ホンのつまみぐい

貼ってある写真は本文と関係ないこともあります。

#itisrape_japan 「性暴力と性暴力判決に抗議するスタンディング」に行って、三原順作品を思い出していた

 

 行きました。携帯の電池切れで写真が1枚もない……。

 到着は20時頃。目算で300人ほどの人が集まっていました。終了後に「400人ほど集まっていたらしい」というツイートを見かけたので、2時間トータルでの人数はそのくらいだったのでしょう。「O-nestには入りきらないけど、WWWは埋まらない」と思ったので。

 私が到着した際は、メディアで働く女性ネットワークの代表世話人をしているというフリージャーナリストの方がマイクを持っていました。

www.huffingtonpost.jp

 その後は、飛び入りで多くの人々が、自身の体験と絡めた性暴力への怒りや、現状の社会への投げかけを続けていました。

 時々すすり泣きが聞こえる現場は、どこか宗教的な空気がありました。熱狂的だったからでも、誰かが崇拝されていたからでもなく、誰かの人生をかけた告白に皆が真剣に耳を傾ける場所だったからです。

 他者の人生が損なわれてしまった話を聞くのはつらいけれど、言うまでもなく語る方はもっとつらい。それなのに多くの人が自ら手をあげ、予定時間を1時間超えてスタンディングが続いたのは、「ここで語ることで、私がさらに損なわれることはないはずだ」という信頼があったからではないでしょうか。

 人前で話すのは初めてという人も多かったと思いますが、よどみなく理論立てられた言葉が続いていたことに驚きました。それは、マイクを手にした人がずっとこの問題について考え続け、言語化し続けてきたからでしょう。その情報量と理論の明瞭さは、この日のスピーチだけで本が作れるくらいの内容でした。

togetter.com

 でも、こんなことに真剣に悩まないで、何も考えずにいられる方が楽には違いない。私はずっと三原順の言葉を思い出していました。

守られようとする者はいつ迄も守られ…
気遣おうとする者はいつ迄も気遣い…
戦おうとする者はいつ迄も相手に不足する事なく…
誰が温室の花を荒野へ置き去りそこで咲けと言うだろう?
誰が野の花の為そこに温室を建てようとするだろう?

余程の事がない限りこの世では見事な逆転劇などにはお目にかかれないという事か?
オレはまだ見た事がない!
役割通りに生きている人達しかどうしても思い出せない!!

 これは、その正義感と不器用さのせいでずっと損をしてきた友人男性のことを、ある青年が思う場面のモノローグ。家族とうまくいかず、疎外感を持って生きてきた友人は、ある女性と結婚し幸福な家庭を作ろうとします。しかし、不幸な事故が重なることにより彼女は流産し、二度と子どもが作れないと宣告されるのです。

 青年は、友人がさまざまな困難と闘い、傷付きながら生きてきたことをよく知っている。だから、闘いから逃げることが出来ない友人の哀しみに胸を痛めています。

 この「戦おうとする者はいつ迄も相手に不足する事なく」というのが、今となっては本当によくわかる。

「こういうことに怒る」のって本当に大変です。だって、それは「自分は他人に人間扱いされなかった」ことを認めるところから始まるから。誰だって、そんなこと認めたくない。でも、認めないと怒れない。

 日本人は怒るのが苦手と言われますが、それはたぶんこの辺にも関わりがあるのではないかな。自分が虐げられていることを認めることができない。

 でも、たとえ自分に直接被害がおよばずとも、誰かが傷付いていたら、怒るのは当たり前のことのはず。

 いろいろ考え込んでしまった日でしたが、私は怒る側の人なので、この日聞いた話は忘れないし、いつかまたこの日のことについて語ることもあると思います。

 三原順の登場人物だって、役割通りの生から逃れられずとも、未来の自分と自分が愛した人たちを幸福にするべく生きてます。なんせ、先ほど紹介した流産を経験した友人は、その後4人の家出少年を引き取って、これまた苦労の多い(しかし、彼が自分らしいと思える)人生を送るのだから。しかも、ユーモアを忘れずに。

 そういう損をひいちゃう姿勢って、「どう思われようと自分の人生をちゃんとやる」という意志の現れでもあるんですよね。

 とはいえ、怒る側、死ぬほどめんどくさいんですけどね……。まあ、でもやりますけど。

 ついでに、もう一度この作品も貼っておきます。

note.mu

 

 引用したモノローグは↓の「ロングアゴーⅢ」から。

三原順傑作選 (’80s) (白泉社文庫)

三原順傑作選 (’80s) (白泉社文庫)

 

 4人の子どもを引き取る話は「はみだしっ子」のシリーズ後半に。

はみだしっ子 (第1巻) (白泉社文庫)

はみだしっ子 (第1巻) (白泉社文庫)

 

 北原みのりさんによる記事。

www.lovepiececlub.com