配布終了してしまいましたが……)

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フリー配布やフリーワンマンという方法は、もちろん広く自分たちの音楽に触れてほしいからだろうけど、やっぱりかつての貧しい仲間や子供たちのことも頭にあるんじゃないかと思います。

 

遊びに行くお金もなく、自分たちの生まれ育った町から出ないままの少年少女たちが住む川崎。そして、給食の時間にBADHOPが流れるという町、川崎。(まあ、川崎は大きいので、ここで言う川崎とまったく違う川崎の方が広いのですが……)

 

一足先に大阪で行われた無料ワンマンライブがパンパンだったと聞き、ちょっとドキドキした気分で、当日はツイッターで会場の様子を検索しながら川崎に向かいました。20時開始のライブに19時ごろ着。

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もうスルスル入れる状態になっていて、もっと混雑するかなと思っていたのでちょっと拍子抜け。入り口前に設置された喫煙所で大勢の若者がタバコを吸っていました。中に入ると迷彩のヤンキーとチューブトップのギャルがぞろぞろと。おお、すごいHIPHOPっぽい……。

 

客入りはこの時点で8割くらいで、最終的には1000人くらい入っていたはず。前方に人がみっちりつまっているのが遠目からでもわかる状況。ステージ上のDJがFLYBOYRECORDSやSCARSの曲を流し、「BADHOPの地元でのワンマンーーー!」と叫ぶけれど、あんまり盛り上がっていなくてちょっと気の毒。アイドル現場だったら関係ない人でもとりあえず「ウェーイ」っていうのに冷たいな。DJはDJCHARI、DJTATSUKI、DJTYKOHの3人だったらしいけど、どの時間のDJが誰なのかはわかりませんでした。

 

DJタイムの終わりにKOWICHIが登場して「俺が来なきゃはじまらねーだろ!」と叫ぶ。

 

BADHOP登場の場面はあまり記憶になくて、手元のiPhoneのメモにも何も書いていないんだけど、前方で一斉に携帯が掲げられたのはうっすら覚えています。

 

ステージの上の青年たちの一挙一動にワーッ!キャー!という声が飛び、フラッシュがたかれます。最後方で見ていた私の隣には、高校生くらいの男の子がいて、興奮を抑えきれないというように曲に合わせて身体を動かしている。

BADHOPのMCはとても率直で、「ずっと酒と女と金しかしてないけど、それが俺たちなんで」「東京に負けない川崎の根性見せたい」という言葉に育った町への葛藤と愛情がのぞく。

 

「街から逃げ出したいんじゃなくて、このクソな現状から抜け出したいんですよね」という前置きから、「川崎のイメージ悪くなるかもしんないけど。大阪でもやるか迷ったんですけど、やります」からPAIN AWAY。

わかんねえ 人間どうあるべきか
包丁の刺し傷タトゥーで消した

ノックの音でかくなる玄関
開けたら数人のヤクザ
土足で回すカメラ お袋は土下座

など、痛々しいラインの続くこの曲を歌い上げる2WIN。「ああ、まるで映画のようだ」と思いながら、中央で叫ぶYZERRを見つめる。

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そして、最後のMCで、「正直俺が流行らしたよ。この街にヒップホップ」というT-Pablow。


「俺はバトルで目上の人に死ねとか言ってるやつとは違うよ。俺たちは自分の言葉に責任持ってるから」という自身の矜持を語ってからのLifeStyleで終演。

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こうやって書くと大団円の流れだったのだけど、1観客として率直に言うと、被せの大きさやフロアのもてあまし方が終始気になって、ライブを楽しむというより若者を観察するという目線に立ってしまいました。

 

FIRE BURNに「Fire Burn アイドル共逃げ出しな」ってラインあるけど、歌いながら踊るアイドルでも、少なくともチッタでやれる子はあんなに被せ大きくないよ。楽しそうに真剣にやっているけどまだ客のことまで見えていない感じで、フロア前方と後方のテンションの差も大きかった。

 

そして、いわゆる音楽メディアがほとんど取材に来ていなかったことや、結局最後まで満員にならなかったことにちょっとショックを受けました。動画はBlack FileTVが公開していますが、把握している限りでは、磯部涼AERAへの寄稿以外にライブのレポートを見ていない。ローカル局っぽいTVのカメラが回っていたようなのですが、そちらはまだ確認できていません。

 

まだまだ音楽としての注目度は低いのだなという実感と、数値化できないけれど何となく感じてしまう少子化の陰。まさしく凱旋というべき日だったのですが、一方で今後の彼らの道のりの長さを思わされるライブでした。

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BORN TO WIN

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ルポ 川崎(かわさき)

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