マンガParkが「花とゆめ」と「LaLa」の作品を期間限定無料配信しており、おかげで白泉社のマンガをたくさん読んだので感想を。
読み切れなかった作品もあった。「彼方から」は世界観にうまく入り込めず。「花咲ける青少年」は、「強い人間が啖呵を切るとみんなが言うことを聞く」という展開にのれず。「みかん絵日記」は懐かしかったけど時間がなく。
幼い頃から俳優として働いてきた双子の美少年サイファ(ロイ)とシヴァ(ジェイク)と、闊達な女の子・アニスを中心としたビルドゥングス・ロマン。
美少年がたくさん出てくるマンガは女の子の扱いから作者自身が抱えるミソジニーが透けて見えることがあり、楽しみ切れないことが多い。しかし、「CIPHER」は男女の友情、男性同士の友情、女性同士の友情がそれぞれ丁寧に描かれていて、「みんな幸せになってくれ~~」と言いながら読み切った。
双子と親しくなりたいと思いながらも、無理やり秘密を探ろうとしないアニスの思いやりや、のびのびと遊んだ経験のないロイを連れ出すルームメイトのハルの繊細なおせっかいぶりなど、愛情深いけれど不躾にならない登場人物の行動が気持ちいい。
さまざまな人種や階層の人々をフラットに出そうとする気遣いも、作者の世界に対する理想が見えて好ましい。重たいテーマを扱っているのに風通しのいい作品。
ただ、現在のアメリカを取り巻くニュースを見ていると、楽天的にも見えてしまう。連載時はそれだけ誰もが未来に対して希望を持っていた時代なのだと思う。
久々に頭から終わりまで読んだ。今読んでも大変面白いし、見方が変わるところがたくさん。良いところも悪いところも。改めて読むと新吾は徳が高い。見習いたい……。
去年から今年にかけて歌舞伎、文楽、大衆演劇を観る機会に恵まれたので、それを踏まえて読み直すといろいろ発見もある。
今インターネットでは「ポエム」という言葉が「(笑)」つきで扱われるものになっているが木原敏江のポエムは最高。朗読したくなるような流麗な言葉は、「紡ぐ」という表現がぴったり。あんまり言われてないけど、時々謎にダサいギャグが入るところも私は好き。
最初に読んだ高校生の頃から思っていた「ささめちゃんと一二三ちゃんの扱いどうなの?!」話が友人と出来てよかった。やっぱ引きますよね。レズビアンの友人ができた後に読むと、美女夜さんの扱いはさらに……。
木原敏江がもう少し女そのもの、人間そのものを憎んでいる人だったら「仕方なし」と思ったかもしれない。けれど、木原マンガ全体に漂う「まるで日射しのように明るくて柔らかい生の肯定」をぎゅっと吸い込んできたので、「明治・大正・昭和という舞台設定と、執筆された70年代後半~80年代前半という年代を考えると責めたくはないけど、やっぱりつらいな~~!!」という気持ち。
久々に↓のエントリがよく読まれて、「エレガンスの女王」が10冊売れた。
めちゃくちゃ面白かったけどいろいろ考えてしまい、新しくエントリを立てた。
時代の風を強く吸い込んで生まれた作品であることがよくわかって複雑な気持ちになった。私は津田がたびたび描く、芸術や美しいもの(恋や愛ももちろん含む)へのあこがれにとても共感する。世界全体に違和感を覚える人間は、光を見出す意思を背負うことで、やっとこの世で呼吸ができる。津田は「世界全体がとても苦手」な人なのだと思う。
一方で、生きづらい世界に産み落とされてしまった人々に対し、幸せであれと願う気持ちはとても強い。これは彼女の作品に通底するテーマだろう。しかし、だからこそ、後半の展開に「それはダメな道だ」という気持ちになった。これは長文で語りたいところだが……。そして、久々に読んで川原泉の系譜だと思った。
序盤は楽しく読んでいたけど、途中から料理修業描写が物足りなくなっていったのが残念。恋愛パートも「みんないい子だし(マジでめっちゃいい子)、誰と誰がくっついてもそれなりに幸せになるのでは?」という気持ちになって盛り上がらなかった。それにしてもものすごい陽のオーラあふれる作品だった。
松苗さんの熱心な読者ではなかったけど、伝説の少女マンガ雑誌「ぶ~け」の話が次々出てきてうれしかった。「ぶ~け」の話すると長い人いっぱいいると思うし、私もそのひとり。いや、本当にもっと語られていい雑誌だと思う。内田善美と一条ゆかりが優しい先輩作家としてよく出てきてなんだかとてもよい。バブル期に家を買ってしまい、ローンを返すために必死で働いていたという話にちょっと笑った。ダラダラと自分語りを交えた長文を書きたくなる本。
戦時中、大政翼賛会の宣伝部が翼賛運動の宣伝用に、「翼賛一家」というキャラクターと設定を無料配布していたという。その設定を基に作られた演劇や音楽、漫画について探ることで、国策が大衆文化を取り込んでいく過程が見えてくる。
国策が大衆文化を取り込むというと、上から押さえつける姿を想像しがちだが、国が配布したフリー素材をもとに制作することで、クリエイターや市民が国策を内面化していくのが怖い。
”戦時中でも朗らかに”をうたう「笑和運動」というプロパガンダが、ついに“ニツコリ笑つて万歳して死にましょう”という「ニコニコ共栄圏」にまで進化するというのが気持ち悪いし、期せずして「ニコニコ動画」を連想させるのが、大塚の経歴を考えると運命的。
最後の章では「『翼賛一家』の二次創作」として、「手塚治虫の『勝利の日まで』」を再びとらえなおす。「アトムの命題」に登場する「勝利の日まで」論を下敷きにしたものだが、「翼賛一家」というフィルターの上で読み直すと、「勝利の日まで」の奇妙な存在感が増してくる。
付論の3つ、「漫画を描く読者」の成立(鈴木麻記)、一九三〇年代中国漫画のメディアミックス(徐園)、可東みの助の運命(大塚英志)もそれぞれが1冊の本にできそうなほど面白く、全体的に読み応えのある本だった。
ネット連載がベースになっており、とても実用書的な内容。読み物としては物足りないけど、たとえば仕事で急にキュレーションブログを書かなくてはいけなくなった人や、MAD動画を投稿したいけれど、何がセーフかわからない人などにはありがたい内容だと思う。
手紙は「書いた人の著作物」なので、勝手に公開してはいけないというのは、よく考えるとたしかにそうだが、まったく気が付かなかった。
コミックビームに連載されていたビーム関係者のインタビュー集。マンガ家だけでなく、名物編集者の奥村勝彦やデザイナーのセキネシンイチのもとも訪れる。
語り口調を取っているので、姫乃さんの主観と作家の証言が曖昧になる箇所があり、ちょっと混乱する。その変わった処理がうまくいっているものもあれば、いないものもある。
最後の夏目房之介との対談が印象的に残る。
夏目:日本の漫画って、「癒やし」なんですよね。これはぼくの主観なんだけど、海外のいろいろな国で、日本の漫画やアニメのファンに会うといつも思う。正直、「この人は、自分の国でうまくやっていけないんだろうな、ツラいんだろうな、違和感をすごく持っているんだろうなぁ」って人ばっかり。
姫乃:ああ、愛しいなあ。
夏目:日本の漫画やアニメのファンは、みんな優しいし、すごくシャイなの。「おまえ、アメリカ人だろ?」って驚くような人が多い。多分、日本の漫画は優しいんですよ。もともと10代の男の子や女の子に向けたテーマで作ってきたので。
私も間違いなくマンガの「優しさ」に救われてきた方だと思うけど、一方でそれが排他性や閉鎖性につながっているのではないかというのを最近とみに思う。
今度の『オレンジページ』すごく使える!これまでの人気ナンバーワン特集…おっさんはなんでも野球部で例えるそうなので、いっちょがみしますと、オールスター戦みたいなもんです。おまけにどっかからパクってきたんではなく、ホントのオリジナルレシピで、たぶんどれも爆裂うまくて、家の定番になる。 pic.twitter.com/ChVIrze8Gd
— 鈴木智彦/SUZUKI TOMOHIKO (@yonakiishi) 2020年6月17日
ツイートを見て買った。さすが老舗の料理本出版社だけあってなかなか使いやすそうだし、作ってみたいレシピもいくつかあるけど、煮物と魚がほぼない。小さいお子さんがいるような若い家庭向け? 見開き部分がもやしと豆苗の特集なのは計算だろうなあ。
地元で購入。特集のベーシックインカムについてはあまりピンとこず、雨宮処凛の取材による路上生活に関するルポが心に残った。
弟がよくunlimited対象の電子雑誌をいろいろ読んでいて、「こんなのもある」とおススメされた中の1冊。普段は警察の活動紹介が中心の、一種のグラビア誌のよう。しかし、素材がないせいもあってか、今号は政治に対する怒りが延々と綴られた「正しい保守のためのオピニオン誌」みたいになっていた。記名がないのでどんな方が書いているのかわからないが、文章からなんとなく警察関係者のOBが中心になって作っていることがうかがえる。