ストリップの踊り子にはAV女優出身の人も多いので、どのような労働条件で働いているか知りたくて購入。唖然とするようなことがけっこう多くてがっかり。労働環境についてもだけど、「AV女優という仕事のせいで人から低く見られる」という描写がこたえる。「やっぱりな」でも、「噂は本当だったのか」でもあるけれど。『AV女優ちゃん』は田嶋陽子との対談付き。
松本ハウスのハウス加賀谷が、統合失調症当事者として発表したノンフィクション。執筆は相方の松本キック。「周りの人が自分を臭いと思ってると感じてしまう」自己臭恐怖症という症状がつらすぎてやるせなかった。相性の良い薬を見つけて好奇心が回復したころに、母親に「もう人間らしい心の機微とかは、なくなってしまったと諦めていたの。それが戻ってきた……」と言われた話もあり、統合失調症という病気の難しさがよく伝わった。
松本キックの他者に対する気遣いが見事すぎて感動。10年待って、寛解時にコンビ復帰を持ち掛ける関係性を維持するの、なかなかできない。
kindleで安くなっていた時に買った。ありがたいことに単行本も復刊されている。
制度や社会に対する怒りは『ちょんまげ手まり歌』や『ひげよ、さらば』同様だけど、主人公が「選ぶことができた」ため、読後感がすごく明るい。社会は何も変わっていないままなのだが……。片目片足を潰されることにより神になり、人柱として死ぬ「こぼしさま」は、天皇の暗喩という解釈が批評家の間でなされているが、今の日本を見ているとだいぶ皇室に優しい見方であると感じた。
いい終わり方だった。改めて見ると、姉妹が看護師、信金の営業、アウトドア用品店と、皆、死に関わる可能性のある仕事についている。
『詩歌川百景』は山形なのに方言全然出てこないのが気になる。けっこう初期の作品に近くなっているように思うけど、海街以後と感じるところもある。
『解放の呪文』を読み返すために再読。音楽オタクでもない大学生たちに、それぞれ好きなジャズメンがいるという描写に驚いた。
全然関係ないけど、↓のインタビューの『河よりも長くゆるやかに』評にびっくりした。すべて初めて知る事実。そういえば、単行本未収録だけど、ヒッピー風の男性がアカプルコゴールドの鉢の前で「お前も昔はスターだったんだよな」みたいなことをつぶやくマンガあったなあ。
俺がこれまでに見たマンガ中で一番マリファナをリアルに描いている漫画ですね。福生の基地の近くにあるバーで働いている学生が主人公で、基地のやつからドラッグ仕入れてバーでマリファナ売ってたり、売春の斡旋したり、ゲイバーでバイトしたり、少女漫画とは思えないテーマを丁寧に描けててめちゃくちゃ面白い。狩撫麻礼先生や大友克洋先生もウィードの描写をしていたけれど、LSDや『アカプルコゴールド』って草のブランド名まで細かく書いてるのはマンガでは初なのかな。当時は確実に身近にあったんだろうなって感じの描写だと思います。吉田秋生先生のパートナーが黒人男性だったのも影響してるんだと思います。ただ、ジョイント巻く描写があるんだけど、巻かれた状態の紙の描き方が微妙に正しくなかったから、たぶん自分では巻いていないのかな(笑)。
※『アカプルコゴールド』勝手に単行本未収録だと思っていたら、『十三夜荘奇談』に入ってたそうです。そして、最近『現代マンガ選集 異形の未来』に収録されたとか。気が付かなかった……。
新聞広告に去年の内容を入れて話題になったことで知った。来年もライブハウスや劇場といった場所にはあまりいけないだろうと思い、比較的リスクの低そうな美術展の情報をゲット。カレンダーも上品でかわいらしい。
中学時代の矢口高雄があまりにも見事に戦後民主主義の理想を生きていて涙が出る。お祭りや映画の上映会、品評会の企画と実行などを、先生たちが優しく力強く支える姿が美しい。過去の出来事を描くにあたり、かなり取材もしているようだが、取材先で楽しそうに人々と話す様子からも闊達な人柄が伝わる。
最後は、組合の崩壊をきっかけのひとつとして脱サラするというのが印象的。赤旗連載だったからか? 農家の嫁として酷使される、優しくて働き者の母親への思いも何度も描かれていて、彼女を金銭的にいたわりたいという気持ちも脱サラに踏み切る一つの要因だったという。
銀行員時代の自伝マンガ『9で割れ!』にもマンガ家に専念するきっかけは描かれているが、組合の話も、母親へお金を渡したいと思った話も出てこない。
銀行員時代の12年を描くエッセイマンガ。とにかくディティールが細かく、銀行員たちの職業人としての矜持が伝わってお仕事ものとして面白い。ガロに持ち込みに行き、長井勝一に「絵がダメ」と言われるが、見学に行った水木しげるのところで絵について激賞され、安心で涙を流す場面は読者もほっとする。
戦後の子どもたちにとっての手塚治虫の影響力がよくわかる。秋田の農家の子どもがマンガ家への思いを燃やすことの困難さも描かれている。それにしても矢口高雄の記憶力はすごい。日記でもつけていたのかな?
つらい気持ちになる本だった。細かい感想はリンク先へ。
買いそびれていた『下水街 新装版 濁淦』。絵柄が表紙と違いすぎる。90年代のアニメ雑誌の読者投稿欄に載ってそうな絵柄で、虫に寄生されたり、身体が膨張したりする話を描いている。コマ割りがこなれていなくてマンガとしては読みにくいけど、描き下ろしの制作秘話などあって面白い。
最近一時期集めていた掘骨作品を少し処分した。発表年が新しくなるにつれ、行為に入るまでのページが短くなり、著者独特の世界観や心理描写を味わえないものが多くなっていったからだ。
『濁淦』には最後の数ページしか行為の場面がない話も収録されている。寛容な時代だったのだろうとうらやましく思う。
あと、じゃりン子チエが50巻まで100円セールだったのでまとめて買って読んだ。これに関しては話が長くなりすぎるので割愛。