ホンのつまみぐい

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東京タワーの真下で行われる「アンサンブルズ東京 2019/自分たちの手で作り上げる音楽祭」に行った

 大友良英が芸術監督を務める音楽イベント「アンサンブルズ東京 2019」へ。

最初に見た「芳垣安洋と Orquesta Nudge! Nudge!」。「ん? ステージにカタギの人が座ってる?」と思ったら、ワークショップ参加者らしい。それぞれが鍋を打楽器にしたり、ペットボトルの蓋を集めたものを鳴らしたりと手作りの楽器で参加。

 決して達者な人ばかりではなかろうに、それぞれの中にグルーブが生まれて、それがひとつの塊となって音楽としてこちらに押し寄せてくるのがよくわかってたまらないものがあった。

 どんどん「演奏している人」の顔つきになっていくワークショップ参加者がうらやましくなり、体をゆらしたりぴょんぴょん飛んだりした。デスボイスとシャウトで参加しているプロもいて、とてもかっこよかった。東京タワー直下の市民参加型イベントなのに微妙にアングラのにおい。明るく激しい熱気に誘われた大友良英が、飛び入りで参加していた。

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 会場を彩るかわいい「福島大風呂敷」。震災直後に開催されたフェス「フェスティバルFUKUSHIMA!」をきっかけに作られたそうだ。

 当時フェスの会場となった四季の里は放射線量が比較的高かった。科学的に見て問題ないとはいえ、ほか地域と比べると高い放射線量に対し、主催側が考えた対策。それが「皆から集めた布を縫い合わせて作った風呂敷を敷いて被爆を防ぐ」というアイデア「福島大風呂敷」だったという。話を聞いて、久々に震災のことを生々しく感じた。
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f:id:hontuma4262:20190904010614j:image 栗コーダーカルテットもワークショップ参加者を帯同。福島大風呂敷で出来たジャケットがかわいらしい。牛乳で水分補給しながらうろつきまわる。

 大友良英スペシャルビッグバンドの演奏による盆踊り。皆で手をつないでくるくる回り振りのある音頭もあって、今にも泣きそうなほど楽しそうな顔で踊っている人がいた。
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 トリに水前寺清子が出てきて、「三百六十五歩のマーチ」などを歌っていた。改めて聴くと歌い方はちょっとジャズっぽい。大友が何度も感激の言葉を述べていた。

 ただ、水前寺清子はオリンピックに大変意欲的だったけれど、大友は何度か「オリンピックのため、来年このイベントが開催できないかもしれない」と思わせる発言をしていた。オリンピックが東北の復興の妨げになっていると言われている今、「福島大風呂敷」で飾られたこの場所で、東京オリンピックの功罪を描かんとする「いだてん」の音楽を作っている大友は、オリンピックのことをどう思っているのだろうか。私は今、どこにいてもそんな風にそれぞれの立場を考えてしまう。誰もが同じように物事を寿げる季節は終わってしまったのだ。

 最後に皆がやぐらの周りを練り歩きながら踊る姿は絵巻物の妖怪のようで、何となく懐かしく、優しい光景だった。

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www.ensembles.tokyo