ホンのつまみぐい

誤字脱字・事実誤認など遠慮なくご指摘ください。

御徒町の老酒舗の鶏と漬物の塩そば&チャーハン

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 正式名称忘れましたが、高菜と鶏むね肉が印象的な中華そば。『いつか中華屋でチャーハンを』に出てきたお店です。

 ちょっとしょっぱくて個人的な好みとは違いましたが、日本人向けに洗練されてない味が新鮮で、体験として面白かった。聞きなれない料理がいろいろあったのでちょっとずつ食べていきたい。

 

 

子どもと大人の音楽堂<大人編> 音楽堂のピクニック

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 神奈川県立音楽堂の主催イベント。

 使用される楽器も演奏者の立場もバラバラな人々を集めた不思議な催しだった。

 開始時間を少し過ぎてから会場に入ると、ホワイエでドレスに身を包んだ女性4人が弦楽四重奏を演奏していて、まるでイギリスの妖精の絵本のようだった。

 スタッフに促されて歩くと、なぜか楽屋口と舞台袖を通る羽目に。袖に待機した出演者の姿を横目に、舞台の階段を下りて椅子に座る。午前中に運動してきて疲れているので、途中寝てしまうのを見越してなんとなくだいぶ後ろの方へ。

 邦楽創造集団オーラJの、邦楽なんだけどちょっと違う演奏を目をつぶりながら聴いていた。

 次の志人×内橋和久は、寝たり起きたりしながら見たこともあり、何がなんだかわからなかった。内橋和久の使っている楽器も、志人が語っていることも本当によくわからなかった。でも、子どもたちもたくさん来ている場所で、よくわからない大人がよくわからないことをしているのはなかなかよい。

 次の鈴木昭男(演奏)・宮北裕美(ダンス)では、ふたりが客席に降りてきて踊ったり演奏したりした。カエルのイラストが描かれたTシャツがよく似合う。私がうとうとしている間に、ふたりはいつの間にかホワイエに。ほかのお客さんはちゃんとふたりを追いかけていたが、ぼんやりしていた私は周りに全然人がいなくなってからあわててふたりを追いかけた。階段を降りると、ふたりはホワイエの真ん中で踊ったり演奏したりしていた。

 ホワイエのまわりには巨木で作ったイスがあって、何人かのお客さんはそこに座っていた。

 そのあとは手作りパイプオルガン奏者のFUJI|||||||||||TAが演奏を始めて、客は木のイスに座ったり、階段に腰掛けたりしながらそれを聴いていた。ホワイエで出演者とおしゃべりしている人たちもいた。

 休憩をはさんで芳垣安洋(Dr)・石若駿(Dr) feat. 象眠舎は強烈なドラムセッションにボーカルの入る不思議な演奏。お互いを挑発しあいつつ、音楽としての調和を生み出そうとする研ぎ澄まされたドラムの音。そこにポエトリーリーディングのような歌が混じって不思議な空間が作り出されていた。

 ふと顔を上げると、客席に先端に小さな豆電球の着いた棒がいくつか立ててあり、ドラムの盛り上がりに合わせて電球の光がチカチカッと明滅した。まるで宮沢賢治の世界のようで、なんだかふっと笑ってしまった。

 思わず涙しそうになったのはアイヌ影絵。鳥の神と人間の女性の異種婚姻譚。だが、男は鳥の世界に帰っていく。シンプルな照明に照らされた素朴な影絵を背景に、神と人を演じるふたりが踊る姿が美しくてなんだか泣けてしまった。

 ボーカルのアペトゥンペの声は、会場を包み込むような柔らかさがあって、自分の心の中にもその柔らかさや優しさが溶けていったような気持になった。

 私達が日常暮らす世界と、アイヌの歌の中にある世界はだいぶ違う。世界を違った目で捉えている人々の作った歌を聴くのは、とても大切なことだと感じた。

 最後は渋谷毅によるピアノソロ。照明が変わり、ステージにはたくさんの小さな光が映し出される。その中央でピアノを弾く渋谷氏の姿は、さながら銀河に浮かんでいるようだった。

 不思議なイベントだったけど、音楽に集中しないでぼんやり座っていることもできるところや、音楽なのかどうかもよくわからないものが出てくるところ、不親切なところも含めてかなり楽しかった。どんな音が鳴っていたのかいまいち覚えていない時間もあるが、それも含めてよかったと思う。

 来年もやるようなのでまたのぞいてみたい。 

 

<予定出演者・予定時間>
13:00- ウェルカム演奏[ホワイエ]カルテット・シエル(弦楽四重奏

13:00頃  邦楽創造集団オーラJ
14:00頃   志人×内橋和久
14:40-15:10頃   鈴木昭男(演奏)・宮北裕美(ダンス)
15:10-16:00頃   FUJI|||||||||||TA
<16:00-16:30 休憩>
16:30-17:10頃 芳垣安洋(Dr)・石若駿(Dr) feat. 象眠舎
17:10-17:50頃 アイヌ影絵 

         ほしふね[小谷野哲郎・わたなべなおか]

         アペトゥンペ[Rekpo・Mayunkiki]
17:50-18:30頃  渋谷毅(Pf)

髙匠横濱馬車道本店のモーニングセット

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 休憩場所が必要な時に喫茶店代わりに使ったお店。

 コロナ後の設計らしく、店内広くてwifiもあり、作業にとってもよさそうなお店。

 ただ、食パン専門店なのに肝心のパンが微妙だった……。

 パン自体の味というより、この甘くてもっちりしたタイプのパンにこの食べ方が適正ではないのでは。

 厚切りにして切れ目を入れて焼き、バターを乗せているのですが、甘いパンに対してバターの塩味が薄めで存在感がないし、パンは火が通っているところと生焼けっぽいところにわかれていて、生っぽい食感の部分がいまいち楽しめない。

 この食パンの一番おいしい食べ方を追及してないのだと思われます。

 アンダーブラフベーカリーも、パンはあんなにおいしいのに、アンダーブラフカフェの「パンを使った料理」は「これ、最善ですか?」という感じだから、それとこれは違うのかもなあ。

「なんでそこがそこを差別するの?」「たしかに、なんでだろう…」

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 浅草行ったときにMさんと氷川きよしの話になり、それからトランス差別の話になった。私が「フェミニストトランスジェンダーを差別している」という話をすると、「えっ、なんで?」と驚かれた。(「トランス女性を認めないフェミニストフェミニストと呼べない」というのはその通りとして、ここでは当日の話の流れに沿ってフェミニストと書いてます)

 たしかに、フェミニストって立場の弱い人の権利を守る人たちってイメージあるのに、「トランスジェンダー女性を差別している」って知らない人が聞いたら驚くかも。

 ”フェミニスト”による差別に慣れちゃってそういうものだと思ってたけど、たしかに「なんで?」だよね。私も正直よくわからないが「女性の権利の拡張に努めてきたからこそ、今まで男として特権を享受してきたやつらにその利益を取られるのが嫌」という気持ちなのか? でも、トランスジェンダー女性の人って100%とは言わないまでも、生きるのに苦労している人のほうが圧倒的に多いんじゃないだろうか。特権とか言われてもな。

 で、弟にそういう話をしたら、「そういう差別をする人たちは、トランスの人が簡単に気持ちを切り替えられると思ってるんじゃないの。男が嫌だから女。女がめんどくさくなったら男みたいに」という返事があり、これはたしかにと思った。そう考えているのだとすると、トイレの話があんなに問題になるのも、手術の有無にこだわるのもわかる。

 でも、実際は私のようなシスジェンダー異性愛者には理解し得ないさまざまな苦しみがあるわけで、気軽に行ったり来たりできるようなものではどう考えてもないだろう。差別者がどうしてそういう理解になるかという謎は解けない。「得体のしれないものを排除したい」という気持ちを理論武装しようとするとそういうことになるのだろうか……。

 よく知らない他者のことを、勝手に得体のしれないものと規定することが、すでに差別なのに、ファミニズムを学んできたはずの人たちがそれをやってしまうということが、本当に理解し難い。

 

追記:3月31日はトランスジェンダー可視化の日(TransDayOfVisibility)と先ほど知りました。今日読んだものを貼っておきます。

 

trans101.jp

font-da.hatenablog.jp

note.com  トランスジェンダー女性のスポーツ参画について。とても気になっていたことについて、トランスジェンダー女性への支持を明確にした上で、ロジカルな意見が綴られていて納得させられました。

note.com

井上雄彦が「同人誌嫌い」っていう話どっから出てきたんでしょうか

 「井上雄彦が同人誌嫌い」という話を最初に読んだのは、たぶん羽海野チカのコメントとしてだったと思います。羽海野は『SLAMDUNK』同人誌の大手サークル主で、その特徴的な名前とかわいらしい絵柄は、さほど『SLAMDUNK』同人誌を読んでいなかった私にも見覚えがありました。

 2003年くらいかなあ。たぶんトークイベントか何かの抜粋だったと思いますが、羽海野が「原作を書いていた先生は同人誌をよく思っていないそうなので、一生自分の同人誌のことは表に出したくない」という主旨のことを話していたのをネットで読んだような……。

 そして、それを読んだ当時の私は「ちっ、井上雄彦。心が狭いな…」と思ってました。「読んだ方が起こってることをどう解釈しようと勝手じゃないか」と思ったし、「男性作家>女性読者」というヒエラルキーが生じてるのは明らかだったので。

 「やおいを描いている我々は偽物の読者」みたいな意識を羽海野の発言から感じて、なんだか腹が立ってしまいました。

 女性の性欲は隠すべきものとされ、男性の性欲は産業として社会にあふれているという不均衡にいらだちを覚えたのだと思います。

 その後、よしながふみがインタビューで「SLAMDUNKは赤木×小暮ですよね」なんてあっけらかんと話していて、スッとした記憶があります。ちなみに本編は赤暮と言いつつ、よしながが描いていたのは三井×小暮でした。

 あれからだいぶ経ち、男女の不均衡は見逃せないものの、「まあ、自分のキャラクターでエロマンガが描かれたら驚くよな。うっかり小さい子どもが見てしまったということもあるだろうし……」と、少し考えも軟化し、それでは当時の井上は具体的にどういう発言をしていたのだろうと改めて確認したくなりました。そもそも、「同人誌が嫌い」と発言していたとして、それがBLだから嫌なのか、それともアマチュアの表現活動を見下しているのかもわからないですし。しかし、ググってみても当時それなりに話題になった記憶のあるその話が、インターネット上に見つからない。

 ほぼほぼ都市伝説みたいな証言はいろいろ並んではいるものの、どうも井上の言葉という確証が取れない。

 ただ、「羽海野チカがそういう話をしていたのをWEBで見た」記憶は確かにあり、内容のすべてが記憶違いとも思えないのですが……。

 今改めて、どんなニュアンスで話していたのかを正確に知りたいと思っています。情報求めていますので、ご存じの方はコメント欄かhontuma.ikechi@gmail.comまでご連絡いただければ幸いです。

2022/8/12:追記

 SLAMDUNKのアニメ化の影響か、最近このエントリのアクセスが増えているので、なんとなく再度ツイッターで「井上雄彦 同人誌」で検索してみました。相変わらず真偽の確認できる情報はなかったのですが、2013年に急に「井上雄彦に同人誌を送りつけた人がいて、そのために嫌いになった」という、それ以前には存在しなかった新たな証言が生まれていました。この情報そのものが根拠さだからぬものですが、さらに驚いたのは、その情報が途中から「ファンの一人に送られてきた同人誌をビリビリに破いた」というものになっていること。噂に「尾ひれがつく」瞬間を見た思いでした。幸い、「同人誌送りつけ」の話はあまり広がっていないようですが、事実を整理したいという気持ちを新たにしました。

(追記終わり)

 ここからは余談ですが、『SLAMDUNK』は活動人数が多かったこともあり、その後プロの作家になった人が多い印象があります。誰だったか、実際に同人活動をしていた作家が「『SLAMDUNK』は演出や物語がしっかりしていたから、それを読んで同人誌を作っていた人たちもマンガがうまくなっていった」と話していた記憶があります。

 もっとも有名なのは先に挙げた羽海野チカよしながふみでしょうが、広く名を知られる機会のないBL作家まで広げたら数限りない。mixiにこんなコミュニティもありました。

mixi.jp 私は『SLAMDUNK』に関してはまったくやおい目線で見ていなかったので、同人誌もほとんど持っていなかったのですが、商業出版された以下2冊は面白かったので、今でも取ってあります。

 赤木×三井の同人誌の再録。なぜ復刊ドットコムから……? 演出がインディーズの青春映画の趣で、ほぼオリジナルBL。まあ、同人誌なんてみんなそうだと言えばそうなんですが、原作から足し引きした作画の生々しさが独特の迫力を生んでいました。

 このあと語シスコさんの商業BLも何冊か買いましたが、同人誌ほどコマをぜいたくに使えないからか、この本で思う存分発揮されていたクローズアップの演出や独特の表情の魅せ方が味わえなくてあんまり楽しめなかった記憶。

 いわゆる同人誌アンソロジー。同人誌を描いている作家に声をかけて、短い話を集めて販売するという、今思うとだいぶちょろい商売ですね。掲載料とかどうなってたんだろう。

 軽いラブコメ調の話がたくさん載っている本で、基本的にはやおい的な見方をしていないと楽しめないと思うのですが、ここに載っている架月弥の描いた話がとてもよくて、この話のためにとってあります。

 赤木、小暮、三井それぞれの、最後の夏に向けての後悔や葛藤を描く青春小説調の短編で、透明感のある画面とざっくりした線、チャーミングな会話の妙が光っていました。

 羽海野チカも表紙イラスト、1Pギャグ何本かで参加しています。

2022/8/12:追記

 ところで野田彩子こと新井煮干し子はかつて『おれはキャプテン』の同人誌を出していて、その頃のイラストや告知をいまだにpixiv残しているのですが、その野田によるこのツイートはちょっとうれしかったですね。優しい担当編集さんが繋いでくれたそうです。

 もちろんこれを持ってして、「だから作家は性的に消費されるのを嫌がってはいけない」あるいは「同人誌作者はコソコソしないで表に出るべき」なんていうつもりは毛頭ないけど、それはそれとしてやっぱりちょっと喜んでしまうのです。

 

www.pixiv.net

(追記終わり)

 さらに余談を重ねますが、井上雄彦ツイッターのフォロー欄が右翼っぽいというのが最近話題になっていました。私は数年前から彼のフォロー欄が何となく右寄りなのに気がついていましたが、話題にするには難しい塩梅だったので、あえて指摘していませんでした。井上雄彦を曖昧な言葉でdisると、1万倍くらい罵倒されそうで面倒だったのもあります。

 作品や発言を見れば保守的な人間なのはなんとなく伝わるけど、猫組長をはじめとする陰謀論者をフォローしているのを見つけた時はキツかったですね。

 最近はそれらに加え、海外の陰謀論者もフォローしているらしく、作品の面白さとリテラシーは相反しないのだなあと改めて思いました。

この間浅草行きました

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 Mさんを誘って浅草ロック座の川上奈々美引退公演「愛あればこそ」へ。

 写真は開演前に食べたマウンテンのホットケーキ。味は並。店内のごちゃごちゃした雰囲気を楽しむ店かな。机の下に雑誌のほか、古い画集なんかが置いてあって、昔ながらの喫茶店という感じ。まあ、観光地なので値段は高いのですが……。

 Mさんがもうすぐ活動休止する氷川きよしのコンサートの話をしてくれました。時にぬるいテーマの曲を腐しつつ、手作りの人形を持参し振っていたという古参のおばさまの話がほほえましかった。

 休止について、「でも、彼は待っていてくれる人がたくさんいるし、少し休んでも大丈夫だよね」というようなことを言ったら、「いや、休止中に自分が亡くなるんじゃないかって心配している人もいるよ」という話になり、国民的スターの重みを実感。

 さておいて、浅草ロック座へ。

 川上さん引退ということで、なかなか混んでました。川上さんと同世代の女性のお客さんも多し。幕間の映像には川上さんのドキュメンタリー映画の予告が流れていました。

 マリー・アントワネットや当時の貴族をモチーフにした享楽的な演目が前半。後半はバスティーユ前後のパリの街を舞台にしたショーが繰り広げられるという内容でした。

 印象的だったのは矢沢ようこさんが広瀬あいみさんを誘惑する景と、広瀬あいみさんが牢獄のマリー・アントワネットの心情を表す景。

 矢沢さんのゆったりとした身体の動かし方は観ている方を別の時間に誘ってくれるようです。濃いめの赤や紫を多用した照明や、シンプルな衣装も雰囲気出してました。

 広瀬さんの白メインのシンプルな照明で踊るステージも静謐でよかった。

 男装の麗人に扮した川上さん、ご自身は華やかで可愛らしかったし、途中の歌も迫力がありましたが、全体を通して観るとチグハグ感が……。役のイメージにもあってない。もう少しご本人の個性を活かした内容にすればよかったのに。

 でも、浅草初のMさんは満足してくれて、「川上さん、群舞の中でも光ってたし、顔が好み。好きになってすぐ引退しちゃうの残念…」と話してくれました。