ホンのつまみぐい

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いつかは弱い女の子達の支えになりたい-「もつ酢飯」のトリックスターラッパー・ワッショイサンバの道のりと夢

ワッショイサンバという奇妙な名前の女の子は、誰にとってもトリックスター的な存在だろう。

 

一面に巨大なファラオの顔がプリントされたTシャツを着て大学生ラップ選手権予選に出場し、ベスト8に入って本戦に出場。その後は戦極MCBATTLE×池袋パルコ主催のROOFTOP MC BATTLEに出場。大阪の若手ラッパーRei©︎hiと対戦した際は「このキツネ30万 指輪50万 金歯30万 顔で勝てないから金額で勝ちに来た」「カワイイは正義じゃつまんねえから 不細工が見せてやるぜ このシンデレラストーリー」というパンチラインを産み出した。その後も女性のみ参加可能なCINDERELLA MCBATTLEへの本戦出場など、バトル界隈で名前を広めている。 

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一方で、仲間であり親友でもあるMCムノウとユニットもつ酢飯を立ち上げ、フッドであるMAZAIRECORDSから「もつ酢飯E.P」をリリース。ライブ出演を重ね、MC松島主催レーベルのトウキョウトガリネズミへ参加するなど、破竹の勢いで突き進むその姿は、まさに時に秩序をかき乱し新しい価値観や文化の再生をうながすトリックスターそのものだ。

 

エンターティナーであることを良しとしながら、時に理知的に、時に繊細に表現者としてのあり方を追求する彼女の、ラッパーとしての歴史をうかがった。

 

コンテンツとして面白くありたい 

-ワッショイサンバという名前はラップをやる前から存在したんだよね?

 

ワッショイサンバはもともとネタツイするためだけのツイッターアカウントだったんですよ。その理由もすごいしょっぱくて。当時つきあってた男の子のことを鍵付のアカウントで書くっていうしゃばいことをしてたんです。好きな人のことを誰も見てないところに書くっていう。

でも「このままじゃあたしはコンテンツとして終わるな」と思って。好きな人が私のことを見つけた時に「この人こんな面白いところがあるんだ」と思ってほしくて始めたのがワッショイサンバのアカウントなんです。

 

-面白すぎるでしょ!

 

でも、10日後にケンカして別れたんですけど。そこで「別にあたしはチヤホヤされたくて生きてるわけじゃないし、ここで一発コンテンツ性を高めて『面白いやつだな』と思ってもらえるようにならないと」と思って。

 

-ラップにはまる前はどんな音楽を聴いてましたか?

 

the pillowsTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTBLANKEY JET CITYナンバーガールゆらゆら帝国くるりSUPERCARフリッパーズ・ギター小沢健二ルースターズTHE COLLECTORSとか90年代のロキノン系が好きで、その流れでスチャダラパーも聴いてました。

 

-サンバちゃんの年齢からすると、かなり前の世代のバンドばかりだけど、どんなきっかけで聴くようになったんですか?

 

もともとBUMP OF CHICKENが好きだったんですが、BUMP OF CHICKENthe pillowsの15周年記念コンピに参加していたのをきっかけに原曲を聴いて「こっちの方がかっこいいじゃん」と思って。

ちょうどニコニコ動画YouTubeが台頭してきた頃なので、気になるバンドをひたすら掘って、少ないおこづかいをCD代やTSUTAYA代に回してって感じです。

 

-高校ではかけもちでバンドをやってたそうですが。

 

高校の軽音部がなかなか名門で。特にコンテストとかを意識して運営されてたわけではないんですが、毎年オリジナル曲を作って全国大会に出て、東京の大きな大会までは勝ち抜けるという。

 

うちの軽音部は中途半端にさせないためにバンドを組んでからじゃないと入部できないんです。でも、入ったら完全放任主義で。私は「オリジナル曲を作ろう」と最初に組んだバンドで言ってたんですが、他のメンバーはそこまでの熱意がなくて。

 

そんな時に、部長格のバンドが揉めてて、バンドにギターがいなくなっちゃったんです。大会は毎年部長格のバンドが出ていたから、「記録が途絶えるのもまずいし、バンドとしての形も成り立たせたいから」ってことで、当時ギターで一番モチベーションがあった私が抜擢されたんです。

 

だから高2の夏合宿とかすごくしんどくて。1時間もとのバンドでやったら次は部長のバンドで、メシ風呂以外はずっと練習でした。秋の大会は一番しんどいブロックだったんですが、何とか勝ち抜いて本戦出場して記録を途絶えさせずにすんだっていう。

ただ、大学の軽音サークルはレベルが低くて「やる意味なくね?」と思って。だから、今回は久々に音楽活動的なことがちゃんと出来てうれしいです。

 

前から曲やバンドをチェックしてたindiegrabに取り上げられたり、シンデレラMCバトルの出場者一覧でナタリーに名前が載ったり、高校生の時の自分が見たらめっちゃうらやましがるだろうな〜〜って。大学生活、最初の2年はほんとに暗黒時代だったんですが、なんとかトータルでこの4年間をプラスに持っていけたかなと。

 

-音楽以外に影響を受けたものは?

 

人と話すのがすごく好きです。うちは家族全体がすごく暗かった時期があったんです。だから、小学3年生くらいから「ごはんを食べる時には家族1人ずつが1日1個、面白いことを話す」というのをやってたんですよ。

 

夕飯を家族全員で揃って食べるから、毎日必ず1個面白いことを用意しなくちゃいけない。そこでその日一番面白くありたいと思って。面白さはオチのつけ方とか切り取り方、話し方にもかかってくる。人に面白がってもらえる話し方をしようというのはここから来てますね。

 

あとは絵を描くことですかね。完全にこれで人生狂ったと思ってるんで。あたしは自分の地元が大嫌いなんです。中学の時にいじめられてたことがあって、その時「こんなやつらにいじめられるなんて、ほんとしょうもない」と思って、いいところに行くためにめちゃめちゃ勉強したんです。

 

高校受験の時に滑り止めとして、出身の美術大学の付属を見つけて学校見学に行ったんです。そこで選抜作品として廊下に飾られている絵を見て、「同い年でこんなに上手い子がいる」ことに愕然として、2週間くらい勉強も絵も、何もできなくなってしまって。

 

母親が「そんなに行きたいならその付属に行ってもいいよ」と言ってくれたのに「いや、勉強が身を助けると思うし」とか返してたんですけど、中3のくせに。結局「やっぱり付属に行きたい!」ってなって画塾に行かずに自分で勉強して合格して、そこで趣味や考え方のあう友達が出来たのがターニングポイントになってます。

 

でも、大学で「自分は絵もうまくないし、言われたことをバカ真面目にこなすだけの人間で、これで食っていくのは無理だ」ということに気づいてしまって。当時つきあってた恋人とも別れちゃって、絵も描けなくて、家に帰って「大学辞めたい」って泣く日々が続いてたんです。

でも、うちの親は現実主義なので「辞めるならどういう手立てで食べていくかをばっちり決めてから」と言われて。その時のあたしって現実から逃げたいだけだから先のことは何も考えてなかったんですよ。

 

そのまま片道2時間かけて登校して、課題出しての繰り返しで、夏休み前くらいに「もうダメだ」ってなって……。最近やっと笑って話せるようになったんですけど、2年の7〜11月の記憶が全然ないんですよ。単位取れてたから学校には行ってたっぽいんですが。怖くて人にも聞けないし。

 

でも、11月に吉田って子と仲良くなった頃からの記憶はあるんです。吉田はアイドルがすごく好きなんですが、嵐の5大ドームツアーでどこに行けば一番効率よくファンサがもらえるかを研究発表していたんです。で、結論はドームの形や座席の傾斜を考えて「ナゴヤドームで黄色い文字の○○フォントでうちわを作ればファンサがもらいやすい」とか。

 

そういう一つ尖ったところを持ってる人があたしの永遠の憧れで。彼女が「かっこいいものは作れなくてもいいから、面白いものを作りたい」と話していて、それであたしはちゃんと気持ちのあきらめがついたんです。

「絵は一生描いていけるし、あせってデザイナーにならなくてもいい。あたしはこの人みたいになりたい」。それが大学で最初に出来た友達だったんです。

 

それから、「吉田みたいなパワフルで面白い人が友達なんだから、あたしは絶対面白くなれるんだ」って思って、楽しくふるまうようにしたら、友達ができるようになって。やっぱり、今まで受け身だった自分が悪かったなと。

 

偶然の出会いからはじまった超高速ラッパーロード

大学3年の時は普通に就職しようと切り替えてたから、なるべく美術から離れた授業を選択しようと思って、プレゼンテーションの授業を取ったんです。

 

-プレゼンテーション?

 

美大は作ったもののコンセプトを教授に伝えなくてはいけないので、それを鍛える授業です。教室に行くとスケッチブックと赤と黒のマーカーを渡されて、10〜15分くらいで考えをまとめてお題についてのプレゼンをしなくちゃいけない。完全に大喜利なんですよ。

 

就活は事前にインターン参加したり、エントリーシート死ぬほど書いたりして、わりとサクッと今のところに決まりました。自己PRの長所と短所をいうところあるじゃないですか。あれ、事前に自分の悪いところを全部リストアップして、自己否定するだけしてから就活を始めたんです。自分の長所だけを肯定すると、いざ悪いところを突かれた時にメンタルがもたないから。もともとそんなにプラス思考の人間ではないので。

 

で、就活も早めに終わったし時間が余ったところに、知り合いから「女の子だけのラップ練習会を企画してるから」ってサクラで誘われて、そこで初めてラップをやったんです。練習会ではサイファーとバトルをやったんですが、その日のトーナメントでガーッて勝ち上がって。

そこで当日の運営の手伝いをしていた、ビートメーカーのぽじぽじa.k.a DocManjuさんとヘルガa.k.a Jabvaraさんに、「うちでチンポジムっていう練習会をやってるから来てみない?」と言われて。そこから、今のフッドのMAZAI RECORDSに参加するようになりました。

 

-バトルに出た動機ときっかけは?

 

これ、超不純なんですよ。大学生ラップ選手権の予選が初めてなんですが、本戦のショーケースが豪華メンバーで、「予選勝ったらタダでライブが観られるじゃん」って。その頃にチンポジムでやってたバトルでも優勝してたし、せっかくだから一度外でもやってみたいなと思って。予選はベスト8まで勝ち上がって、その日のキャラ枠……MVPみたいなのに選ばれて9月の本戦に出場したんです。

 

そこから、10月にいきなり戦極MCBATTLEと池袋パルコ主催のファッションチェックMCBATTLEに出ることになって、11月には自分の楽曲を作って、12月にMAZAI RECORDSのコンピが出て。去年の下半期はほんとにタイミングがよかったです。

 

-シンデレラMCバトルという女の子だけのバトルに出ようと思ったのはどうして?

 

企画の段階で運営のMC正社員さんから「オーディションに出てくれませんか」という電話が来ていて、「いいですよ、暇だし」みたいな。

 

シンデレラMCバトルの予選動画ヒールっぽくてすごく好きなんすよ。あれは理想のワッショイサンバ像にうまく近づけられたんじゃないかなと。

 

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こういうことを言うとキャラ作ってるとか言われるんですが、普段の自分もワッショイサンバも完全にシームレスなんですよ。ワッショイサンバだけでなく、普段の自分に対してだってパブリックイメージって求められるじゃないですか。「こういう風に見られたい自分」を、自分で作っていくしかない。だから、ワッショイサンバならどうするか。あるいは普段のあたしならどうするかは常に意識していますね。

 

-シンデレラMCバトルはAbemaTVでの配信も含め、各メディアからの注目度が高かったけど、自分らしさを出せずに一回戦敗退という結果でした。あれ前後で何か変わったことはありますか?

 

あたしの中では、あの負けで第一部完という感じでした。大会前日にあたしとムノウちゃんと、普段からお世話になってるラッパーの方々で、スタジオに入ってバトルの練習をしてたんです。負けてからVUENOSの階段をあがったら応援に来てくれたその方に会って、顔見たら涙が止まらなくなっちゃって……。

そしたら「そんなに謝らなくていいから。きみらほんとにもったいなかったし、伸びるからがんばろう」って声をかけてくれてうれしさと不甲斐なさがありました。

 

孤独な戦いだと思っていたけど、いろんな人に支えられていたなって。マイクを持ったら結局一人なんですけど、そういうことか~って。

 

-スポーツ選手がよく言うやつだね。

 

disとコンプレックスとアイデンティティ

-もつ酢飯でEPを作ろうと思ったのはいつ頃、どういうきっかけで?

 

11月にまずmeshi-agareという楽曲を作って。あれは本当は12月に出すMAZAI RECORDSのコンピレーションに収録する予定だったんです。でも、その頃私バトルに出る予定もないし、今出さないと飽きられちゃうと思って、ぽじさんにお願いして先にサウンドクラウドで公開してもらったんです。

今って情報の賞味期限がすごく短くなってるから、私みたいな無名の人はすぐに新しいことをしないと飽きられちゃうんすよ。だから、何かリアクションを起こす時は鮮度をすごく意識してますね。

ワッショイサンバ「meshi-agare」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

その頃ムノウちゃんもコンピに向けて作ってたんですけど、全然テーマが決まらなくて。そしたらぽじさんが、「ムノウちゃんはテーマを決めるのが得意じゃないから、サンバちゃんが牽引してあげたほうがいいよ」というので、一緒に作り始めて。もつ酢飯のきっかけはそれですね。

 

時期は12月の半ばくらい。「どういうコンセプトで何曲やるか」は固まってたので、そこから一気に作った感じです。

 

G.I.R.Lを作った時に「ムノウちゃんラップうまい!」と思って。それならあたし一人でやるよりムノウちゃんがいた方が曲として成立するなって。あとは、単純に作業量が半分になるんですよ。

 

-ムノウちゃんはよく「音楽何もやってないし」というけど、なぜかラップがうまいんだよね。

 

何もやってなかったからこそ、素直に落とし込めるというか。でも、ムノウちゃんにラップがうまいっていうとすごく謙遜するんですよね。あたしはそれも嫌で、もっと胸張ってほしい。それであたしはあたしでひがんでないで練習しつつ、自分のいいところを伸ばしていかなくちゃって。もつ酢飯のテーマを作ってたくらいの頃に、やっとその考えにたどり着きましたね。

 

負けて二人で落ち込んでたけど、「EP作って、もっとうまくなって、その延長でバトルも勝てるようにならなきゃフッドへの恩返しにならない!」と話していて。

 

-もつ酢飯のテーマは軽快な自己紹介曲で、二人の性格がよく出てるね。

 

お互いのリリックの作り方の違いが如実に出たと思ってます。ムノウちゃんはラップの乗せ方丁寧ですよね。絶対あたしに出来ないことをやってくるから、すげーと思って。

この曲のあたしのリリック、性格出ててすごい好きなんです。「当たると噂のラッキーパンチ」というのは、ラッキーパンチが当たり続けてここまで来たと思ってるので。その後の「メンタルはセンチよりもインチ 規格外で2倍イイ」は、1インチが2センチちょいあるから、日本では規格外だけど、2倍あっていい、心は広く持とうという自戒です。 

もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

ほかに性格が出てるのは「たくさんできる逆逆上がり」というところで、これはパッと見の文字の面白さで作ってます。で、「逆逆上がりって何だろう?前回りじゃん!逆上がりはできないけど、前回りはめっちゃできるよ!」という風に、連想ゲーム的に言葉をつなげて作っていくんですよ。

 

G.I.R.L.(ギリギリで生きてるラップやってるロンリーガールズ)、なんかはよく出来たリリックと、そうでないところの差が激しくて恥ずかしいんですけど、「キャンキャンJJ よく見とけ 右にならえの独自路線」も、こういう赤文字系ファッションの女の子たちが、突然自分探しを始めるくせに、実は服装とかお手本のあるものじゃんというのを皮肉ってて。

 

G.I.R.L.(12/25スタジオ練習ver.) by wasshoisanba | Free Listening on SoundCloud

もつ酢飯「G.I.R.L part.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

-G.I.R.L.、G.I.R.L. part2、1on1は女性dis曲だけど、この辺は実話も入ってるの?

 

1on1の「下着はもちろん上下でおそろ 見せる相手もいないのに?」は、大学のやたらマウンティング取ってくる同級生の言葉です。彼氏のいない子が「下着は上下で揃えてる」って言ったら、その子が「見せる相手もいないのに?」って言って気まずくなったことがあって、それを「何それ面白い」と思って書きました。

あとは、「4℃とかハンパでやだわ」もツイッターの一部で流行ってたし、本命彼氏もキュレーションサイトで見た言葉ですね。好きな子を恋人にするから彼氏なのに、本命とかないだろって……。

 

1on1は、女の会話はMCバトルなんだよっていうので8小節×2本なんです。マウント取る人って結局1.5軍の人が多いから、低めの高みだし、猿山の大将でしかないなって。「一番大事なのはアイデンティティーだ」というのは私が常に思ってることですね。

 

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-これ、面白いのがEPだとdis曲の後にファッションの黒歴史を描いたブラック・リフレクションが入るんだよね。

 

ブラック・リフレクションは、ムノウちゃんが書いた最初の8小節で服装の黒歴史。次の8小節で「あれは黒歴史」ってバースが入って、気付きパートに入るんですよ。これのおかげでこの曲のコンセプトがわかるようになってるし、それまでの曲でずっとサンバ、ムノウという順番だったバースが逆になるから聴きやすくなる。

でも、あたしのリリックは16小節全部、自分の化粧の黒歴史に気付かないままなんすよ。このリリックは完全にあたしのコンプレックスから来てますね。

 

もつ酢飯「ブラック・リフレクション」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud

1on1の後はinterludeに入るんですが、海外の下手なバンドの音のサンプリングをして作ってるから、へにゃへにゃ感があって、この流れすごく好きです。

 

チョコレートマカロンは、if世界の話です。「もつ酢飯」は、2人の好きな食べ物を「せーの」で言って出来た名前なんですが、「タイミングさえ合えばチョコレートマカロンになってたかもしれないね」って話をしていて。「じゃあ、あたしらがチョコレートマカロンだった時の曲を作ろう」という。

最初はムノウちゃんに併せてあたしもチョコレートとかお砂糖とか書いてたんですけど、似たようなワードしか出てこないし、自分に出来る事やろうと思って。

 

-ホワイト・リザレクションはお互いが自分の暗い面を吐露する、ある意味で一番平凡な言葉遣いをしている曲だね。

 

これは地獄でしたね。内面と外面のコンプレックスが対になるような曲をやろうっていのはEP制作の段階から考えていたんですが、最初は自分のキャラを崩さずに弱い部分を見せるかというのをどうすればいいのかわかんなかったんです。

 

でも、シンデレラMCバトルで負けて号泣したときに、「あたしはもっと自由に感情を表現していいんだ」って気付いて。ラストの4小節「今日も自分だけ ステージの下 カーテンコール 間に合わなかった」も、心情がもろに出てます。

 

一回戦終わった時から「自分はこの物語にいてもいなくても変わらない人なんじゃないかな」ってずっと思ってて。ほかの女の子はストーリーや意味を持っていたのに、あの日のあたしは自分だけ観客だったんですよ。

the pillowsのMY FOOTという曲に「どこに居てもミスキャスト 独り言が増えたロストマン 誘われないのに断るセリフを覚えて」というのがあって、それが私の中ですごく衝撃的な歌詞だったんですよ。「ミスキャストだとしたら、この舞台は誰のためにあるんだろう」という第3者視点なんです。「誰のため?この 醒めない夢」もthe pillowsを意識してますね。こういう歌詞を入れておくと、絶対引っかかってくれる人がいると思って。……国語のテストみたいでやだな、あたしのリリック。

 

たぶん、高校生のあたしがこの曲を聴いたら、「あ、わかる」っていう嫌な共感の仕方をするんだろうなって。

 

ムノウちゃんはこの曲で結構前向きなことを描いてるじゃないですか。素直で良い子っていうのがよく出ていて。でも、あたしはここで後ろ向きなことしか書いてなくて、普段との逆転現象が起きてるんです。

 

弱い自分だからこそ作れた作品だから

いつかは自分と同じくらいの弱さを持ってる女の子達の支えになりたいんですよ。恵まれてる子なら別にこんなこと思う必要ないんですけど、どこか1つや2つ、あるいは全部欠けてる子が何かに助けを求めてるという時に救いになりたいです。あたしはたまたま音楽と絵があって、表現が支えになってきて、ここまでこれたから。

 

女の子って世間から求められる像がすごくいっぱいあるじゃないですか。でも、「そうじゃなくてもいいんだよ、21世紀なんだからもっと全然自由でいいじゃない」って。

 

女子校出身で、「その時できる子ができる事をやる」って環境にいたから、「男は力仕事、女はお裁縫」みたいな世間の枠にとらわれないで勝手に育ってきました。

 

だからこそ自分の素敵なところをもっとのばしてほしい。卑屈になったらなったで楽しくやろうぜってのがすっごいありますね。この間、ぎぎぎのでにろうくんと「表現は弱い物の為の手段だから」という話をお互いにして。たしかにこれは弱い自分だからこそ書けたリリックだから。

 

表現者としての目標がちゃんと決まっているんだね。EPを出していったん落ち着いたけれど、今後の具体的な予定は。

 

就職があるのでわかんないんですけど、ペースは落とさないで行きたいと思いますね。あと、今回はぽじさんを私らにつきっきりにさせてしまったので、もつ酢飯としての制作はお休みして。でも曲を作ることはやめないで、ほかのビートメーカーの人ともやってみたい。活動ペースはなるべく崩さずに、年末までにもう一回なにか出したいです!

 

※本インタビュー収録後に、もつ酢飯のトウキョウトガリネズミへの参加もアナウンスされました。今後もオンリーワン・エンターテイナーとして突き進むワッショイサンバおよびもつ酢飯に注目!

TOKYO TOGARI NEZUMI

また、相方・MCムノウのインタビューは4月16日、ビートメーカー・ぽじぽじa.k.a DocManjuのインタビューは4月18日公開を予定しています。

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「も飯info」ではもつ酢飯EPの歌詞を公開中!

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