ホンのつまみぐい

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おおきなポケットという雑誌

30年前に発刊された『おおきなポケット』という不思議な月刊誌のことが忘れられません。
当時、母が『たくさんのふしぎ』や『コペル21』などと一緒に購読してくれました。
読み物・マンガ・小説が毎号掲載されており、今思うと「子ども向け総合誌」を目指していたのかなと思います。
世界各国のお菓子をめぐる旅や、「落語とは何か」など、『たくさんのふしぎ』に近い読み物もあり、それらも面白かったのですが、個人的に印象的だったのは杉浦茂蛭子能収タイガー立石に代表される尖った人選でした。
特に蛭子のマンガの得体のしれなさは強く印象に残っています。お話自体は「新幹線のおもちゃを友達の家から盗んでしまい、その夜悪夢を見るが、最後に母親に叱られて終わり」という穏当な内容でしたが、新幹線の正面顔が1つ目の怪物が刃をむき出して笑っているようにしか見えず、「こんな新幹線をほしいと思うものか?」と不思議に思いました。
登場する人気絵本作家の作品も、五味太郎『正しい暮らし方読本』、佐々木マキ『たわごと師たち』『怪盗スパンコール』、おかべりか『よい子への道』、いわむらかずお『かんがえるカエルくん』など、哲学やアイロニーをテーマにしたものが多く、どこか大人びていました。しかし、そこがかえって癖になり、繰り返し読んだ記憶があります。
以前どこかで「おおきなポケットはマンガ雑誌としてスタートした」という文章を読んだ記憶があり、どこか尖った誌面(ある意味サブカルっぽい)はそういう編集者の思いが反映されていたのかなと想像します。
その後購読をやめ、しばらくしてから図書館で見た時には、版型が小さくなり、内容も以前より穏当になっていて、なんだかガッカリした記憶があります。
語る人をあまり見かけない雑誌ですが、唯一無二の面白さがあったことを時々思い出します。

 

facebookの絵本に関するグループに投稿したものを、少し修正して再投稿しました。今ちょっと手を出せていないですが、尖っていた頃の『おおきなポケット』はいつか調べて再評価したいと考えており、自分への発破も兼ねています。何か情報お持ちの方いましたら、コメントくだされば喜びます。読んでいた方のご感想でも!