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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

ウルトラ怪獣前夜の造形「YÔKAÏNOSHIMA」 シャルル・フレジェ展 銀座メゾンエルメス フォーラム

美術・展示

 レンズで妖怪を捕えるフランス人が日本に来た。

 フランス人写真家のシャルル・フレジェだ。彼は日本列島58箇所で多くの怪物や怪人を撮影し、それらのポートレートを銀座のエルメスギャラリーで展示している。
 
 妖怪の正体は各地の祭事や神事の仮装を撮影したものだ。本来豊作や疫病よけ、子孫繁栄を祈るものとして生まれた奇怪な仮装は、フレジェのレンズを通して四角の中に切り取られた。
 
  赤と青の仮面がつややかななまはげは、雪の中に佇むとまるでカプセルトイのようだ。美しい着物に編笠をかぶり、サングラスと頭巾で顔を隠した女性が砂浜に立つと、途端に女性たちは仮面ライダーの怪人のように写る。
 
 着物と仮面を身につけた人間が、背中を少し丸めるだけで、人らしくない風情が生まれる。異形から神が見いだされる絶妙な角度でフレジェはYÔKAÏをとらえている。
 
 一方で彼の写真はどれも明るい。雪の上や砂浜で撮られた写真はもちろんのこと、山中や家屋の中で撮られた写真も基本的に被写体に影を作らせない。こうした光の扱いにより、YÔKAÏたちは、まるで特撮番組の宇宙怪獣図鑑に掲載された着ぐるみのようにも見える。
 
 神事・祭事から神が生まれる瞬間をとらえつつ、それらを昆虫標本をピンで留めるように淡々と並べていく。それは、神への畏敬なのか。それとも、フリークスへの無邪気な憧れなのか。
 
 こうした独特の距離感が、私たちの先入観を一掃させ、これらの仮装の個性を際立たせている。
 
 日本はこんなにあざやかな赤を使いこなす国だったのか。あるいは、こんなに動物をスクエアな造形に落とし込む国だったか。展示の中にはヨーロッパの異形たちの写真もあるが、それとの比較をするのも面白いし、発見がある。
 
 今回の展覧会のために書かれた多くの文章では、フレジェの写真の「民俗学的な視線」について言及しているものが多かった。
 
 私が連想したものはウルトラマンと怪獣たちである。ウルトラシリーズキャラクターデザイナーとして活躍した造形家の成田亨が、怪獣デザインの際に神話を研究していたことや、後年鬼のモニュメントを作成していたことを思い起こさせた。また、日本のゴジラの、破壊者であるにも関わらず、どこか稚気を帯びた造形もこれらの写真から受け取るユーモラスさと根底で繋がっているように思えた。
 
 そうか、ウルトラ怪獣たちの源流はこんなところにあったのか。あとは、横浜の帽子おじさん・宮間英次郎か。そして、こうしたさまざまな仮装から連想されるもの、すべてを「YÔKAÏ」という言葉で表現させてしまう水木しげるの影響力の強さよ。
 
 民族の根底に流れる文化はさまざまな形で新しい文化を形成する。怪獣前夜の造形は、美しい写真によってまた新たにこちらに姿を現した。
 
以下、メモに取った撮影対象の名称
大太鼓の花からい
オネオンデ
ソーロンアンガマ
ちとちんとん
つぶろさし
ささらすり
銭太鼓
伊作太鼓踊り
ガウンガウン祭り
兵六踊り
安楽の正月踊り
山田楽
チャンココ
ささら獅子舞
盆綱曳き
タカメン
八朔踊り
ボゼ
バーントゥ
与論十五夜踊り
鷺舞
増穂区五ツ鹿踊り
遊子谷七鹿踊り
めん踊り
大平獅子舞踊り
根反鹿踊り
切込の裸カセドリ
タラジガネ
ビッチャル、クソタレ
小川寺の獅子舞
加勢鳥
スネカ
アマメハギ
水かぶり
愛子の田植踊り、早乙女
諸鈍シバヤ 
 
ヨーロッパの異形の写真はすでに書籍化されています。
7月再版予定。
また、「YÔKAÏNOSHIMA」も7月に新たに出版されるそうです。
WILDER MANN (ワイルドマン)

WILDER MANN (ワイルドマン)

 

 

YOKAINOSHIMA

YOKAINOSHIMA

 

 

 

■ 開館日: 2016 年2 月19 日(金)~2016 年5 月15 日(日)
■ 開館時間:
月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日   11:00~19:00(最終入場は18:30まで)
■ 休館日:4月8日(金)休館。その他エルメス銀座店の営業日に準ずる
■ 入場料:無料