ホンのつまみぐい

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diskunion presents「荏開津広×二木信 トークイベント VOL.2」ECD追悼

NHKのドキュメンタリーを観たので、ついでに下書きのままだったものを整理して公開しました。

私が日本語ラップの歴史にも音楽にもくわしくないため、あまり細かく書きとれなかった箇所も多く、エピソード中心の記述になっています。また、メモ状態の断片的なものをそのまま記載しています。公的な記録でないことをご了承の上、お読みいただければ幸いです。

 

荏開津広×二木信 トークイベント VOL.2は、前回2017年1月20日開催時は「2016年/2017年のヒップホップを語る」というテーマ設定がなされており、今回も当初はそうした総括的な内容を予定されていたようです。しかし、1月24日のECDの逝去を受け、「追悼・ECD」というべき内容となっていました。

 

・二木さんが披露したECDとのエピソード。


2003年のイラク戦争の集会。会場は新宿の区役所通りのルノアールで、ほかの部屋ではホストやヤクザ向けの謎の会議が行われていた。二木さんはもともと政治や音楽に興味があって、デモのための集会に行ってみた。会場には学生、フリーター、活動家、バンクス、現代美術家など、さまざまな人がいた。


石田さんが来たときは「ECDが来た!」と思った。服装はディッキーズに白T。アル中から復活した後で、ずっとコーラを飲んでいた。

 

石黒景太さんはアイデアマンで、「デモで風船飾ろうよ」と会議で言っていた。活動家は「そんな話、一番最後でよくない?」と言うけれど、石黒さんは「いや、それは大事だから」と言う。石田さんはキミドリのKuro-Oviが出すアイデアを、信頼しきった顔でニコニコしながら聞いていた。

 

当時の二木さんは、ECDに話しかけることができなかった。集会には三田格野田努もいた。

ツボイさんが常にターンテーブルの上に乗ってる時期があった。二木さんが「壊れないですか?」って聞いたら、「テクニクスなめんな」って怒られた。

 

・荏開津さんのECD評。


当時はなんで「ヒップホップをやらないんだろう」と思っていた。

 

ECDの音楽は全部並べて聴いてほしい。いわゆるポップスの基準で、一曲聴いて「いい曲~~」ではない。

 

ポストコロニアル、日本も帝国主義国家だった。石田さんは日本に警鐘を鳴らし続けていた。だから、音楽家だよね。ポピュラーミュージックの規範を破壊し続けていた。

石田さんちは何もない。ほかのレコードを生業にしてる人と比べても違う。本当に何もない。布団の横にブワッとレコードがあって畳の後にターンテーブルがある。そこでレコード聴かせてくれる。(しかし、その時間が延々と続くので帰りたくなる)

病気の時にレコードや音楽の曲をたくさん作っている。1枚目のCDからそうだし、最後までそう。

石田さんは音楽がかかってる時は楽しかったし、充実していた。音楽の魔法というか。音楽自体はただのマテリアル。空気が揺れているだけでしょう?でも、空気が揺れるとパッと変わるでしょ。そういう場所が脅かされてると思ってサウンドデモに出るようになったのかな。


高校生のころから吉祥寺マイナーという山崎晴美さんのバンドが出ているようなところに行っていた。普通行かないよ。高校生とか中学生とかではあの店に行かない。やってる音楽、ノイズとかだから。(「政治の時代とジャズの時代を過ごした人が表現としてやる地下音楽」が流れているという表現をされていました)

そこに何で行ったんだろう。高校生とかで。70年代後半から80年代だよ。ディスコやライブハウスも行ったかもしれないけど、何でそこに行ったのか。そこに音楽性の謎があるかもしれないけど、わからない。

ECDECDになったのは……。出してるうちにECDがどんどんわかって来たんじゃないかと思う。

「石田さんはヒップホップが好き」と言うけど、音楽ジャンルとして好きなだけじゃなくて、「いろんな音楽をツギハギして作るヒップホップという音楽」が好きなんだろうなと思った。

「失点・イン・ザ・パーク」に縦笛が吹けなかったという話が出てくる。音楽は好きだけど、笛は吹けない。「でも、これでいいんだ」というのがヒップホップ。普通、音楽をやろうと思ったら楽器を練習しなくてはいけないけれど、石田さんはヒップホップの形式を信頼していたんだと思う。だけど、あの頃はヒップホップを辞めようとしていたのかも。

音楽が鳴ってるところがユートピア。そこはみんなが分け隔てない場所。石田さんは、人との間に上下関係を作らないようにしていた。会話をしていると、それがわかっちゃうくらい。そのおかげで沈黙が訪れちゃうことがあるくらいに。


石田さんが夢見ていた世界は実現しない。そんな場所はないんだよ。でも、作品の中で作り出していた。

音楽を聴く場所が、ECDのin the place to be。

 

ECD

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