ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

オンリーワン文化系ラッパーたちとアイドルラッパーたちの競演 "tapes lounge" @中目黒solfa

 校庭カメラガールツヴァイ(以後コウテカ2)、校庭カメラギャル(以後ウテギャ)、もるももる、colobs、faelaが所属するインディーズレーベルtapestok recordsの主催企画。

tapestok records | Free Listening on SoundCloud

 1月30日にセカンドEPシューマッハ、4月にはアルバムとリリースの続くウテギャがこの日のOPとトリ。

 会場の中目黒solfaはクラブミュージックに強い箱のようで、入り口のガラスのドアや、メインフロア奥に用意されたイスと小さなテーブル。そしてバラエティー豊かなアルコールメニューと、瀟洒なバーのような雰囲気。ライブハウスと違ってくつろぎながら音とお酒を楽しむ場という感じ。

 この日のブッキングも通常のアイドルイベントとはちょっと違い、ソロラッパー4人にアコースティックギター1人、アイドルラップユニット2組という顔ぶれ。

ギャルトーク

 MCの下手なウテギャ2人のためのトークコーナーだとか。「最近何してる?」というラミタタラッタの振りに「夜な夜な男をくどいている」と答えるパタコアンドパタコ。ゆるくソシャゲの話で盛り上がる。微妙な表情で見守りつつ、ちゃんと反応してあげるオタクの健気さに胸を打たれる。

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maco marets

 20代前半と思われる男性ラッパー。細身の体にジャジーなトラック、そして何気ない日常の情景を気負いなく描くリリック。聴きながら佐内正史平間至の写真を連想する。

 MC中に「前も出させてもらって。その時、アイドルのお客さんっていいなって思って。『ぼくはかわいい女の子じゃないですけど』って言ったら『かわいいよー!』って返してくれて。そういうあったかい感じが」という言葉に、「かわいー!」の合いの手。うん、かわいい。余談だけど、彼のライブをアエロさんがうまく言語化していてなるほど。同じライブを見た人の感想はいつでもいくらでも読みたい。

 

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ORANG PENDEK

ORANG PENDEK

 

 

 次の演者の前に、つなぎでハハノシキュウのフリースタイル。「フリースタイルダンジョン呼ばれてない!」「フリースタイルダンジョン呼ばれてないイベントにも呼ばれてない!」「ジブラの箸投げたやつらというライン、ずっと日本人だからわざとそうしてるんだよって言ってたら、ツイッターで勘違いだって謝ってた!」など、サービス精神旺盛なラインに笑ってしまった。

Vivid Jas

 tapestokのディレクターであり、リリックの担当者。DJからフリースタイル、オリジナル曲、Curtain Callの原曲という流れだったかな。やっぱりクルーのもとになる人なんだなというのを確認。そして、このリリシズムがアイドルと出会えてよかったなというのも改めて実感。

隼マサカド

 ポストロックバンドcolobsのボーカル&ギターであり、コウテカ曲として、Where the Wild Things、Unchanging end Roll、iUMなどを手掛ける隼マサカドのアコギ弾き語り。ふくらみのある声、宇宙や透明といった抽象度の高い歌詞、そしてギターの無理のない演奏が心地よい。Where the Wild Thingsのセルフカバーも聴けた。

 

【MV】ぼくたちの流星群 / colobs

音像とコスモス

音像とコスモス

 

 

春ねむり

 「ロックンロールは死なない」Tシャツで登場。「ジャンルはヒップホップで、こころはロックンロール」とある通り、泣き出しそうなのに強い意志の宿る声や、ステージから降りて客をあおる姿、怒りを覚える対象に対する辛辣なMCは少し前の大森靖子を思い出させる。誰かに似ていると言われるのは本意ではないだろうけど、猿真似というわけではなく、表現のための最適を追求し続けた結果としてそうなったという印象。
「ずっとずっと夢を見てる」「ロックンロールは死なないよ」というサビが声色とともに耳に残る。この日はMCで蔦谷好位置プロデュース「さよならぼくのシンデレラ」のMV制作に関するクラウドファンディングについて説明していて、マネージャーが懸命にチラシを配っていた。


BAYCAMP2016 TIP OFF ACT 春ねむり(完全版)

 

さよなら、ユースフォビア

さよなら、ユースフォビア

 

 

ハハノシキュウ

 最前が女の子10人ほどに入れ替わる。咆哮系ラッパー2人目なんて書くと怒られるかな。ただ、春ねむりが歌詞には属人的な言葉を使いながら、大きな救いを歌うことに挑戦し続けているのと対照的に、ハハノシキュウは歌詞にあまり一人称を用いず、顔をキャップとマスクで隠し、地声をつぶしたしゃがれ声で、語るほど結論から遠くなるようなリリックをラップする。以前「僕の私小説は語るに値しないくらい空っぽだから」と書いていたけど、その思想が外見にも反映されているのだろう。ただ、一人MCバトル(客席からお題を募って披露するフリースタイル)という余興を挟んだ後に披露された「ストーリーテラー」は明白な自分語りの曲。彼がこれまで見聞きしてきた現場の空気や感情の揺れが端正な言葉でつづられていて、描かれる風景に迷いがない。

 聴き終えた瞬間、ふいに高校・大学のころに春ねむりやハハノシキュウに出会っていたら「こんな人がこんな小さな場所で歌っていて、自分がそれを見ている」ことに優越感やいらだちを感じただろうと思う。神秘性の高いキャラクターなので、女性ファンが多いのもよくわかる。これも小さいけれどフリースタイルダンジョンの成果なのだろう。

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リップクリームを絶対になくさない方法

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  • アーティスト: ハハノシキュウ,沈黙を語る人
  • 出版社/メーカー: インディーズレーベル
  • 発売日: 2012/05/11
  • メディア: CD
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ストーリーテラー

ストーリーテラー

  • ハハノシキュウ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200

 

O'CHAWANZ

 コウテカ2メンバーがセカンドファクトリーに移籍して2人組アイドルラップユニットとして活動開始。赤チェックのワンピースののんのんれめると白のブラウスに若草色のスカートのしゅがーしゅらら。コウテカは世界観へのこだわりのためか、MCがほぼないのが常だったけれど、「今日で2回目のライブなのに、持ち時間が30分もあって……。でも、これはJasさんからの試練だと思う!」などの呑気なMCがほがらか。

 ただ、曲が以前同事務所に所属していた双子のアイドルラップユニットMIKA☆RIKAのカバーだったのはやはり気になった。技術的にも声質的にも問題はないと思うけど、何せMIKA☆RIKAのイメージが強すぎて。オリジナル曲が増えれば安心して見られると思うのだけど。恋愛サーキュレーションのカバーはとてもかわいかった。

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校庭カメラギャル

 

 事前のツイッターでのあおりから、1曲目から新曲「ギャルバーガー」投入。ミクスチャーロックというジャンルらしいけれど、攻撃的な音でオタクの熱量がガーッと上がるさまがすごかった。

 改めてウテギャは不思議なユニットだ。冒頭でたわいもないトークを繰り広げていたほわっとした女の子2人が、ステージでいきなりキレ気味に客をあおりだす。時には客へのdisも交えて。それに答えるように熱量をあげていくオタク……。やっぱ、ちょっと特殊。

 でもパタコやラミタのヤケクソ気味のラップには嘘がない。普段はおとなしい女の子たちの中に宿るルサンチマンや衝動を、「disるアイドルラップ」という形式が引き出している。

 E-TICKET PRODUCTIONプロデュースのライムベリーにも挑発的なリリックはあったけれど、あれは小生意気の範疇。コウテカのdisは歌詞の属人性が低いために言葉遊びの一環という印象。

 しかし、ウテギャは
「音楽知らないから 首降らずカカシ 今日もつぶやく音楽の話 と見せかけてただのアイドルの話」
「別にここは君の夢を再現する現場じゃないんだよ うっさいなもう黙ってろよ」
「おいそこのおっさん背後に気をつけな」

などと過剰に目の前の客に対して攻撃的なのだ。それを面白がるオタクとアイドルの不思議な共闘関係。

 1曲目から最後まで盛り上がりの途切れないステージで、終わった後のオタクたちのイイ顔ぶりが光っていた。

 

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 体調不良のために終わってすぐに帰宅したけれど、世界観をしっかり持ったアーティストばかりで全組楽しめた。

 日頃アイドルアップと日本語ラップは互いを別物扱いしている印象で、どちらも好きな立場としてはちょっと寂しい。別にハマらなくてもいいので「あっちはあっちで面白いことやってるんだな」と思ってくれる人が増えないかなとは思っていて、このイベントはまさにそういう内容だったと思う。主催イベントは大変だと思うけれど、またtapestok recordsにこういう企画をやってほしい。