銀座のギャラリーたまに行くけど、すっごい空虚な展示にあたることがあって、これもそのひとつでした。
透明な筒の中に溜まった香りをかいで、そこから呼び起こされる記憶にそれぞれが向き合う体験型展示。で、日によっては香りに紐付いた食事を食べさせてくれる日もあると。
でも、これちょっと前に燃えたブラックボックス展と一緒ですよね。あれは真っ暗な箱の中を通るだけの展示だったけど、参加者が勝手になにか高尚な体験をしたように勘違いしてくれて話題になったってやつ。結局中で痴漢が発生して、そっちの方で有名になったけど。
なにか特殊な、もやっとした、どうとでも解釈できる状況を体験させて、参加者をその気にさせて、「答えはそれぞれの心のなかにある」って思わせて。
まあ、それはそれでレクリエーションとしてはいいと思います。私も「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を体験した時は素敵だと思ったし。どっちかというとテーマパークかな。
※ダイアログ・イン・ザ・ダーク:一筋の光も入り込まない完全な暗闇の中を、視覚障害者の方にアテンドされ、耳と触覚だけを頼りに行動するイベント
しかし、あまりにもその気にさせる技術だけが際立っていて、ほかに何もなさすぎないすか、これ……。広告代理店が商業施設のオープニングに考えそうな企画っていうか。資生堂だから香りをプロデュースしたんだろうしね。イメージ戦略にはぴったりですが。
私がこの展示に嫌悪感を感じるのは、こういう形式は作り手の責任を回避させるから。俯瞰的立場を確保して、一段上にいるように見せることで、アーティスト自身が表現することや語ることから逃げている。これを気の利いたもののように勘違いしてしまう鑑賞者(いや、客か?)も芸術に対する期待値が低すぎるのではないでしょうか。
階段上がったら資生堂のビルに川俣正の展示もあったけど、建物を侵食せんばかりのいつもの彼の展示と違う、申し訳程度の箸の集合体を観て、二度がっかりしてしまいました。