ホンのつまみぐい

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ナショナル・シアター・ライヴ「戦火の馬」@シネ・リーブル池袋

 第一次世界大戦の勃発により、主人公テッドが幼い頃から育てた馬のジョーイは軍馬として徴用されてしまう。テッドはジョーイを追って年齢を偽り入隊し、戦場におもむくが……。

 ストレートな動物と人の友情物語で、なおかつ動物という立場の弱い存在を通して戦争の残酷さを考えさせるお芝居。スピルバーグによって映画化もされている。

 ひとりと一匹が戦争で離れ離れになってからは、両者の戦場でのつらい道程が順々に演じられて痛々しい。パペットで演じられる馬の美しさが出色。

 第一次世界大戦下では機関銃や戦車のような機械が戦闘に用いられるようになり、軍馬が活躍できたような戦争から比べ、より非人道的になったという描かれ方をしていた。

 演出も美術も役者も素晴らしい出来だったが、個人的にはあまり没頭できなかった。

 ジョーイが本当の馬の認識を想定した水準で描かれているのか、フィクションであることを前提として人間と同じような考え方・感じ方をする存在として演じられているのかがわからなかったからだと思う。

 動物を描く際には、3つの区分けがあると思っている。

 人間と近い認識を持つ、人間より少し幼い存在として書くか。

 認識や思考の回路が全く違う完全な他者として書くか。

 肉体こそ違うものの、人間とほぼ同じ考え方をする存在として書くか。

 人とその他の動物は、現実にはどうしてもわかりあえない他者同士である。しかし、だからこそ何か通い合ったと思える瞬間が胸を打つのだろう。「人間より少し幼い存在」として描かれている場合は、人間のエゴを感じてしまってあまり好きになれない。

 ジョーイはテッドを慕っているが、それは馬と人としての友情なのか。ほぼほぼ人と同じ考え方をする馬と人との友情なのか。

 映画では本物の馬の存在自体が他者であると思わせてくれるだろうし、原作はジョーイ目線で進むそうなので、人の内面を持つ馬として読めるのだろう。

 NTLのジョーイは「他者」と解釈して観るのが妥当だと思うけど、そう思うには少し人間寄りすぎるようにも思えて、姿勢が定まらなかった。

 

 原作は児童文学と聞いて「なるほど」と納得。

 


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