ホンのつまみぐい

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窓のむこう

 最近ツイッターから流れ込んでくる情報が重たくなってきて、こっそり非公開リストを作ったら、登録したアカウントが3つだけになった。そのうち1つはbot。以前ツイッターを立食パーティーにたとえた人がいたが、こうなると仕事の行き帰りの喫茶店で、窓のむこうから毎日同じ時間に通る人のことを眺めているのに近い。

 情報交換しない。同意を共有しない。大喜利しない。リストのTLはほぼ凪だ。実際はふぁぼくらいするので同意を共有しないというわけではないけど、コミュニケーションは取らないようにしている。

 ツイッターが重たくなったときに思い出したのが、三原順の「はみだしっ子」のセリフだ。
はみだしっ子 (第1巻) (白泉社文庫)
 家出少年4人組の放浪の話だが、最初期の短編「動物園のオリの中」には、その中の1人サーニンがアパートを「人間の動物園」にたとえる。アパートの個室は窮屈なオリの中。中の人間は閉じ込められた動物たち。

 その話を聞いた弟分のマックスは、人間が皆それぞれ何かを考えているということに恐怖する。

 ねェ…みんな考えたり感じたりするの?
 人間全部ゥ?
 (中略)
 通りにでれば仕切りもなく誰がなにを考えてるのか…まるでジャングルのまっただ中!
 いやだボク… そんなのなんだか気持ち悪い こわいよ

 私はツイッターでこれとほぼ同じ感覚になったのだけど、おそらくこれは都会で生活する人間が共通に持つ恐怖感ではないだろうか。

 三原順は少年たちの心の繊細さを描く作家として語られることが多いけれど、都会に住む人間のよるべない生態を描いた作家でもある。そういう部分はたとえ私の感性が少年の繊細さを失ってしまっても、時々ふっと心の中によみがえってくる。

 そういえば「はみだしっ子」には「窓のとおく」という短編もあった。