ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

「ラブホテル」「おんなの細道 濡れた海峡」

 ジャック&ベティに日活ロマンポルノを観に行った。

 お目当ては相米慎二の「ラブホテル」。
 相米さんの映画はあまり観ていないのだけど、理屈をこつこつ書いていくことで11歳の女の子のぴりぴりした感情を描いていた原作小説に対して、映画でしか出来ない大嘘で挑んでいる「お引っ越し」を何となく覚えていたので見に行ったのだった。

 初・日活ロマンポルノはとても面白かった。
 ダメな人間しか出てこなかった。あっ、違う。人間のダメなとこばっかり撮っててすごくよかった。
 特に、自分の会社を潰して嫁を債権屋にレイプされてヤケになってホテトル嬢をレイプしようとする寺田農は、小心さと丁寧な言葉使いが際立っていて最高だった。そんなダメな寺田農を、今の自分の不倫相手より紳士的で自分を神格化してくれているという理由で心のよすがにしてしまう元ホテトル嬢速水典子もよかった。みんなこまめに裸になってくれるもんだから情けなさがえらく説得力を持っていた。しかし原作が石井隆だったことには驚いた。

あまりに面白かったので、次に上映される作品も観た。

 タイトルは「おんなの細道 濡れた海峡」
 三上博史が出ると勘違いして観たら、出てきたのは三上寛だった。しかし、これも相当面白かった。
 三上寛は、ストリッパーの島子を愛する小心者で流されやすい男を演じる。役名はないので、今後「男」と明記するがご容赦。島子と男は二人でストリップ小屋のやくざ社長に引導を渡しにいく。しかし、激高した社長に殺されそうになったために男はほうほうの体で逃げ出してしまう。島子は虫歯の痛み止めでラリったままストリップの舞台に立ち、男は雪国を放浪しながら行く先々でセックスをする。三上寛は一見朴訥そうな風貌で様々な女の慰め役を引き受けるが、それぞれの女たちが抱える影には介入しない。バスで出会った女が自殺するために崖に消えていったのを見て「ありゃあ、死んじゃったよ」と言葉を漏らすような男だ。誰でも受け入れるが、深入りしない。女たちも肌を温めるために男とセックスするが、それはきっと男が性欲処理の相手に使っても傷つかないと分かっているからだろう。

 盛岡の安宿で出会ったカヤ子はヒラさんというイケメン(石橋蓮司だ!)漁師の現地妻なのだが、そろそろ自分は捨てられるのではないかと思っていて、さみしさを紛らわすために男と寝る。

 翌日、カヤ子と男がうどんを食いながらいちゃいちゃしているとヒラさんが帰ってくる。ヒラさんは怒るが、カヤ子の寂しさを責められない。カヤ子はいたたまれずに出て行ってしまい、寂しそうなヒラさんと男は一緒に酒を呑む。

 トイレに行きたいという男に、ヒラさんがしびんを差し出す。男の勢いのあるしょんべんを見ながら、俺はもう年だからこんなに勢いのあるしょんべんが出来ないというヒラさん。しみじみと寂しくてみっともない。男が少しの間席を立つと、いつの間にか、ヒラさんとカヤ子はよりを戻してセックスしている。お前ら犬か。

 そういうちょっとしょうもない心の動きが北国の冷えた空気の間をほわほわ行き来している様子がとてもよかった。ダメさの間をふらふら漂いながら流され続ける三上寛はまるで各地の人々のダメさを巡礼する旅人のよう。盛岡の風景が不思議な風格を保証する名作だった。

 ちなみに原案は田中小実昌の『島子とオレ』と『オホーツク妻』らしい。はしばしに出てくるポロポロという言葉も田中の小説からなのだろう。

 あー、しかしロマンポルノよかった。何がいいってとりあえず裸になってしまうことで、みっともなさとか情けなさから逃れられないところが。もちろんほかのロマンポルノすべてがこういった風袋であるとは思わないが、もっといろんな作品が見たいと思ったのでした。

ラブホテル [DVD]

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ポロポロ (河出文庫)

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