ホンのつまみぐい

各エントリに貼ってある写真は本文と関係ないこともあります。

「ストリップの過去と未来」を考えるにあたって参考にした文献リスト

キャバレー&ストリップ同人の書き手として名高いうさぎいぬさんに「ブックリスト公開します」と約束していたので参考文献の一部を紹介します。

小沢昭一の著書に代表されるような、古いストリップに関しての本や、フェミニズム関連の本もいろいろ読みましたが、「ストリップの今を考える」のに必要そうなもの、何らかの形で本文に影響を与えているものをここでは紹介しています。

一部感想つけましたが、ないものがつまらないわけではないです。

また、「21世紀の『性器考』」や「一条さゆりの真実」「セックスワーカースタディーズ」など、読むべきだけど読めていないものもあります。(読んだらこのエントリに付け足すかもしれません)

アダルトカテゴリ商品は、はてなブログでのAmazonリンク対象外のようで、取り扱いはあるのにリンクが貼れなかったものがあります。

 

踊り子の自伝・評伝

初代一条さゆり伝説―釜ヶ崎に散ったバラ

初代一条さゆり伝説―釜ヶ崎に散ったバラ

 

不世出のストリッパー・一条さゆりは引退後、交通事故やつけ火でのケガによって身体を壊し、最終的に釜ヶ崎で亡くなります。毎日新聞の記者であり、関西地方で取材を続けていた著者の聞き取りと、死後の関係者への取材によって書かれた1冊。彼女を支援していた人々の記述がかなり詳細で、福祉の現場レポという側面もあり。

ストリップ万歳

ストリップ万歳

 

 

踊り子の日記

踊り子の日記

 

 ・アイドルストリッパー×4(バイフォー)  山岸 伸(大海社) 

 

支配人らの自伝・評伝

 

伝説の女傑 浅草ロック座の母

伝説の女傑 浅草ロック座の母

 
伝説の女傑 浅草ロック座の母

伝説の女傑 浅草ロック座の母

 

浅草ロック座の伝説の支配人・齋藤 智恵子の自伝。後半はビートたけし等芸能人とのつきあいの話が増えますが、面白いのは圧倒的に戦後すぐの興業の話。劇場の女性支配人は彼女以外にもいましたが、ヤクザに襲われてすごんで肩を切り付けられた話など、武勇伝の多彩さが面白いです。

1985年に二代目の進言で2億円かけて照明や音響にコンピューター導入をしたことが、今の浅草の立ち位置を作っているというエピソードが印象的。投資、大事。 

女は天使である―浅草フランス座の素敵な人たち

女は天使である―浅草フランス座の素敵な人たち

 

 

浅草フランス座の支配人にして、ひもとしてストリッパーのマネージメントをしていた佐山淳による劇場周りの回顧録萩本欽一渥美清らの修業時代のエピソードも。印象に残った踊り子のこともいろいろ書いておりますが、個人的にはストリップを卒論テーマに選び、自身も踊り子として舞台に立った女の子のことが気になりました。彼女は運悪く逮捕されることになるのですが、最後まで「何も悪いことしてないのに!」と憤慨していたそうです。

ひも (光文社文庫)

ひも (光文社文庫)

 

佐山淳の成り上がり録を、「ひも」としての実態を軸に書いた伝記小説。そもそも「ひもは女をセックスでつなぎとめて貢がせる存在」なんですけど、まだ経験のない女の子とどんどんセックスしてく様子、完全にレイプ魔じゃないすか……。いや、同意も多いけど、99の同意があったからって1の強姦が正当化されるわけではないので。昭和のモラル怖! 小説の形を取ってるせいか、いろんなことがあけすけに書いてあります。当時の感覚を知るために読んでおいた方がいいかも。

ヒモ一代

ヒモ一代

 

こちらは関係者による佐山についてのエッセイ集。

さらばストリップ屋

さらばストリップ屋

 

www.e-hon.ne.jp

2015年に「すとりっぷ小屋に愛をこめて」と改題し再販。

劇場関係者の自伝・評伝は少なくないですが、多くの本がいわゆる勝者の物語であるのと対照的に、本書は敗者の物語。流山寺祥や山崎哲などアングラ演劇人とのコラボ、泥レス、SMショーなどなど、数々のアイデアで劇場を運営してきた著者。しかし、それは摘発に悩まされる日々でもありました。

独立して劇場を立ち上げ、合法のショーを企画するも、惨敗してトラック運転手に転職……というところで本書は終わり。ストリップ運営の苦しさが詳細に書かれています。生板をやれば3万8千~4万円、白黒なら4万8千~5万円などと細かいギャラが記載されていて、資料的価値が高いです。図版も充実。摘発対策のための複雑な運営体制についての描写も。

ストリップ血風録―道頓堀劇場主・矢野浩祐伝 (幻冬舎アウトロー文庫)

ストリップ血風録―道頓堀劇場主・矢野浩祐伝 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

戦後すぐに九州で愚連隊をやっていた矢野ですが、指を詰めさせられたのをきっかけにヤクザの世界から抜け、ドサまわりのストリップを始めます。それから紆余曲折、一時はカタギのセールスマンとしてそれなりに成果を出していたのに、結局ストリップの世界に舞い戻り、最終的に渋谷道頓堀劇場の支配人として名をはせる……。ある種のピカレスク浪漫ものですね。

破天荒な少年期、昔話のようなドサ周りストリップ期、影山莉菜、清水ひとみなど、ストリップ界に次々とスターを誕生させる道頓堀劇場期とそれぞれが面白いです。

渋谷道玄坂百軒店より愛をこめて―俺の「道頓堀劇場」物語

渋谷道玄坂百軒店より愛をこめて―俺の「道頓堀劇場」物語

 

こちらは矢野自身の書いた自伝。映画になっているようです。

movie.walkerplus.com

 

ストリップの帝王

ストリップの帝王

 
ストリップの帝王 (角川書店単行本)

ストリップの帝王 (角川書店単行本)

 

 

ストリップ界のドンと呼ばれた瀧口義弘。

彼は実姉であり、伝説のストリッパーでもある桐かおるに依頼され、銀行マンという安定した職を捨てて劇場の帳簿付けになる。

ヤクザ相手に立ち回りを演じた。ダイナマイトを腹に巻いて警察に乗り込んだ。ピーク時には300人の踊り子を管理するプロダクションを仕切っていた。月収1億8千万に達しながら、すべてをギャンブルで使い切ってしまったなどなど……。

強烈なエピソードからはエネルギッシュな無頼を想像しがちですが、野心があったというわけでなく、時々で合理的な運営方法を淡々と行っていくうちに巨大な存在になっていたという不思議な人です。

妻子ある身で何の相談もせずに銀行マンを辞め、そのまま離婚してしまうなど、考え方や行動原理に理解の及ばない部分が多いのですが、かといって倫理観がないかと言えばそうでもない。裏社会の人間は、「善良な人でも持っている物差しが違う」と思うことがありますが、それを体現するような存在です。

本書では瀧口が個室やなま板を収益の柱としたことで、結果的に「業界の破壊者」になってしまったのではないかと指摘しており、ストリップの歴史を考える上でも重要な資料になっています。

現在休業中の踊り子・松本幸奈も少し出てきます。

 

ノンフィクション・エッセイ

昭和ストリップ紀行

昭和ストリップ紀行

 
昭和ストリップ紀行

昭和ストリップ紀行

 

劇場写真と働く人々への取材で構成された本書。平成の取材だと思いますが、過剰なくらい人々がイメージする「昭和っぽさ」を強調してます。資料的意味を考えるともうちょっと明るく撮ってもよかったんじゃないかと思うくらい。文体もどこかノスタルジックです。黄金劇場の支配人の顔写真が載っているのが個人的にグッド。

 

臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

 
臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

臆病な詩人、街へ出る。 (立東舎)

 

若手詩人、文月悠光による体験記。「ストリップ劇場で見上げた裸の『お姉さん』」は、自分自身の臆病さに向き合いながら踊り子に対する敬意を綴る名エッセイ。「相手に指一本触れさせずに、『与える』ことができるんだ。そんな実感が押し寄せて、目頭を熱くさせた。」という描写、観た人ならわかるはず。

男しか行けない場所に女が行ってきました

男しか行けない場所に女が行ってきました

 

「人妻アロマオイルマッサージ」「ドール専門風俗店」「密着型理髪店」「パンチラ喫茶」などを女性である田房が取材。居心地の悪さや理不尽さに対する怒りを直截に綴るルポ。基本的にほとんどの場所で息苦しそうな著者が、ストリップ劇場で号泣している様子に胸が熱くなります。

さいはて紀行

さいはて紀行

 

珍スポットライターとして名をはせ、ストリップについても多くの記述を残している金原みわの著書。ストリップに関しては、芦ノ牧温泉劇場についてイラストも交えた丁寧なエッセイがあります。いわゆる面白要素のピックアップではなく、すぐ近くの異世界を、どこか郷愁を感じながら見つめる目線が光ります。

ほのエロ記 (角川文庫)

ほのエロ記 (角川文庫)

 
黄金町マリア――横浜黄金町 路上の娼婦たち

黄金町マリア――横浜黄金町 路上の娼婦たち

 

地図にない町「黄金町」が、アートの街として消毒される以前に生活していた人々―黄金町の外国人娼婦たち―の記録。ちょっとだけ黄金劇場の話が出てきます。

エイズで亡くなったタイ人娼婦の両親を尋ね、タイまで訪れる著者の熱量と、その熱を過剰に押し出さない筆致のバランスがすばらしいです。週刊誌のカメラマンとして活躍した著者による、夜の街を生きる人々の写真はどれも薄暗く、安易なノスタルジーを寄せ付けません。

主に故郷を離れて過酷な生活を送る女性たちの話ですが、ちょんの間での生活を割のいいバイトのように何の屈託もなく語る若林美保が出てきたり、現場での観察が人々の生活を単純化しません。

じゃぱゆきさん (岩波現代文庫―社会)

じゃぱゆきさん (岩波現代文庫―社会)

 

1980年代、アジアから日本に出稼ぎに来ていた女性の実態を詳細に書くノンフィクション。貧しいアジアの国の苦しさ、入管のという組織の不誠実さ、日本人のアジアや性風俗従事者に対する強固な差別意識や低い人権意識などを丁寧な取材であぶりだしています。

日本における人身売買の実態や、蕨OS劇場での醜悪な生板の様子は、まぎれもなく日本の性の歴史の一部であり、今も続くこの国の人権意識の低さの証明なので、ストリップの歴史を知っておきたい人なら読むべき1冊。

沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち

沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち

 

 

法律関連

「スト客向けの本を1冊だけ選べ」と言われたら迷いなく勧めたい一冊です。ストリップ劇場の営業についての話はほぼないんですが、戦後日本において風俗営業がどう取り締まられていったかの歴史は、日本社会がどのように性を扱ってきたかにまつわる歴史でもあるので。法律と人権、そして国家と警察の関わりを丁寧に可視化する、今後のストリップを考える上で外せない1冊。

性を巡る法律の変化とその背景について現役弁護士が丁寧に書いた本。女性が社会においていかに不利な立場に追いやられているか。そして、法はそれにどう対処すべきかを見つめ直させてくれる良書です。直接参考にしたわけではないのですが、読めてよかった1冊。

 

小説

裸の華

裸の華

 
裸の華 (集英社文芸単行本)

裸の華 (集英社文芸単行本)

 

ステージ上での事故によって引退し、すすきのでダンスシアターを立ち上げる元ストリッパーのノリカ。孤独な天才肌のみのりと、ほがらかでタフな瑞穂の二人のダンサーと出会い、さまざまな出来事を乗り越えていくうちに、ノリカにも変化が……。

狭くて薄暗い場所だからこそ生まれる親密さについてたっぷり描いているところに、現場を見ている人ならではの強度を感じます。ストリップ好きなら泣くだろうと思う場面でベタに泣きました。

誰もいない夜に咲く (角川文庫)

誰もいない夜に咲く (角川文庫)

 

「フィナーレ」というストリップをテーマにした短編が収録されています。

 

人文・評論

永久保存版・煌めく昭和 あのアイドルがなぜヌードに (文春e-book)
 

別冊宝島Real021アイドルが脱いだ理由」(2001年)の再編集。裸を「見る&見られる」ことについて様々な議論が交わされています。ヌード写真集は基本的に男性が企画して、男性が撮影して、男性が消費するもので、そこがほぼセルフプロデュースのストリップとは大きく違うなと。小泉今日子の原住民ヌードとかいうあからさまに差別的な意匠が許されていて、何ならサブカル的でイケてるみたいに消費されていた話が衝撃でした……。

芸能的思考

芸能的思考

 

民俗芸能や大衆芸能についての研究者・橋本裕之の著書。ストリップについてかなりの紙幅を割いています。大衆演劇とストリップの関わりや、踊り子たちの生き方など、題材も多様。客同士の交流について温かいまなざしを向けているのも、いい意味での現場主義指向が感じられます。貴重な「小屋掛け」ストリップについての証言もあり。

社会が漂白され尽くす前に: 開沼博対談集

社会が漂白され尽くす前に: 開沼博対談集

 

AV女優、飛田新地、ヤクザ、北朝鮮といった「グレーゾーン」という言葉で表現される業界や場所に関わる人々。あるいは家族を殺された男性、福島で活動する詩人といった複雑な立場の人々へのインタビュー集。全体的に読み応えのある内容ですが、中でも風営法改正と向き合うクラブ関係者の思惑、飛田新地のスカウトマンが語る風俗営業の実態は必読。

www.museumshop-yokohama.jp

一般流通していませんが、印象的だった展覧会の図録。神話的モチーフを採用することで、後ろめたいことなく裸体を消費する19世紀から、現実の女性の裸体を描く20世紀。

20世紀のリアルな身体描写が当時の社会に否定されていた話は、「女性の身体は常に社会の視線に翻弄されている」という事実を端的に表していると思いました。

hontuma4262.hatenablog.com

「AV女優」の社会学

「AV女優」の社会学

 
鞭打ちの文化史 (中田耕治コレクション)

鞭打ちの文化史 (中田耕治コレクション)