家なき子、あしながおじさん、小公女、ポリアンナなどにつめこまれたどんでん返し&運命のなんとか&健気な女の子要素をすべてぶちこんだ展開が最高だった。
原作の水木杏子は、「ふーことユーレイ」「赤い実はじけた」など児童文学作品で有名な名木田恵子だ。彼女の教養なくしては描かれなかっただろう話だと思う。
どこがどう似通っているかはネタバレを含むので言わないでおくけど、胸がはり裂けるような事件が五月雨式に襲ってくる展開はまさに大河ロマン。人もけっこう死ぬ。
特に、中盤で生じる恋愛におけるバトルはさっきまで「初恋はレモン味」ノリだったのに、いきなり「愛が絡むと人は命を投げ出すことがあるんだ!」ノリのすっとぶ。昔のマンガによくあるいきなり対象年齢ふっとばしてドラマチックな話に飛び込んでしまう感じが最高。
現代児童文学オタクとかサブカルチャーオタクが、よく「物語が子供に成長を求めることが、現実の子供を追いつめるのではないか」「成長を第一義にして文学を評価するのは視野が狭い」みたいなことを議論しているけど、「みなしごだし!」「金持ちのガキにいじめられるし!」「第一次世界大戦だし!」みたいな「成長しないと死ぬんだよ!」感が痛快だった。
というか、楽しそうに成長するんだよね。その間につらいこともいっぱいあるけど、新しいことができたり、新しい人とのつき合いが生まれたりする。だから成長する。
わかりやすい。すばらしい。
それから、キャンディ・キャンディは「そばかすなんて気にしないわ」という歌と、「笑ったほうがかわいいよ」というセリフ、そして絶版にいたるまでのゴタゴタに対する知識しかなかったので、キャンディがあんなにモテる女だとは知らなかった。
今はわりとマンガやアニメの要素だけがネタとして流通していて、なんとなく勘違いしたまま知っていることが多い。たとえば「孤独のグルメ」や「巨人の星」。そういう古い作品が読んでもいない人にネタ画像として使われるのには、いつもいらだっているのだけど。
ただ、キャンディは作画者と原作者の間のトラブルにより、気軽に読めない状態が続いているため、結果として事前情報をあまり入れずに読むことになり、それゆえに新鮮な気持ちで楽しめた。読めない理由は切ないのだけど、プレーンな気持ちで楽しめることの大切さというのを改めて感じた。
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