ホンのつまみぐい

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5月3日 ヨコハマカワイイパーク

 アイドルにまったく興味のない友人を連れて、ヨコハマカワイイパークへ。途中で水餃子で有名な中華街の山東に入ってクダをまく。

 ヨコハマカワイイパークとは、重工業や大企業に逃げられがちな観光都市横浜が、「じゃあ、はやりモンで人呼ぶか!」と思って考えついたイベント(たぶん)で、2013年から開催している。コスプレ・アイドル・ご当地ヒーローと、クールジャパンっぽいものを寄せ集めた節操のないイベントだけど、個人的には「でんぱ組.inc」と出会うきっかけになった思い出深い祭りだ。昨年のカワイイパークをきっかけに、でんぱは横浜市の広報親善大使になり、頻繁にイベントに登場したりするようになった。意外に出向く機会のない横浜へ、人を引っ張るきっかけになってくれていて、ありがたいかぎり。

 山下公園の「石のステージ」に到着すると、つりビットが踊っていた。アイドルっぽいフリルスカートの衣裳で寿司の歌を歌っていた。平均年齢が10代のアイドルを久々に観る。お日様の下がよく似合う可愛さ。

 つりビットが終わり、屋台を見ながら歩いていると屋台の裏で熱唱する2人組アイドルが。安っぽい衣裳と、明かなオーバートウェンティー感と、濃い化粧はいわゆるアイドルっぽくないのだけど、全力の楽しそうなパフォーマンスと、ノリノリのオタクの姿が「野生のアイドル現場」という感じでとても楽しかった。短いラップパートも入るオリジナル曲ではほぼ演者ぎりぎりで踊るオタクもいて、晴天の公園のノリにぴったり。「走れ!」のカバーでは思わず全力でケチャを送ってしまった。

 ちなみに「かんない少女隊」というアイドルで、トークイベントなどロフトプラスワンっぽいこともやる飲み屋「YOKOHAMA ThreeS(ヨコハマスリーエス)がプロデュースしているユニットだ。スリーエスには何度かお邪魔していて、アイドルプロデュースしていることも知っていたのだけど、こんなに楽しそうな現場が作れるのは知らなかった。

 山下公園をぐるっと回ると、コスプレイヤーがたくさん。横浜が舞台の金色のコルダコスが多かった。コスプレ文化に何の接点もないであろう家族連れや観光客っぽいたちが、レイヤーさんに次々と写真を求めている光景が面白く、ほほえましかった。ひょっとすると、あの人達はコンパニオンか何かだと思っているのかもしれない。ちょっとでも、コスプレに親しみを感じてもらえるといいなと思いながら眺めていた。

 休憩しつつ、公園で友人にアイドル動画を見せる。

 お茶を確保してもう一度ステージに行くと、ラオックスがプロデュースしているというAsoBit☆Girlsが登場。けっこう幼い感じの子もいるのに、思いっきりへそだし衣裳なのが気になってしまう。スクール生なのか、ダンスは完成度が高く、ステージングは見応えがある。ルックスも可愛い。

 友人が「ワンフェス(フィギュアのお祭り)に行くと、海洋堂とかのフィギュアと、アマチュアのレベルの高いフィギュアの違いを感じることがあって、それは“作品か商品か”ってことなんだよね。この子達(AsoBit☆Girls)は商品って感じだな。商品としての完成度が高くて、目的が明確な感じ。さっき見せてもらった動画はどれも商品と作品の間って感じだった」という。なんとなくわかるような気も。

 再度会場をうろついて、「アキシブ project」を見るが、選抜組のみの登場らしく、りなはむ(横山利奈)はいない。ちょっとさびしく思いながら、水色のきれいな衣裳のシンプルなダンスを観た。

 再度ステージ前から離れ、妄想キャリブレーションまでお茶を飲む。

 妄キャリのステージは歌詞も曲もオタクのノリも私のイメージするディアステージっぽさ。客はオタ芸ばっちりで、歌はアニソンっぽく、衣裳は色分け。きれいに揃ったオタ芸に後ろの一般人が爆笑する。アイドルオタクの行動で一般人が笑ったり感心してたりするのを見るのが好きなので、私もちょっと笑う。友人がそれを見て、「カタギと玄人に完全にわかれてるなー!」という。そして、「さっきのグループ、ダンス全然揃ってなかったんだけど」とも。私が「妄キャリは普通の女の子達の集まりだから。でも、揃ったグループよりこっちの方が人気やパワーがあるのがアイドルの面白さだよ」というと、「そんなもんかねえ」との返事。

 トリのでんぱは今日は白セーラーに金色の衣裳。でんでんぱっしょん始まりなのだけど、オタクが妙にうるさい。
 左にはおそらくおまいつ(常連のこと)さんと思われる人たち、右には他のアイドルのTシャツのピンチケ(マナーの悪い若者のこと)集団。

 おまいつはコールは熱心だけど、あんまり舞台を見ていないし、ピンチケは明らかに騒ぎたいだけで、リフトであがってわざわざ「ももクロがスキー!」と叫ぶ。アイドル現場にはライブにほかのアイドルのTシャツを着てくる人が嫌われる風潮があるのを不思議に思っていたけど、納得。場を荒らされるのが嫌なのだろう。

 ゴールデンウィーク中の無料ライブと言うことで、いろんな現場から人が集まってきたり、初めてでんぱを見る人もいたりと、さまざまな人がいたのだろうと思うけど、一体感のなさに驚いてしまった。「ORANEGERIUM」で手拍子がやたら入るのもあんまり見ていて気持ちが良くなかった。

 最近、「lyricalschool」が急激に人気を伸ばしているけど、楽曲の持つ力、本人達の持つパワーに加え、あまり現場にmixやオタ芸が入らないのも人気の理由かもとも思う。

 一体感があればいい現場というわけではないけど、楽しそうにアイドルを応援しているおまいつがいる現場は、自然と「あの中に混ざりたいから、コールとか覚えたい!」と思わせるものだ。そういう現場では、コールやオタ芸をしなくても、それぞれが楽しんでいる様子を腕組みしながら見ているだけで、こっちも楽しくなる。

 でんぱのライブはそういういい意味での一体感があるところが好きだったので、この日のライブは意外だった。でも、でんぱはもう、オタクとの一体感という段階ではないのかもしれない。でんぱの描く景色をオタクが追いかけていく段階というか。*

 アイドルを見始めて1年が過ぎて、現場の様相が変わっていく様子を見られたのは、これはこれで貴重だったのかも。

 ちなみに「かわいいものがそもそも苦手」という友人は結局アイドルにははまってくれず、残念。

追記:この文章の2日後にでんぱ組.incの武道館公演が行われました。そこで「ORANEGERIUM」と「キラキラチューン」の口上がスクリーンに映し出され、口上を作った古参のオタの人たちが泣いたという話を聞いて、一体感の生成の変化に感慨深い気分に。在宅(ライブに行かないけど応援をやめていない状態)気味ですが、でんぱにはどこまでも行ってほしいと思います。