ホンのつまみぐい

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郡山#9でTHE BiS WHO SOLD THE WORLD TOUR

 わりと後ろでゆっくり見るタイプなのだけど、ライブハウスでのBiSは最後ということで、とりあえず中程に。

 公称250くらいのキャパに500番まで整理券が出ていたらしく、会場はぎゅうぎゅう。

 オープニングアクトの「LUI◇FRONTiC◇松隈JAPAN」から見る。BiSじゃないプー・ルイだけど、いつものプー・ルイ。楽器を背にする姿がかっこいい。直情的でちょっと気恥ずかしい歌詞も、ライブになると堂々としたステージングのおかげかあまり湿っぽく感じさせない。ベースとギターのふたりがそれぞれ最後の曲でダイブ!オープニングアクトも最後日と言うことで、松隈JAPANのメンバーに花が贈られていた。

 オープニングアクトが終わると会場にはさらに人が増え、例えではなく満員電車状態でのスタートに。福島銘菓「ままどおる」のCM曲が延々と流れ、メンバーがままどおるを食べながら登場する。しょっぱなprimal.で、人が思いっきり倒れてきて、急ブレーキをかけた満員電車状態に。続いて、Mylxxx、BiSimulation、STUPiG、PPCCとアゲ曲が続いて会場がぐちゃぐちゃに。そんな中でもちゃんと推しのパートでリフトされる人たちを見てなんだかちょっと感動。じゃまになることも多いリフト・ダイブだけど、ステージのパワーと客席のパワーがぶつかり合ってる時のリフトやダイブはとてもかっこいい。

 この日は、わざわざタキシードを着てプー・ルイに花束を渡していた福島の人や、ままどおるを手にしたウイぽん(ファーストサマーウイカ)に、primal.の落ちサビで手を差し出して、そのまま受け取るのかと思わせておいて、無視されていた人がメンバーとうまく噛み合っていて面白かった。

 激しい曲が続いて、会場もぐったりしたところにMCが入る。

 いつものあいさつのところで、のんちゃん(ヒラノノゾミ)が「クソニコ厨」という言葉でニコ生の観覧者を挑発する。「クソニコ厨」はBiSがニコ生でライブを配信する時の決まり文句だけど、1年くらい前の映像ではゆふちゃん(寺嶋由芙)とプー・ルイの横でどこかおどおどしていたのんちゃんが、がっつり煽っていたのが、これまた昔の「のぞしゃんは本当に読めないから、怖いけど面白い。ただ、ポーズじゃないから言ってほしいときにビビって言わなかったりもする。」というプー・ルイのインタビューを思い出してちょっと感慨深かった。

・ちなみに1年前のニコ生

 そんなのんちゃんの挑発を受けて、ニコ生のハッシュタグは#コロスゾに決定。それからもMURA-MURA、CHELSEA、Give Me Your Love全部、ERROR、MMGKとテンション高めの曲が続く。

 すでにへとへとだったけど、「GETYOU」「YELL!」と可愛い曲で一息。個人的にライブの善し悪しはミッドテンポの曲やバラード曲がきちんと心に入ってくるかで決まるのだけど、この日はすっと入ってきてうれしかった。

 それにしても「GETYOU」のウイぽんの「どうしたらいい わかんないよ」はあざとさを感じさせてついつい笑ってしまう。そういえば、「デモサヨナラ」を初めて生で見た時も「乗りこえて見せるから」で「余裕で乗り越えそうだな!」と思ったのでした。

 「YELL!」はサキちゃんが「進まなくても気にしない」「そんなことはわかってる」を歌っているところが好きだ。100kmマラソンの直後に、「この子のためのような歌詞だ」と思った曲で、みんなで手をつなぐ振りつけもあわせてすごく好き。最近はあんまり昔の曲を知らない人もいるみたいだけど、つたない歌声と90年代のりぼんコミックみたいな可愛らしさのある歌詞が魅力的なファーストアルバムの楽曲も、もっと聴いてもらいたいな。

 MCをはさんで、DiE、豆腐、Fly、FiNALDANCE!

 この日のセトリの中では豆腐のみ初めて生で聴く曲だったけど、実際にマイクを通して聴いてみると歌詞がめちゃくちゃキツい。気持ちをざっくりえぐられる。好きな曲なんだけど、これをリキッドルームで聴いたユケ(ナカヤマユキコ)ちゃんや当時の研究員の心境を想像して、ちょっとゾクッとした。

 もはや「ええじゃないか」音頭状態のFiNALDANCEが終わって、アンコールは福島研究員を中心とした「I love you & I need you ふくしま」の合唱! メンバーが考えたという土地それぞれのSEやオープニング演出にあわせて、地元の研究員が地元ネタで答えるがなんだかうれしい。アンコールでメンバーが出てくるまでにだいたい10分弱くらいかかるので、歌い続けたり叫び続けたりするのはけっこう大変。しかも、BiS現場は普通のアンコールではなく、何かしらのネタを入れてくることを期待されている。福島のアンコールでは何度も何度もサビが繰り返されて、しまいに一部研究員が肩を組んで歌いだしたのが、なんだかエモーショナルだった。地元横浜では途中で力尽きてアンコールがぶちぶちと途切れてしまってメンバーに申し訳なかったので、今日のアンコールはかっこよかった。

 アンコールの後はODD FUTURE、Hide out cut。泣きのナンバーといわれる2曲をメンバーが優しい笑顔で歌う。

 そして、ダブルアンコールはnerveからのレリビ。レリビでプー・ルイがニコニコ笑いながら、でも緊張してガチガチになりながらダイブしていて、とても可愛かった。


 ふと気づくと、天井の配管からは、ぽたぽたと大粒のしずくが落ち続けている。寂しがったり、泣いたりするような気分には全然ならなくて「ああ、終わってしまったなあ」と思ってまわりを見たら、半分くらいの人がプールに落ちたようになっていて、それがうらやましかった。なんか、最後まで上手にバカになりきれなかったなあ、私は。会場を出ると、入り口でみんなすっきりした顔で話している。数ヶ月ぶりに現場復帰したSさんにあいさつして、人が少しずつはけていくのを見ていた。Sさんは私にとって、「研究員といえばこの人!」の一人なので、とてもうれしかったし、ほっとした。

 たぶん、たぶんだけど、BiSが無くなっても、音楽で心の底から感動することや、アイドルが作り出すストーリーに感情移入して心が揺さぶられることや、楽しくってしかたなくて踊り出してしまうことはある。きっとある。
 でも、こんなに演者と客が競うようにお互いの気持ちをぶつけあって盛り上げていく現場には、もう会えないかもしれない。

 骨までしゃぶりつくすような勢いで全力で現場を楽しんで、腹の立つことがあると残酷なくらい本気で批判する。こんなに獰猛で、真剣で、お調子者なファンが、全力で演者とライブを作っていく場所が、果たしてこれから現れるんだろうか?
 一部の人が言う伝説というものがどういうものなのか、よくイメージできないけど、BiSがアイドルの歴史のひとつの楔になることは間違いないだろうし、生まれた楽曲もずっと先まで愛されていくだろう。でも、たとえばアイドルの歴史を書いた本があったとしても、そこにはあの現場の空気は書かれないし、書ききれない。この場で見た人しか知らないことがあって、それがこの日もひとつ終わったんだ。

 さびしいというより、あとひとつ残った現場、横浜アリーナの解散ライブを本当に大切にして、せめて最後くらいは研究員に負けないくらい本気でライブを楽しもう。楽しめるように仕上げよう。
 なんとなく焦りを感じながら、そう思った。