映画としての「アイドル・イズ・デッド2」については書いたので、1月31日のコール&レスポンス回について。
これは、映画の上映中に、「ライブのノリを持ち込めないか」という提案を受けて映画館の了承を得た上で開催されたものだ。
要は上映中の「コール」や「オタ芸」を許可するということである。
前日に公開された「primal.2」のMVのせいでどんよりした気分になっていたこともあり、「どんな気持ちで観ていいものやら」という憂鬱と「とりあえず見れば気分が変わるかもしれない」という期待を抱えつつ、新宿へ。
会場のテアトル新宿はかつて出崎統オールナイトが行われた映画館で、「そうか、あしたのジョーに引き続き、また登場人物がゲロを吐く映画を見ることになるのか」とひとりごつ。
キャパシティ218のテアトル新宿の、この日は8割強くらいの入り。BiSに興味のない映画好きのお客さんはどのくらい入っていたのだろうか。
最初に舞台挨拶として柳さん、国武さん、加藤監督が登壇。「席を立たないでください」というアナウンスが入る。
柳さんが「エレクトリックキスのシーンでオール電化!というコールを入れてください」と促すと、さっそく後に続く研究員。
ライブハウスの中で繰り広げられるいつものノリだ。
そして、そのノリは映画上映中もずっと続いていく。
メンバーが登場するたびに入る「プー・ルイさーん!」「ゆっふぃー!」「のぞしゃーん!」「みっちぇーる!」のコール。
ときどき「レスくださーい!」も挟まる。
何度も映画を観ている人も多いから、冒頭のIDOLではちゃんと「カワイー!」が入る。
劇中にのぞしゃんが自宅で目を覚ますシーンがあるのだけど、そこでも「のんちゃんっ!おはよー!」とかけ声。
平常運転。
もちろん、「オール!でんかーー」のコールもちゃんと入る。
「nerve」では柳さんが後ろから走ってきて指タッチをしてくれて大盛り上がり。一応みんな席から離れてはいないのだけど、立ち上がってリフトよろしくペンライトで画面を指さしたりと、もはやライブハウスと変わらない。
最後の「レリビ」では、会場の3分の1の人が立ち上がって館内をぐるぐる回り出す。上映終了後のあいさつで柳さんに「ほら、研究員さんたちやらかした〜〜」と笑われていた。
私が参加したライブに「レリビ」がかかったことはなかったから、映画のスクリーンから流れる映像と音楽で、研究員たちが最高に幸せそうな顔で館内を回っているのを見るのはなんだか不思議な気分だった。
なんせ、館内をぐるぐる回っている人たちの何人かは、エキストラとして映画の中に映っている人たちなのだ。
映画の中でBiSと呼ばれている女の子たちのうち、2人が脱退し、新たに4人の女の子たちが加入した現在。映画の中に映る人たちが映画館ではしゃぐ様子は、結果的に画面に映されたものが過ぎ去った過去であることを強調しているように感じられた。
中には他界した人もいるし、新しい推しを見つけた人もいる……。
そして、過ぎ去った過去だからこそ、現在進行形のモヤモヤに捕らわれずに自由に楽しめることができるという意味で、なんだか解放された感じすらした。
今起こってるいろんなモヤモヤも、終わった後にはちゃんといい思い出に変わるのかな?
そうだといいな。アイドルなんだから、ハッピーエンドにしないと。そして、どんな状況でもBiSの楽曲は誇らしいほど名曲揃いだ。
ここから余談。
印象的だったガヤ。
・プー・ルイとゆっふぃーが刑務所の布団で、隣り合わせで会話しているシーンでの「おおー」「奇跡の……(笑)」。
・電力会社の社長が謝罪会見を開くシーンで「不祥事で……」という言葉を受けての「コショージー!」。
・デブメイクのみっちぇるが登場するシーンでの「カワイー!」「カワイー!」。
・みっちぇるにのぞしゃんがアイドルとは何かを語るシーンでの「おお〜〜」「いいこと言う!」。えらそう。
コール&レスポンスという上映形態に関しては、内輪受けがひどかったと退出した人もいたようだ。たしかに、コールやケチャはともかく「○○さん出てるー」的なノリは完全に内輪。しかし、アイドル文化はそもそも内輪だからなあと思ったり……。
そのほか、映画でもっとも印象的だったのは、登場する4人の女の子の中で、プー・ルイが一番取り立てて特徴のないふつうの女の子に見えたことだった。
特別演技がうまいというわけではないのだけど、何となく揺るがなさを感じさせるのぞしゃん。ほっそりした体つきが優美なゆっふぃー(マイクを持つ手がきれい)。いかにも愛され担当という感じのみっちぇる。
比べて映画の中では、プー・ルイが一番ふつうの子に見えて、それが衝撃的だった。ふだんのプー・ルイは、とても強靱で貫禄のある、ちょっと常軌を逸した精神の女の子のように思っていたから。
だけど、そうじゃなくて良くも悪くもふつうの女の子が必死でがんばってるんだということを突きつけられたような気がして、はっとしてしまった。
彼女はよく、自分に価値がないような言い方をするけれど、それは謙遜ではなくて、本当に自分が一番ふつうのつまらない子だと思っていることの現れなのかもしれない。
でも、プー・ルイの代わりはいないし、プー・ルイはBiSを作ったことをもっと誇っていいんだよ!と言いたくなったり。
そして、もうひとつ印象的だったのは、のぞしゃんの存在感だ。
ふつうこういう映画は主人公の成長物語になるはずなのに、劇中の「のんちゃん」は変わらない。
ゆっふぃーとプー・ルイの二人を待ち続け、ファンの今澤には「なにを言われても信念を曲げない人ってかっこいい」と伝え、最後にブームが去ってチラシを足蹴にされるエレクトリック・キスを横目に見ながら、それでも自転車で進んでいく。
単に変化がないとか成長がないとかとはまた違う、足腰の強さのようなものを感じさせるたたずまい。のぞしゃんは映画のトークショーで「BiSを卒業したメンバーに、自分がおいて行かれるような感覚がある」というようなことを話していたらしいけど、のぞしゃんの揺るがなさの価値は、たとえそれが「辞められない」からだったとしても、BiSにとってもとても大切なもので、彼女がだけが持っている強さなんだと思った。