ホンのつまみぐい

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messy/wezzyにCINDERELLA MCBATTLEについての記事が掲載されました

女性向け情報サイトmessyおよびwezzyにCINDERELLA MCBATTLEについての記事を掲載していただきました。

勝手に送りつけた原稿を採用していただき、第2回のレポも書かせていただいた編集部に感謝です。本当にありがとうございました!

mess-y.com

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大学生ラップ選手権の頃からずっと「女性がバトルに出ること」「日本語ラップにおける女性の現状」について考え続けていたので、とりあえず言葉に出来て一息つけました。ただ、正直あまり読まれなかったので、今度からは、もう少し「これは自分事である」と思えるようなフックを用意しなくてはいけないなと。課題多し。あと、これはあくまでイベントレポートなのですが、いつか現場でのセクハラについて有効な形で書ける日が来るといいなあと。

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ヒップホップのホモフォビアとか女性差別に関しては、瞬間的な炎上は何度か見たけど、あんまりちゃんと言葉にされていないと思うんですよね。ネットで見たもので首肯できたのは下の2つくらいかなあ。勉強足りてないと思うので、WEB紙問わず読むべきものがあったら教えて下さい。

realsound.jp

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ネットで大企業の広告とかを批判してる女性も、自分の好きなラッパーの性差別発言はスルーしがちだし。一方で叩きやすい人のことをことさら悪く言ったりもするのがまたよくない。相手によって対応変えちゃったら、フェミニズムが思想じゃなくてファッションか仲間作りのためのタグになっちゃうじゃないですか。

逆にちゃんと批判する人は自分の好きなラッパーだけを追いかけていくようになって、現場にあまり興味を持たなくなっていく傾向があるような。

私は私で自分の興味の持てる現場のことしか話せないんですが、それでも「何が起こっているか」そして「どうあるべきか」ってのは、これからも書いていきたいなと思います。

って、あー真面目だな……。こういうところが入り口を狭めているのかな。まあ、いろいろがんばろうと思います。

バトルDJは新しい音楽を作っているのだと今更知ったという話

ヒップホップのライブに行くとたまにDJのアピールタイムが用意されていて、MCに「○○のテクを見てくれ!」というようなことを言われるのだけど、それを面白いと思えたことはあまりなかった。音楽というより曲芸に見えていたからだ。「押せば音が出るものを操っているのだから、人の手で弾いたり叩いたりするものより簡単」という印象を持っていたからもあるだろう。しかし、それは間違いだったことがDOMMUNE配信のless than TV特集でのロベルト吉野を見てわかった。

1時間弱のDJ。たぶん最初はless then TVゆかりのアーティストの曲を流してつないでいたのだと思う。原曲のメロディーが把握できる前半は「なるほど」と思いながらのんびり見ていたのだけど、途中からガンガンスクラッチやジャグリングが入り始め、曲の輪郭がどんどん姿を消していって、音のひとつひとつが厚みのあるノイズ音のようになってくる。その音をさらに擦って叩いて止めて……。レコードから流れる音を一度自分のものにして、再度落とし込んでいく。

DJの手によって引きちぎられた音が与える印象は、まるでノイズミュージックやフリージャズのようだ。というか、音の原型が見えない箇所だけ取り出して聞かせたら、ノイズミュージックだと思う人多いんじゃないか。それなのに、トータルでは聴いていてワクワクするような一つの音のうねりになっている。画面に映るレコードを操る演者の手はものすごいハイスピードで、もはや情報に目がついていかない。

そっか、バトルDJってこういうことやってるのか。これはすごい、すごいな!

だって、使ってるレコードに刻まれた音は1枚1枚違うのに、それをつないでひとつの流れにしながら、自分の手で音を作り変えて新しい音楽を作ってるってことだよね? どういう頭の構造をしているとそんなことができるんだ。


しかも、ノイズミュージックやフリージャズって書いたけど、そういう音楽と違ってレコードをかけ間違えたり、ジャグリングをミスったりしたらズレて音が破綻してしまうやつじゃないか。やっていることは極めて緻密なのに、音を再構築する過程はどこか暴力的でもあって、これはめちゃくちゃ面白い。

疾走感のある構成の中にいきなり水戸黄門のテーマを入れたり、目隠ししてスクラッチしだすロベルト吉野のファニーさも含めて観たことないものを観た感が半端ない。ツイッターDOMMUNEハッシュタグに「ロ吉のDJはアート」って書いている人がいたけど、わかる。芸術の本質は新しい驚きを与えてくれることだもんな。ユニットでは、年齢性別選ばず多くの人が楽しめるフレンドリーなライブを指向してるなのに、ソロだと前衛寄りになるのも面白い。

最後は汗をダラダラ流しながらフリースタイル、いや叫びだな。

「最近、マイク持っても頭の中が真っ白になって失語症みたいになってしまう。俺の周りには片目が見えなくなったやつとか、脳卒中になったやつとかいるけど……。こういうことをずっと続けていきたい」

「『来る日も来る日も壁に向かって擦る レコードが泣く』(ZZBBQ)このバースを最初に上野に見せた時、『お前壁に向かってオナニーしてんのか』って言われたけど。……レコードだよ」

あ~~、〆のMCも完璧だな~~。

いやいや、しかし、これはDMC本選でいろんなDJのプレイを観たくなる。たまにツイッターの10~120秒の動画で見て、気になってはいたんだけど。新たに調べなくてはいけないものが増えるのは幸せだ。

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なんかいい動画がないかと思って探したけど、ニュアンスが近いものがこれくらいしかなかった……。こんな感じのテンションが30分以上続いたら、そりゃ舌も回らなくなるよな。

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こっちはDMC2016

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タイトル通り。バトルDJあるあるとして「変態と思われる」「負けてやさぐれて全裸で走る」などが出てきて笑えます。

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「来る日も来る日も壁に向かって擦る レコードが泣く」というのはこの曲のバース。

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DMC JAPAN DJ CHAMPIONSHIP 2015 FINAL  supported by KANGOL [DVD]

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校庭カメラギャル 1st oneman live ”Kick Clap” @下北沢SHELTER

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校庭カメラギャルのワンマンは6月7日、初夏だった。

校庭カメラガールのワンマンが12月18日で、ましゅりどますてぃの卒業ライブ。校庭カメラガールツヴァイのワンマンが1月13日で解散ライブ。今回はtapestokrecordsにとって初めてのお別れじゃないワンマン。ゆるっとした気持ちで、でも集客に対する不安はうっすら感じながら現場へ。

 

フロアに降りると開始10分前くらいでだいたい6割くらいの入り。最終的に8割くらいは入っていたけど、ちょっとヒヤッとする。客入りがどうとか心配しながら見るの、演者に失礼だとは思うんだけどやめられない……。

 

初披露のイントロから、デビュー曲の「ボビーとシャンパン」へ。2人の調子がいいことが、始まってすぐわかる。生で聴いてるから冷静になれていないところもあるだろうけど、音源よりずいぶんよくなっていて、音源しか聴いていない人にウテギャを判断されてしまうのはもったいないと思うくらいだった。

フックの「ゲマイセルバッ」は「Get myself back」かな。ウテギャの2人が、コウテカから移籍する形で新しいグループを始めたことにかけているのかも。

お次の「第三段階はじめるよー」は、ビートジャック。持ち曲3~5曲くらいの状態が何か月も続いた後、やっと曲が増え始めて、客をアゲることができるようになってからの曲だ。噛みしめるように「人の書いたリリックでどう表現するか この声は紛れもなく私の声だ」と歌うぱたこの声が沁みる。

 

「チルチルイキル」から「ウインターギャル」「Puppet Rapper」へ。焦燥感のあるリリックと、ピアノの音が印象的なけだるいビートの「チルチルイキル」から、アカペラはじまりの「ウインターギャル」につないで、校庭カメラガールのアッパーチューン「Puppet Rapper」へ。プロデューサー兼DJのJasさんによる切れ目ないつなぎが気持ちいい。

 

MCを挟んでからも「ギャルトマホーク(ビートジャック)」「ギャルライフ」「ギャルバーガー」「ギャルライフ~お風呂マットは大事~」「全然分かってないくせに分かってるぶってるおじさんウザい」の順で無意味な歌詞のアゲ曲の連発。後方から見るとフロアが2人の声と動きを追いかけて一体化していくのがよくわかったし、「ギャルバーガー」での手拍子の騒がしさもなんだか感動的だった。

 

何度か書いたけど、ウテギャの曲はリリックにしろビートにしろ決してオタクフレンドリーじゃない。攻撃的なリリックに起伏の少ない、物語性の薄いビート。構造からしていわゆるパーティーチューン的な陽気さは全然ない。

フロアに熱量を与えているのは、2人のひたすら献身的で、ちょっとヤケクソ気味のラップだ。結成当初の、ヒップホップごっこだった頃から考えるとすごい進化で、ちょっと感慨深くなってしまった。フロアの対応力が高いのは、動画撮影可にしたことでノリ方が共有できているからもあるかも。

「おじさんウザい」で、シェルターの柵に登って天井をつかむぱたちゃん。普段はそんなに暴れるタイプでもないので、気持ちがたかぶってたんだろうな。

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アゲ曲連発終わって、休日の2人の心境を歌うようなゆったりした曲「ストレイトギャルストーリー」へ。ファン有志が配った真っ白いサイリウムが炊かれる。あまりやらない曲なので、最初はフロアが「あれ?この曲で炊けばいいんだっけ?」という反応だったのがおかしかった。

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MCでは「ウテギャの曲はサイリウム似合わないと思ってたんで、すごい嬉しいです」「ねー、うれしいー」と、言いながらしみじみ顔を見合わせる2人。企画者じゃないけど、こういう話を聞けると、ほっとする。

 

「最初の3、4か月は曲も3曲くらいしかなくて、もちろんオリジナル曲をもらえるだけでありがたいことなんですけど」「ワンマンもやらせていただいて」という謙虚なMCから、いきなり「餃子が食べたい」という話になり、「チルチルイキル」の餃子リミックス(?)。ケンホーさんがあげてくれたセトリからすると、音楽的にはフューチャーハウスでいいのかな? 2人が挑戦的な顔をしながらどんどん客をあおり、それに合わせてフロアがガンガン盛り上がっていく。その熱量そのままに、ミクスチャーロックの「ギャルウォッシュ」から、ぱたこの動きが過剰な「みんないい人だって言ってるけど実際はあいつサイコパスだしヤバい」。そして、「ギャルドリーム」。

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ギャルドリーム」はウテギャの精神的転機になった曲だと思っていて、「絶対ライブに来てくださいとか 自分の夢なのに 結局人頼み」とか「涙の数だけ強くなれるなら 弱いままでいいから ずっと笑っていよう」というリリックを吐き出すように歌った新宿Loftでのライブは忘れられない。ウテギャの2人がどういう子なのかがこの曲を通してはっきり伝わる。あの頃とトラックは全然違うけれど。

 

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ギャルドリーム」終わって、2人がはける。「あの曲、まだやっていないよね」というざわめきから引き出されるアンコール。

再び登場した2人はNas is likeのビートジャックの「ボビーとシャンパン」からスタート。そして、「GO!ギャル」へ。バンドサウンドで乗りやすい曲だからワーッと盛り上がるのはわかっていたんだけど、ステージの2人が本当に満面の笑みで歌っていて、そこにグッときた。やっぱりアイドルは笑顔だな……。

 

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MCで
「今日はありがとうございます
来てくれてありがとう!
ライブ見に来てくれてありがとう!
いつも見てくれてありがとう!
踊ってくれてありがとう!
名前呼んでくれてありがとう!」
と叫んでから、「大好きなみんなと最後一緒に踊りたいと思います」からの、「その程度」!

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フックの「ラミタタラッタとパタコアンドパタコ 今はこの2人だ 輝いてやるぜ」は何度も聴いたバースだけど、この日はひときわ強く響いた。

一体化するフロアに押し出され、「これで最後ですからね」という前置きとともに3回のアンコールがあって、オタクによる花束贈呈とのぼりの掲出から写真撮影。

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正直、ウテギャの挑発的な曲の中には好きになれないものもある。まだ2人のラップのパターンが少ないから、単調に感じる時もある。それでも定期的に観ていたのは、2人のがむしゃらさが何かを獲得するところを観たかったというのがあると思う。

だから、ワンマンがアイドルライブとして正しくハッピーに、そして力強く終わったことにシンプルに感動したし、最後のチェキ撮影まで、今までで一番いい顔をしていた2人を祝福したい気分だった。

 

でも、正直もっと行けるだろっていう気持ちもあって、それがもっと色んなテーマの曲を増やしてほしいということなのか。(16曲あって恋愛がテーマと明確に言い切れるものがひとつもないのもアイドルとしては珍しい。それが悪いとは言わないが、もっといろんな表情を見たい欲はある)メンバーに自分でリリックを書いてもらって、表現者としてステップアップしてほしいということなのか。もうちょっとラップに緩急をつけてライブの流れをコントロールできるようになってほしいということなのか。売れるための売り込みをがんばってほしいということなのか、自分でもよくわからない。……いや、全部かな。

 

細かいことはともかく、ただ後悔のないよう走ってほしいし、そのためにはそれぞれがやれることはやりきってほしいなとも思った。

 

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スマイル・アゲイン

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最近観た映画(牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件、オクジャ、ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣)

そんな最近でもないか……。備忘録。

 

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件

なぜか知らないけれど、見終わった後に手がブルブル震えていた。

この映画はある種の極限状態に陥った人間を美しく撮っており、そこかしこに暴力が発生する。そういった表現は多くの場合逆説的に生命力にあふれた画を作り出すものだけど、クーリンチェではなぜか玉虫の羽をむしり取るさまを見せられているような、昆虫を観察するかのような距離で描く残酷さがあって気持ちが擦り切れた。

露悪的ではないのに、目を覆いたくなるような残酷さがあって、そここそがいちいち研ぎ澄まされていて美しい。印象的なのは、ショッキングな場面や表情から常に少し距離を撮るカメラワーク。過剰な人物への没入を許さないからこその美しさなのかもしれない。台湾の湿度が、夜をとても滑らかに、時に万華鏡のようにきらびやかに見せていた。私は時代に翻弄される知識人として登場する主人公の父親に感情移入していて、こういう状況で子供を守ることと自分の信条を守ることを両立させられるだろうかとずっと考えていた。

 

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オクジャ

友人の当てたプレミアム試写会に同行。ネットフリックス出資作で、基本ネトフリ配信のため、映画館での上映は今のところこの日だけだったとか。

最初に監督と主演の女の子、そして香川照之となんか子役の女の子が出てきて記者会見をしていて、「このぬるい茶番ヤバくないすか」と映画好きの友人に言ったら「いや、これは映画の話をしているからちゃんとしてる方ですよ」と言われてびっくり。たしかにハイテンションでヤバかった香川照之も、子役の女の子も映画の話はしてたけど……。

映画のほうは女の子の表情の強さがすごかった。物語はびっくりするほどシンプルだったけど、前半のガラス戸に体当たりする場面とトラックを追いかける場面で元は取れる(タダで見たけど)。CGで動く巨大豚・オクジャのクオリティの高さにちょっとぞっとした。

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ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

天才バレエダンサーの道程を描くストレートなドキュメンタリー。私の周りというか、大多数の観客はポルーニンの美しさに心を奪われていると思うのだけど、私はポルーニンの母に心を奪われていた。

母はウクライナの貧しい家庭に生まれおちた息子の才能を開花させるため、ポルーニンのイギリス留学を決行するのだが、その資金を捻出するために祖母・父は外国に出稼ぎに行き、家族はバラバラになってしまう。結局、両親は離婚してしまい、「自分がバレリーナとして大成することが家族のためになる」と信じてイギリスで孤独に耐えていたポルーニンの心に大きな穴をあけることになる。

その後、ポルーニンはスター・プリンシパルとして活躍するも、コカインを打ち、タトゥーを入れ、自堕落な生活を送り、イギリス、ロシア、アメリカと居を転々とする。

母と再会した際、ポルーニンは「母のせいで家族が離散する羽目になった」という趣旨のことを言うが、その言葉に対して母は「人生の責任を果たしただけ」という。

自分たちと同じような人生を歩ませたくない。そして、この才能を埋もれさせたくないという気持ちから、身を粉にして働いていた母親。そして、そんな母の決断のために苦闘する息子。

自分が生まれた意味を、息子を育てることに全振りしている姿はだいぶ不気味でもあるのだけど、ロイヤルバレエ団最年少プリンシパルを産んだ女性にとっては、これは天から授かったやりとげなければいけない仕事であり、その思い込みが「人生の責任」という言葉を引き出したのだろう。気持ちはわかる。自分の生に価値を感じることの喜びというのは確実にあるし、市井の人として生きるのではなく、可能性に向かって進んでいく生を息子に送ってほしいという気持ちは否定できない。

あとは、ロシアの演出家の「思い切り踊れるのは若いうちだけ」という言葉が印象に残った。身体表現はやっぱり期限付きなのか。ロシアにはバレエのバラエティ番組があるというのもびっくり。

ドキュメンタリーとしては意外性のある画がまったくない物足りなさや、説明のためのカットしかない単調さはあったけれど、それなりに面白かった。

 


Bunkamuraル・シネマ7/15(土)よりロードショー「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」予告編

 

セルゲイ・ポルーニン写真集 The Beginning of a Journey: Project Polunin

セルゲイ・ポルーニン写真集 The Beginning of a Journey: Project Polunin

 

 

松村早希子個展「原宿アイドル標本箱」@marienkafer 6月30日

蛍光色のジュースや鮮やかな棒付きキャンデー、二・三度着たら壊れそうなかわいい洋服、甘いクレープのにおい。原宿・竹下通りには、甘ったるくて役に立たない、おもちゃみたいなものしか置いてない。

 
そのあまりにも堂々とした無意味さの輝きになんだかワクワクしてしまった。
 
松村早希子さんの個展会場、marienkaferは竹下通りからひとつ折れたところにあった。薄い蛍光色がそこかしこに張り付いた通りから、少し曲がっただけで灰色のコンクリが目立つ普通の通りが姿をあらわす。
 
会場は古着やアクセサリー、オリジナルのグッズも販売している小さなショップ。入口入ってすぐの壁に、アイドルたちを描いた、たくさんの作品が飾られていた。机の上には標本箱。箱の中の絵をピンセットで一枚ずつつまみあげて眺める。
 
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松村さんのことは、最初ライムベリーのイラストを描いている人として知ったと思う。
 
こぼれ落ちそうなくらい黒目が大きい目と、控えめな口の表情。マンガ的なフレームにはめこむわけでなく、かと言って写実的でもない。自身が感じとったものをそのまま紙に落とし込んだような媚のない絵。でも、ちゃんと似ている。
 
躍動感はないけど、その分ずっとその人が絵の中に座っているような存在感がある。
 
不敵な表情の3776の井出ちよのちゃんや、遠くを見つめるような目のamiinAのamiちゃんとmiyuちゃん。あるいは、物憂げな目の蒼波純ちゃん。さまざまな女の子達の姿が絵の中に収められている。
 
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アイドルを見ている時期がかぶるから、描かれている女の子たちの7割くらいは懐かしい気持ちで見た。参考にしたのがどの写真かわかるものもある。変わってしまったグループもあれば、表舞台からいなくなった子もいる。
 
ライムベリーのMCMIRIちゃんの黒髪デコ出しボブから金髪ショートカットまでの変遷も、壁と箱とに収められていた。くわしくは書かないが、MIRIちゃんにはちゃんと笑えてない時期があったと思う。「思う」というのは、私は現場で直接それを見ていたわけではないからだ。
 
でも、松村さんはちゃんとMIRIちゃんのことを見に行っていて、その時々の彼女を描いている。
 
だから、標本箱の中には金髪ショートのMIRIちゃんが、目を細めて笑う絵もあった。
 
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松村さんの絵は、彼女が自ら「ヘンリー・ダーガー」への親近感を語ったように、極めて個人的な印象を受ける。でも、そのどれにも穏やかな祝福の気持ちが込められているので、見ているこっちも気持ちが柔らかくなるのだ。
 
無意味なものばかりの街で見る、はたから見れば無意味な、たくさんの女の子たちへの愛情表現。
 
会期終了最後の1時間にお邪魔したので、ドルオタ・松村さんの親族・お友達が入り乱れて、でも、うるさく感じないくらいのにぎやかな空気を作っていた。
 
 ***大量に撮ったのですが、載せきれないので少しだけ***
 
中では枚数多くなかったのですが、校庭カメラガールツヴァイラストライブ後、ブレッツで松村さんが描いていた絵を見せて頂いたのを思い出しました。
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校庭カメラギャル。ぱたちゃんのふくふく感。
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3776こと井出ちよの様!
この絵に一番惹かれました。
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里咲りさちゃんは見た目ふわふわだけどいつもかっこいい。
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カミヤサキちゃん、「サキ様」感。

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amiina最後のライブの日を描いた絵。このライブ楽しかったな。 
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そして、肝心の笑っているMIRIちゃんの絵を撮り忘れました……。
 
あ、松村さんのRealSoundでの連載の原画もありました。
リンク張りきれないので、思い入れの深い演者が出ているものを。

"MONSTER VISION" リリースライブ視聴感想/般若、漢 a.k.a. GAMI、サイプレス上野とロベルト吉野、R-指定、DOTAMA、T-Pablow、CHICO CARLITO、Dungeon Monsters

AbemaTVの配信で観たMONSTER VISIONリリースライブの雑感。ちまちま打っていたら長くなった。

 

MONSTER VISIONはフリースタイルダンジョンのモンスター7名の対バンライブ。イベントのタイトルはモンスター7名によるマイクリレー曲「MONSTER VISION」に寄っている。持ち時間は各メンツ30分ほど。それぞれのライブの作り方に個性が出ていて面白かった。

 

CHICO CARITOは歌部分も含めた音楽的センスの高さが抜群。クラブに対するあこがれを募らせるよう明るくて幸福な曲「那覇のクラブ」が印象深い。また、「昨日は沖縄の慰霊の日でした」という言葉から自身の由来を語る「Orion's belt」には誠実さを感じた。MCで「ダンジョンでもっとも人生が変わったのは俺だと思っています」と話していたけれど、キャリアを積んだ他MCに見劣りしない音楽的強度があったと思うし、もっと長くゆっくり聴きたいと思わせる内容だった。

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T-pablowは相変わらずライブが下手で、音源とのギャップが激しい。川崎クラブチッタよりさらに大きい新木場コーストでは、映像からでもその弱みが明らかだ。

でも、途中で入った長めのMCからにじむ真摯さにやはり心を打たれてしまった。川崎の工業地帯の貧困の中で育ち、本当にヤクザのカバン持ちになるしかない生活を送ってきたこと。そこから音楽によってはいあがり、町にとっての希望になろうとしていること。どれも私にとってはすでに自明のことなのだけど、彼のそうしたバックボーンを知らずに「不良がイキってる」という貧しい言葉を投げつける人も少なくない。

そうした外野の声を自覚しながら、「オレの友達にはレイプされて妊娠した子もいる。そういう子に何か言えますか?」と話し、自分たちが町の希望となることの意味を語ってからのPAIN AWAYは胸に来た。自分が人前で歌うことの意味を、こんなに自覚している21歳の青年がいるだろうか。「普段は友達(BADHOPのメンバー)が一緒に騒いでくれるんだけど、みんな一緒に飛び跳ねてくれますか」からのLifestyleで〆。

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ダンジョンで時の人となってから、もっともハイペースに音源発表を続けているDOTAMA。新曲の謝罪会見は「謝れと皆 俺に言う」「何に謝ればいいの」などの言葉を散らしながらクレーマー社会を風刺する内容。普遍性のある内容とラップと本人のキャラクターがよくあっていて完成度が高い。ちなみに、彼はちょうどこの前の週に「自身のバンドFINAL FRASHのリリースパーティーの中止」をアナウンスし、ファンや関係者に謝罪する羽目に陥っている。状況から考えると「急きょ決定したダンジョンモンスターズとしてのミュージックステーション出演のため、中止にせざるを得なかった」ようなのだが、結果的に「現場よりテレビ」という悪評を彼が引き受けることになってしまって、はたから見ていて気の毒だった。

しかし、一方でこのタイミングで「謝罪会見」という曲がリリースされ、奇妙な説得力を持ってしまうことの縁も感じてしまった。「誰に謝ればいいの 謝る相手が多すぎて」。リリースパーティーの中止が彼の瑕疵だとは思わないが、結果として嘘なく歌える妙なリアリティを抱えた曲になっている。MCでは「30歳過ぎてからだってやれる」というようなことを話してから、所信表明的な「ベストソング」。

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「この先の答えは彼方向こう そうだろ相棒」というCRIME6の声をスクラッチするロベルト吉野のDJ。サ上とロ吉の入りは基本これなので、もはや見慣れているはずなのに、その前の演者3人がプレーンに入場してきた反動もあって、なんだかすごくかっこよく見えてしまった。いや、もともとかっこいいんだけど、あの入りが緊張感と高揚感を演出していることを今更ながらに確認。ロベルト吉野のDJルーティンからのPRINCE OF YOKOHAMAからのぶっかます、よっしゃっしゃす〆、サ上とロ吉。コール曲と知名度の高い曲のおいしいところだけをどんどんつないで客を引っ張るタイトな構成。「練習はちゃんとやる」とサイプレス上野はよく言うけれど、たしかにこのスピード感はお互いが体で覚えこまないと出来ない。

練習と言えば、B-BOYイズムのレコードをスクラッチして「メリーさんの羊」「チューリップ」を弾くという、特殊な練習の必要そうな荒業をワンマンライブぶりに見た。映像とAbemaのコメント欄で初めて知ったけど、ピッチを調節しながらスクラッチで必要な音を取って演奏しているらしい。サイプレス上野が「チューリップ」に合わせての合唱をうながす。コーストが歪んだスクラッチのチューリップに合わせて一体になる様子が可笑しい。

その後は新曲「上サイン」のサビだけ披露。上サインは右手で漢字の「上」を作る、彼オリジナルのハンドサインだけど、MCで無理やり会場中にやらせてから南国風のビートで「大人も子供も上サイ~~ン」と歌うのに笑ってしまった。お次はTV朝日の看板アニメのサンプリングしたふざけた曲、1pacからHIPHOP体操第2で〆。一体感作りに力を注ぐエンターテイメントな構成。しかし、その「客を引っ張り込んで離さない」という執念はある意味で攻撃的だ。

客から「演者にはフロアの人間を殺すつもりで来てほしい」という言葉を聞くことも、演者から「みんなのファンをいただきま~す」という言葉を聞くこともあった女性地下アイドルのオタクとしては、凝縮されたステージングからにじみ出る貪欲さが懐かしく、画面越しからでも気持ちよかった。

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漢a.k.aGAMIのライブ前に客演作のSALU「Lifestyle」が流れる。BADHOPのアンセムにかけていたのだろうか。サイドMCにマスター、DJにDJBAKUを連れてのライブ。DJBAKUが入りを間違えたり、思いっきり噛んだりと、曲が止まる場面がちょこちょこある適当さにカルチャーショックを受ける。しかし、般若やサ上とロ吉のような勤勉で稽古好きなギャングスタラッパーというのもおかしいか……。クラブって「しょせんライブは酒のつまみ」みたいなところあるし。

間に晋平太との試合のことや、昔のサ上とロ吉のことなどを話して笑いを取る。危ういネタや楽曲で売りながらうまいことなごませるこのバランス感覚が「TVじゃモンスターお茶目なおじさん」でやれるところなのだろう。ただ、他MCと比べて「内輪向けの言葉で話してる」とも思わせたのだけど。「何食わぬ顔してるならず者」「my money long」「新宿ストリート・ドリーム」などの代表曲を披露。

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DJ松永はDMC東予選に出場ということで、R-指定ひとりで登場。連覇を続けるバトルMCとしての葛藤を歌った刹那でスタート。戦いに赴く相方へのエールか。ピンチヒッターのDJもつけずに、PAにお任せしていることを告白する長めのMC。改めて聞くとR-指定は話がうまい。情報を誤解の生じない範囲にまとめて、わかりやすく伝える力が圧倒的だ。そのままテレビに出せるしゃべりがステージ上でできている。大量のお題を募っての長めの聖徳太子フリースタイルも見事。

今回はR-指定名義ということで、ソロの際に制作した曲を中心のセトリ。聴き比べるとDJ松永のトラックは、感情を挑発してくるようなちょっとねじれた作りなのだとわかる。最後はバトルブーム後の未来を悲観的に綴った未来予想図で〆。「どんなバカでも誤読しない」ように作られた歌詞に物足りなさを感じる曲だけど、安定感のある歌メロは印象的。ミュージックステーションでも最も安定感があったのは彼だったと思う。

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般若のライブは、一言で表すと「直球」。滑舌のよい明瞭なラップと節回しはどこか演歌的だ。こぶしが利いているといえばいいか。MCはほぼなしだったけれど、合間に「お題募集しまーす」と叫んで、適当に「はい、〇〇。はい、〇〇」と言った後、特に客に奉仕するでもなく自分の楽曲を始めるネタふりに笑う。MCと曲の切り替えがしっかりできているので、不親切な緩急のつけ方があんまり浮かないのが強い。ある意味で、一番世界観ががっちり固められているんだろうな。

やっぱフィジカルの強さは正義。最後はDOTAMAを呼び込んで本音で〆。

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ダンジョン挑戦権獲得バトルとMONSTER VISIONの披露は離席していて見られず。というか、後で見るかと思っていたら視聴期限を勘違いしていた。般若のライブの感想がちょっと短いのも、後で見るつもりで離席していたからだったり……。

最後にMONSTER VISION披露からMV制作のメイキング映像を流して終わり。各人が「こんなに金と手間のかかったMVを作ることなかなかない」と話していて、前週のミュージックステーションでの浮き足立ちっぷりも含めてちょっとわびしい気分になる。金のかかったMVが必ずしも似合っていないところも含めて。「俺だけこんな適当な格好で」みたいなことを話しつつ、それを気に病む様子のないR-指定のふてぶてしさが印象に残った。

MONSTER VISION

MONSTER VISION

  • Dungeon Monsters
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250