馬鹿だから感情を具現化できずに、義理とか人情を大義名分に暴力を使ってるんだ
まあなんというか生き物らしいよな
とっても面白かった。
サスペンスかつ、人生の選択を間違ってしまった人たちの群像劇。
最初は「オシャレな音楽(SUMMIT!)にキュートなキャラクターデザイン。そして、それに相反するしょっぱい生き方の登場人物……。オシャレにくるんで人の愚かさを皮肉る話だろうか」と思っていた。
しかし、登場人物を笑いものにするでも、同情するでもない距離感と、それを下支えするような生々しい会話が心地よく、楽しく見続けることができた。
半グレと付き合っていた女性に心を寄せる主人公に対し、友人が「彼女に同情するな」みたいなことを言うのだが、それに対して主人公が「あれはストックホルム症候群だ(だから、別れられなかったのは彼女だけの責任じゃない)」と返すところなど、全体的に品がいい。立場の弱い人間の状況をちゃんと想像している。
しかも、その半グレが妙に知性的な説教をしたり、時々あけっぴろげになってスキを見せて来たり「悪いヤツだけど魅力的」なところをきっちり嘘くさくなく描いていて、ディティールに厚みがあった。
女性の方がカポエイラを習っていて、フィジカルな意味でやたらと強いというのもよい。
冒頭にあげた言葉は、仲間割れした半グレたちがもみあっているところを見た主人公の発言だが、「生き物らしい」という言葉にはこの作品の哲学が詰まっているように思う。
見ている方も「愚かだけど、らしい」人々を、つい愛さずにはいられない。
サスペンスとしては強引な部分もあるけど、最後の方はハラハラドキドキの楽しさが上回り、あまり気にならなかった。
後半に出てきた韻を踏みながらラップっぽいしゃべりをするヤノというキャラクターがラッパーのMETEORで、出てくるたびににやにやした。
その後、METEORのツイッターを見たらめちゃくちゃpixivをチェックしていた。それだけでなく、音声キャスで二次創作を始めるようになっていて本当にヤノを演じたのが楽しかったんだろうと思う。また、ラップに興味のなかった人がMETEORの曲を聴き始めたりしていて、そういう番外での出来事にもほっこりした。METEOR、pixivでエッチなマンガとかも見てるんだろうなあ……。VaVaが作ったという地下アイドルソングもらしくてよかった。
この、「PUNPEEが世界中の人が描いたヤノをMETEORに教えてくれる」話が素敵。
下はその昔書いたMETEORが出ていたイベントの記録。楽しそうだな私……。(敬称略しました)