ホンのつまみぐい

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川崎能楽堂にて演劇集団「俄」によるサイバーパンク歌舞伎Vol.3「FUXAiBXUE-フカイブルー」を観ました

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 前回と比べ、すごくわかりやすく面白くなってました!(一度能楽堂の前を通り過ぎてしまい、20分遅刻しましたが……)

 

 ちょうど6日前に大衆演劇で「三人吉三」を観て、その不条理な感情の動きに驚きつつ、だからこその野蛮なダイナミズムに感心してもいたので、今回はより制作側のやりたいことをストレートに受け止められたような気がします。

 

 ネタバレありの感想です。

 

 物語は「マユミ」と呼ばれる神が信仰される惑星オプティア。この星では、「結び巫女」と呼ばれる女性が「マユミ」の声を聞き、人民全てを統治しています。オプティアには、かつてネクロフィアンという敵性宇宙民族を殲滅した過去があります。そして、平和に見えたこの惑星に不穏な出来事が訪れ、人々は襲いかかる運命に翻弄されていきます。

 

 ネクロフィアンとマユミの謎が徐々に解き明かされる一幕目。すべてが解明された後、登場人物の関係性が破滅に向かう二幕目という構成。

 

 二幕目、絶望に陥る登場人物たちが叫び、殺陣を振るう姿が大変気持ちよかったです。通常の舞台は長方形の長辺の前にイスを置きますが、川崎能楽堂の舞台は正方形。2辺の周りにイスが並べられ、正方形の角が客席にせり出した形になっています。一般的なかみしもが通用しない舞台。客用の入場口から時折演者が行き交うという演出も含め、かなり計算したんじゃないかと思わせます。天井上半分だけに投射された映像がほどほどに物語をリードしてくれるのも巧み。

 

 後半の3対1での殺陣の場面は特に、空間すべてを使って盛り上げようという気概が伝わってきました。身体能力が優れている設定の役に対し、三人が斬りかかるのですが、時に相手の背中を踏みつけて飛び越え、時に二人を振り払い、最終的に……という殺陣の構成は見応え十分。

 

 ほかにも、客席にせり出した角に立って叫ぶ場面など、まるで舟の穂先で叫んでいるかのようなケレンがあったり、能舞台の橋掛かりの柵に足をかける一番いい演出が、まさにもっとも美しい場面で使われたり、非常に画になる場面の多い芝居でした。

 

 また、この芝居は信仰を巡る物語でもあります。信仰していた神が実は人造物であり、その神の保持のため、犠牲になった人々がいることが明かされる前半と、それでは神のいない世界をどう生きるかをディスカッションする後半。ある人物は神に対する疑念や怒りを口にし、ある人物は神のいない生を堂々と生き抜き、ある人物は神の本質を考え抜き、それゆえに自身が神となるために、弱い人物を取り込もうとする。

 

 強大なテーマが浮き上がることなく、しかし、教訓的でもない形で響いてくるのは、サイバーパンク歌舞伎という形式を選択していることの強みなのかも。歌舞伎という形式を借りることにより、行動原理の飛躍が受け入れやすくなり、感情が明快に浮き立ってくるというか……。前作もですが、手塚治虫なんかが描きそうな壮大さがありますね。

 

 謎解きが終わるまで少し長さを感じた部分や、初日らしいほころびもありましたが、後半の画的な快感とセリフの強度はしっかりとした見応えを提供してくれました。

 

 3人の巫女がしっかりそれぞれの美しさを引き立てる衣装で華やかでした。イワテの髪型の変化とかうまく考えてますね。巫女役の女優さん、それぞれセリフがきれいに響いていて説得力ありました。若い女性らしく、自分の見せ方を知ってる感じします。

 

 個人的に、先に取り上げた3対1場面の音楽の、たまにがしゃがしゃっとしたフラが入るところがいかにもDOCMANJUビーツだなと思ったり……。

 

 

 そして、ちょっと浮き上がってはいましたが、2幕目始まりで少しだけ本物の謡の人と三味線の人が出てきた際の緊張感はとても気持ちよかった。さすが!

 

 また、古典に詳しい人なら、セリフ回しや設定など、いろいろすくい取れるところがあるんじゃないでしょうか。私は高校の教科書レベルの知識しか持っていないので……。

 

 とにかくいい舞台でした。内容的に千秋楽、めっちゃ盛りあがりそう!

 

 ↑が、帰り道、何も見ずに書いた文章。帰宅してあれこれ見ていたところ、↓こんな豆知識が。ということは……?

 

 原作解説。この辺もなるほど~~!

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