ホンのつまみぐい

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「また、生きて次のパーティーに向かうんだ」Have a Nice Day!「Dystopia Romance」リリースパーティー 恵比寿LIQUIDROOM

 

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なんだかんだでライブに関してはアイドルオタクの人たちが一番面白い場所を知っているという感覚があって、それは研究員をはじめとした毎日のようにライブに行ってるようなアイドルオタクの人たちが、めちゃくちゃ言いたい放題言う人たちだったからだ。あんなにライブに厳しい人たち、あんま見ない。

 
ちょっと傲慢すぎないかと思うこともあるけど、その分だけ本当にすごいものに会った時の喜び方とか場の作り方が激しくて、なんかステージとフロアで殴り合いをしているような熱量があった。私はそういう洪水みたいになってるとこにうまく飛び込めなくて、みんな仲が良くて、感情表現がうまくてうらやましいなあと思いながら観ていた。
 
Have a Nice Day!のリリースパーティーに足を運んだのは、そんなアイドルオタクの人たちから聞こえてきた評判がきっかけだ。
 
といっても「どう達者でどう高い評価を受けてる」みたいな減点式の評判ではなく、「アイドルと絡んで曲を作ってる」とか「スカムパークというイベントが熱い」とかそんなのだ。
 
インターネットの上で言語より雄弁に語っていたのが元研究員らへんの人たちが撮影した動画だ。ライブハウスの暗いし狭いし汚いんだけど、演者がキラキラしててまぶしいあの感じがかっこよかったので、「エメラルドグリーン!」と「フォーエバーフォーエバーフォーエバーヤーング」のとこだけ覚えた。(下の動画のうち、エメラルドとスカムパークの動画は元研究員たちが撮影)
そして、リキッドルームで無銭ライブをやるためにクラウドファンディングでお金を集めていること、内藤さんという人気者がいなくなったこともなんとなく知っていった。
 
しばらくすると、100万で成立のクラウドファンディングが120万で終了したことが漏れ聞こえてきた。さらにしばらくたって、フリーライブの1週間前にMVが発表される。
ボーカルで曲を作ってる浅見さん自身が、内藤さんの離脱の理由を明かす、12分を超すMVだ。私はハバナイのことは上で書いたようなことしか知らなかったけど、なんとなく口ずさんでしまうようないい歌を作っている人たちが、真剣にぶつかりあって音楽やってるというのはすごくかっこいいなと思った。
 
フリーライブの日は11月18日、水曜日。クラウドの出資者に感謝しつつ、恵比寿へ向かう。開演前にTwitterのTLを見ると、かつて研究員だった人たちはみんなで前乗りで酒を呑んでいた。
 
リキッドルームに入ると、中のお客さんがみんなワクワクした表情をしていた。リキッドルームは歴史のある箱なので、節目のライブに使われることが多いが、そういうライブ前によくある、緊張感や前のめりな興奮がなくて、もっとストレートな高揚感を感じた。
 
フロアはまだ少し余裕があったけれど、段差のある、ステージ全体が見渡せる場所に陣取る。
 
最初は「NATURE DANGER GANG」。音楽に詳しくない私にとって、ネイチャーは渋さ知らズと同じ箱に入ってる。チンドン屋みたいな、歌ってるんだかただ暴れてるんだかわからない人たちが舞台の上にいて、やってる曲にはどこか童謡や民謡みたいなおおらかさがある。ステージ上は帽子おじさんとかと近い場末感があって、開放的で、でも、せわしない音や激しい音もやる。この日はステージの上をパチンコ「海物語」の旗が舞っていた。
 
歌ってるのはカエルについての歌だったりするけど、めっちゃ楽しそうで、演者がどんどん半裸になっていく。ライブ中盤で、ひとりのメンバーが緑色のレーザービームを照射したのが中学生っぽくて笑ってしまった。観光地になっている形骸化した見世物小屋でノスタルジーを感じに行くより、こっちの方がよっぽど見世物的だ。そして、ステージの上の見世物たちが全力で楽しんでるから、客が負けずにグルグル回り出す。
 
なのに、最後のほうで
 
「生きてるってなーんだろ」
「生きてるってなーあーに」
 
という女性ボーカルをつっこんでくるの、ズルかった。それまでアホみたいなお祭り騒ぎだったのに、いきなり放課後の夕焼けみたいな時間作るの確信的でずるい。映画みたい。(フレーズは笑う犬の冒険のパクリだけど)
 
ネイチャーが終わって、転換の間をつなぐのはD.J.APRIL。オールバックにYシャツ、黒の蝶ネクタイとメガネというビジュアルがかっこよかった。フロアの人々がまたグルグル回って盛り上がったところで、D.J.APRILがハバナイのスタートを告げる。
 
暗幕が開くとマントをすっぽりかぶった男が中央に立っていた。一瞬ハバナイのメンバーかと思ったが、ポエムコアの創始者のBOOLだった。
 
語られたのは動物園からマント一枚、ほぼ全裸で逃げてきた男の話。
 
「おれたちのアンダーグラウンドモッシュピットからはじまる」
 
「ここじゃそんなこと誰も気にしないわよ。そのマントほうがダサいわ。それにあんたゴリラでしょ。脱いだ方が自然よ」
 
そんな言葉が語られるうちに、話はいつの間にか田舎街から出てきた青年が東京にたどり着く話になっていた。(ちょっとこの辺は記憶が曖昧だけど)
 
 
BOOLが終わるとハバナイ浅見さんらの長めのMCが始まる。
 
「この特殊なアルバムが東京のフロアのモッシュピットとともに完成するわけですよ」
 
浅見さん、生で聴くとイケメン声だな。そしてヒリヒリしたナルシストだ。
 
MC中に「なげーぞ!」「せめーんだよ!」という声が上がって、ステージのメンバーが苦笑する。
 
「まさか、おれたちの仕掛けた感動商法に引っかかったやつとかいないよね?
 
720円で作った音源で120万円集めてね。
 
わずか3週間くらい前に作ったPVで1000人集めちゃってね。
 
ここいる奴らの心の重さは10円くらいですよ」
 
思わず笑う。かっこいいな。ワクワクするな。
 
「でもたしかなことがある。
真実はYouTubeの再生回数にも、Twitterのフォロワ数やRTやファボの数にもない。このモッシュピットの中にあるんだよ」
 
で、「Are You Ready?」から「Forever Young」でスタート。ライブが始まると浅見さんのロックンロールの人らしくないガリガリの身体がガクガク動く。太いわけじゃない声は、ふてぶてしいんだけど切実な感じがあった。
 
ライブは合間にゲストとのコラボを挟む形で進行する。
 
Y.I.M、Limited Express、おやすみホログラムのどれもみんな雄たけびみたいな強力な声でライブをするので、フロアもそれに反応するようにリフト、ダイブ、モッシュがまるで荒海みたいに沸き起こる。リフトされて上がったところで、ラジオ体操みたいに腕を振り回してる人の姿がなんか笑えた。盛り上がってることを全身で伝えたいって感情がそのまま現れている感じで、ポカポカした気分になった。
 
ハバナイの曲には「ふぉーえばやんぐ!」とか、「エメラルドグリーン!」とか「ロッケンロッケンロケンロー!」とか合いの手を入れやすい曲が多くて、私もそこでぴょんぴょん飛んだり跳ねたりした。
 
時々入るロマンチックな歌詞が、リキッドの照明と合わさって、美しかった。
 
「ぶち壊してよ この素晴らしき世界を」
「誰も知らない夢の終わりを」
 
ブラッドオンザモッシュピットでは、ピンク色の照明が夕日のよう。昼と夜の間に現れる一瞬の美しさのような、あっという間に過ぎ去ってしまうライブの時間。
 
浅見さんが、「死ぬなよ、みんな。生きて次のパーティに向かうんだ」というMCを挟み、最後のゲストである内藤さんを袖から呼び寄せる。
 
でも、なかなか出てこない内藤さん。
 
「内藤さん渋ってるよ」と笑う浅見さん。
 
しばらくして、内藤さんがくるくる回りながら登場。やっと出てきた内藤さんは、ディズニー版くまのプーさんみたいな雰囲気の人で、浅見さんと並ぶと漫才コンビみたいだった。
 
内藤さんがステージ上をドスドスと動き回ると、浅見さんの歌声がさっきまでのどこかヒリヒリした感じとうってかわって、幸せそうな安心したような空気になった。そのあまりの変化にはドラマがありすぎたし、内藤さんは今夜限りのゲストであることを思うとちょっと切なさもあった。
 
でも、ステージもフロアも全然感傷的ではなくて、彼らが繰り返し使った言葉を借りるなら、最高のパーティーだった。
 
あっという間にライブが終わり、フロアは「もう一回!もう一回!」と叫びながら2回目のアンコールを要求する。そんなフロアを促すように客電がつき始めると、今度は「もう一回!」が「最高!最高!」に変わっていく。
 
すると暗幕が少しだけ空いて、浅見さんと内藤さんが出てきて最後のあいさつをした。
 
「蘇ったぜー!」で、フロアのコールは「内藤!」「内藤!」に変わり、最後に内藤さんが「楽しかったよー!」と叫んでダイブ。それがライブの締めくくりになっていた。
 
うん、楽しかった!
 
私は感情を解放するのが苦手で、ライブに行ってもうまく盛り上がれなくて観光客みたいになってしまうことがあるのだけど、よく知らないなりにわっと盛り上がれて、フロアが混沌としているのを笑いながら眺めることができて、ただただ楽しかった。
 
同じアーティストのライブに行き続けていると、減点・加点式でライブを観てしまうようになってしまうことがあって、そういう時に自分の感受性の貧弱さにがっくり来てしまうことがあるんだけど、そういう感情からもパッと開放させてくれて、ライブハウスの特別さとか、音楽だけが持っている楽しさとかを思い出させてくれた。
 
5円くらいの心の重さの私ですら最高に楽しませてくれてありがとう。
 
最後に、浅見さんの言葉を借りて
「また、生きて次のパーティーに向かいましょう」