購入以来の再読。
改めて読み返すとホームレスになっていた頃の話より、配管工になってからの人間関係や、アル中病棟の人間模様が数倍インパクトがある。
ガス会社で出会う、油圧のネジを隠して相方が困った顔をするのを楽しむ柳井さんや、マージンをもらうために無理やり電気屋を連れてきて家電を買わせる上森さんなど絶対一緒に働きたくない。
「アル中は治らない。ぬかづけのきゅうりが生のきゅうりに戻れないのと同じ」というインパクトのある言葉が刺さるアル中病棟編。
「なかよくやりましょう」と言って飲み物やごはんのおかずをあげてしまうN村さんの話が悲惨。ミーティング(お互いが反省を吐露しあう会)で「一から十までやり直し」というものの、結局外出時に飲みすぎて倒れてしまい、総スカンを食らう様は目に浮かぶようでつらい。
画のかわいらしさと、自己にも他者にも同情のまなざしを向けない吾妻ひでおの距離感が生臭いエピソードを娯楽として読ませることに成功しているけど、現実として見るとどれもなかなかしんどい。興味深いという意味では面白いけどね。
書き手もそのあたりは理解しているのか、最後のエピソードはアル中病棟で出会った中年男女の何気ない信頼関係を描いていて、このあたりがうまい。
病院内の庭でタバコを吸っている、サングラスでおしゃれな着こなしの中年女性。そして彼女に従う巨漢の中年男性。
中年女性が草原に寝転がるのを、「枯れ草がついてしまうよ」と言って起こし、その背をはたく男性の姿を描いて、次のコマでぴゅうと吹く風と自分の姿と建物を描いて、それで何となくきれいに終わる。マンガの巧さというのはこういうところに出るのだと思わされるラスト。そして、やはり「絵が可愛いは偉大」。
※そして、これを書いて検索したところでアル中病棟が出ているのを今知った。