ドキュメンタリー映画「ダンシングホームレス」で知った、ホームレスたちによるダンス集団「新人Hソケリッサ!」の公演。冷たい冬の風の吹く日で、映画に出てきた路上生活の過酷さを想像した。
ソケリッサのダンスは振り付けがなく、身体の動きはわかりやすい快感を呼びおこしてくれない。
まるで猫が道端で出会ったときのように見合い、腰を落として体を広げ、ずりずりと近づいていく動作や、突如ピンと体を伸ばして自らの身体を調整するような動き、ずりずりと海の中を這いずるように空をかき混ぜながら歩いていく動きなど、私達の不器用な日常の動作がそのまま舞踏の形をとっているような不思議な感触があった。
みなバラバラで踊っている。でも時折近づいたり、離れたり、同じ方向に体を動かしたりする。言葉にすると動物のような動作だと思い、そもそも人間は動物じゃないかと思い直す。
そそり立つ巨大な日本丸のきらびやかな存在感と、べたべたと地上を這いずるように踊るダンサーたちのコントラストは童話のようだった。
ステージが終わって、ダンサーで発起人のアオキ裕キさんがマイクを持ち、今日のお礼と今後の予定を語った。飾り気や集金意欲のない素朴な言葉に、もう少し如才なくてもいいのにと思う。
会場でもらったチラシにダンスツアープロジェクトの案内と、それに伴うクラウドファンディングのお知らせが載っていた。
プロジェクトをやろうと思った理由に「集団にいても強靭な個人という存在を目指して」と、力強い字で綴られていて、その日見たダンスが、本当にそれぞれの踊りだったことを思い出した。
クラウドファンディングのHPにこの日の写真が掲載されている。