川崎駅のアニソンバーで、高野政所さんのDJと丸省さんのアオリに乗って、オタクがどんどん半裸になっていく。勝手に脱いだり、脱がされたり。
ほとんどサバトみたいになったそのフロアは、どう考えてもその日の「世界で一番」だった。
2018年3月で第5回を迎えるTINPOT MANIAX vol.5は、MAZAIRECORDSのほぼオールスター戦だった。運営がサイファーで集めた仲間にどんどんラップを書かせてレコーディングさせるから、ライブの演者は身内だけで5人にのぼっていたし、ゲストも豪華だった。
メジャーデビューと単著出版の経験もある高野政所さんと、TBSラジオの夜の時間に出ちゃうMETEORさん(青い果実名義)。そして、現在は月一でRAP酒場の運営などに勤しむ丸省さんによるORETACHIだ。
私も政所さんの「【ドキュメンタリー】DJって 何考えて曲かけてんの?」を読んで、DJタイムを楽しみにしていた。
イベントはいつも通り、ドクマンジュくんのビートライブから、ヤボシくんの開会のあいさつではじまった。前日にお腹を壊したせいかちょっと元気のないヤボシくんによるアナーキーの物まね(すべった)から、「最近あんまり笑えることないなって人は、今日は笑って帰ってください」というあいさつ。
ライブはuglinexくんからスタート。演劇やってて、音楽にも勉強熱心なアグリくん。終了後の呑み会ではいまいちだったと落ち込んでいたけど、声の通りの良さや立ち居振る舞いの照れのなさはさすが。
uglinex「Afterburn」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud
お次のMANOYさんは自己紹介ソングからZOZOTOWNの歌。そして「駅から近いところに住む!最低でも徒歩5分!」という強烈なフックの曲で、ILLな空気を出していた。最初の頃に作っていた曲はけっこう言葉遊びの多いdis曲だったので、いい意味でストレートな内容を面白がっていたら、リスペクトYoung Hastleということで納得。
それにしても、最初の楽曲制作で悪口や自虐を作る人の多いこと。MAZAIRECORDSの特徴なのか、ホップホップの特徴なのか。
お次は前回に引き続きのダンスバトル。ジャバラさんの試演からのダンスバトルだけど、ちょっと中身を再現するのもばかばかしいような内容だったので手元のメモでご容赦を。
しかし、「みんなうまくなってダンスバトルがつまんなくなってきたから、次はちゃんみなみたいに踊りながらラップするとかになるかも」というドクマンジュくんの言葉はほんとマザレコのイズム。
奇怪な動きを繰り出すオタクを見守っていると、ゲストの丸省さんらが入ってきた。
バトルが終わり、お次は「アニメだろうがニコ生だろうが画面の中!」「年下の女の子声優にお熱になっちまったら終わりや!」というフックが光るオラディーさんのライブ。テーマの共感度の高さもあって(?)、明るく盛りあがっていた。
そして、イベント直前にアルバムをREVLIGHTをリリースしていたヤボシキイくん。ヤボシくんのライブを観るのはもう4回目くらいなのだけど、この日の照れを排した叩き付けるような歌い方に驚いた。彼の言葉選びは、アニメ的な物語調のキザさとオタクの照れを含んだスラングが混在している。それはともするとパロディっぽくなってしまうのだけど、この日はマイクにちゃんと感情が乗っていて言葉が説得力を持っていた。自分の力を出し切って歌うというのは、なかなか出来ないこと。続けているとそういうことが出来るようになるんだという事実と歌詞の真摯さにグッときてしまった。
ライブが終わって高野政所さんのDJへ。サイドMCの丸省さんが合いの手を入れながらDJを盛り上げていく。FUNKOTを日本に広めたパイオニアと呼ばれる政所さんだけど、選曲は多彩で嵐のREMIXなんかもガンガン入る。
猿のように飛んだり跳ねたりするオタクを観て、丸省さんがアオリを入れる。
「さっきダンスバトル観たけど!みんなすごい心を解放してておじさんキュンとなっちゃったよー!」
「みんな俺たちに優しいなーーー!!」(盛りあがってくれるから)
「お前たち、知らない音楽で踊れる遊び方のプロだぜ!!!」
DJ中、なぜか誰が脱ぎ出したのにつられて、どんどんみんなが服を脱いでいく様がめちゃくちゃアホすぎて、正しい同調圧力で、何か感動してしまった。高まったオタクが服を脱いでいく現場、いったいいつ振りだろう。しかも、周りだいたい知り合いなもんだから調子に乗ってメンズ全員ほぼ半裸という状態になってしまった。
DJ終わった後のマザレコメンバーの「いやー、これはヤバいね」「池袋BEDの、警察来た!やべー!みたいの憧れだったからね-」にも笑ってしまった。パーティーが過ぎる。
DUGEM RISINGを思い起こさせる裸祭り!! pic.twitter.com/6T3EoqC2Em
— 高野政所 (@mandokoro) 2018年3月24日
感動的なDJの後はヒップホップ大喜利。
3人1組で行う大喜利で、お題は「一般人が知らないラッパー界のルール」「KEN THE 390の次の客演」「気持ちがレイムじゃ○○になれない」「ラッパーがTwitterで炎上した。なんて書いた?」「ちくわをクールなアイテムに変身させなさい」などなど。
記すまでもないくだらないアンサーの連続だったけど、途中から誰かが「キッド・フェ○チオ」と言い出して、「亀○・フレシノ」などの下ネタを繰り出してから、METEORさんが「ザ・チ○ポ」しか言わない人になってしまった。
そのMETEORさん、回答を終えてから「実は、『ザ・チ○ポ』『ザ・ウ○コ』『ザ・マ○コ』って言っときゃいいだろうって思ってたんです。そんな風に見下してました!ごめんなさい!」と謝罪していた。
ヒップホップ大喜利、すげー面白かった!! pic.twitter.com/cogj6C59Py
— 高野政所 (@mandokoro) 2018年3月24日
大喜利が終わって、あらいぐまMCさんのライブはフリージャズの音色に合わせたアブストラクトで無軌道なラップ。大柄な体躯で「1000円ちょうだい!」「バーニラ!バニラ!」などと叫ぶさまは、なんだか悲しい怪獣のようだった。
いきものの記録(track3[:バイト、track4:JAM2 ) by あらいぐまMC | Free Listening on SoundCloud
ジャバラさんは「ちゃんとしたヒップホップをやります」という前置きからの入り。ジャバラさんもヤボシくんと違った意味でたいがいキザなんだけど、ここを押せば盛りあがるというのをつかんだライブで、ちゃんとかっこよさに対するこだわりが形になっている感じ。最後の方でドクマンジュ、ヤボシキイを加えてやったチルなトラックに会わせて「寝て起きる!寝て起きる!無敵の三本ペニス」というフックの曲がマザレコらしかった。
TINPOT MANIA「OTK HUSTLER PT.2」 by studio tinpot | Free Listening on SoundCloud
そして、ORETACHIのライブ。
これまでのイベントの流れに答えるようなアツいライブと爆笑エモMCをかましてくれた3人。セトリは覚えていないけど、METEORさんのマイクに全体重を乗せるような動作も、丸省さんの高い声のアオリも、政所さんのDJとちょっと投げやりなツッコミも間違いなかった。こんなにパーティーの本質を凝縮したような人たちがこの場を心から楽しんでくれて、最高にバカな遊びに参加してくれたというのが優勝でなければなんなんだ。
しかし、ワンパク村で観たときも思ったけれど、ORETACHIのMCは話芸として密度が濃すぎて書き残せない!
umaneco presentsおいでよ !ワンパク村!~クリスマスだよ全員集合~で、もつ酢飯ライブ納めをしました - ホンのつまみぐい
最後のドラムのないビートだけでラップさせる「地獄のオープンマイク」ではヒシヌマくんのFUKUSHIMAギャグに笑い、METEORさんの「独自の遊びを開発しろーーー!!!!」のパンチラインにうなずいていた。
「独自の遊びを開発」って、完全にチンポマニアックスのことだ!
マザレコのメンバーはチンマニとかチンポジムのことを「公園の砂場遊び」と言う。でも、この公園の砂場遊びは何の前触れもなく「この日の世界で一番」をかっさらっていく。
かつて里咲りさ(現:Pinokko)は「いちばん面白いことは観客が20人しかいない時に起きるんだ」と言った。もっとスカした言い方だと「革命はテレビに映らない」というやつだ。
その「いちばん面白いこと」がマザレコのイベントにはあって、それは本当に奇跡的なことなんだと思う。
チンマニは毎度違うことをやっててヒヤヒヤするのですが、今回も最高のゲストと最低のお客さんに支えられて無事終えることができました。ありがとうございました🙇
— ドクマンジュ (@DocDocManju) 2018年3月24日
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ちなみに、クラブイベントじゃないけれど新しい悪ふざけも予定されているので、ラップ一回やってみたいけど、サイファーとか敷居が高いという人はぜひ!
Tinpot Fight Club vol.1
— ドクマンジュ (@DocDocManju) 2018年4月16日
5/26@スタジオノア池袋
17:00~20:00
学生は参加費無料!
学生じゃない人は1000円!
もつ酢飯を輩出したMAZAI RECORDSが新たに仕掛ける、ラップを始めたい・楽しみたいみんなに向けた総合糞下劣お遊戯会!! pic.twitter.com/dmtMH7qFc8
これまでのイベントの歩み
関係者インタビュー