音楽の権利料の問題でソフト化が難しく、なかなか観る機会がないという話を聞いて足を運んだ。
シネマリンがほぼ満席。20代のカップルや、現役ファンらしき児童も。いつもは中年を飛び越して老年ばかりの客層なので新鮮だった。
絵描きのおねえさんとまる子の交流を描く話で、おねえさんが結婚して北海道に行くこと以外は大きなドラマはない。挿入歌に『ファンタジア』や『ダンボ』の酔っ払いのシーンを思い出させる映像が付いていて、音楽劇として独特の世界を作っている。
細かい芝居が光る日常パートから、突然魚に乗って空を飛んだり、はまじがおばさんになって踊りだしたりと、独特の飛躍を見せる音楽パート。さくらももこが『ファンタジア』のような映画を作りたくてこういうつくりになっているらしいが、立体感のない絵なので絵本の挿絵が動いているような感じがあり、それはそれで面白かった。自分でも描きたくなるような感じ。
しかし、おねえさんが「彼氏と結婚して北海道で酪農」と「東京で絵描きとして大成したい」を天秤にかけて前者を選ぶので複雑な気持ちになった。絵は北海道でも描けるというのはそうだけど……。
そのほかにも、おねえさんは親との折り合いが悪そうだったのに、結婚でそれが雲散霧消したように見えるのが納得いかなかった。
ちびまる子はさくらももこの思い出を素材に作ったフィクションだから、当時の彼女の実感を裏切らないように描いているのだろう。その実感を否定するのはちょっと違うと自覚してはいるのだけど、「そこ描かないのか!」という驚きはあった。
なんと、ソフト化されるそうです!リサーチのための上映だったのかな?