タワーレコードでtofubeatsのリリースイベントを見たついでに立ち寄っただけで、正直全く「見ることによる感動」は期待していなかったのだけど、思いの外心を打たれてしまった。
タワーレコードでtofubeatsのリリースイベントを見たついでに立ち寄っただけで、正直全く「見ることによる感動」は期待していなかったのだけど、思いの外心を打たれてしまった。
神様をやるなら断言してしまった方がいい。
インスタントにどいつもこいつも神だ神だと言われる昨今ですが、しかしどうしようもないとき我々が叫ぶ「神様助けてください!」は「誰でもいいから助けてください!」と同義なので、ダチョウさん方式で最後に私が遠慮がちに手を挙げて神様やらされることになったとて、それでも誰かがこの世に丸くおさまるなら素敵やん、ですよね。
神というのを作り出せるのは人間しかいないわけですけど、その神というのは人間の思想の剥がれていったところだと思うんですよ。
それは想像してほしいから、ですね。いろんなものと向き合える言葉が好きなんですよ。わたしの意図はこうです、というのはあまり言いたくなくて。「キチガイア」という言葉が出てきたときに、やっぱりなにかしら考えるじゃないですか。その考えるという作業が削られるのがいやなんです。
あめとかんむり
最後はDJオーガスタことおやすみホログラムの八月ちゃんのDJ。率直に言ってめちゃくちゃ下手くそでした! というか、「DJの良し悪しわからない」ってちょっと前に書いたけど、「これが下手なDJか!」と思いました。でも、8mmでの持ち歌「センチメンタル」を流しながら歌ってくれたのはとてもよかったです。ハハノシキュウさんの、同じ単語を繰り返し使って堂々巡りの感情表現するリリック、ほんと女の子のナイーブさに合う。
前回の感想はこれ
渋谷の渋谷Dimensionで開催されているRAP酒場へ、もつ酢飯のライブを観に行きました。RAP酒場は丸省さん主催のゆるめのサイファー&MCバトルイベント。
もつ酢飯「もつ酢飯のテーマ」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud
5月前半に参加したイベントのまとめ。
へそまがりへのお別れ帰りに、タワーレコードビブレ横浜店で校庭カメラギャル&963のリリースイベント。
たどり着くと963の途中。歌い慣れている曲とそうでない曲の完成度の差が大きくてちょっと苦笑。
963はキャピキャピテンションの高いMCの印象だけど、ふたりとも高校生になったせいか一時期よりおとなしめ。
とはいえ「963は福岡のアイドルなんですけど、福岡ではCDが売れないから東京に来てまーす!」と、身もふたもない!
963終わって、時間的にもう終わりだろうなと思い、上の階にあがるとアパレルがほぼすべて入れ替わっていて、BADHOPのCDを配布していた店もなくなっていた。へそまがりの閉店を見送ったばかりなので、同時多発的に生じた諸行無常にびっくりして再度下に降りると、ウテギャのライブ2回目が始まっていた。どうやらこの日は校庭カメラギャル→963→校庭カメラギャルで30~40分ずつくらいのライブという構成だったよう。
音の大きさも手伝ってがっつり盛りあがり、タワレコ内がダンスフロアに。ぱたこあんどぱたこちゃん、サイコパスの曲での反復横跳びをやめて手を振り上げて叩き付けるようにするフリに変わっていた。
最後の第3段階はじめるよーのぱたちゃんの最後のバースで音が消える。そのまま前のめりぎみに「人の書いたリリックでどう表現するか この声は紛れもなく私の声だ」と言葉を続け、歌い終えるぱたちゃん。
ベタなサプライズだとは思うけれど、かっこよかった。無音のバースが終わって、最後にどうすればいいのかわからなくなり、ちょっと焦ったらみたたらったちゃんがほわったとした声で「校庭カメラギャルでしたあ~~」と締めるところも含めてふたりらしい終わり方。顔見知りの人もたくさんいたけど、買わないで残るのも気まずいのでこっそり退散。
BLACK SMOKER RECORDS 20th anniversary「ELNINO」
ドクマンジュくんが強く影響を受けているというBLACK SMOKER RECORDSの20周年イベント。SIMILAB、DJHIKARU、THA BLUE HERB、KILLER-BONG×JUBE×BABA×YAZI×CHI3CHEEを観る。
いわゆるB-BOYという感じの人が少なく、たぶんだけど、普段はピットインとかに集まっている人も多かったんじゃないだろうか。
DJブースでは暗闇の中に薄暗くレーベルのマークが浮かび上がっていて、なんだか秘密の場所に来た感じがあった。ステージ上にもスモークがふんだんにたかれていて、異世界感満載。
SIMILABはアイドルのような、戦隊もののような雰囲気。DJHIKARUが東南アジアの祭事に流れていそうな曲ばかりかけていて、とても面白かった。また聴きたいな。
そして、この日はTHA BLUE HERBがびっくりするくらいよかった。気持ちに呼応してどんどん手が上がるのがわかるライブ。ワンマンがいまいちピンとこなかったのはやっぱり体調のせいだったのか。それともこの日がタイトなライブだったからなのか。
ライブの熱量をあげるという言葉があるけれど、汗をかいて客をあげるのではなく声の存在感で、客の心の熱量をあげるライブ。MCではK-BOMBとの由縁を語っていて、けっこうその詳細を面白がっていた人が多かったのだけど、細かいことは忘れてしまった。
KILLER-BONG×JUBE×BABA×YAZI×CHI3CHEEはかつて観たノイズとJAZZのセッションを思い出させる内容。サックスの明晰な音が割って入るのが気持ちいい。ノイズ、たまに浴びたくなるんだけど、非常階段がアイドルとコラボしなくなってから、なかなか機会がない。
体力切れで帰ってしまったけど、退廃的な暗闇の中で、ロックのライブのような一体感が共有されるわけでもなく、じわじわと音楽だけが人々の熱量を上げていく様がまるで闇の集会のようで面白かった。帰り道、MAZAIRECORDSメンバーたちのライブに関する言葉の豊富さに感心する。
しかし、タイムテーブルという概念がまったく機能していないのも、フードが出るのが12時過ぎだったのも衝撃だった。
Erection -10th Anniversary- Patry
自由が丘の商店街の駐車場を使ってのフリーイベント。
DJメインで、ライブはゆるふわギャングのみ。
G.RINA~okadada~田我流~ゆるふわギャング~やけのはらの流れ。
アイドル現場から日本語ラップイベント、ツイッター、サイファーと色んなところで出会った人と会えて面白かった。ステージで踊りまくるG.G.C(Yacheemi,ダーリンsaeko)の2人がキュート。時折フロアでくるくる舞ってくれたのもうれしかった。
田我流がヒップホップクラシックを流していたらしく、力強く盛りあがっていた。DJのよしあしが未だにわからないのは軽くコンプレックス。しかし、町内関係者席というプラテーブルとイスが置かれたコーナーで関係者が雑談していたので、それを聞きながら観るDJは味わい深かった。
「いまんところの集客いくつぐらい?」「今の若い子は暴れないねえ。去年すごく酒が出たから何かトラブル起きるかな?と思ったけど、何も」
うん、おとなしいよね。みんな真面目なんだよ。合間にSophieeとRyugo Ishidaが前を通る。近くで見ると細い体に刻まれたタトゥーとピアスがクリーチャー的で、セサミストリートにそのまま登場出来そう。
ライブはワンマンに比べるとゆるいライブで、先日のエモさを心のどこかで期待していた分だけちょっと物足りなかったけれど、それでもちゃんと上がるところで客が上がっていた。しかし、Sophieeとはまったく違った方向性でRyugo Ishidaが官能的なのが面白い。
最後のやけのはらは、人が猿みたいに飛んだり跳ねたりするような、フィジカルを刺激する曲ばかりかけていた。
途中で抜けて、久々に東白楽の古書店ツイードブックスへ。ちょっと立ち話して、店を見回して1冊買って帰宅。
UNDERHAIRZトークライブ『ラップ酷いリリック烈伝』
関西で下品なことばっかりラップしながら、アイドルと名乗るラッパー3人組・UNDERHAIRZが餓鬼レンジャー・ポチョムキンと高木JET晋一郎を迎えて語る『ラップ酷いリリック烈伝』。何故かGoogleマップが効かなくて45分遅刻して到着。道に迷ってこんなに遅れたのは初で軽くショック。
もつ酢飯が下品なラップをやってる関係もあって、UNDERHAIRZは前からちょっと観たかったんだけど、想像以上にド直球に下品でくだらないリリックで、さすが関西の血は格が違うと思うばかりだった。もつ酢飯がツイッターの鍵アカでの陰口なら、UNDERHAIRZは呑み会の晒しという感じ。ポチョムキンのリリックと公開された映像も、たぶん明るいところで見せたらプロップス下がりまくる内容。
途中に挟まる西成のおっさんたちの話もなかなか強烈だった。そういや今はアートによるロンダリングで、無菌状態の誰のものでもない町にされた黄金町でも、昔働いていた人からはこういう話を聞いたなとも思う。黄金町の狂ったおっさんたちはいったいどこにいったんだろう。
唯一、ブス5000が流れた瞬間、女性陣と男性陣の温度差が生じた。曲中でブスを連発するMCに対し、「は~~?! おまえらだって不細工の集まりじゃねえか?」と率直に思う私。
ポチョムキンバースの、フォローするような、よく聞くと最もタチの悪いようなリリックに、「これ救われますよね」「いや、よく聞くと一番やばいっていう」でまとまる壇上。
そして「アイドルラップは自分で歌詞を書かないからヒップホップじゃない」とまじめなことを言うラミーに、「っても、うちらの歌ってることこんなんやで」という藤本ぽやな。
最後はリトマネン・スケベッチ・オナゴスキーでコーレスして終わり。タフな時間だった。
ラミーさんがめちゃくちゃ好みのタイプの美人でちょっとぼけっとしてしまった。感想を伝えたさもあったけど、並んでチェキを取る勇気が出なかった……。
終了後、ゲスト登壇されていた高木JET晋一郎さんにもつ酢飯をTVブロスで取り上げてくれたことを含め、あれこれお礼をお伝えする。会話の端々で、さすがプロは音楽に対する蓄積が違うと思うなど。
生まれては消える地方都市の“カルチャースポット”。横浜駅15分の立地に存在した喫茶へそまがりも、先日消えた地方都市の一部だった。
喫茶へそまがりは、2013年に一軒家(借家)を改造して作られたマンガ喫茶店としてオープンした。古い家屋の引き戸の入り口を開けると、右手には物々交換の棚があったり、左手には場所貸しで古本販売の棚があったりする店だった。
靴を脱いで中にあがると壁1面にマンガが飾られていて、手にとって読めるようになっていたり、2階には麻雀卓やファミコンがあって、見ず知らずの人同士が対戦したり。みんなが順番にマンガを描いていくノートがあったりと、文化部の部室と小学生の頃の友達の家が合体したような空間だった。
店主のTさんはヴィレッジヴァンガードで10年働いていて、自分のおすすめのマンガをヴィレヴァンっぽいPOPで紹介したりもしていた。トイレに行くと宮沢りえのサンタフェと漫☆画太郎のマンガが置いてあり、そこにもあの黄色いポップっぽいものが飾られていた。
イベントもいろいろやっていて、DJイベントからライブ、映画の上映会、お茶の出し方教室、フリーマーケット、日本酒持ち込み会まで、本人主催のみならず、客が持ち込むありとあらゆるイベントを実行していた。結局1度だけだったけれど、近所のお母さん方が育児しながらくつろげる日を作っていたりもした。そういえば、私もなぜか「BiS階段のライブDVD上映会」とおすすめの絵本紹介イベントをやったのだった。ちなみに人はほとんど集まらなかったが。
Tさんが日本酒好きなので毎度5種類以上の日本酒が用意されていたり、コーヒー豆がやたらいいやつだったり、けっこう凝ったカレーが出たりという、食に関する細かいこだわりも見せていた。こういう店の凝った食い物はたいがい塩気が足りなかったり、“エコ”によりかかった甘えがあったりするのだけど、ちゃんとおいしかったのが商売人としてのセンスを感じた。
そして、ここが最も肝心だと思うのだが、こうした趣味性の高い喫茶店というのはたいがいどこか薄汚れた感じがするものだけど、この店はごちゃごちゃしながらもそれなりの法則性をもって管理されている、清潔な雰囲気があった。
開店当初は「みんなが遊びに来れるような」という表現に基づいた文化交流スポットとして成立していて、音楽好きの高校生の自分語りを聞いたり、原発作業員の青年の話を聞いたり、バイの男の子の「ウイスキーの飲み過ぎか何かで、5階から落ちたけど死ななかった」話を聞いたりした。
「人間って机の足にひっかけたヒモでも首くくって死ねるじゃないですか。でも、死ぬ気が無いと5階から落ちても死なないんですね」
いや、運がよかっただけだよ!
しかし、そのうちにマンガの数がごそっと減り、2階の部屋がゲストハウスとして貸し出されるようになり、だんだんとイベントもやらなくなり……。最後の方はTさんと歳の近い30~40代がメイン客層になっていって、常連同士がそこにいる人となんとなく酒を呑んで雑談をしながら帰るという場所になっていた。
慣れた人しか集まらなくなったせいか、Tさんの話もずいぶん遠慮のない内容になっていって、「この人は本当にろくでなしだな」と思う機会も増えた。でも、そういう身も蓋も無さのある人じゃないと、こんなに色んな人が集まる場所は運営できないよな。
そして、やっと閉店。だいたいお店がなくなるのは「売上」「家主も含めた人間関係」「老朽化」「健康問題」「跡継ぎ不足」なのだが、ここの場合はTさんのやりたいことがなくなったという方が正解という気がする。あれこれやってみて、そこそこ成功したり失敗したりして、「うーん、これ、ずっと続けるタイプじゃないな、俺」と思ったみたいな。
Tさんはもともと2年くらい前から「お店をやめて高知で別のことをしたい」とかいう話をしていたので、閉店にまったく意外性はなかった。しかし、「新しいことを始めるためにやめる」というより、「もうやりたいことがないからやめる」というのは、すがすがしいような、未来のないような、だらしなさと潔さが混じり合った判定のしにくいエンドだ。ハッピーでもバッドでもない。
閉店前に、いくつかライブがあった。私の訪れた5月3日は「もう飲食を用意することはない」という案内がなされ、持ち込み可のライブ料金のみ2,000円。演者はにたないけん、沢田ナオヤ、三輪二郎。到着すると、部屋一面に敷かれた座布団に座った8人くらいの客の前で、にたないけんが演奏をしていた。ふと後方壁面を見ると高めのイスが置かれており、手に酒を持った男性がそのうちのひとつの席を譲ってくれた。
店内の大量のマンガやCD、コーヒーを出すための棚はすっかり引き払われていて、ヴィレヴァン的なサブカル濃度がすっかり抜かれたその場所は、公民館の一室のようになっていた。
にたないけんのライブはハスキーな声と、手になじんだギターの音が気持ちいい。時折ハーモニカの音を挟みながら、目をつぶりつつの演奏は華美じゃないのに退屈しない感じ。
ライブが終わって呼び込まれた次の演者沢田ナオヤは、先ほどイスを譲ってくれた男性で、酔っ払い特有のハイテンションで「いや、酒入っちゃったし、ちゃんと演奏出来るかな」と言って「金払ってんだからやれ!」と突っ込まれていた。
ライブはちゃんとしていて、時折感情を叩き付けるように激しく鳴るギターが面白かった。
最後は三輪二郎。
落ち着いたトーンの弾き語りで、たわいもない日々の感情を歌うフォークソングというのはこれまでの2人と変わらないのに、なんとなく聴いているうちにもこちらの気持ちがぐっとつかまれる瞬間が都度都度あるのがさすがだった。ああ、アイドルとかヒップホップとか情念が強かったり、情報量が多かったりする音楽ばかりを聴いていると、こういうの染みるな。
MCの三輪さんの「試聴室もなくなっちゃうし……」という話に「でも、あっちはまた始めるから」と答えるTさん。
最後は3人で弾き語りセッション。「誰が一番へそまがりかあ~~」みたいなことを歌いながら終了。お別れ会なのにむしろ同窓会で集まった人たちの二次会みたいなのんびりした空気だった。
Tさんに「生存確認できるようにしてくださいよ」と最後に一言。Tさんは体を動かすバイトを始めてからだいぶ経っていて、えらくシュッとして健康的になっていた。「今のバイト楽しい」と言っていたが、かっぷくの良さが削がれたら顔もずいぶん年相応になったようで、それがちょっと寂しくもあった。
そういや、私はこの店の最初の客だったんだ。今となっては、だいぶ昔のことだ。
夢の終焉、、 どちらかというと昼みる方の夢ではなくて 夜みる方の夢のような店だったなあ pic.twitter.com/WfqAFPvFZS
— へそ (@yokohamahesoma) 2017年3月19日
※在りし日の店が記録されたMV。