晃生ショー劇場に初めて行った時、一番印象に残ったのは工藤リナさんだった。
その日はとにかくすごく疲れていて、劇場に行ったはいいものの途中までステージが頭に入らなかった。
晃生は悪い意味で古いタイプの経営をしている箱という評判があり、あまり気持ちが落ち着かなかったのもあった。それでも魅力的な踊り子さんがたくさん活躍しているのは、人権や労働の概念を無視した全日本女子プロレスで活躍した選手たちが、独特の魅力とパワーを備えているのと同じようなものかもしれない。過酷で理不尽な環境にいることによって蓄えられたパワー。
それはさておき、いつもであれば楽しめるステージも、疲労と緊張で頭に入らず、申し訳なさとイラつきが湧いてきた。もっと余裕を持ってスケジュールを組むべきだったか。しかし、それだと間に合わないし……とぼんやり考えながら、とりあえず一回りは見ようとステージを眺める。
何番目かで、工藤リナさんが出てきた。
工藤さんはおなかに肉がついているぽっちゃり目の踊り子さん。なんだかんだいっていわゆる「スタイルのいい」体形が人気の業界なので、ぽっちゃり体形の人は数少ない。でも、明るく力強い踊りでステージを組み立ててファンを魅了する人。
もともと力量のある踊り子さんだと思っていたが、この日はより強く彼女の衣装と曲と動きの統一感に目が行って、感動してしまった。
みんなのうたで人気を博したかわいい曲に、オーダーメイドの黄色い衣装を着てニコニコ笑う。ぽっちゃり体形の人はゆったりした服を着がちだけど、リナさんのその演目のそれは身体にぴったりフィットしていて、だけど太っていることをマイナスに思わせない絶妙なバランスだった。
自分が一番かわいらしく見える衣装、しぐさ、歌を選んでステージの上で踊る。太っているのが何となくダサいことのように見えてしまうのは、やせていないと似合わない服を作っている、企業の問題でもあると気が付いた。
私自身は「見た目がダサくたってそれが何」って思えるメンタルを目指したいと思っているのだが、それはともかく別にやせなくたってかわいくもかっこよくもなれるというのを示してもらって力強い気持ちになった。
へとへとの身体で見た晃生のステージの、もっとも明るい記憶だ。