ホンのつまみぐい

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「幸せを呼ぶ赤い袋」(三藤達男)

幸せを運ぶ赤い袋

幸せを運ぶ赤い袋

 地元では言わずと知れたパン屋「ポンパドウル」。元町を代表する同店の2代目社長が綴る社史。文章は素朴なものだけど、戦後すぐにパン屋をはじめ、フランスパンやデニッシュの販売など、新しいことをやってきたお店なので、けっこう面白い。

 先代がパン屋をはじめた理由が、「最初はコンニャク屋を始めるつもりだったが、芋が調達できず。すでに購入していた機械を転用できる仕事がパン屋だった」話から、「定番商品チーズバタールは当初フランスの職人に邪道と言われていた」話など、ふだんからポンパドウルになじんでいるとより愛着の湧くエピソードも。

 たしかに、今ではフランスパンは珍しくないけれど、私が小さい頃はポンパドウルくらいでしかフランスパンは売っていなかったように思う。独特のパリパリした皮と、弾力のある生地は大人っぽい印象で憧れのパンのひとつだった。

 書名はポンパドウルの目印となっている真っ赤な袋のこと。このデザインも、当初は一悶着あったとか。赤を採用したのは炎のイメージ、ポンパドウルレッドという色があったことなどによるが、食品業界では「清潔感がない赤はタブー」とされていたため、茶色い袋と赤い袋を用意し、お客さんの希望に求めて配っていたそう。しかし、赤が圧倒的人気を博し、今度は茶の袋が余ってしまったとか。たしかに、あのブティックっぽい袋、かっこよかった。

 ただ、パン屋の話なのに、表紙にパンがないのはもったいないけれど。