復活開催の展示だということを訪れて知った。土曜日の午後に観覧。
評判になっていたのかかなりにぎわっていて、整理番号式になっていた。呼び出しまでに30分くらいかかった気がする。
明治錦絵。絵のモチーフや構図、技法は浮世絵と近いのだが、とにかく赤が強く目に焼き付き、独特の派手派手しさがある。明治になってから顔料に西洋の技術が入るようになり、赤が色褪せなくなったと聞いたのでそれだろう。
「江戸時代は平和な時代」というのは誤認なのだと理解しているが、いまだに江戸のことをどこかのんびりした時代だと感じてしまう癖がある。くどくどしい赤で彩られた明治錦絵を見ていると、「時代の変わり目には絵も暴力的な色彩に変わるのか」と思ってしまう。いかんねえ。絵としてはこういう強い濃い色彩も好きなのだけど。
大正新版画がとてもよかった。版画で作られる陰影がとても美しい。浮世絵に描かれた風景を遠い昔話のように感じてしまうのと違い、こちらは少しだけ私たちの生きる時代と地続きなように感じられる。描かれるモチーフは江戸や明治の絵と大きく変わらないのに、不思議だ。絵の中から湿度を感じとってしまうことともかかわりがあるように思う。川瀬巴水、土屋光逸、ノエル・ヌエットの名を覚えた。
中止からの再開にあたってのむすびのことばが劇的で、博物館でこうした前のめりな文章を読みことは少ないので極めて印象に残った。