6月のサイプレス上野とロベルト吉野現場3本目!
サイプレス上野プレゼンツ「建設的」のスペシャルゲストはRHYMESTER! サ上が昔、blast(今は亡きヒップホップ専門誌)の連載に毎月手紙を送っていたという佐々木士郎こと宇多丸の所属するRHYMESTERだっ!
会場はClub Lizard Yokohamaという300人入ったらすし詰め状態の小箱。そして16時〜23時という超長丁場。
ステージも低いし人口密度を考えるとライブ観るのにキツい環境かも思いながら18時頃に会場に入る。中に入ると、後方に物販とDJブースがあって、ドリンクカウンターの所にはヨコハマシカのPVに出てくるCafe&Bar spareのフードブースが。まったりした作りに衝撃を受けた。
前売り200枚限定、当日は出さないかもって言ってたから、最終的には関係者含めて200人ちょっとの集客かな。なるほどクラブってこういう風にフラフラしながら音楽やおしゃべりを楽しむためにあるのか。人でぎゅうぎゅう詰めになって、ステージがほとんど見えなかったBiSのラストツアーライブとは箱の使い方にどえらい差がある。あれはあれで楽しかったけどね。
過去に開催された建設的の動画で「皆が安心して楽しめるようにすげえパンパンとはいかなくてもいいと思うけど、『入ってるね』にしたい。入ってる方が楽しいじゃん」とサ上が話していたのを後に知る。
オーガナイザーのサ上はフロアを行ったり来たりしながらいろんな人と話をしていて、アットホームな空気。spareのチャーシュー丼を食べたりステージを何となく眺めていた。
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時間短めのライブが数本にDJが挟まる構成。以下、各演者の感想を簡単に。
Leon a.k.a 獅子は甘い雰囲気が可愛らしくて、でもストイックな感じもあって絶対もてそう。こんなことを言われても本人は喜ばないと思うけれど。MIC大将はワンマンで観たときと変わらず、見た目も声も渋いし、かっこいい曲も持ってるみたいなのに、七夕野郎(サ上とのユニット)の曲は「俺はイボ痔♪上野は切れ痔」とかくだらな過ぎる。「洗濯物干すのもヒップホップ」どころじゃないレベルで中身がない!!
Smokin` In The Boys Roomは安定感のあるライブ。あと、りんご音楽祭オーディションへの思いを熱く語るWATT a k a ヨッテルブッテルが印象的だった。曲予習すべきだったな。(NONKEYさん出てたのに何故か記憶にない……。席外してたのかな)
アニメ「とんかつDJアゲ太郎」の音響担当のMU-STARSのDJが終わると、いきなりノイズがかかってテンション上がる。
チラシにあった「謎みっちゃん(謎)」ってのがつくづく謎だったけど、ノイズミュージックだったのか!
全然音源も買ってないし、アイドルコラボにしか足を運んだことがないからノイズ好きとも言い難かったんだけど、やっぱ理屈抜きで気持ちいい。ノイズは文脈断ち切れるから、いいとわるいしかなくてゼロから受け取れるのがいいよね。わからなくてポカーンとするのもそれはそれで楽しいし。また非常階段主催イベくらいはチェックしよう。
43K&cheapsongs、バンド編成のグループでまったりした大人っぽい音。座ってじっくり聴きたいタイプのライブかな。でも、フロア後方話してる人多くてちょっと気の毒だった。クラブ仕様だからしょうがないのかな。
43も福岡の「GO! GO! SUNSET PLAYERS!! 2016」というフェスの投票に参加しているので、リンクを。
DJ KAZZ-K、人間発電所とか蝶と蜂とか初心者にも優しい選曲で楽しかった。
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んで、次のライブが始まる前にサ上のMC。
主催バトルイベント「ENTA DA STAGE」は別に「フリースタイルダンジョンに乗ったわけじゃなく、横浜にバトルの熱を復活させたかったから始めた」という話に、「数年前にもRHYMESTERを呼んでイベントをするはずだったが、LOGOSの幹部のせいで中止に追い込まれた」という話。
詳細は→6.26建設的!SP GUEST LIVEはRHYMESTERが初登場!!
サ上は「LOGOSの幹部はクソ」という話を、この日覚えているだけでも3回は口にしていた。よっぽど腹が立ったんだな……。
そこから、「フリースタイルがいくらうまくても、ライブがダサかったらどうしようもねえから!」という前振りつきでの優勝者BALA aka SHIBAKENのライブ。
SHIBAKEN、アイドル好きだからアイドルの曲を使ってアイドルについて歌うという徹底ぶりで楽しかった。ヘッズには冷たい目で見られていたが……。
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さて、ここから個人的本番。STERUSSがスタート。
STERUSSは横浜の2MC2DJのラップクルー。内省的で詩情のある歌詞とジャズからの引用を多く含むビートが特徴のグループだ。
ヒップホップ文化でよく使われるパンチラインという単語は誰かに言葉を叩きつけるような印象を与えるけれど、STERUSSの歌詞には自分自身の腑に言葉を染み込ませていくような穏やかさがある。
2MC2DJは珍しい組み合わせだと思うから、コンビネーションをじっくり見るべきだっけど、ついついMCふたりのライミングの心地よさに集中してしまった。
夜も更けた9時頃からオーガナイザーのサイプレス上野とロベルト吉野。
ぶっかますからよっしゃっしゃす〆、プリンス・オブ・ヨコハマのセット。
よっしゃっしゃすにはロ吉がビールの霧を吹くところがあるんだけど、そこでサ上が「おい、最前の女の子すげえ嫌な顔してるぞ。16時から待ってたのにこの仕打ちかって」と言ってから「ごめんな。これが俺らのやり方なんだ」とMC。
そしてSTERUSSが参加してのマイク中毒 pt.3 逆 feat. STERUSS!
マイク中毒pt.3は、STERUSSがこれまでの日本語ラップへの思いを歌った「マイク中毒Pt.2 / STERUSS feat.サイプレス上野」を元に、2013年に作られた曲だ。
「15の夜 割った心の窓 全身迷彩ハーコー野郎」という少年時代の密かな衝動を語る言葉から、本業持ちになったSTERUSSのふたりと、不安定ながら音楽で喰っているサ上がそれぞれの今を歌う。
「また歩き出す きれいごとは無し うまく笑えないマジな話」
「言葉通りに生きられないけれど言葉に近づくよう生きなさいでしょう?」
「仲良しこよし それだけじゃ無く 仲間だから時に向かい合う」
「熱いのダセえ?時代遅れ?15からそんなのは知らねえ」
「当たり前だらけのこの曲を昔と今の同士に贈ろう」
マイク中毒PT.3逆 feat.STERUSS/サイプレス上野とロベルト吉野, STERUSS - 歌詞検索サービス 歌詞GET
生活と現実を引き受けてなお情熱を叩きつける、30代MCたちによる青臭い楽曲。
音源よりさらに暑苦しく「熱いのダセえ?時代遅れ?そんなのは知らねえ!」というBELAMA2の言葉が響いた。
サ上、さすがに疲れていたようで、歌い終わった後の呼吸の荒さが体力ゲージ真っ赤な感じ。その後はヒップホップ体操第二からガヤガヤ横浜×藤沢酒飲みRAPで〆!
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演者が一通り登場し、ついにRHYMESTER!というところで、サ上のMC。
「LOGOSの話をしている時に楽屋は爆笑だったらしいけど、その話だけで俺は浄化された気持ちです……」と穏やかな顔で言った後に、暑苦しいMCを再開。
細かいニュアンスは忘れてしまったけれど、RHYMESTERのような知名度の高いアーティストを呼んでイベントを運営するなら、ワンマンやツーマンの方が簡単だけど、なぜ「建設的」という形にこだわるのかというのを、彼の言葉で表していた。
「コネを作るだけじゃなくて、町に熱を作り出していかなきゃいけないと思うのね」
うん、本当にその通りで、パッケージングされたものを余所から持ってきてそこに人を集めるのではなく、その空間に、その土地に生きる人の中に熱がないとイベントは続かない。小さなクラブの中にわざわざフードブースを作り、ゆとりのあるフロアの状態を担保しながら、7時間という過剰な長さのイベントをオーガナイズするのは、彼がやりたいのがただの音楽イベントではなく、自分の愛する土地の祭りとしての音楽イベントだから何だろうと思った。
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さて、そんなMCからRHYMESTER登場。
「耳ヲ貸スベキ」からスタート。
恥ずかしながらあまりRHYMESTERを予習せずに参加してしまったので、曲のセレクトについては細かく意図を読むことは出来ないのだけど、MCからセトリまで細かいところに横浜のラッパーたちに対する気づかいが表れていて、パフォーマンスはもちろんだけど、その心遣いに感動してしまった。
私にとっては長いこと宇多丸さんは映画好きのラジオパーソナリティで、アイドルにはまらなかったら一生サブカル文化人のひとりだと思っていたかもしれない人で。
その宇多さん、要所要所で入る話の回しがすごく巧い。多少記憶があいまいなので時系列や細かいニュアンスは落としていると思うけど、こんな調子。
最初に何曲かやってから、「じゃ、これでB-BOYイズムやって帰りますんで」と容赦の無いギャグをかましてから、横浜出身のMummy-Dにハマの思い出を振る。
Dさん、いきなり「両親の離婚でハマの駅から駅を移動していた」頃の苦い思い出を吐露してから、今は無き横浜の警友病院で生まれたことや、初めて山下公園近くのクラブサーカスに行った時の話に。(あと、初めてラブホテルに入ったのも横浜だって言ってたかな?ちょっと記憶があいまい)
宇多さん、「じゃあ、ここはMummy-Dがまさに生まれた土地じゃないですか!」から自分の話をし始めて、自己紹介ラップをサ上とロ吉の初期楽曲「ヨコハマジョーカー」に乗せて披露。続くDさんも「ドリームアンセム」で横浜紹介ラップ! 後で調べたところ、宇多さんが東京、東京を歌ってて、DさんがDear My Home Ground feat. Full of Harmony & Kohei Japanのパートを歌ってたよう。「わりといつでも帰れる距離なもんで里帰りもサボりがちで」がリアル。
愛のあるMCから安定感のあるパフォーマンスにつながっていく流れが本当に気持ちよくて、なんだか300の箱で観ているのが不思議な感じ。「Come On!!!!!!!!」の「確と見ときな格の違い キッズとキングの箔の違い エキストラと主役の違い 誰だ? 誰だ?」気持ちよかった!
途中でFLOOR MASTERSが乱入していたのも、後方からは人が増えたことしかわからなかったけど、わからないなりに祝祭感あったぞ。
とびきりかっこよかったのが、宇多さんの「でも、上野は俺の連載に毎月手紙をくれてたわけじゃないですか。もう俺の子供みたいなもんですよ。その子供が孫を連れてきて、どんどん大きくなってきて……。その孫から1000円ずつ取っていけば」に笑いながら「イエーイ!」という客に対し、「なんでもイエーって言えばいいわけじゃないから!」とつっこむDさん。
そして、「でもね、本当に感慨深いわけですよ。彼らもキャッチャーな存在で、いろいろ言われたわけじゃないですか。ライムスターもね。ポップだとかさ、セルアウトだとかさ! 売れてねーっつーの! ハーコーでアンダーグラウンドな人たちにね?」
からの、「あれ~でも、生き残ってるのもはどっちかな~~?」からのサバイバー!
あの流れからの「最後までリングに立っているオレがサバイバー」はずるい。
そして、最後の曲。
「サ上とロ吉はいろいろなことを乗り越えてきた不屈のグループだと思います」からの「ONCE AGAIN」は本当に愛情深くて、シンプルな歌詞が心に染みた。
最後にサ上が「アンコールはないからね」と言いながら出てきて、人もだいぶ薄くなったところにいきなりTシャツ姿の宇多さんが「アンコールじゃねーぞ!」と言いながら飛び込んできて、Masters オブ お家芸をやったの、ほんとに熱かったな。
こういうのアップしちゃいけないのは重々承知だけど、怒られてもいいから上げずにおれない。マジでスゴすぎた!!!MASTERS オブお家芸@建設的 pic.twitter.com/xQcsKZkwVu
— 高木JET晋一郎 (@TKG_JET_SHIN) 2016年6月26日
「趣味の悪さも武器に変える」って、ライムスターの悪趣味節から引いてると思うけど、「うさんくさいものや名付けがたいものも背負って俺たちは輝いてくぜ!」みたいな歌をスキンヘッドにサングラスの宇多さんと短髪パーマで黒髪にところどころ金を入れるという鬼みたいな頭になったサ上が歌うの説得力ありすぎてものすごい笑顔になってしまった。
サ上の「ラッパーは人間であっちゃいけないと思うから変な服を着てる」というポリシーかっこいいよ。大好きだ。
地下アイドルオタク育ちだから、対バンって演者が爪痕を残しにいく場所みたいなイメージを持っていて、もちろんそういう現場も大好きなんだけど、建設的のプライドかけたホームパーティーという空気は面白かったし、大先輩に可愛がられてる横浜のラッパーたちの姿はチャーミングで、あったかくて楽しかった!
レペゼン横浜の同世代がサ上とロ吉で幸せです。
ライブ終了後、DJ中の吉野
昨日はお疲れ様でした‼️
— DJ KAZZ-K (STERUSS) (@KAZZ_K) 2016年6月27日
RHYMESTER , MU-STARS , サ上とロ吉 , MIC大将 , STONE DA , STERUSS @建設的楽屋 pic.twitter.com/VtPMdOS4KN
サイプレス上野 presents「建設的」~HIPHOPミーツallグッド何か~
■SPECIAL GUEST RHYMESTER
■GUEST DJ:MU-STARS / ENTA DA STAGE vol.3 CHAMPION:BALA
■MAIN FLOOR LIVE:サイプレス上野とロベルト吉野 / STERUSS / LEON a.k.a.獅子 / SMOKIN’ IN THE BOYS ROOM /WATT a.k.a.ヨッテルブッテル / 万寿 / ISOP ■BAND:43K&cheapsongs■2nd FLOOR:MIC大将/ 金持ち兄弟/ DEEP SAWER / Jim Benjamin from HELL■DJ:油井俊二 / ロベルト吉野 / DJ KAZZ-K / DJ KENTA / DJ49 / LEGENDオブ伝説 a.k.a.サイプレス上野■謎:謎みっちゃん ■FOOD:CAFE&BAR Spare / 上野の唐揚げ棒
OPEN 16:00 / START 16:00 /