ホンのつまみぐい

誤字脱字・事実誤認など遠慮なくご指摘ください。

ステージ上の圧倒的自由を祝福するamiinA×TOKYO FM presents 『Arch Delta Tour』@新宿ReNY

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19時着なのに新宿ReNYがパンパンで衝撃を受ける。VJの準備のためか、両脇と最後尾は入れないようにしてあったけど、それでも400人以上は確実に集まっていた。

新宿ReNYは2015年12月のWonderTraveller!!!ぶり。あの日もアイドルイベントとしては豪華なメンツだったけど、休日なのに後方はゆとりがあった。今日は平日18時半スタートの3マンでパンパンというのは如実な進化と信頼を感じさせる。

私も、前日に少し予算外のお金が入ることが決まって、即チケット買ったからなあ。

sora tob sakana

以前も書いたようにポストロック×白いワンピース×洗練されたVJが印象的な、音楽オタクが子供にちょっとガチ目な曲をやらせる系のグループ。

前回は、「ああ、よくあるやつね」で見過ごしてしまったのだけど、今日はとにかく4人の女の子がキラキラしていて、それに目を奪われた。

こういうコンセプチュアルな曲に、若いを通り越して幼い女の子の組み合わせ。ありがちではあって、インタビューなんかで女の子のほうが「○○には全然興味ない」と言ったりするのも半ば定番化している。○○はヒップホップでもロックでもR&Bでもシティポップでも。

sora tob sakanaメンバーが自分たちの曲をどう評価しているのかはわからないけど、「この曲に合わせて歌って踊る私たちはかっこいいでしょ?」みたいな自信が感じられて、それはもうかわいさとかっこよさを合わせた明るい迫力があった。


ああ、女の子が誇らしげに歌って踊る姿は美しいな。キラキラしてる。完全に合唱コンクールの中継を見て唐突に涙しちゃう人間のメンタル。

前回は広告の街がVJと合わせて強烈に印象に残ったけど、今回は満遍なく楽しめた。VJもバラエティ豊かで、明朝体で歌詞をガンガン出してくる尖った演出の「広告の街」みたいなのもあれば、シンプルなイラストで描かれた街並みを投影した「みんなのうた」を思い出させるようなものもあって目が楽しい。

MCで「マジで?」みたいな言葉の使い方をするのも、無理してない感じでいい。会場に吊ってあるシャンデリアを見て、「わー!きれい」と叫ぶメンバーの声に応え、スタッフがシャンデリアの灯りをつけてあげて、気持ちがあたたかくなった。

 


サカナ日記27日目 「広告の街」ダンス映像


sora tob sakana - 夏の扉

 

cocoon ep

cocoon ep

 
sora tob sakana

sora tob sakana

 

 

 

The band apart

 

おそらくジャンルはロックなんだろうけど、ジャズっぽい軽快さもあって、歌詞はほぼ英語で、身体を揺らしながら見ているうちに、気持ちが明るく開いていく感じがとても楽しい。

 

MCで「アイドルのお客さんって暖かいよね」を連発してくれるボーカル&ギターの人にほっこり。

キャリアを感じさせる安定感のある音ではじまり、最後の方はどんどんステージの熱量が上がっていって、鋭く強くなっていくのがたまんなかった。途中のMCでsora tob sakanaたちのことを「みんながんばってたね。おじさんたちもがんばりますので」と言ってたけど、ずっとがんばってきて、今まだステージに立ってる人たちのかっこよさを感じる。

でも、一方で「私が好きなのはもう少し歪で正体のしれないものなんだよな」とも、ちらっと思ったり。

 


the band apart / ピルグリム【MV】


lute exclusive LIVE:□□□ × the band apart 「夜の向こうへ」

 

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amiinA

VJは高速で回る時計でスタート。

 

客の様子もうかがわず、新曲を抱えていきなり飛び込んでくるところが潔い。新曲Valkyrieの振りは、二人で最後に宙にかざしたお互いの手を合わせる動作が美しい。


ワールドミュージックの要素も併せ持つamiinAの曲は、空に向かっていくような音と前のめりな振付が観ていてとても楽しい。清楚な白ワンピースの上にちょいワイルドなジャケットというのも旅というコンセプトを明確に感じさせる。

 

ステージで動き回るふたりの少女の、力強さと軽やかさのバランス。

ふたりの声が遠くへ伸びていく瞬間に感じる圧倒的な表現者としての自由さと、それを祝福するフロアの子供じみた幸福感。私たちは誰もあんな風に踊れないし、歌えないけど、その美しさに憧れることは出来るんだよね。どこかヨーロッパの民謡を思い出させる音は郷愁に加えて、ロックやジャズやテクノとはちょっと違った踊ることの楽しさを思い出させてくれる。

ミュージカルのようで、その音の激しさはロックでしかなくて、その透明感はアイドルで。

 

いつの間にかモッシュ曲やウォールオブデス曲、肩を組んで円陣を作って回る曲が出来ていて、おっさんたちの盛り上がりようがすごかった。

 

新曲はまだちゃんと聴けていなかったのだけど、Callin`のディズニーランドでかかっていそうな音の明るさが気持ちよかった。最後はコーレス曲Canvasからのキーメーカー。楽しかった!

 

ところで、この日は観るたびに泣いている印象のamiちゃんがお姉さんぶっていて、それがとても微笑ましかった。高校2年生、表情も透明感を保ったまま、大人びた鋭い顔になる場面がある。それと相反するように、時々ふっとこれまでの笑顔を崩し、感情を吐き出すような強い歌い方をするmiyuちゃん。そんなmiyuちゃんを優しく見つめるamiちゃん。ああ、いい感じに仲良くなってるなあ。

 

最近はアイドルを色んな人に観てもらいたいという気持ちが薄くなっていて、薦めるにしても音楽に興味のない人に関心を持ってもらうのは難しいだろうと諦めていたのだけど、amiinAはたとえば、彼女たちより少し小さい小学生や中学生の子供に観てもらいたいし、その親に観てほしいとも思う。

 

こんなにかっこよくて、可愛くて、自由な女の子たちがいるんだよ。音楽って、ダンスってとても楽しいものなんだよ。

 

3回連続3マン。次回公演の相手はまだ知らされていないけど、きっと最高に決まっている。

 

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今回も美しい会場装飾!……と、プレイヤーがないから買わなかったけど、可愛い飛び出す絵本タイプのレコード!

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Valkyrie

Valkyrie

 
Avalon

Avalon

 

 

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15分くらいでわかる校庭カメラギャル

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校庭カメラギャル(以下ウテギャ)のことを考えると思い出すのはお披露目の日のぱたこあんどぱたこちゃんの憂鬱そうな表情です。

 

ウテギャはもともと校庭カメラガールの派生ユニットとして誕生したという経緯があり、お披露目の日は「もともと校庭カメラガールツヴァイ(以下コウテカ2)として活動していたぱたこあんどぱたこちゃんとらみたたらったちゃんの最後のコウテカ2としてのライブ」と「校庭カメラギャルとしての最初のライブ」が同じ公演の中で行われていたのでした。

 

最後にコウテカ2としてライブをこなすぱたこちゃんの、不安そうな少し投げやりなような表情を見ながら、「大丈夫かな。ほんとはいやなんじゃないかな」と思ったのをよく覚えています。

 

コウテカ2での当時の2人は歌割りも少なく、正直グループの中でどう力を発揮していいのかわからないまま続けているのが伝わってきていました。後のインタビューでぱたこちゃんは「自分からウテギャになりたいと言った」。らみたらたったちゃんは「いきなりウテギャになることになった」と話していますが、いずれにしろ2人がコウテカ2のままでいることの限界を悟っての移籍だったのだとなんとなく思います。

 

dot.asahi.com

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そんな校庭カメラギャル、当初3人編成で始まったものの、すぐに1人抜けてしまいます。曲はコウテカ2と比べてヒップホップ寄りのアイドル現場では浮きがちな音作りだし、歌ってることもヒップホップのパロディなのか、攻撃的でひねくれてるから対バンに出てもオタクが反応しづらい。しかも、コウテカ2と違ってなかなか曲が増えないから、30分の持ち時間に同じ曲を2回やるという時期が数ヶ月続いたり。

 

「ヒップホップよりでアイドル現場で浮きがちな音」って、私も書いててよくわからないけど、要はMIXとか入れづらい曲ってことですよ。サビないし。しかも、LyricalSchoolとかと違って「聴いてて楽しい!」ってリリックじゃないし。

 

校庭カメラギャル 1st album"スマイルアゲイン" teaser by tapestok records | Free Listening on SoundCloud

リリックはここで読めます。

http://tapestokrecords.com/smileagain/

 

リリスクが「女の子はハッピーじゃなくちゃって誰かが言ってた」って歌ってる時に、「これだから最近の若いヤツは とか言っちゃうおじさん インダ 満員電車」だから……。

 

数ヶ月前のブブカのインタビューでも答えていたけど、めちゃくちゃ大変だったと思います。よくやめなかったと思う。

 

でも、ウテギャのふたりが尊敬できるのは、こういう状態からちゃんと自分たちのライブを作り上げたことです。

 

ふたりとも音楽的才能に恵まれているわけじゃないと思うんだけど、「ルサンチマンを抱えた女の子が自分の心にある衝動をはき出して、その熱で人の心を動かしていく」ということがちゃんと出来るようになっていて、これは本当にすごい。自分を変えたくて青森から出てきたぱたちゃんと、それまでの「生きてるのか死んでるのかわからない生活」をやめて飛び込んできたたらちゃん。ギャルドリームのリリックが刺さります。

中途半端なマイライフ 嫌いなんだ自分が
ずっと変わりたかったけど
変われなかったから だから
わざと遠回りをして光を塞いだ

あと、ウテギャのリリックはすべて運営のVivid Jasさんが書いているのだけど、Disやエモだけじゃないくだらない曲もあって、それもまあ、ヒップホップっぽいといえばぽいのかな。だから、ライブとしてちゃんと楽しい。私は「みんないい人だって言ってるけど実際はあいつサイコパスだしヤバい」の曲が好きです。

 

みんないい人だって言ってるけど実際はあいつサイコパスだしヤバい (rough) / 校庭カメラギャル by tapestok records | Free Listening on SoundCloud

 

ワンマン前の最後のライブで、ぱたこちゃんが「アイドルでもヒップホップでもない!校庭カメラギャルをやっていく」と宣言してたけど、そりゃそうせざるを得ない。アイドル現場でもヒップホップ現場でも浮いてるもんね。

 

www.youtube.com

 

ふたりとも決して器用じゃないし、ライブでの立ち居振る舞いも無骨だし、特典会とかでもアイドルとしての釣りのうまさみたいのもないんだけど、それも含めて「校庭カメラギャル」としてちゃんと自立しつつあるんだなあとちょっとじ~んとしました。

人の書いたリリックでどう表現するか
この声は紛れもなく私の声だ 

ウテギャも売れてほしい。なぜなら「何でもない女の子たち」が「わけがわからない存在」にメタモルフォーゼしたハイブリッドアイドルだから。世の中に「わけのわからない」が多い方が面白いでしょ?

 

そんな、色んな意味で嘘がなさすぎるふたりによるワンマンライブは今日20時から!当日券あるので気になった方はよろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

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スマイル・アゲイン

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mikiki.tokyo.jp

※ちなみに、プロに言わせると「いわゆる〈アイドル・ラップ〉となると90年代の日本語ラップ感を下地にした人が多いなか、彼女らはサザン・バウンス~トラップにハードコアでギャルなノリをまぶした現代的なもの。フックが歌じゃない作りも含め、USモノ好きも一聴の価値あり」らしいです。そうか、こう聴いてこう書くのか……。

大英自然史博物館展@国立科学博物館

入場40分待ち。人がたくさんいてゆっくり見ることは出来なかったけど、小さな子供がたくさん来ていて、そのリアクションが面白かった。

 
館内には大英博物館内を絶滅動物が歩き回る、リアルな映像が流されていたのだが、それを見た小さな子が「ドラえもんの世界みたい」と言ったり、見た感じ小学4年生くらいの女の子がモアの展示を見ながら、「関節を見ただけで飛べないってわかるんだよ」と親に指南したり。
 
剥製がいっぱい展示されていたので、生物の大きさを体感できるのがいい。キリンの頭部は中でもインパクト大。おそらく、図鑑でも同じ知識を手に入れることはできるのだけど、こうして体感するとやはりその不気味な存在感に圧倒させられる。
 
ただ、展示の密度や完成度を考えると圧倒的に常設展示の方が上だった。
博物学だと、情報をどう解釈するかがキモなので長い年月展示することを前提に作られた物の方が、そりゃいいに決まってる。
今度は常設もじっくり見たい。
 
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直径2ミリはあろうかというどデカいサファイアの圧もすごかった。
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イギリスらしい写真。
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イイ顔で映る研究者の方々。
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こうの史代「この世界の片隅に」原画展』@タワーレコード渋谷店

タワーレコードtofubeatsのリリースイベントを見たついでに立ち寄っただけで、正直全く「見ることによる感動」は期待していなかったのだけど、思いの外心を打たれてしまった。

 

そして、こうの史代はマンガがうまいことに今さらしみじみ気がついた。「夕凪の街」を雑誌掲載時に読んだくらいには昔から知っているのに、今さら言いだすのもおかしな話だけど。
 
コマ割りによる時間のコントロール。それによる内面の変化のコントロールがとても巧みだ。
 
たとえば、幼い頃のすずが望遠鏡をのぞく場面では、動作に3コマ使う。これで読者に「それがこの子が今持っている時間や動作の感覚なのだ」と思わせる。
 
すずが大人になってからは、このようなコマを重ねて動作を描く描写は減っていく。その余裕の無さは、慌ただしい戦時下の緊張感に覆われた人々の重圧のようにも感じられる。しかし、リンとすずの桜の樹の上での会話は、丁寧にコマを重ねて描かれる。それは、緊張感を読者に共有させ、すずにとってその時間がどれだけ重要なものだったかを表しているのだろう。こんなことに今さら気がついた。
 
原画を見て感じたのは、その線の頼りないほどの細さだ。これは残念ながら単行本の印刷では再現出来ていない。恥ずかしながらこうの作品の絵には単純な黒ベタがほとんどなく、すべてカケアミやそれに近い斜線の塗り重ねであることに初めて気がついた。
 
そして何より、展示された大量の広島の作画資料写真(2006〜08のものが多かった)や、自作の年表などの取材の痕跡を見て、感極まってしまった。
 
展示されたわずかな資料ノートから、多くの人々が戦争によって哀しみや怒り、どうしようもない喪失を抱えてしまったことが伝わってくる。
そして、それを受け止めて物語を描くことの重さも。
こうの史代はこの作品の制作について、「孤独だった」「人生観が変わった」などと表現しているが、その重さが少しだけ感じ取れるような気がした。
 
 マニアならすでに周知の鳥の羽根や口紅で描かれた原画も展示されていた。口紅で描かれた原画は、もともと口紅で描いた絵をさらにコピーして原稿に貼り付ける形で制作されている。
 
率直に言うと、私はこれまでなぜ作者がそのような方法を取ったのかが理解できていなかったのだけど(もちろん、物語に登場する小物であることは理解しているけれど)、改めて展示を見回すと、作品の中にそういった形で念を込める必要を感じていたのかなとも思う。
 
原画展にはあまり積極的ではない性質だけど、行ってよかった。30日まで。
 
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www.cinra.net

 

この世界の片隅に

この世界の片隅に

 
この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 
この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

 
「この世界の片隅に」公式アートブック

「この世界の片隅に」公式アートブック

 

 

神様は大森靖子に憧れた人の数だけいる/ ユリイカ2017年4月号特集「大森靖子」

神様をやるなら断言してしまった方がいい。

みんな自分の生を肯定してほしいし、自分が立っている場所を否定したくない。
だから、「お前はこうだよ」と断言してあげると安心する。「私の言うことを聞いてればOKだよ」と言えばいい。信者を作るにはそれが一番簡単だ。
 
しかし、多くの神やら宗教やらと呼ばれるアーティストと違い、大森靖子は断定を肯定しない。彼女はアルバム「kitixxxgaia」のリリースに向けて、神を引き受ける旨を表明しているのに。
インスタントにどいつもこいつも神だ神だと言われる昨今ですが、しかしどうしようもないとき我々が叫ぶ「神様助けてください!」は「誰でもいいから助けてください!」と同義なので、ダチョウさん方式で最後に私が遠慮がちに手を挙げて神様やらされることになったとて、それでも誰かがこの世に丸くおさまるなら素敵やん、ですよね。
 誰かの生を肯定するのが、あるいは良く生きるための道標を作るのが神様の役目だとしたら、本来は神様は人の数だけ必要だ。だから、神様を引き受けながら、それがそれぞれのうちにあるものだと表明する。
神というのを作り出せるのは人間しかいないわけですけど、その神というのは人間の思想の剥がれていったところだと思うんですよ。
-「ユリイカ大森靖子特集インタビュー “神様”を作り出す音楽
キチガイアという当初発表から、大人の配慮でkitixxxgaiaという表記になったアルバム名について、大森靖子はこう語る。
それは想像してほしいから、ですね。いろんなものと向き合える言葉が好きなんですよ。わたしの意図はこうです、というのはあまり言いたくなくて。「キチガイア」という言葉が出てきたときに、やっぱりなにかしら考えるじゃないですか。その考えるという作業が削られるのがいやなんです。
-「ユリイカ大森靖子特集インタビュー “神様”を作り出す音楽
大森靖子のファンの中には、彼女の作品にふれて何かを語り始める人、あるいは作り始める人が他のアーティストと比べて圧倒的に多い。本人が直接的にそうするようにアジテーションしたわけでもないのに。神であろうとしながら、考える時間を提供しようとする彼女を観ているうちに、皆が自然と自分自身を探り始めてしまうのかもしれない。
 
ファッションデザイナーの東佳苗による寄稿での言葉を借りるなら、「“世界を変えられる”という根拠のない自己愛を、私たちだって安易に掲げていいんだ。整頓された可愛い自我ではなく、みっともない自己愛が必要だと靖子ちゃんは身を以て教えてくれた気がする」。

自分自身を愛すること。そして、それを表現として表に出していくことの肯定。
 
神様は、大森靖子に憧れた人の数だけいる。
 
特集としては交友録が多すぎて、もう少し批評の形で彼女を立体化する言葉がほしいと思わざるを得なかったけれど。
 
最後の小野島大の「大森靖子クロニクル」は状況の変化に伴う作家としての進化が整理されつつ、現場に立ち会った人らしい生々しい実感も書かれていて面白い。これを最初に読んでから他の論考を読むのがいいのでないかと。
kitixxxgaia

kitixxxgaia

 

あめとかんむり初ライブumbre @中目黒solfa で大比良瑞希、MCpero、kiki vivi lily、八月ちゃんを観ました

かつての校庭カメラガールのもるももる、ソロプロジェクトあめとかんむりで再始動。配信ですでに2曲発表はされていましたが、今回は初ライブということで、tapestokの主催イベント! ブッキングはもちろん、会場装飾もいい感じ。
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kiki vivi lily
寺嶋由芙ちゃんがカバーした「80デニールの恋」(ゆり花名義)で名前を知っていたものの、パフォーマンスを観るのは初めてのkiki vivi lilyさん。
 
マリンキャップに蛍光イエローのTシャツとレザーのミニスカートという甘すぎない可愛さの衣装で登場。
 
安定感のある歌とシティポップ風味のトラックで、気持ちよく聴ける90年代風味のシティポップ&ラップ。
 
福岡から来ているらしく、ちょいちょい西の言葉が挟まるMCにほっこり。歌詞で描かれる女の子はあまり生々しさがないのでギャップが面白い。
 


kiki vivi lily / Goes All Right


kiki vivi lily / LOVIN' YOU trailer

LOVIN' YOU

LOVIN' YOU

 
MCpero
 
ラウンジのDJブースの前にショートボブでナチュラルメイク、白のTシャツにデニム色のバギーパンツの女の子がいて、「あ、今日はドルオタじゃなさそうな雰囲気のある女の子がいる」と思っていたらMCperoご本人。
 
ジャケットやアー写ではロングヘアだったので気付きませんでした。
 
ドクマンジュくんが彼女のアルバム「ひとりあそび」を面白がっていて気になっていたラッパーのひとり。
 
そっけない表情のまま「かかとつぶしたうわばき 思い出はいいことで上書き」というラップするというスタイルはともすれば簡単に「サブカル」のくくりに入れられてしまいそうだけど、彼女の場合はビートがおかしい。
 
重めのドラムが無愛想に配置されたビートに、時折挟まるキュートな電子音。ポップに寄せきってない低音のインパクトと、どこかいたない声質との組み合わせの妙がクセになる。うお……。これ、めっちゃ好きっす。
 
MCでは「私は足立区で働いてるんですけど、久々に渋谷区に来たら街歩く人がみんないけすかなくみえて」。わかる! 中目黒高そうな飲み屋ばっか。
 
音源では低音のインパクトが削がれてしまってちょっと残念。

 

MCperoの一人遊び

MCperoの一人遊び

  • アーティスト: MCpero,CHOP THE ONION,BAOBAB MC(JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB),泉水マサチェリー(WEEKEND),YOSA,食品まつり a.k.a. foodman,TSUBAME(TOKYO HEALTH CLUB),小山秀一郎(中小企業),Chic Alien
  • 出版社/メーカー: OMAKE CLUB
  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: CD
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SKIP / MCpero official MV

大比良瑞希
 
シティポップのくくりに入れてしまっていいんでしょうか。
 
エレキギターかかえて足で機材いじりながら、安定感のある声でしっかりした歌を聴かせてくれるの、アイドルやラッパーにはなかなかないボリューム感がありました。
 
ちょっとハスキーな声にR&Bっぽい苦さみたいなのもあって、そこがまたマッチョすぎず甘すぎない雰囲気とあっていて気持ちよかった。
 
動画でもかっこいいですね。

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TRUE ROMANCE

TRUE ROMANCE

 

あめとかんむり

 
レインコートっぽい浅葱色のジャケットで登場。
 
アイドルだった頃の彼女を思い出しながらドキドキしながら見てしまいました。
 
重量感のあるトラックともるちゃんのひっかかりのある声の不思議なマッチング。ああ、こういうのをハウスミュージックっていうんですね。
 
新曲のrain raderは配信済みの2曲よりピアノが目立つ、メロディアスな色調の音。どういう形で続けるのかわからないけど、アルバムという1パッケージで世界観をかっちり構築したのを聴いてみたくなる感じ。
 
途中のMCでは、「私がtapestokの音楽を守ります」と宣言。なんとなく腑に落ちた気持ちに。
 

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lie night

lie night

  • あめとかんむり
  • エレクトロニック
  • ¥250
i know

i know

  • あめとかんむり
  • ハウス
  • ¥250

 

最後はDJオーガスタことおやすみホログラムの八月ちゃんのDJ。率直に言ってめちゃくちゃ下手くそでした! というか、「DJの良し悪しわからない」ってちょっと前に書いたけど、「これが下手なDJか!」と思いました。でも、8mmでの持ち歌「センチメンタル」を流しながら歌ってくれたのはとてもよかったです。ハハノシキュウさんの、同じ単語を繰り返し使って堂々巡りの感情表現するリリック、ほんと女の子のナイーブさに合う。

最後にもるちゃんが出てきて、八月ちゃんと乾杯。
「ありがとう! 唯一の友達」というもるちゃんの言葉がインパクト大でした。
 
前回のtapes loungeもそうだけど、tapestokがちゃんと組んだイベントは音楽的に満足度が高くてGood。現場でお話しして下さった方々ありがとうございました。
 
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前回の感想はこれ