『増刊ヤングコミック』と青年劇画の世界 ──70年代の劇画誌ブームを総括する
- 作者: 岡崎英生
- 出版社/メーカー: 飛鳥新社
- 発売日: 2002/09
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
講師
橋本一郎(作家、マンガ原作者)
戸田利吉郎(少年画報社代表取締役)
筧悟(別府大学客員教授、マンガ編集者)
司会進行:赤田祐一
- 作者: 石井隆
- 出版社/メーカー: ロッキング・オン
- 発売日: 2001/09
- メディア: コミック
- 購入: 2人 クリック: 13回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
「モーニング、スピリッツなどの各誌の編集者たちが、みんな"石井隆を超える作品を作り出したい”と思っていた」という話が紹介された。
そうしてヤングマガジンは大友克洋を、ヤングジャンプは本宮ひろしを、スピリッツは美味しんぼや高橋留美子を、というようにそれぞれのカラーでそれぞれの作家を生み出していくが、石井隆に準ずるような作家は出せずに終わったことを言い添えられていた。
石井隆は自分の作品をエロと呼ぶことを嫌い、ラブストーリーと呼んでいたこと。人気絶頂時に、あえて専属契約という枷をつけたのは月産50〜60枚ペースの石井隆を思いやった為という話もなんだかいい話。作家から仕事を断るのは大変だろうから、あえて専属ということにしておけば、断られた恨みは会社に行くのではという配慮だったらしい。
しかし、単行本刊行に関してはハードカバーという石井隆の希望に添えず、結局立風書房から上製本が出たという話はもと弱小コミック出版社勤務としては切ないものがあったが…。
- 作者: 大友克洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1984/09/14
- メディア: コミック
- 購入: 11人 クリック: 157回
- この商品を含むブログ (204件) を見る
- 作者: 平田弘史
- 出版社/メーカー: ラピュータ
- 発売日: 2003/05/06
- メディア: コミック
- 購入: 2人 クリック: 38回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
平田弘史のヤングコミック掲載への経緯は泣かせる。平田は一時光文社の雑誌創刊にあたり力を入れて執筆していたが、その雑誌はすぐに休刊になってしまい、失意であまりマンガを書かなくなってしまったという話が披露された。その上、当時原稿の遅い平田弘史は出版社から干されていたそうだ。それを残念に思っていた戸田氏が、昔の作品のリメイクからはじめてもらい、少しずつ内外に平田氏の評価を高めていく。やっと「復活した」と言われるようになってから、満を持してはじまったのが『薩摩議士伝』だったそうだ。
長尺をとってエピソードが語られたのは上記のお3方だが、そのほかに園田光慶・勝川克志・ダディグースの名があがった。
- 作者: 園田光慶
- 出版社/メーカー: マンガショップ
- 発売日: 2005/03/31
- メディア: コミック
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
- 作者: みなもと太郎,大塚英志
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2010/07/14
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
あとこれ。
- 作者: 勝川克志
- 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
- 発売日: 2003/06/24
- メディア: 単行本
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
肉弾時代―併録「肉弾人生」嫁売ジャイアンツ篇 (QJマンガ選書 (13))
- 作者: 宮谷一彦
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 1998/07
- メディア: コミック
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
- 作者: 夏目房之介
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/09
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (12件) を見る
さて、石井隆のエピソードをもっとも印象的と冒頭で書いたが、もうひとつまったく違う理由で印象的だったのが、増刊ヤングコミックが17万部売れていて、単行本で採算をとる考えはなかったという話だ。昔は雑誌の実売がメインで、単行本は二次的なものだったとはよく聞いていたけど、やはりちょっと驚く。ちなみに2012年1〜3月期のヤングアニマルとスペリオールが17万弱だ。
編集者3人とも、増刊ヤングコミックでの編集時代がどれだけ楽しかったを語っていて、その熱気に胸が熱くなった。