ホンのつまみぐい

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演劇集団「俄」サイバーパンク歌舞伎Vol.2「ヒカ」

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 サイファーで知り合った和合大地くん作・演出の芝居を観てきた。

 サイバーパンク歌舞伎と銘打った四谷怪談モチーフの終末SF「ヒカ」。物語は、荒廃した地球で作られたヒューマノイド・ヒカと、彼女が持つ「街を作り出す能力」を利用しようとたくらむ青年・伊右衛門を中心に進む。

 時系列が前後する構成や、リズミカルな殺陣にセリフ。シンプルだけど世界観をきっちり表現している衣装や舞台美術など、とても洗練されていて、それなのに前のめりな力強さがあって見ごたえ十分だった。

 登場人物全員が復讐者という陰惨な内容だし、伊右衛門のゲスっぷりは相当なものなのだけど、演出が達者なのできちんと観ていられる。

 1年だけ高校演劇をやっていたから、大学生でこれだけのものが作れる若者たちにはただただ敬意しかなかった。自分の所属していた部は2年目に人が集まらずに廃部になったけど、それには私の力不足もあったと思う。

 終盤に「火の鳥・望郷編」のようにヒューマノイド・ヒカが自分自身の生について問う場面があるのだけど、彼女は作中で子どもを産んでいるのに、それが自問に影響を及ぼしていないところは強く気になった。もったいないと思う。

 ともかく、キャパ120席ほどの箱が3日間5公演ほぼ完売というのが理解できる内容だった。

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 ところで、8日後は3月11日で、東日本大震災の8年目だった。和合くんは福島出身で、8年前は小学生か中学生だったはずだ。

 不十分な復興の現状や、まだまだ歳相当と思えない自分自身を振り返ると、8年目の実感はまったくなかったのだけど、あの時少年だった彼がこうやって一つの芝居を作り上げているところを見ると、たしかに、どうあろうと8年は経ったのだと思った。

 

自分メモ

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 この間「1年でこれをやりたい100の目標リスト!」というのを見かけた。「100って」と思ったのだけど、100も目標があると達成ゼロも達成百もありえないので、これはこれでいいのではないかと考えるようになった。出来た出来なかったで自己嫌悪しなくてすみそう。

 私も今年の残りの目標というか、生活習慣の見直しについて書きたい。

 

・お金を記録する

確定申告しようとしたらネットが接続できなくなるという経験を経て、早めの準備の重要さに思いをはせるようになった。今年はお金に対する苦手意識を減らしたいので、第一歩としてこまめに記録する習慣をつけたい。

 

・手帳を使う

以前ブラウニー手帳という3000円くらいする手帳を使っていたのだけど、全く活用しなかった。

予定はだいたいインターネット上に保存できるようになったから、先のことを書く習慣がなくなったのだ。

ブラウニー手帳自体はよく設計された素晴らしい手帳だと思う。

代わりに起こったことを記録する習慣をつけたい。特に病院、契約、支払いはマメに。しかし、日記ほどの情報量を記さないように気を付ける。

 

・図書館ではなるべくテーマ単位で本を借りる

いろんなジャンルを借りると結局読まないから。

 

・一日1時間は必ず本を読む時間を作る

 

・装うことを怖がらないようにする

 

目標・適時追加中。

「俺が聴いて観てあげないと死ぬ音楽があると思っているので」

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 はてなキーワード校庭カメラガール校庭カメラギャルの項目を作ってから、たまに「誰か彼女たちについて書いていないか」と思ってクリックすることがある。

 キーワードをクリックして該当ページに飛ぶと、「〇〇に関するブログ記事まとめ」という表示が出るのだ。

 でも、地下アイドルの名前をクリックしても、そのキーワードが使われたブログが更新されることなんてごくまれだ。

 地下アイドルの追っかけの日々は平坦だ。ほとんどの地下アイドルが、入場料2000~3000円、持ち時間各15分、演者は全部で10組という、十把人からげ扱いのイベントを行き来する。売れてるアイドルや、曲やパフォーマンスに驚きがあるアイドルならともかく、ありふれたライブの続く現場に感動を見出すのは簡単なことではないし、それを記録するのはさらに難しい。

 しかし、地下どころか地底アイドル現場に通いつめ、年間の現場数は365を超えているのに、ずっと現場の感想を書いている人が、はてなに一人いる。音楽に対する造形も相当深いらしく、地底の感想に加え、たまにクラシックコンサートやフジロック、洋楽のライブの感想も挟まる。

 ブログは2008年から始まっている。当初はいかにもこだわりのある音楽好きっぽい現場選びの記述が多いけど、いつからかアイドルの感想がメインになっていた。

 言いがかりのようなことを書いている時もあるけれど、つまんないと感じた日はちゃんと「つまんない」と書く人なので、読むと気持ちが安定する。

 その人が、ASKAのツアーについて、暖かい筆致でそのすばらしさを記しながら、こう結んでいた。

ただしどうしても思うのがやはりこれはマス受け、最大公約数の音楽だなと。
アンコールでYMCAのカバーがあったけど、ああいうとこだな。
俺が聴いて観てあげないと死ぬ音楽があると思っているので
俺はそっちをメインに見ていきたい。

  傲慢に聞こえるだろうけど、私はこれがわかる。「すばらしいけれど、自分がいなくてもいい現場」という感覚は確かにある。無意味な感情かもしれないし、そのせいで得られないものもあるのだろうと思う。それでも、そういう感覚から抜け出すことが出来ないし、この感覚に沿うことで見えるものを見たい。そんなふうに考えてしまう。

テンギャン東京ラストライブ/TENG GANG STARR×kamui×EBISU BATICA presents TEN Gene #テンジェネ FINAL

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 初めて気がついたことがたくさんあるライブだった。

 なかむらみなみが固有名詞を並べてラップする時の不思議な説得力とか、kamuiのMCの素朴な誠実さとか。BATICAの一番後ろでは姿は頭くらいしか見えなくて、途中でほぼ聴くだけになっていたけど、「きっと」は、少し泣けた。

 MCで「ありがとう」というkamuiに、フロアから「ありがとーありがとー」という明るい声が返ってきて笑ってしまった。フロアは最初から大盛り上がりで、狭くて逃げ場のないBATICAで繰り返されるモッシュ・ダイブの様子は、小さな水槽が洪水を起こしているようだった。

   あまりの爆音に、壁や備品に当たった音がごうごう鳴る瞬間がたびたびあって、身動きの取れない場所にいたのに激しさが身体的に伝播していく様子に、少し興奮した。

 「もっと好きになりたい」と思っていたところで終わってしまったから、残念といえば残念なのだけど、kamuiもなかむらみなみも、おそらく私よりずっと彼らのことを身近に感じ、見てきたのであろう若い子たちも、いさぎよく次のことを考えている様子だった。

 東京最後の主催イベントが10代も含めた若手ばかりのブッキングで、客も彼らのことを仲間のようにもヒーローのようにも思っている若者ばかりという風景。「シーン」という抽象的な言葉は、こういう空間に使うのだろう。

 終わらせようと思った時にきっちりと終わらせることが出来る知性と、一見ファニーで毒々しいのに、健全なピュアネスがあるという不思議なバランス、魅力的だったな。

 ライブ終わりのフロアからすっと人がはけ、熱量がかき消えた頃に、二人がフロアに戻ってきた。そのまま客と雑談する二人はとてもすがすがしい表情で、感傷や後悔はなくとも、寂しさはやっぱり少しあって、でも、未来を向いている。そんな風に見えた。

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ICON

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tofubeats「RUN」

 tofubeatsの「RUN」をやっとちゃんと聴いている。歌詞をしっかり聴きたい人の場合は、ちゃんと聴くのが遅くなる。dodoの新譜もいまだにちゃんと聴いていない。

 「RUN」の曲はどれも歌詞の持っている余白が広い。

 音楽が終わってしまった

 余韻だけがある

 友達も帰ってしまった

 自分だけがいる

 自分だけがいる

 自分だけが

  新しい街に住む

 ふたりは出会った

 目新しいものは

 なんにも無い世界で

 

 新しい街に住む

 ふたりは出会った

 なんにもしないで

 ただ 見つめ合う

  音楽として聴いているあいだはこの修辞の乏しさに気が付かないのだけど、文字で見るとあまりに言葉に頼っていなくて、びっくりする。

 それなのに、いや、だからこそなのか。曲を聴いて頭に浮かぶ風景は不思議なほど鮮明だ。「こんな言葉の使い方が出来れば」と思いながら聴いているが、音楽があるからこそ成立する言葉のありようであることもたしかで、同じ言語を使っている人間としてうらやましく思った。

RUN(特典なし)

RUN(特典なし)

 

 

lyrical school tour 2018 "WORLD'S END"@新木場STUDIO COASTのちょっとした物足りなさについて

 全29曲。MC少な目。全員ラップ巧くなってて聞きごたえあり。合間にこの日だけのソロ&ユニット曲あり。featringでYoung HastleとSUSHIBOYS登場。

 

 以前はrisanoちゃんがいい意味でよく目立っていた印象だけど、この日は全員がバランスよく目にも耳にも飛び込んできて、それぞれがツアーで磨かれていったのがよくわかった。

 

 内容的には文句のつけようのない密度なのに、何となくするっと終わってしまった印象の不思議なワンマンライブ。

 

 lyrical schoolは世界観がしっかりしているのが特徴だと思うけど、それが逆にマンネリ感になっているのかなあと、後で考えた。

 

 その世界観も、開始初期のような「普通の大学生がラップアイドルする」という気さくさとはまたちょっと変わっていて、今は「リリスクっぽさ」に沿って曲が生まれている印象で。

 

 5~10曲くらいだとそんなことまったく感じないけど、29曲だと、ひとつひとつはいい曲でも、どうしても平坦さを感じざるを得なかったのかな……? やなことそっとミュートも、曲が似すぎていて物足りなく感じることがあるけれど。

 

 とはいえ、その世界観が好きな人には最高に楽しいだろうし、対バンで観る5~10曲くらいのリリスクの最強っぷりには異論をさしはさむ余地はないし、アルバム「WORLD'S END」のプロダクトとしての完成度の高さを鑑みるに、これが間違いというわけでもなく……。制作側と観客が世界観をしっかり共有できることそのものは、とても大切なことで、しかも簡単にできることではないのだから。

 

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WORLD'S END

WORLD'S END

 

 

 これは好みの範疇なのだけど、もっと今のメンバーにしか歌えない、今の女の子の言葉を掘り下げてもらえると私はうれしい。

 

 というのも、最近の有名ラッパーのプロデュース曲に少し違和感があったからだ。たとえばPESやYoung Hastleのプロデュース曲。単体では完成度も高いし楽しく聴けるけど、どうしてもカラオケっぽく見えてしまう瞬間があるのだ。メンバーのラップスキルがあがって、プロデューサー側の世界観を再現出来るようになったが故の悩みだけれど。

 

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 でも、SUSHIBOYSのシャープペンシルはあまりそういう不自然さを感じずに、スッと彼女たちの歌として聴ける。それは、SUSHIBOYSの言葉が今の若者の言葉だからじゃないかな。

 

 個人的にはリリースするかは別として、himeちゃんにリリックを書いてもらいたいけれど、やらなそうだなあ。

 

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 追記:のちに出たライブ盤CDを聴いて「リリスクはめちゃくちゃ優等生なんですよね。だから、ライブでも常にちゃんとしていて、破綻がない。でも、その誠実さが一方で心を解放させるような爆発的な瞬間がないことにつながっているのかも……。とはいえ、破綻すりゃいいわけでもないし、エモければいいわけでもないので、ライブって本当に難しいですね……」という話を、帰りの飲み会でしたことを思い出した。

でも、改めて読み返して思うけど、それって悪いことでは全然ないんだよ~~。うーん。個人的にライブ盤CDの中で一番よかったのは本編最後の「WORLD'S END」。

 

lyrical school tour 2018

lyrical school tour 2018 "WORLD'S END"

 

 

Tokyo Burning/Cookin' feat. Young Hastle

Tokyo Burning/Cookin' feat. Young Hastle

 
パジャマパーティー/シャープペンシル feat. SUSHIBOYS

パジャマパーティー/シャープペンシル feat. SUSHIBOYS

 
WORLD'S END 南半球remix

WORLD'S END 南半球remix

 

 それはともかく、南半球remixもすごくよかった。やっぱ、グッドミュージックを作る力は半端ない。

natalie.mu