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BELLRING少女ハートワンマンライブ「Bad Rich Grumpy Head」@恵比寿LIQUIDROOM

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 開ヌュで観たベルハーがけっこうよかったので、ワンマンに行ってみた。

 2010年代の地下アイドルシーンで抜群の存在感を誇っていたBELLRING少女ハート

 告知でわざわざ「崩壊」という表現を使って解散を選んだあと、There there theres、NILKLYと共通した意匠のグループを作っていたが、いつの間にかどれも終わっていた。

 では音楽性の違うMIGMA SHELTERやグーグールルに集中するのかと思っていたら、なんとなくそういう感じでもなく、いきなりBELLRING少女ハート'22という期間限定ユニットが作られ、それが終わったと思ったら、新しいメンバーを迎えてベルハーとしての活動を再開していた。

 いくつもグループを作ったのに継続させられず、結局ベルハーを再開させる展開は正直どうかという思いがあった。

 また、MIGMA SHELTERのクラウドファンディング不履行でわかりやすく証明できるが、Aqbirecの運営のいい加減さは評判だった。ベルハー、そして後継グループが動員数で伸び悩んだ理由のひとつに、間違いなく運営の不手際があるだろう。メンバーや関わったスタッフにも、いろいろと葛藤があっただろうと察せられる。

 こうした経緯を踏まえての再開は、アーティストとしての田中紘治のピークがベルハーだったと証明するようなものではないかと感じ、あまり歓迎できなかった。

 とはいえベルハーの『UNDO THE UNION』はアイドルのアルバムとしては今のところ1、2を争うくらい好きなので、1月の開ヌュでのパフォーマンスに惹かれて足を運んでみた。

 1万円チケットをS席、千円チケットをA席で売るという売り方で、満員に近い入りだった。

 ひとつ驚いたのは、リキッドルーム後方に用意された関係者席に、メンバーの祖父母であろう方が多数座っていたことだった。

 私が知らないだけで赤坂BLITZZepp Tokyoにもいらしたのかもしれないが、ベルハーにはアングラなイメージがあったので、ちょっとびっくりしてしまった。下手に女性専用席も設けられていて、けっこう埋まっていた。

 話がそれるが、女性専用席を見るたびに、2014年くらいのBiSのことを思い出す。女性専用席設置の話が話題に上がったが、なんとなく「そういうの違うんで」みたいな雰囲気になり、実現しなかった。女の子でもモッシュ・ダイブ・リフトに参加する現場だったので、「専用席なんて作らなくたっていい。むしろ、BiS好きならそんなの欲しがっちゃダメでしょ」みたいな空気があった。当時はそんなもんかと思っていたけど、今思い出すとえらく内輪でマッチョな感覚だし、ああいう部分が売れなかった理由のひとつなのだろうと思って苦い気分になるのだった。

 ほどほどに観えて、モッシュに巻き込まれない場所と思い、階段に立つ。

 ライブはほぼ時間通りにスタート。

 最初は少し遠巻きに見ていたが、『UNDO』からの『Manic Panic』で気持ちが乗って、そのあとは気持ちよく揺れながら楽しむことができた。

 松隈ケンタ作曲の『UNDO』はベルハーの中でも特に感傷的で、もともとかなり好きな曲だけど、そのあとにロマンチック、哀愁、Rock 'n' Rollといった言葉を、言葉遊びのネタとして使う『Manic Panic』が入る構成が面白かったし、なんだか前向きな感じがあった。

 メモがないので記憶があいまいだけど、『Manic Panic』でいったん休憩で、茶目っ気のある曲で一息ついた感覚があった気がする。

 アンコール前の『憂鬱のグロリア』、『asthma』、『c.a.n.d.y』の流れもそうなのだけど、現体制のベルハーには茶化しの感覚がうまくはまっていて、それが一時期のベルハーの持っていた切実さや刹那的な空気を和らげている。

 殺気や狂気という形容を携えたかつてのベルハーの空気は消えているけれど、それで楽曲の良さが損なわれているかというとそういうわけでもない。むしろ楽曲の持つ幼児性の強調から来る奇妙な哀愁をうまく表現できていて、楽しくまっすぐ聴けた。

 あんまりそういうことを他と比較しないので知らなかったけど、Aqbiのオタクは昔から騒がしいと言われがちだったらしい。でも、それは楽曲の特性もあったのではないだろうか。曲そのものに、聴いていると子どもっぽい気分になってしまうところと、暴力的な気分になってしまうところがある。コロナが5類移行してだいぶ経ってからのライブということで、オタクもリフトで上がったり、『asthma』ではしゃいだりしていて景気が良かった。

 現体制からチアガールの使うポンポンを取り入れた『BEYOND』では、所以のあった人々がバックダンサーとして踊ってくれて、皆でポーズを決める場面はクジャクが羽を開いた瞬間のようなめでたさがあった。また機会があったら観にいきたい。

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 この向日性のある安定感は、プロデュース以外の運営がエクストロメに移ったこともあるのだろうか。以前『豪の部屋』の朝倉みずほ登場回で、ブラジルが田中さんに「パワハラです」と怒った話が紹介されていたし、あの頃が再現されることはないのだろうなとも思った。(パワハラはよくないけど、あの頃のステージも好きです!) 

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