26日は仕事をしながらニコ生でBiSのテラシマユフ脱退ライブを見ていた。
BiSという型破りなアイドルのことは最近知ったばかりなので、情報はすべて後追い。だから、彼女たちが炎上上等なマネージャーに牽引されて、全裸PVを作ったりスクール水着でライブをやったりしながら、アイドルとして大きくなっているということはすべて本当にここ2週間くらいで把握した。 過激なパフォーマンスの一方で、印象的な楽曲やメンバーたちのキャラクターが認められ人気が拡大中……という印象だった。音楽のことはよくわからないのだけど、BiSの楽曲はかわいい女の子のキラキラした部分を引き立てるために与えられたものというよりは、自傷的とも言えるグループそのものを表すようなものが多かった。おもにメンバーが作詞しているという歌詞には、意志や情熱、あるいは焦燥感を感じさせる言葉が並んでいて、音もそれにあわせたどこか挑発的なメロディーが用意されている。
メンバーの媚びたところのないそぶりも印象的で、ひとりひとりが自分の言葉でしゃべっているという感じが魅力の1つだった。中でもテラシマは、しっかりものを考えて、自分の責任を意識した上で発言するタイプに感じられた。
そんな彼女が脱退する。理由の1つはどうやらリーダーのプー・ルイとの確執にあるらしい。
つい最近知ったばかりの自分が書き連ねることではないと思うので細かいことは書かない。きっと、どっちが悪いということでもないのだと思う。ただ、そういう生々しい理由でアイドルが脱退すること。しかも、それがイベントやSNSを通して可視化されてしまうことにショックを受けた。
BiSのメンバーが見せる自我の強さは魅力的だけど、それは同時に彼女たちが生身の人間であることを常に強く意識させられるということでもある。アイドルの仮面と自我との距離がとても近い。だから、彼女たちが傷つけ合っている様はかなりダイレクトに伝わってしまう。
もともとアイドルは存在そのものを売る仕事なのだ。彼女たちはツイッターで毎日何を食べているかを写メして教えてくれるし、ライブの後は「ありがとう」とツイートしてくれる。それにUSTやらなんやらを通して、彼女たちがどういう表情で笑うのか、どういうタイミングでムッとするのかまでわかってしまう。だから、フィギュアスケーターやミュージシャンを見る時のように「それはそれ、これはこれ」という切り替えがうまくできない。
また、かなり極端な例だけど、運営による搾取の様を公開して、メンバーを「かわいそうな女の子」として扱うことで、同情や嘲笑の対象として売り出すアリス・プロジェクトのような事務所もある。アリス・プロジェクト所属のアイドルグループの1つ・トッピングガールズのメンバーが、人気ミュージシャンのヒャダインに馬鹿にされながら自虐芸を繰り出す様がYoutubeに残されているのだが、気分が悪くなるほどひどい扱われ方なのに、それを受け入れる姿が本当にいたたまれなかった。
そういうもろもろの一方で、過去を告白しそれを乗り越える決意を歌う曲「W.W.D」を経て、「でんでんぱっしょん」で爆発するような満面の笑みを手に入れたでんぱ組.incの古川未鈴がいたりする。どこか冷めた目で常に幸の薄そうな表情だった古川未鈴が、まるで小学生みたいな笑顔で笑う様子は、もうそれだけで現在進行形の力強い物語になっている。 私はあらゆるアイドルの中で古川未鈴が一番好きなのだけど、うまくいかなかったアイドルたちの表情と今の彼女の表情を比べて、ちょっと切なくなることがある。
栄光があれば陰もあって、しかもそれは努力や人柄だけではなく、運やタイミングによって左右されてしまう。その振れ幅の大きさはまるで人生そのものだ。
脱退ライブでのテラシマは、葛藤を飲み込んで笑顔でファンの前でライブをやりきった。そんなテラシマを誇りに思うかのように、会場のファンはアンコールの代わりにBiSの代表曲「Primal.」を熱唱した。その姿そのものが物語のようで、テラシマユフというアイドルがファンを物語に巻き込むくらい強い存在だったことを証明していたように思う。