ホンのつまみぐい

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雑多であることは「たのしい」、いろんなところから人が集まるのも「たのしい」/タイダルフロー&トウキョウトガリネズミ「タイダルトガリネズミ」2017年2月11日@Rlounge-7階

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2017年2月11日の渋谷Rラウンジ7階では、タイダルトガリネズミという賑やかなパーティーが行われました。タイダルトガリネズミ、それはタイダルフロー&トウキョウトガリネズミのコラボレーション……。

 
タイダルフローはラッパーのTUMAさんの主催イベント。
 
私は「もつ酢飯」のふたりの出演をきっかけに知ったので、同イベントに対する知見は浅いのですが、TUMAさんがこのために用意したブログの丁寧な出演者紹介や、毎度可愛らしいフライヤーデザインからイベントの性格が少し感じ取れるんじゃないかと思います。

TUMAです

※これまでのイベントや出演者について書いたブログ

トウキョウトガリネズミはMC松島さんが立ち上げたレーベルで、全国各地からMC、DJ、トラックメーカー、イラストレーター、映像制作者、マンガ家など様々な立場の人々が所属する不思議な団体。
MC松島さん、吉田沙保里について歌い続けるアルバムを発表したり、みたらし団子を食べられたことをビーフにしたりというとぼけた活動に反してインタビューが攻撃的で、そのギャップが以前から気になっておりました。ちなみにMC松島さんのインタビューで、私が個人的に好きなのはこの2つ。
 
松島 何なんですかね? でもたぶん、もともと不良の人たちがやってる音楽だからだと思うんです。不良の人たちはウソついちゃダメなんですよね、きっと。なおかつ、もとは不良じゃないとラップをやっちゃいけなかったから、必然的にウソが書けなくなるっていう。(一同笑)でもようやく不良じゃない人でもラップしてよくなって、不良じゃないからウソもつけるようになってきたのかなあ。

 

 いや、みんなうまいですよ。お金払って見たいと思うアーティストはみんなうまいですね。でも、正直ヒップホップのライブはやっぱ耐えれないですね。僕個人の趣味としてもそうですし、野球場でやれるか?っていうのは正直あります。どんなに上手くても。

LARGE IRON × MC松島「真髄TV収録後トーク(Q1 2016)」文字起こし | ライムハック

#タイダルトガリネズミ のヤマを張る予習 : TUMAです

※TUMAさんによるトウキョウトガリネズミの出演者紹介
 
さらに、この日はもつ酢飯(ワッショイサンバ&無能の2MCユニット)が出るということで「こりゃ、いかなあかんでしょう」ということで、オープン時間に間に合うように渋谷へ。
 
エレベーターの前に立つと、ちょうどもつ酢飯のふたりが会場に上がるところで、前日にsoundcloudにアップされたばかりの「もつ酢飯のテーマ」についての話などをしながら7階へ。
バーカウンターでドリンクを受け取っているうちにもつ酢飯のライブがスタート。振り返ると、2人がキャパ300くらいのRラウンジ7階のステージで多くの人に囲まれて歌っていて、ちょっと壮観。
 
初披露のもつ酢飯のテーマ。サンバちゃんは「世界で一番簡単なフックです。もつ酢飯!!」を繰り返してフロアを巻き込みます。直前に「リリックが覚えきれてない」と不安を訴えていた無能ちゃんは歌詞を飛ばして一瞬うろたえていて、ちょっとハラハラ。
 
「もつ酢飯のテーマ」はDocManjuくん作ビートの中ではわりと疾走感があって、シューティングゲームのオープニングのような明るさがあります。そこに2人のファニーなリリックが乗るのが楽しい。
次の曲が始まる頃にはフロアに降りて少し前の方で観覧。フロアを見回すと、ヒップホップ好きだけでなく、2人の友人や現場仲間、MAZAIRECORDSの仲間が各々の方法でライブを楽しんでいました。まだ4回目のライブなのに、オープニングアクトとはいえ、ここまでの箱でライブ出来るのは、2人に人に愛される力、面白がられる力があるからだというのを実感。もし、私が2人と同じくらいの年齢で、ラップをやる仲間として出会っていたら、きっとコンプレックスを感じただろうな。
 
ちなみに、もつ酢飯のプロデュースをしてるMAZAIRECORDSには、他に樫さんとマノイさんという女の子がいて、2人とも研鑽を怠らない面白い子なので、何かの機会に紹介したいです。
 
イベントはオープニングアクトから、タイダルフローがブッキングしたライブへ。
 
タイダルフローブッキングのライブはCAOSさんがとてもよかった。曲もいいし、ライブのコントロール力も高い。音楽そのものに対する幅広い対応力がある感じ。あとで調べたら、バンドをやってらしたそうで、納得。
 
さて、この日はトウキョウトガリネズミのライブの前に、ビート争奪バトルがありました。始まる前はこの流れにバトルはいるのかなと思ったけれど、勝ち上がったMCはトウキョウトガリネズミからの刺客とバトルをするという設定だったため、バトル前にトウキョウトガリネズミ各MCのキャラクターがわかったので助かりました。
 
ボス的存在のはずのMC松島がやる気のないラップでコロッと負けたMC松島vsNOuTY、音楽的に水準の高かったLARGE IRON vs ID、「お前は米農家を継げ!」に「MPCのパッド叩くのと米を作るのは似てる」という謎の対話がなされたdoggydogg vs Activevが面白かった。
さて、タイダルフロー側のライブが終わり、トウキョウトガリネズミのライブセットへ。なんと、同じクルーだけど、この日初めて会う人同士が多いとか。うーん、インターネット。
 
MC松島さんの「とりあえず爆弾が爆発したら盛り上がってください!」という投げやりなアオリでスタート。
 
MC松島、WhaleBeats、diz、doggydogg、メガネ、LARGE IRON、SHIMPEI、KMB、Amateras……と出てくるMCの披露するラップは、強いて言えば比較的ナード寄りなんだけど、すぐに言語化できるような明確な共通項なし。
 
渋めの声とリリックの調和がかっこいいSHIMPEIさん。
拡声器を持って「ツイッターツイッターツイッターばっか!」と歌うdizさん。
自分がレストランを作ったらというテーマの曲を歌うLARGE IRONさん。
「お前らフェイク!ディルドディルドディルドディルド 俺らリアル肉棒肉棒肉棒肉棒!」というKBMさん。
ほとんど呪文みたいなラップをしながら、doggydoggさんが痙攣する様子を眺めるマーゴス(MC松島&doggydogg)。
はらぺこあおむしのパーカーと柔らかいビートが印象的なWhaleBeatsさん。
ハハノシキュウさんをゲストに迎え、どこか耽美的な退廃を漂わせるAmaterasくん。
インパクトのある声とアラレちゃんみたいな見た目の異物感がすごいメガネちゃん。
 
全員が何となく不穏さと人の良さを感じさせて、一聴で正体を掴ませない。なんだこりゃ。
 
色物集団と思わせつつ、等身大のラップのある日常を描いたHow Are You Feelingや、ワイワイ感が楽しいマイクリレー曲のたのしい、大人を生きることの不確かさを歌うかいぶつは正しく「イイ曲」だし、ビートの質も高い。
 
まるでカルチャー誌の色が比較的濃かった頃のガロや、初期のQuickJapan、あるいはTV Brosのコラムコーナーのような雑多さ。そうかあ、こういうクルーもあるんだなあ。というか、ラップという媒体はこういう表現が出来て、クルーという発想はそれをひとつに束ねることができるんだな。
 
イベントはMC松島さんのポップスから日本語ラップにつなぐDJで終了。シニカルな物言いの多いMC松島さんの、音楽に対する愛情を感じるDJがこの日の〆になりました。