ホンのつまみぐい

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受講まとめその2「野球狂の詩」「ドカベン」の新しさ、「スプリンター」の身体感覚表現

・魔球マンガに幕を引いた「野球狂の詩

 水原勇気も魔球を使いますが、それを打たれたからといって引退しようなんて思いません。それで野球ができなくなるわけではない、と。73年のマガジンにこれが掲載されたのは、とても意味のあることだったと。
 
・常勝明訓/リアルな野球とマンガらしさの融合した「ドカベン
 戦術家としての監督が描かれたはじめての作品だったということ。野球は9対9でやるものだということを強調した戦略的試合運び。1対1の戦いに集約されてしまう「巨人の星」では描かれなかったグラウンド空間。一方に岩鬼殿馬というマンガチックなキャラを配しながら、リアルな試合運びで魅せる。

 9対9という試合運びや、常勝明訓というコピーは成長し続けることで破滅してしまう、強さのインフレを回避した。水島は一時期サンデーマガジンチャンピオン全誌に連載を持っていた大人気作家だと語られ、今の水島新司しか知らないニワカには大変刺激的でした。絶対水島新司読みたくなります。

 また、今回とても面白かったのは水島新司作品がスポーツマンガのパロディとして成立しているという点です。「ドカベン」が柔道マンガだったころに登場する「イガグリくん」のパロディである伊賀谷監督。山田vs岩鬼の柔道部vs野球部のパターン。60年代後半にマンガ表現は一度成熟を迎え、70年代からはその要素の組み合わせから作品を作っていく時代だと。マンガがパロディを取り入れたのはそんなに早い時期だったのかという驚愕。

・身体性と肉体性の融合「スプリンター」
 短距離走者が主人公の物語。主人公光は、作中では「神の領域」と呼ばれる、いわゆる「ゾーンに入る」ような状態を追い求めます。結局、光はその追求にとり憑かれて一種の中毒状態になり、最終的には日常を捨て去ってしまう。快楽にとりつかれて死を選んでしまうという構図はあしたのジョーのとらえ返しと読めます。ジョーはジャンキーですものね。
 しかし、「スプリンター」は単に追及を否定する物語でなく、あっち側に行こうとするその瞬間を非常に魅力的なものとして描いてもいます。追求を求めることそのものを人間の深遠さとして捉えたこの作品。今は読む方法も限られていますが、精神性と身体性の追求は多くの表現者に影響を与えているそうです。バキなど。
 私はタイトルすら今回初めて知りました。知らないことって多いな…。