Valknee主催(という表現でいいのか?)の「ギャルの証言」こと「Zoom」がかっこよい。絵面のチープなケバさもチカラ強い。
ただ、Marukidoのアスペという表現が気になった。
zoomgal
初めてなの?チャH
パペットグリッチ
イメクラガンジー
アスペのボーボボ
折衷案じゃんラガマフィン
自粛中のご飯とシャバランキン
ブヤカブヤカ!zoomzoomgal
ブヤカブヤカ!zoomzoomgal
アスペはアスペルガー症候群の略だけど、よく「空気読めないやつ」とか「頭がとろいやつ」くらいの意味で使われている。だいたい「あいつアスペだから」って言ったら侮辱だ。
そこでこうツイートしたら、
いい曲だけどアスペという言葉の使い方が気になる。
— hontuma (@hontuma) 2020年5月20日
Zoom - valknee, 田島ハルコ, なみちえ, ASOBOiSM, Marukido, あっこゴリラ https://t.co/GdZQ82Xwgb @YouTubeさんから
本人から返事が来た。
分かりにくいリリックですみません🙇♀️
— Marukido🦄🌈 (@marukidosudo) 2020年5月20日
自分多動症で通院しているのですが自粛で逆に自閉症のようになってしまったことを表したリリックです!
侮蔑で使用しているわけではないのですがそう取られる方もいらっしゃいますのでそういう方には申し訳ないです😥汗
【わいパートリリック解説💖】
— Marukido🦄🌈 (@marukidosudo) 2020年5月20日
初めてなの?チャH
(コロナ時代リバイバルチャH)
パペットグリッチ
イメクラガンジー
(自粛中瞑想にふける私)
アスペのボーボボ
(多動症の私が自閉症に)
折衷案じゃんラガマフィン
自粛中のご飯とシャバランキン
(コロナをreggaeで飛ばす) pic.twitter.com/Ngqum1COK6
これを機に初めて知ったが、MarukidoはADHDなのだとか。彼女にとってこの曲は自分のことを面白おかしく表現したに過ぎない。病気を侮辱するつもりはないというのは本心なのだろう。
ただ、「アスペ」が日本社会で侮辱の言葉として使われているのはたしかで、これを聴いて傷つく人が出てくることは十分にありえると思う。
一方で、当事者であるMarukidoが自分の状態をネタにすることで、「アスペ」という言葉に込められた悪意が軽くなる部分もあるだろう。
たとえば「ビッチ」という言葉はもともと侮蔑語だが、女性があえて使うことで意味が反転し、エンパワメントとして使われることもある。こうしたことを考えると、一概に「差別的な言葉を用いたから」という理由で、歌詞を差別的をみなすべきではない。ラップのように極めて属人的な表現の場合は特にだ。
「アスペ」が当事者によるエンパワメントとして解釈されにくいのは、「ニガー」や「ビッチ」と違い、話者が当事者か部外者かがわかりづらいからだろう。黒人であることや女性であることは、多くの場合明白だからだ。
だからといって「わかりづらいからこの表現はNG」「もっとこうすればいいのに」というジャッジも傲慢すぎる。とりあえず疑問に思った私が何かできるとすれば、この流れを書いて記録しておくことくらいだろうか。
似たような言葉として、「2chのメンタルヘルス板にいるような人」が転じた「メンヘラ」というスラングを思い出した。そういえば、十年ほど前、あえて「メンヘラ」を自称し、表現に消化させようとする人たちがいた。意味を更新することで、「メンヘラ」という侮蔑語を当事者たちが取り返す試みだったのかもしれない。また、そうした表現をすることで、同じように不安定な気持ちでいる当事者に表現が届きやすくなることもあったはずだ。
しかし、「メンヘラ」と呼ばれた人たちの幾人かが本当に亡くなってしまったためか、最近は「メンヘラ」という言葉を表現に消化させる試みは見かけなくなり、今ではこの言葉はほぼからかいのために使われているように思う。
情緒不安定な状態を表す漠然としたスラングの「メンヘラ」と、病名をもとにした「アスペ」は似て非なるものではあるけど、扱いの難しさという点では共通するものはあるかもしれない。
ところで、「Zoom」を聴くと誰のパートが一番好きかを言わずにおれないと思うが、私もご多分に漏れず。Valkneeの攻撃的なリリックとアニメの悪役のような声のバランスが一番好きだ。