ホンのつまみぐい

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カルチュラル・タイフーン2019・1日目→岡田育『40歳までにコレをやめる』 トークイベント→カルチュラル・タイフーン2019・2日目


cultural-typhoon.com

 このエントリは個人的な備忘録なので、ありとあらゆる点で丁寧ではないです。

 カルチュラル・タイフーン2019・1日目。

■セックス・ワークをめぐる女性表象
原幸子、竹田恵子、小川裕子

・主体的にセックス・ワークを選ぶ女性もいる。しかし労働の場で、コンドームを外して挿入する男性に遭遇し、あまつさえ侮辱的なことを言われるなど、たとえ主体的な選択であっても、ひどい扱いから逃げることは出来ない

・罰則を強化してセックス・ワークそのものをないものとして扱うと、地下に潜ってより悪質な搾取が行われてしまう。労働者としての権利を守れるようになることが重要ではないか

・赤坂は政治の街なのに、風俗が非常に多い。これはほかの国にはない日本の特徴

・日本は「女性を性の対象とし、搾取すること」に抵抗がない。それが政策決定など、あらゆることに影響している

・セックス・ワーカーに対する敬意のなさが根底に存在する

・セックス・ワークにおいては、女性のあり方が話題になることが多いが、買う側にもっと注目しなくてはいけないのでは

 

 ストリップのことを書く際に、性風俗と労働についてどう表現すべきか頭を悩ませたので、セックス・ワークの歴史をざっと聞き、記事で書いたことに大きなズレがなかったことにほっとした。

mess-y.com

 ばしっと質問しているパワフルな女性に声をかけてみたらフォロワーの中村香住さんだった。少しお話して、アイドル研究をしている上岡磨奈さんを紹介してもらった。

 中村さんの「メイドカフェ」についての論考が載っている「私たちの『戦う姫、働く少女』」と「戦う姫、働く少女」を買う。

 スナックしろくまでお会いした女の子から「いましたか?」というLINEが来て驚いた。

戦う姫、働く少女 (POSSE叢書 Vol.3)

戦う姫、働く少女 (POSSE叢書 Vol.3)

 
私たちの「戦う姫、働く少女」

私たちの「戦う姫、働く少女」

 

  本屋B&Bでのトークイベント・岡田育×ひらりさ「だから私たちは、コレをする&コレをしない」へ。

 「40歳までにコレをやめる」という本を出した岡田育さんの刊行記念イベント。彼女の「年下から学ぼうと思う」というツイートに共感して足を運んでみたのだけど、その話は掘り下げられなかった。

 ただ、「『人からどう見られるかを気にして、やる』をやめる」という話と、「すみませんを言わないようにしている」話はよかった。

 ひらりささんは婚活や投資に熱心だったことがあるが、それは「できる人に見られたい」からだったという。そういうのはやめようと。ツイッターも「やめたほうがいいとは思っているが、無理してやめようと思うのはやめる」ようにしているそう。うん、なるほど。

 また、岡田さんは「『すみません』を『失礼します』『ありがとう』などにする」ように心がけているそうだ。これは真似したい。

 イベントに出て、改めてツイッターを見て、今後岡田さんのエッセイを読むことはないだろうと思った。

40歳までにコレをやめる

40歳までにコレをやめる

 

  カルチュラル・タイフーン2019・2日目。

■都市における若者のエスノグラフィー

 荒井悠介,藤田結子,劉曼怡,太田実里,加瀬史温,菅野基樹,熊川京花,戸田舜介,横田理恵

 

 第1報告、中国のアイドルグループ「TFBOYS」の私設ファンサイトに関わる若者たちのエスノグラフィー。

 第2報告、コリアンタウンに集まる若者たちの調査。

 第3報告、新宿ペペ広場のユニカビジョン。

 小さな教室から人がはみ出るような状態だったため、第1報告はちゃんと聞けず。人が入れ替わって着席できた第2報告から。

・若者にとって渋谷は存在感のない町。人が通行人と化している

・新大久保に集まる若者は、ただの通行人ではない。週4で来ているという子は、「行くと友達に会えるから」という理由で来ている

・新大久保の方が「文化的」という表現をする若者もいた

・今は第3次韓流ブーム。かつては中年女性(韓流ドラマ)、女性(アイドル)という女性中心のムーブメントだったが、10代にまで広がり、男性の参加も増えている

・異国文化としての韓流というより、国内ポピュラーカルチャーの一つとして消費している

 第3報告、ユニカビジョンに集まる人々のコミュニティの特性や活動の特徴について。

・たとえば、人気のグループの映像が流れる祭、その前に集まりはするものの、集まった人々がコミュニケーションを取るわけではない。

 質疑応答もものすごく盛り上がった。コリアンタウンの調査をした登壇者の「多くのインタビューイーにとって政治の話は何それ?という感じ」という話が良くも悪くも印象的だった。

■男たちはどうなった?――コミュ力イクメン新自由主義

 川口遼、中垣恒太郎、河野真太郎

 人が多すぎて大部屋に変更。

 河野真太郎さん、映画「恋愛小説家」を軸に、男性性の変化を解説。

・80年代から、マッチョからインテリ管理職男子に「男性らしさ」が変化

コミュ力の高い健常な身体が肯定されるという世界

 

 川口遼さん、政策をベースにしたイクメン論を展開。

少子化対策と経済対策をイクメンに押し付ける現状の政策について

・ポスターに描かれた「育児も仕事もやる」スーパーマンとしての男性

育児雑誌から読み取れる父親論は、階層維持論になっている

・イクボスという制度

 

 中垣恒太郎さん、医療マンガの多様性について。

・グラフィック・メディスン・マニフェスト

・マンガを通して患者の体験を描くことについて

・男性のエッセイマンガは純文学的になりがち

 イクメン論が川口さんのちょっとした批評精神やパワフルな語り口も含めて大変面白かったのだけど、スピード感がありすぎてうまくメモが取れなかった。男性もテトリスみたいに「大変が次々降ってくる」状態なのだということがわかり、しかも、その傾向が深まるごとに階級ががっちり固定されていくという話、しんどい。

 でも、体の動かし方も含めて時々即興のポエトリーみたいになる川口さんの姿はとてもよかったし、時折出てくる政策を揶揄する言葉に笑った。感情が言葉にしっかり乗ってる。

 「コミックエッセイは20年以上にわたり、女性の困難や女性を取り囲む社会の困難を独自の形で社会にフィードバックしている」と考えていたので、中垣さんの論は興味深かったが、マンガに対する現状認識の雑さが気になった。

 「ツイッターなどを通して生まれるコミックエッセイ分野においては、性差を強調しない自画像が多い」という指摘があったが、たとえ本人が「〇〇太」と名乗っていても、絵柄や内容で女性だとすぐにわかってしまうということはよくあると思うからだ。また、女性の自画像が性別をぼやかした動物などに変換されるのはわりと昔からのことだ。

 ただ、私がマンガのお約束事に慣れすぎていて、「この人はこの文脈に影響を受けているから、男性/女性だろう」という判断を気軽に下しすぎていることも考慮しなくてはいけないのかも。

■女はすべてを手に入れたのか? ―ポストフェミニズム、新たな労働、消費者民主主義

 中村香住さん、メイドカフェ社会学

・『私たちの「戦う姫、働く少女」』ではあまり言及されていなかった「性の商品化」を論点に。メイドカフェの女の子へのインタビューの中に、「(メイドカフェでの労働は)一個人として尊重されている気がする」という言葉があったのが印象的だった。

 

  永山聡子さん。

従軍慰安婦問題を軸に、在日三世として、自分の家族の状況や空気感を交えつつ、ドキュメンタリー映画「主戦場」、旧日本軍の従軍慰安婦だった女性らを支援する韓国ブランド「マリーモンド」、キボタネ若者ツアーやカルチャーを通した文化交流など、日韓の現在について語る時間。

 永山さんが現状の社会について、知性と理性で固めた精度の高い怒りを通して言語化していく様は、まるで映画の主人公のようだった。

 アメリカ映画の女性弁護士が、うすっぺらい人格の権力者の搾取に対して、証拠をがっちり固めて裁判で戦う際の演説を見ているような。私はそんな映画を、まだ観たことがないのだけど。

 知性と感情を持って社会について研究して、それを言語化する姿がこんなにもかっこいい。永山さんのあのプレゼンの力強さは、たぶんこれからずっと心の中に生きる。友人や後輩にも見せたかったな。きっと生きる勇気が湧いたはず。

 で、永山さんの発表、「今、スライド用意終わりました!」から入って、持ち時間を大幅に超えてしゃべりまくって、次の登壇者の田中東子さんの時間を全部使っちゃった。でも、田中さんそれを見てニコニコしながら「永山聡子にしゃべらせるには20分では足りませんね」と言う。

 ああ、「これは活きた空間だ」と思った。

 田中さんはPCを開くこともなく、発表予定だったというテーマに関して一言二言口にして登壇を終えたけど、おそらく、「私たちの『戦う姫、働く少女』」にもある「経済的自立なしのフェミニズムはありえるのか?」という問いについて語る予定だったのではないかな。

 もちろんそれも聞きたかったけど、知を自らの力として、社会に働きかけることの価値を信じている人々が、それゆえに仲間としてひとつの時間を共有している空気がとてもよかった。

 惜しむらくは、その速度と密度に押されてその内容をちゃんとメモしておかなかったところ……。ノートには「資本主義は基本的に搾取。収奪かどうかが論点」という一行だけでっかく残ってるけど。せめてマリーモンドで何か買う。

www.saga-s.co.jp

www.marymond.jp

 学問は楽しいし、世界に働きかける力になるというのが実感できて、ほんと行ってよかった。

 カルチュラル・タイフーン、来年は熊本開催だそう。