ホンのつまみぐい

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"MONSTER VISION" リリースライブ視聴感想/般若、漢 a.k.a. GAMI、サイプレス上野とロベルト吉野、R-指定、DOTAMA、T-Pablow、CHICO CARLITO、Dungeon Monsters

AbemaTVの配信で観たMONSTER VISIONリリースライブの雑感。ちまちま打っていたら長くなった。

 

MONSTER VISIONはフリースタイルダンジョンのモンスター7名の対バンライブ。イベントのタイトルはモンスター7名によるマイクリレー曲「MONSTER VISION」に寄っている。持ち時間は各メンツ30分ほど。それぞれのライブの作り方に個性が出ていて面白かった。

 

CHICO CARITOは歌部分も含めた音楽的センスの高さが抜群。クラブに対するあこがれを募らせるよう明るくて幸福な曲「那覇のクラブ」が印象深い。また、「昨日は沖縄の慰霊の日でした」という言葉から自身の由来を語る「Orion's belt」には誠実さを感じた。MCで「ダンジョンでもっとも人生が変わったのは俺だと思っています」と話していたけれど、キャリアを積んだ他MCに見劣りしない音楽的強度があったと思うし、もっと長くゆっくり聴きたいと思わせる内容だった。

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T-pablowは相変わらずライブが下手で、音源とのギャップが激しい。川崎クラブチッタよりさらに大きい新木場コーストでは、映像からでもその弱みが明らかだ。

でも、途中で入った長めのMCからにじむ真摯さにやはり心を打たれてしまった。川崎の工業地帯の貧困の中で育ち、本当にヤクザのカバン持ちになるしかない生活を送ってきたこと。そこから音楽によってはいあがり、町にとっての希望になろうとしていること。どれも私にとってはすでに自明のことなのだけど、彼のそうしたバックボーンを知らずに「不良がイキってる」という貧しい言葉を投げつける人も少なくない。

そうした外野の声を自覚しながら、「オレの友達にはレイプされて妊娠した子もいる。そういう子に何か言えますか?」と話し、自分たちが町の希望となることの意味を語ってからのPAIN AWAYは胸に来た。自分が人前で歌うことの意味を、こんなに自覚している21歳の青年がいるだろうか。「普段は友達(BADHOPのメンバー)が一緒に騒いでくれるんだけど、みんな一緒に飛び跳ねてくれますか」からのLifestyleで〆。

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ダンジョンで時の人となってから、もっともハイペースに音源発表を続けているDOTAMA。新曲の謝罪会見は「謝れと皆 俺に言う」「何に謝ればいいの」などの言葉を散らしながらクレーマー社会を風刺する内容。普遍性のある内容とラップと本人のキャラクターがよくあっていて完成度が高い。ちなみに、彼はちょうどこの前の週に「自身のバンドFINAL FRASHのリリースパーティーの中止」をアナウンスし、ファンや関係者に謝罪する羽目に陥っている。状況から考えると「急きょ決定したダンジョンモンスターズとしてのミュージックステーション出演のため、中止にせざるを得なかった」ようなのだが、結果的に「現場よりテレビ」という悪評を彼が引き受けることになってしまって、はたから見ていて気の毒だった。

しかし、一方でこのタイミングで「謝罪会見」という曲がリリースされ、奇妙な説得力を持ってしまうことの縁も感じてしまった。「誰に謝ればいいの 謝る相手が多すぎて」。リリースパーティーの中止が彼の瑕疵だとは思わないが、結果として嘘なく歌える妙なリアリティを抱えた曲になっている。MCでは「30歳過ぎてからだってやれる」というようなことを話してから、所信表明的な「ベストソング」。

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「この先の答えは彼方向こう そうだろ相棒」というCRIME6の声をスクラッチするロベルト吉野のDJ。サ上とロ吉の入りは基本これなので、もはや見慣れているはずなのに、その前の演者3人がプレーンに入場してきた反動もあって、なんだかすごくかっこよく見えてしまった。いや、もともとかっこいいんだけど、あの入りが緊張感と高揚感を演出していることを今更ながらに確認。ロベルト吉野のDJルーティンからのPRINCE OF YOKOHAMAからのぶっかます、よっしゃっしゃす〆、サ上とロ吉。コール曲と知名度の高い曲のおいしいところだけをどんどんつないで客を引っ張るタイトな構成。「練習はちゃんとやる」とサイプレス上野はよく言うけれど、たしかにこのスピード感はお互いが体で覚えこまないと出来ない。

練習と言えば、B-BOYイズムのレコードをスクラッチして「メリーさんの羊」「チューリップ」を弾くという、特殊な練習の必要そうな荒業をワンマンライブぶりに見た。映像とAbemaのコメント欄で初めて知ったけど、ピッチを調節しながらスクラッチで必要な音を取って演奏しているらしい。サイプレス上野が「チューリップ」に合わせての合唱をうながす。コーストが歪んだスクラッチのチューリップに合わせて一体になる様子が可笑しい。

その後は新曲「上サイン」のサビだけ披露。上サインは右手で漢字の「上」を作る、彼オリジナルのハンドサインだけど、MCで無理やり会場中にやらせてから南国風のビートで「大人も子供も上サイ~~ン」と歌うのに笑ってしまった。お次はTV朝日の看板アニメのサンプリングしたふざけた曲、1pacからHIPHOP体操第2で〆。一体感作りに力を注ぐエンターテイメントな構成。しかし、その「客を引っ張り込んで離さない」という執念はある意味で攻撃的だ。

客から「演者にはフロアの人間を殺すつもりで来てほしい」という言葉を聞くことも、演者から「みんなのファンをいただきま~す」という言葉を聞くこともあった女性地下アイドルのオタクとしては、凝縮されたステージングからにじみ出る貪欲さが懐かしく、画面越しからでも気持ちよかった。

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漢a.k.aGAMIのライブ前に客演作のSALU「Lifestyle」が流れる。BADHOPのアンセムにかけていたのだろうか。サイドMCにマスター、DJにDJBAKUを連れてのライブ。DJBAKUが入りを間違えたり、思いっきり噛んだりと、曲が止まる場面がちょこちょこある適当さにカルチャーショックを受ける。しかし、般若やサ上とロ吉のような勤勉で稽古好きなギャングスタラッパーというのもおかしいか……。クラブって「しょせんライブは酒のつまみ」みたいなところあるし。

間に晋平太との試合のことや、昔のサ上とロ吉のことなどを話して笑いを取る。危ういネタや楽曲で売りながらうまいことなごませるこのバランス感覚が「TVじゃモンスターお茶目なおじさん」でやれるところなのだろう。ただ、他MCと比べて「内輪向けの言葉で話してる」とも思わせたのだけど。「何食わぬ顔してるならず者」「my money long」「新宿ストリート・ドリーム」などの代表曲を披露。

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DJ松永はDMC東予選に出場ということで、R-指定ひとりで登場。連覇を続けるバトルMCとしての葛藤を歌った刹那でスタート。戦いに赴く相方へのエールか。ピンチヒッターのDJもつけずに、PAにお任せしていることを告白する長めのMC。改めて聞くとR-指定は話がうまい。情報を誤解の生じない範囲にまとめて、わかりやすく伝える力が圧倒的だ。そのままテレビに出せるしゃべりがステージ上でできている。大量のお題を募っての長めの聖徳太子フリースタイルも見事。

今回はR-指定名義ということで、ソロの際に制作した曲を中心のセトリ。聴き比べるとDJ松永のトラックは、感情を挑発してくるようなちょっとねじれた作りなのだとわかる。最後はバトルブーム後の未来を悲観的に綴った未来予想図で〆。「どんなバカでも誤読しない」ように作られた歌詞に物足りなさを感じる曲だけど、安定感のある歌メロは印象的。ミュージックステーションでも最も安定感があったのは彼だったと思う。

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般若のライブは、一言で表すと「直球」。滑舌のよい明瞭なラップと節回しはどこか演歌的だ。こぶしが利いているといえばいいか。MCはほぼなしだったけれど、合間に「お題募集しまーす」と叫んで、適当に「はい、〇〇。はい、〇〇」と言った後、特に客に奉仕するでもなく自分の楽曲を始めるネタふりに笑う。MCと曲の切り替えがしっかりできているので、不親切な緩急のつけ方があんまり浮かないのが強い。ある意味で、一番世界観ががっちり固められているんだろうな。

やっぱフィジカルの強さは正義。最後はDOTAMAを呼び込んで本音で〆。

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ダンジョン挑戦権獲得バトルとMONSTER VISIONの披露は離席していて見られず。というか、後で見るかと思っていたら視聴期限を勘違いしていた。般若のライブの感想がちょっと短いのも、後で見るつもりで離席していたからだったり……。

最後にMONSTER VISION披露からMV制作のメイキング映像を流して終わり。各人が「こんなに金と手間のかかったMVを作ることなかなかない」と話していて、前週のミュージックステーションでの浮き足立ちっぷりも含めてちょっとわびしい気分になる。金のかかったMVが必ずしも似合っていないところも含めて。「俺だけこんな適当な格好で」みたいなことを話しつつ、それを気に病む様子のないR-指定のふてぶてしさが印象に残った。

MONSTER VISION

MONSTER VISION

  • Dungeon Monsters
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250