BADHOP観るならやっぱり川崎。ということで、行ってきたKing&Queen@セルビアンナイト。(2018年1月14日)
しかし、川崎駅前徒歩5分のところにクラブチッタ以外のライブハウスがあったなんて知らなかった。スケジュールを見ると登壇者はローカルなアーティストが多め。横浜の箱も集客には苦労しているけど、川崎はよけいだろうな。
飲み屋に続く階段を上がって中に入ると、真っ暗なフロアの奥でステージだけに光が当たっている。DJタイム中なのだけど、フロアの客は目の前のことに無関心。ああ、苦手な空気だ。
私が着いた時間のライブショーケースはラップスタア誕生で300万を手にしたという沖縄のDaiaから。フィジカル強いと思うけれど、初聴きではちょっと好き嫌いの判断が出来なかった。
お次のLiLMAN。「おれは死んでも川崎を忘れないぜ!」という高揚感のある叫びと自分史を盛り込んだ曲はまさにブルースでかなりぐっときた。今はフィリピンパブで働いていると言っていたかな。
そしてDAWG MAFIA FAMILY。照明が真っ赤になり、効果音として銃声の音が鳴る。KNZZとA-THUGとEATは見た目がかなりファニーで見世物小屋的なキャラクター性があるのだけど、一方で目がすわっていて怖い。
PACKAGE PACKAGE!!
あそこで売ってる 買ってる
いつもここでやってる あいつもやってる
あそこで売ってる そこでも買ってる
ふてぶてしい雰囲気と禍々しい照明のおかげで、まるでホラー映画を観ているような気分にもなる。終了後にMCの人が「いやー悪い人たちだったね」と話していた。
LEON a.k.a 獅子。横浜で何度か観ているけど、小柄でハニーフェイスな彼はイキり気味の歌詞をライブではあんまりうまく表現できていないような……。アウェイでの緊張が見えていて、ちょっと「がんばれ!」という気持ちに。
大阪からWILLY WONKA。バタ臭いイケメンで、よくモテそう。この日は生き生きした川崎のラッパーたちと、アウェイで少し緊張気味の余所から来たラッパーたちという空気があって、彼もどこか気を使っている風だった。
トリのBADHOP。
右手に立って観ていたのだけど、姿を現すと同時に目の前にいた中学生くらいの少年たちが一斉にスマホを掲げていた。
チッタで観た時は正直あまりの被せの強さに「いい悪い以前」という印象だったけど、この日は距離が近いこともあってか、彼らが全国ツアーで鍛えたせいか、そういった物足りなさは感じず、川崎という場所でライブをすることに対する強い思いが見えた。
その姿を追うように、薄くて小さな身体の少年たちが背を伸ばしたりする様子が、BADHOPは本当に地元のヒーローなのだというのを伝える。
ライブはMobblifeの曲中心で、MCでたしかT-Pablowが「俺たち今度ZEPPTOKYOでやるんだけど。普通は箱を少しずつ大きくしていくのね。でも、ZEPPでやるっていうのは何でかわかりますか!俺たちがヒップホップの記録を塗り替えていかなきゃ、下が育たないから」と叫ぶのに貫禄を感じた。
それから、まだ曲を作りはじめる前、「もらったインスト音源のリリックでずっとラップをしていた」昔話から、「変わらないものもある」に導かれて始まったLife Styleが最後の曲。
ZEPP前夜として、完璧な物語だった。
ところで、この日はゴーゴーダンサーの出番があって、予備知識なしに観た私は極めて素朴に驚いてしまった。あ、こういうパンツとかブラの間にお金はさむ文化、こういうところにあるんだな……。何だか敗北感を感じるプリミティブさ……。
ただ、最前がBADHOP待ちの若い女の子中心だったためか、あんまりチップはもらえていなかったみたいだった。BADHOPにならうようなパーカーにキャップという、B-GIRLないでたちの小柄な女の子たちを、ダンサーがステージにあげていじっていたのはちょっとほほえましかったけれど。
でも、その日観た君島かれんはその後薬物使用で捕まってしまった。ルポ川崎で「亡くなった母のためにもがんばりたい」と話していた彼女。また戻ってやりなおすことは出来るだろうか。