多少は教育行政に関心を持っていたつもりだけど、それでも知らないことだらけで、冷たい汗が出ました。
学校での採択率トップだった日本書籍が、日本の戦争加害に関する記述を増やしたことで採択率が大幅ダウンし、倒産に追い込まれたという話が最初のショック。
東京都23区の全区採択だったのが2区になるって、教科書作るのにお金かかりそうなのに、労働者としては想像するだけで胃がキュッとなりました。
このことについて答える同社の元編集者・池田さんは、妻子に去られてひとり暮らしをされていて、その寂しげな姿に胸が詰まりました。ああいう姿、普通撮られたくないと思うし、テーマそのものとはちょっとずれると思うんだけど、個人が脅かされる様子の記録としては画として圧倒的に強かった。
ほかに、慰安婦問題を丁寧に教えていた中学校教師の平井さんの授業が共同通信に取り上げられ、それを見た吉村大阪市長(当時)がツイッターで平井さんをバッシングした話もひどかった。
政治家が犬笛を噴くこと自体も当然ひどいんだけど、勤務校に苦情電話が来る事態に臆した校長が「慰安婦の授業をやめてくれ」と言ったというのにびっくりしました。
平井さんが「教えた子どもたちが『先生は自分たちを洗脳しようと思っていたのか』と思ってしまったらと考えると、とても申し訳ない」と話していて、本当の教師って全然発想が違うんだなと感嘆。あくまで「このことで大人、ひいては社会への信頼を損ねてしまうようなことがあったら申し訳ない」ということを心配している。これが教育者かと思いました。
映画としてはかなりシンプルで、もともとテレビ番組だったというのがよくわかる。でも、だからこそ問題点がわかりやすくてヒットしたんでしょうね。言葉を変えられるって明瞭ですから。
最後に「従軍慰安婦」という表現が「慰安婦」にされた箇所は心底ぞっとしてしまいました。「従軍慰安婦」の方が俗語になってしまうなんて、そんなことがあっていいのか……。
学者の吉田裕さんが「研究に基づかない記述がされるようになってしまった」というようなことを言っていて、それはちょっと「国として終わってるのではないか?」と。
直前で本文の作り直しを強制される教科書会社の姿も気の毒でした。
余談ですが、シネマリンの八幡さんが「映画になったらうちで上映します!」と真っ先に言ってくれたことが監督のはげみになってるとか。
※この映画を観たのは7月2日でしたが、上の文章では8日のことはとりあえず反映させずに、前に考えていたことを書きました。