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黒井ひとみさんの「空気人形」を観に道頓堀劇場へ行った

 黒井ひとみさんの演目「空気人形」を観に道頓堀劇場へ。いちょう団地の猫企画ブースでお会いしたマッサージ屋・Yさんをアテンド。

 

 Yさん、デパートメントHは好きだけど、ストリップは初だとか。

 

 「空気人形」は業田良家のマンガが原点だが、おそらく是枝裕和の映画の方が有名。

 

 ステージの上には背と両足をすっと延ばし、置物のように座るメイド服姿の黒井さん。パントマイムでパペットのように身体を動かす彼女の身体に少しずつ表情が宿り、所作にも何かを触れようとするような動きが追加されたりと、人間に近づいていく様子が演じられる。

 

 黒井さんは力がこもると泣きそうな表情になる人なので、人形が少しずつ感情を増やしていく演技に説得力があった。

 

 音楽は比較的有名な曲が多かったけど、ほぼすべてオルゴール音に加工されたものだった。作りものに魂が宿る物語だからだろうか。原曲と比べ、少し物足りないオルゴールの音が暗い劇場によく似合う。

 

 映画で使用された音楽は流れなかったけれど、ベッド曲の選択にはリンクを感じた。歌詞も含め、絶妙。

 

 ストリップも、大衆演劇も、地下アイドルも、2.5次元も、稚拙という言葉では言い表せないまがいもの感がある。しかし、時々ある領域を超えて「本物」になる瞬間があって、そんな時は単に「本物」にふれることでは出会えない奇妙な感動が訪れる。

 

 演目が終わり、オープンショーの時間。黒井さんの定番曲「アイドルになりたい」で始まるあの曲が流れる。「なりたい」を歌う曲だから、「空気人形」の後に続くとオープンショーも含めて演目の一つに見えてくる。ストリップの領域を意識させられる20分弱だった。

 

 もうひとつ、新作の「ナルコプレシー」はストリップでも人気の高い女性歌手のメドレー。サビの一番盛り上がるところに合わせてご開帳するのがとてもばかばかしくて、ちょっと笑ってしまった。これから曲を聴くたびに思い出しそう。

 

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空気人形

空気人形

 
空気人形 O.S.T.

空気人形 O.S.T.

 

 

 この日はほかに、普段は入り口で切符を切ってるはなさんの演目が印象に残った。彼女は長く別名義で活動していたけど、今ではたまにしか舞台に乗らない。

 

 はなさんは相当かっぷくがいい。踊れるんだろうかって思うくらい、いい。でも、動くとちゃんと音を聴きながら踊る人の動きで、緩慢さを感じさせない。踊り子さんの中には、美しいけれど、全然音を聴いていないのがわかる人もいて、そういう人の演目はどれも同じに見える。

 

 音楽に合わせて世界を表現するという基本的なことがしっかり出来ていて、なおかつストリップらしいわざとらしさもあって、さすがベテランというダンスだった。

 

 この日の演目は歌謡曲中心の着物の演目と、ぶりっこ女子が彼氏に甘える様子を演じるものの二つだったけど、後者でここ1年くらいの日本語ラップのヒット曲をガンガン使っていて、まるでクラブ状態。立ち見だったのもあり、ついつい踊ってしまった。あの曲でこう動くのかという面白さもたっぷり味わった。

 

 しかし、メイン客であるおじさんたちにわかりやすい選曲ならもっとウケがいいだろうに、そうしない。たぶん、私はそのエゴも含めて演目を楽しんでいるのだと思う。

 

 一緒に行ったYさんは私より音楽に詳しいので、「まさかあの曲が流れるとは思ってなかったっす」と言っていて、それもなんだかうれしかった。倖田李梨さんも日本語ラップを使うけど、もっとオーバーグラウンド嗜好だし、Yさんを案内するこの日にはなさんが乗っていて運がいい。

 

 Yさんはクラブの規制にまつわる事柄の知識もあるので、合間にストリップにおける風営法の理不尽さについても話せたのもよかった。

 

 ところで、2010年。私が初めてストリップを観た時に不思議の国のアリスの衣装で踊っていた人がいて、それが別名義でのはなさんではないかとずっと思っていた。

 

 ひとりで入ったわけではなく、日ごろから地域とのかかわりの深いART LABO OVAの蔭山ヅルさんが、黄金劇場を案内してくれたのだ。大学生の女の子ふたりと、男の子ひとりと私とヅルさんという組み合わせだった。

 

 黄金はアットホームな劇場だったから、演目の前のおしゃべりが長くて、50代であろうベテランの女性が男の子を軽くからかったり、「カップルで来たり、酔った勢いでって女の子同士で来る人もいるわよ」などと教えてくれたりした。

 

 そしてもうひとり、かっぷくのいい若い女性が膝を折って「友達同士で来たん?」というようなことをこちらに話しかけてくれたような、ぼんやりした記憶があった。

 

 今回写真撮影の時に話を聞いてみると、ちょうど10年位前にアリスの演目をやっていたそうで、だからといってその時の人がイコールはなさんかはわからないけれど、ちょっと感慨深いものがあった。

 

 Yさんはとても楽しんでくれたようで、あとで「写真撮ればよかったです」「また行きたいです!」というLINEをくれた。

 

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