ホンのつまみぐい

誤字脱字・事実誤認など遠慮なくご指摘ください。

犬王

※ネタバレあり。というか、観てないと何が書いてあるかわからないかも。

 

 父親に見捨てられた異形の能楽師と、父親に死なれた琵琶法師が、組んで新しい音楽表現を作り上げるが、権力者に目をつけられ……という話。

 オーラルヒストリーを収集していた芸術家が、正史を編纂しようとする権力者に蹂躙される話なので、『教育と愛国』を観たあとだと染みるものがあった。

 精神の開放や革新的表現がグラムロック調の曲を通じて表現されていて、「なぜロック?能の世界にある革新を表現すればいいのに」と思っていたら、以下のような感想があって「なるほど」と思った。

 

https://twitter.com/nrknbnyyyy/status/1534590812025065472

https://twitter.com/nrknbnyyyy/status/1534592031711932416

https://twitter.com/nrknbnyyyy/status/1534592167179522048

 

 「昔そんなものがあったけど終わりましたよ」という物語を表現するためのロックンロールか。

 犬王が異形の身体のままで踊る「腕塚」がストリートダンスを連想させて、身体がほぼ人間に戻ってから演じられる「竜中将」がバレエを連想させるのも革新から保守への変化を表しているのだろうと思う。もちろんバレエが一律に保守というわけではないけど、あるべき身体という概念や伝統を背負っている文化くらいのことは言えるだろう。

 そうなると最後に出てくる能はどう位置づけられているのだろうか。物語の流れをそのまま受け取ると、怨念や痛みをつるっと剥いだ世界で行われる飾り物のような舞踊ということになるけど。このあたりは能や舞踊に詳しい人の解説を聞いてみたい。

 湯浅監督はアニメーションとしての飛躍を優先させるため、たまに社会や人間の内面の複雑さを置いてきぼりにするイメージがあったけど、今回は脚本も丁寧で安心して観れたし、アブちゃんの演技もよかった。音楽も面白かったのでサントラも楽しく聴いている。個人的に泣けたのは谷一さんの最後。何の力もなくても、せめてああいう生き方をしたいものだけど……。

 三種の神器の位置付けと面の役割が映画だけだとよくわからないので原作を読もうと思う。

追記:この感想は面白かった! たしかに。

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