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ホンのつまみぐい

いろんなもののファンをやっている人が、日々のよしなしごとを綴っています。

藤沢駅前広場をクラブカルチャーが乗っ取った第5回湘南藤沢たから市

 藤沢駅前のサンパール広場をクラブが乗っ取った藤沢たから市。素朴な名称に反してガチな「音楽と政治」現場で大変面白かったです。

 2016年の夏は東京都選挙管理委員会のイベントにラッパーが出演したり、フジロックフェスティバルへのSEALDSの参加が話題になったり、三宅洋平東京都知事選に立候補したりと「音楽と政治」というキーワードがインターネッツをにぎわしていました。

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 しかし、どのトピックも過ぎてみれば事前に騒がれたわりにその動向を真摯に見守る人は少なく、インターネッツによくある局地的な炎上として過ぎ去っていったように思います。

 藤沢たから市はそんな2016年の夏の盛り、東京都知事選の投票日である7月31日に開催されました。

 湘南の入口と呼ばれる藤沢駅前にSOPERSONICS(TARO SOUL&DJ IZOH)と、サイプレス上野とロベルト吉野が出演というのを最初に聞いた時は、正直MCバトルブームの延長で地元の演者を呼んだだけだろうと思っていました。

 しかし、フライヤー風のビジュアルをよく見ると当日は昼からダンスバトルの大会が開かれるし、DJが何人も登場するし、なんとなく統一感がある。

 いぶかしみながら藤沢駅に行くと、駅前の広場に真っ黄色のサウンドシステム(すごろくを重ねたようなビジュアルが特徴的な野外用の巨大スピーカー)が。レコード屋のリリイベで使うようなスピーカーをイメージしていたのでこの時点でビビりました。

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 DJは容赦なくガチなラップを流してるし、演者がそのへんで談笑してるし、キャップかぶってる人やたら多いし、ステージ前にイスなくてDJの前で踊ってる人いるし。

 改札0分、両脇を古い百貨店とヨドバシカメラに挟まれた、いかにも郊外という風情の駅前広場をクラブカルチャーが乗っ取っている! なんだこりゃ!

 ノリノリのDJで踊るクラブピーポーを横目に、通りすがりのおばあさんが百貨店内のカルディの店員さんに「同じようなのばっかやってねえ」とこぼすのを聞いて思わず苦笑。

 たしかに通常、地域のお祭りのステージには色んなジャンルのアーティストが入れ替わり立ち替わり登場します。司会のお姉さんが演者のこともよく知らないまま名前を読み上げて「はいっ、とっても地元愛にあふれた歌でしたね~~」とか適当な一言を添えたり。

 それはそれでジャンルレスでカオスで、日向の人前に出てきた演者の奮闘を楽しめるから好きなんですが、この日の駅前広場のガチなクラブ感はいまいち風景に溶け込みきってなくて、それが妙に笑えました。

 とはいえ、4歳くらいの子供たちが、DJ中で空いたステージの上をバタバタ走り回ってるのはなかなかいい光景でしたが。

 DJタイムが終わってSUPER SONICS登場。TARO SOULは宇多丸言うところの「いい楽器を持ってる」タイプで、人柄を感じさせる真っ直ぐな歌い方と強い声のライブ。「地に足!ライムが翼!」というストレートなリリックに人柄を感じました。

 そしてDMC世界チャンピオンDJ IZOH。スキルフルなDJで……と言いたいところですが、私は未だにDJの巧拙がよくわかりません。息が合ってるかどうかはかろうじてわかるけど。それでも、スピーディでザカザカっとしたスクラッチはノイズミュージックのようで面白かった。

 MC中に「実行委員長で市会議員のジャンボ a k a 井上祐介が自分たちを呼んでくれた」と紹介。なるほど、首謀者がいるんだ。

ビッグカメラとサンパールに挟まれてこんなでかい音でライブできて、子供も大人もたくさんいて、藤沢ってほんといい街だなと思います」

 SUPER SONICSののびのびとした雰囲気は、地元のこんな場所でライブが出来た嬉しさもあるのかもなどと思いました。

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 転換中に藤沢のゆるキャラ・しらっすーの紹介。「しらっすーはBBOYのゆるキャラ」だそう。

 そしてトリのサ上とロ吉登場。

 ぶっかます、よっしゃっしゃす〆、サ上とロ吉、プリンス・オブ・ヨコハマと定番を短めにつないでからのMC。

「なんでプリンス・オブ・ヨコハマなんて奴がここでライブしてるのかというと、オレ今住んでるのは藤沢だし、坂の向こうの戸塚に住んでたんですよ」というMC。

 そこから横浜の中央部、中区出身のLEON a k a 獅子とのRUN AND GUN。 DEEPSAWERとの横浜×藤沢酒呑みRAPという流れ。DEEPSAWERのおふたりが腰に巻いてた酒屋の前掛けよく似合ってました。お酒強くないけど、酒呑みラップは「ちゃんとしてないって最高に楽しいだろ?」という開き直りが好き。「おれとお前と大五郎!」

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 DEEPSAWERをステージに残したままでドリームアンセム。

 ああ、ドリームアンセムは故郷に対する愛の歌だもの、やるよねえ。そう思いながら、ふと横を見ると、父親に抱きかかえられた2歳くらいの幼児が、ヒップホップ独特の手を上下するあの動きに合わせて、懸命に手を振っていました。真剣な顔で音に合わせて手を上下する幼児。すっかり暗くなった藤沢の広場で、白く照らされた子供を嬉しそうに見上げる父親の表情と併せてとても幸福な情景でした。

 ふっと音が止まってその子が「アレ?」という表情で手を下げたところで、再び長めのMCが入りました。

 WONDER WHEELのPVでお世話になった人が、今大きなケガをして藤沢で入院しているという話。彼に聞かせるつもりでという話で始まった「WONDER WHEEL!」

 なんか、今はドリームアンセムがあるからWONDER WHEELやらないんだろうなというのがあるじゃないですか、何となく。だからちょっと嬉しかったし、サ上に促されたロ吉の犬みたいな「良い事ある気がすんだろ?だから馬鹿な真似だけはすんなよ」というコールもよかった。フックの前で曲止めたから「まさかそこで止めると思わなかったぜ」って言われてましたが。

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 最後に首謀者の井上さんがステージにひっぱり出されて、 サ上に「ジャンボ、ラップしなよ」と言われて「韻の踏み方忘れちまったよ」と苦笑。

「こういう人と人とのつながりが、駅前の人と人の間で出来るって証明したくって政治の道に進んだぜ!」という彼の言葉が印象的でした。

 そう、選挙結果って、こういう形でも出てくるんですよね。こんな振り切ったイベント、“中の人”がわかっていないと出来ないもの。通りすがりのおばあさんのリアクションから鑑みるに、DJの選曲をもう少し分かりやすくするなどの工夫はあってもいいのかもしれないけど、こういうちょっと異常な空間が駅前にぬけぬけと存在するというのは面白いのでしれっと続けていってほしい。

 クラブやフェスだけが音楽を楽しむ場所じゃないものね。

 さて、家に帰っていろいろ調べてみたら、井上さんが実行委員になった第3回から明らかにビジュアルの様相も変化していて、思わず笑ってしまいました。最初はアーティストの名前もないのに、徐々にヒップホップ色が……。

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 2015年の野外のSTERUSS観たかったな、真夏のJAM……。余談ですが、終わったタイミングでTwitterで検索したらアイカツアイコンの男の子が「駅前でクソイキリライブやってるw」の直後に「サイプレス上野観れた!感動した……」って書いてて、テレビに出るってそういうことなんだなあと思ったりしました。いつか「テレビに出ている人」じゃなくて音楽やダンスで盛り上がってくれるといいね。

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地域情報誌に首謀者たちのインタビューが

フジマニ vol.106

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2014年開催時のTARO SOULのブログ

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