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人生は一種類しか選べないから/サイプレス上野とロベルト吉野「ドリーム銀座」リリース記念全国ツアー2019 ~青春の決着~@東京代官山LOOP

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 年始の空き時間に、2009年に行われた「WONDERWHEEL」のリリースパーティーの映像を観ていた。

 ライブの最後に、興奮した客が次々とステージにあがってくる。それを笑いながら見守るサイプレス上野。いつの間にか恵比寿リキッドルームのステージがいっぱいになって、皆が笑いながら身体を揺らす。不思議な多幸感と儚さのある、泣きそうなほど美しい光景だった。

 ちょっと足を踏み出せば落ちてしまいそうなほどの人数がステージに乗り込んでくるのは、彼らが人を受け入れる明るさを持っているからだろう。一方で、サ上とロ吉の曲には死の気配すら感じさせる、喪失感の漂う曲が少なくない。「どんな風景も永遠でない」というのが楽曲で繰り返し歌われているから、その明るさが胸を打つ。

 映像に残ったその光景の美しさに憧れながら、これはこの時だから作れたステージで、同じ画が自分の前に現れることはないだろうとも思った。

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 「ドリーム銀座」のリリパ青春の決着ツアー東京場所は代官山LOOP。キャパ的にかなり小さい箱だけど、前回のリリパの集客を観ているから、弱気ではあるけど、間違いとも言えずという感じ。

 とはいえ、さすがに人で埋まっていて、流れで比較的前の方で観ることになってしまった。私は前で観たいタイプじゃないのに。前方はアーティストとライブに対する責任が重いから苦手なのだ。前回のリリースパーティーがいまいち消化不良だったので、少し不安もあった。

 ライブはアルバムの一曲目「intro」をなぞる形でスタート。そこから定番→アルバム曲という流れ。合間にクラシック曲のビートジャックでのフリースタイルに、ロベルト吉野のスクラッチでの童謡演奏、石野卓球「ホラガイHOOK」から電気グルーヴShangri-La」のビートジャック。

 スクラッチで童謡を演奏するというのも、クラシックのビートジャックにフリースタイルを乗せるのも一昨年からやっている余興で、正直ちょっと飽きた日もあったけど、この日はすべてがタイトに進んでいって退屈させなかった。ふたりのテンポの良さは、M-1に出たことと関係があるんだろうか。

 たしか「Shangri-La」が終わった後だったか。「青春の決着」~「WONDERWHEEL」~「BayDream」から、ZZPRO乱入という流れが最高によかった。

 

 「青春の決着」はアルバムで一番好きな曲だ。「しっかり言えるかな 目を見れるかな もしかしたら次は無いかな」という流れから、〆が「未だに迷子の事に気付かないふりが出来るならそれこそが最高」というのが、意味はよくわからないけど繰り返し聴いてしまう。

 ZZBBQからの酒飲みラップから、ZZPROメンバーをステージに残したまま「YOKOHAMA la la la」の流れで、いったん終わるのも○。「ZZBBQ」はいつでも優勝できるから強い。

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 アンコール明けがゲストコーナーで、ヨッテルブッテルからLIBROの「RUN AND GUN pt.2」。予定になかったBASIがいきなり飛び込んできた。渋谷に来ていたところに偶然ライブを知って、アンコール直前にUNITの楽屋に入ってきたらしい。「ご当地グルメはだいたい食べた」が聴けて良かった。次がLIBROの曲「愛してやまないエブリデイ」。LIBROはラップも作詞も、平易な表現を聴かせる力が高くてすばらしかった。

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SOUND SPIRIT

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 この後ちょっと順番があいまいだけど、たしかmabanua参加で「ムーンライト」。DABO、KEN THE 390、MEGA-G、ミステリオ参加のマイクリレー曲の「絶対舌命」だったと思う。「絶対舌命」、キャラの違うラッパーが一同に介す面白みがあったけど、何気にミステリオの強い緊張が印象的だった。真面目な人なんだと思う。(それはアーティストとしてはむしろ弱みかもしれないが……)

 「ヒップホップ体操第三」はわざわざサイプレス上野がマイクスタンドの前でラップをする。歌詞の中にある「前戻す横戻す前戻す横戻す」という動きを真面目にやるとマイクが持てないからだ。これは応援団のあの動作なのだ。音源で聴いた時に、「前戻す」というリリックの直前に「リリックちゃんと聴け」と一言入れてあるのが謎だったけど、それは客にも応援団の動作をやってもらうためだったというが現場でわかった。笑った。

 アンコール明けのMCで「WONDERWHEEL」リリース時の話にふれた上で、友人の千葉正也にアルバムを聴いてもらったら「前衛的だね」と言われたこと。自分たちのやっていることは時代にあってないんじゃないかと思ったこと。でも、人の曲を使ったりするというスタイル、つまり敬意を持って遊び続けることを変えないでやっていきたいという話をしていた。

 私も、最近「人生は一種類しか選べない」という気持ちが強くなってきているから、このMCは染みた。残念だけど、自分をうまく折りたたんで生きていけるほど器用ではない。そして、自分の限界そのものもおおよそ見え始めている。変えない、あるいは変えられないのは強さなのか、それとも弱さなのか。

 「でもそれをやったら自分が自分じゃない」というのは「青春の決着」の一節。最近、答えに迷った時にふと思い出す言葉だ。

 そんなエモいMCの後に、「さっきのいい話なんかどうでもいい! 朗報だ! 明日からダンジョンのナレーションの仕事がないからいくらでもシャウトできるぜ!」と叫んでの「ザ・グレート・カブキ」。

 ロベルト吉野と刑鉄というユニットをやっている高橋'JUDI'渓太がスピーカーの上で叫んでいて、本当にアホなおじさんたちがアホなことをやっているという様子が最高。トラップなんだかメタルなんだかよくわからない曲で、デスボとシャウトとダイブとリフトとウォール・オブ・デスが入り乱れるわけのわからない空間を作っていた。モッシュにもダイブにも参加しないけど、人がボロボロになりながら自分を解放しているのを見るのは好きだ。(でも、おじさんばっかりだからちょっとモッシュが弱い)

 その後の「ドリームアンセム」で、おそらくまだ小学校低学年くらいの少年がステージの上でコールをしていたのも熱かった。

 「誰かの子どもが俺の歌口ずさむなんてやっぱ不思議だな」という曲の時に、小さな子どもがステージで一緒に歌ってるの、美しすぎるでしょう。「WONDERWHEEL」のリリパには間に合わなかったけど、この場に間に合ってよかった。

 最後はANTICビートのこれまた感傷的な「Neverending Excursion」で〆。

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 合間のMCで、lyrical schoolのhimeちゃんのパパからもらったという酒(オールドイングリッシュ)が回し飲みされて来たり、アンコール中に「帰れー!」と言ってる人がいたりしたのもくだらなくて120点だった。

 後日、AbemaTVの配信番組水曜thenightでこの日の様子が放映されていた。おまけコーナーでの「サイプレス上野を動物に例えたら」という問いに、ゲストで登場したラッパーの多くが「○○(アライグマとか)。かわいいけど実は凶暴」と答えていて、「ほんとそれ!」と思った。

 後日と言えば、ロベルト吉野がインスタグラムで「拓海、将来人前に立つ人になりたいのなら今の内にもっとそのノウハウを覚えとけwあと数年経ったら子供カードあまり使えなくなっちゃうぞ~」と、大活躍していた少年について書いていたのもよかった。

ドリーム銀座

ドリーム銀座