ホンのつまみぐい

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米を洗った

 生米に虫が湧いてしまった。

 おそらくコクゾウムシだろう。ふにゃふにゃした節目だらけの、動物の脂肪のような色味の幼虫が憎らしい。同じ食物につく虫でもキャベツの青虫はなんとなくほほえましい気持ちで見守ることができる。いつだったか、産地直送で頼んでいるキャベツの葉に青虫がついていた時は、そこだけ切り取って飼育しようとすらしたのに。結局、その青虫は2日ほどで死んでしまったものだけど。

 コクゾウムシは見ていると憎しみがわき出てくるので、水につけて濾して、ひとつひとつていねいにつまみあげた。シンクの中にへばりついて体を右往左往させる様子を一瞥にもくれないで水に流した。

 大量の米はすべて水で洗い流して、新聞紙に引いて乾かした。水に濡れた米が腐った牛乳のような嫌な匂いを醸し出している。

 水の中でうごめく虫をつまみ上げて捨てていく瞬間の乏しい満足感は、どれだけ積み重なってもコップいっぱいの牛乳の満足感にすら届かない。

 なかなか乾ききらない米をさわってなんだかむなしい気分になった。